社員向け短時間のうつ病研修プログラムを開発 メンタル不調者への対応力が向上、九州大学など

職場でメンタルヘルスの不調を抱える社員に適切に対応する方法を2時間で学べる研修プログラムを開発したと、九州大学大学院精神病態医学講師の加藤隆弘氏らが「PLOS ONE」12月7日オンライン版に発表した。研究は岩手医科大学神経精神科学講座教授の大塚耕太郎氏らと共同で行ったもの。暫定版のプログラムをパイロット試験として実施したところ、プログラムの受講者はメンタルヘルス不調者への対応力や理解力が向上したという。

 近年、メンタルヘルスの不調を理由に休職や退職に至るケースが増えており、職場のメンタルヘルス対策の向上は喫緊の課題となっている。しかし、気分の落ち込みや意欲低下、不眠などの抑うつ症状がある人は、そのことを周囲に訴えることはほとんどなく、周囲も気づきにくかったり、声をかけづらかったりするのが現状だ。

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 そこで、加藤氏らは、オーストラリアで開発され国際的に普及している、一般市民がこころの応急処置を実践的に学ぶ12時間の「メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)」と呼ばれるプログラムに着目。2007年にはMHFAを日本に導入し、その要素を震災支援事業や自殺対策事業に取り入れてきた。同氏らの研究チームは、今回、一般企業の従業員が受講しやすいように2時間にまとめたプログラム(暫定版)を作成した。

 MHFAのアクションプランには、(1)声をかけ、リスクを評価し支援を始める、(2)決めつけず、批判せずに話を聞く、(3)安心につながる支援と情報を提供する、(4)専門家のサポートを受けるよう勧める、(5)その他のヘルプやセルフヘルプなどのサポートを勧める-の5つのステップが掲げられている。加藤氏らが今回開発した2時間のプログラムは、うつ病に関する講義(50分)に加えて、上司役とメンタルヘルスの不調を抱える社員役のシナリオロールプレイによる演習(45分)を通じて、MHFAの5原則を実践的に身につけられるように構成されている。

 研究チームは次に、一般企業の会社員83人を対象に、暫定版プログラムを受講してもらうパイロット試験を実施した。プログラムの実施前後と1カ月後には、受講者にメンタルヘルスの不調を抱える社員や部下への対応に関するアンケートに回答してもらった。その結果、プログラムを受講後には、「メンタルヘルス不調者に対応するスキル」と「不調者に関わる上での自信」がいずれも向上していることが分かった。一方、メンタルヘルス不調者への偏見については低下していた。

 加藤氏らは「研究チームでは、忙しい会社員でも受講できるような短時間のMHFAプログラムを日本に導入し、普及に向けてインストラクターの育成を行っている。今後、この暫定版プログラムの有効性が対照群を設定した、より大規模な研究で検討されることが望まれる。さらなる研究でプログラムの有効性が確認され、多くの企業で活用されることで、うつ病の早期発見・早期治療につながるものと期待される」と述べている。

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HealthDay News 2018年12月17日
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