• 肺炎球菌ワクチン導入で小児の急性中耳炎が減少

    米国では2000年に結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)が導入されたが、それ以降、小児の急性中耳炎が大幅に減少したことが米ロチェスター総合病院研究所のMichaele Pichichero氏らの研究で明らかになった。しかし、同研究では肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)以外の起因菌による急性中耳炎の割合が増えていることも示されたという。

     Pichichero氏らは今回、米国におけるPCV導入前後の小児の急性中耳炎の頻度や特徴などについて調べるため、615人の小児を2006年から2016年までの10年間にわたって追跡した。急性中耳炎は、全ての診断例で鼓室穿刺を行い、中耳の貯留液を採取して微生物学的検査を実施して確定診断を行った。

     その結果、1歳までに急性中耳炎に1回以上罹患した小児の割合は23%、3回以上罹患した小児の割合は3.6%であることが分かった。また、3歳までに1回以上罹患した小児の割合は60%、3回以上罹患した小児の割合は24%だった。

     なお、Pichichero氏らによると、1989年には3歳までに急性中耳炎に1回以上罹患した小児の割合は80%を超え、3回以上罹患した小児の割合も40%を上回っていたことが報告されているという。このことから、同氏らは「これ以降、小児の急性中耳炎の頻度は大幅に低下したと考えられる」との見方を示している。

     しかし、追跡期間中に肺炎球菌による急性中耳炎の頻度は低下した一方で、肺炎球菌の代わりにインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)やモラキセラ菌(Moraxella catarrhalis)による急性中耳炎の割合が高まっていることも今回の研究で明らかになった。

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     Pichichero氏は「これほど劇的な急性中耳炎の減少は予測していなかった。ただ、主な起因菌の種類が変化したことへの対策を講じなければ、急性中耳炎は再び増加に転じてしまう可能性がある」と指摘。インフルエンザ菌やモラキセラ菌による急性中耳炎は、現在米国で第一選択薬として位置づけられている抗菌薬のアモキシシリンによる効果が期待できないとして、注意を呼び掛けている。なお、同氏らは最近、同薬の代わりにアモキシシリンとクラブラン酸の配合剤を使用するか、同薬へのアレルギーの既往がある場合にはセフジニルを使用するようになったと話している。

     さらに同氏らは、小児の急性中耳炎が減少した要因として、PCV導入だけでなく米国での急性中耳炎の診断基準が厳格化されたことによる影響も考えられると指摘している。

     一方、今回の研究では小児の急性中耳炎のリスク因子についても検討したが、以前の研究結果と同様、「保育施設の利用」「中耳炎の家族歴」「男児」「白人」「生後6カ月までの中耳炎罹患」がリスクの上昇に関連することが示されたという。

     米クリスチアーナ・ケア・ヘルスシステムの小児科医であるStephen Eppes氏は、PCV導入によって急性中耳炎が減少したことは「現代の公衆衛生における最大の成功例の1つ」と評価。「減少の要因は複数あるが、最大の要因はワクチンの導入だと考えられる。ワクチンの効果は髄膜炎や敗血症、その他の肺炎球菌による感染症の減少にまで及んでいる」と話している。

     この研究結果は「Pediatrics」8月7日オンライン版に掲載された。

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    HealthDay News 2017年8月7日
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  • 日によって血圧値が大きく変動する人は認知症リスクが高い?

    血圧値が測定した日によって大きく異なる人は、認知症を発症するリスクが高い可能性が、60歳以上の日本人約1,600人を対象とした新たな研究で示された。日ごとの血圧値の変動幅が大きな人では、血圧値が安定している人と比べて認知症リスクが2倍超となることが分かったという。

     この研究は、九州大学大学院医学研究院精神病態医学の小原知之氏らが実施したもの。福岡県久山町の疫学調査「久山町研究」に登録されている地域住民のうち、60歳以上で認知症のない男女1,674人を2007年から2012年まで5年間追跡した。対象者には高血圧患者も含まれており、約40%が降圧薬を使用していた。

     対象者は研究開始時に28日間(中央値)にわたって毎朝3回、家庭血圧計で血圧を測定した。小原氏らは今回、3回の測定値の平均値をその日の血圧値として変動係数を求め、日ごとの血圧値〔収縮期血圧(SBP)値および拡張期血圧(DBP)値〕の変動幅の大きさと、認知症リスクとの関係について調べた。

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     その結果、追跡期間中に194人が認知症を発症し、そのうち47人が血管性認知症、134人がアルツハイマー病だった。日ごとのSBP値の変動幅を「最も大きい」から「最も小さい」まで4段階に分けたところ、変動幅が最も大きい人のグループでは、最も小さい人のグループと比べて全体的な認知症のリスクが2.27倍、血管性認知症のリスクが2.79倍、アルツハイマー病のリスクが2.22倍になることが示された。

     また、日ごとの血圧値の変動幅が大きいことによる認知症リスクの上昇は、高血圧患者だけでなく正常血圧の人でも認められた。小原氏は、今回の研究結果で最も重要なのは「日本の一般的な高齢者において、日ごとの血圧値の変動幅が大きいことは、認知症発症のリスク因子であることが示された点だ」と説明。ただし、この研究は観察研究であるため、小原氏は「血圧の変動幅が大きいことが原因で認知症を発症することが示されたわけではない」と注意を促している。その上で「もし血圧値の変動幅が大きければ、それを安定化させることが認知症の予防に役立つ可能性はある」との見方を示している。

     この研究結果を受け、米ウェイル・コーネル医科大学のCostantino Iadecola氏は「(小原氏らのグループは)研究に家庭血圧計を使用することで、血圧の変動幅と認知症リスクとの関連を明確に示すことができた」と評価。「血圧の変動幅を小さくする対策を講じれば、脳の血管の健康を維持できるかもしれない」との考えを示し、そのタイミングについて「高齢になってからではなく、認知機能の低下が始まる中年期から手を打つことが望ましい」と話している。

     その一方でIadecola氏は、小原氏らの研究論文に関する論評で、血圧値は測定時の体調や使用している薬剤による影響を受けやすく、降圧薬の飲み忘れなどで変動が生じる場合もあるなど、研究には複数の限界があることを指摘。「今後、より大規模かつ多様な集団で今回の研究結果を検証する必要がある」としている。

     この研究の詳細は「Circulation」8月8日号に掲載されている。

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    HealthDay News 2017年8月7日
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