• 身長が低いことにメリット?高身長の人よりも静脈血栓塞栓症リスク低い

    身長が低いことに少なくとも1つは医学的なメリットがあるかもしれない―。スウェーデンの男女約270万人を対象とした研究で、身長が高いほど静脈血栓塞栓症を発症するリスクが高いことが示されたという。

    この研究結果は「Circulation:CardiovascularGenetics」10月号に掲載された。

    静脈血栓塞栓症は、下肢などの静脈に血栓ができる深部静脈血栓症や、その血栓が肺に運ばれて肺動脈の塞栓をもたらす肺血栓塞栓症の総称。同じ姿勢で長時間動かずにいると発症しやすいため、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれる。

    静脈血栓塞栓症の発症リスクは、手術患者やがん患者、妊婦などで高いことが知られているが、身長が高い人でも同リスクが上昇することが以前の研究で示されていた。
    ただ、この研究では家族性の要因(遺伝的あるいは環境的な要因)が考慮されていなかった。

    そこで、ルンド大学およびマルメ大学病院(スウェーデン)のBengtZöller氏らは今回、スウェーデンで1969~2010年に徴兵された男性161万870人と1982~2012年に初めて妊娠した女性109万3,342人を2012年まで追跡した。
    なお、男女ともに静脈血栓塞栓症の既往歴がある者は除外し、家族性の要因を調整するため、兄弟あるいは姉妹とのペアでの解析も実施した。

    その結果、静脈血栓塞栓症を発症するリスクは、身長が190cmを超える男性と比べて160cm未満の男性で65%低く、185cmを超える女性と比べて155cm未満の女性で69%低かった。
    さらに、兄弟あるいは姉妹間での比較でも、身長が高い方と比べて低い方では同リスクの低下が認められ、身長差が大きくなるほどリスクの低下度は増大した。

    この結果を踏まえ、Zöller氏らは「身長の高さは静脈血栓塞栓症の独立した予測因子であることが分かった」と結論。考えられる要因として「背の高い人は脚の静脈が長い分、問題が生じ得る面積も広いことに加え、重力の影響で血管に圧力がかかるために血流が滞りやすいことが背景にあるのではないか」と考察している。

    また、同氏は、今回の研究の限界として対象者の小児期の生活習慣(食事、運動、親の喫煙など)が考慮されなかった点を挙げた上で、「現在のスウェーデンの人種構成は米国に似通っているため、この研究結果は米国人にも当てはまる可能性が高い」との見方を示している。

    一方、この研究報告を受け、米レノックス・ヒル病院のMajaZaric氏は「身長を変えることはできないため、背の高い人では予防が重要」と指摘。例えば、段階式着圧ストッキングの使用や、脱水状態を避けたり、長時間座り続けている場合には時々歩いたりするといった対策を講じることを勧めている。

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  • 痛みや出血が伴う?人工授精のリスクを回避

    人工授精について

    人工授精にはどのようなリスクがあるのでしょうか?痛みや出血や胎児への影響など、知っておきたいことはたくさんあります。今回は、人工授精のリスク、痛みや出血、胎児へのリスク、人工授精のリスクを下げる方法をご紹介します。
    1. 1.はじめに
    2. 2.人工授精とは
    3. 3.人工授精のリスクとその症状
    4. 4.人工授精で起こる出血や痛みの原因
    5. 5.工授精の胎児へのリスク
    6. 6.人工授精のリスクを下げるためには
    7. 7.まとめ

    はじめに

    人工授精による不妊治療を受ける上で、どんなことを不安に思いますか?
    分からないことだらけで夫婦の悩みは尽きないのではないでしょうか?

    事前に人工授精のリスクやその回避方法を知っておき、少しでも不安を軽減してから治療に挑みたいところです。

    今回は、人工授精のリスク、痛みや出血、胎児へのリスク、人工授精のリスクを下げる方法をご紹介します。

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    人工授精とは

    人工授精とはあらかじめ精液を採取し、排卵日を狙って精子を子宮に直接注入し、授精させる不妊治療の方法です。

    人工的に行われるのは精子を注入する時だけで、それ以外は自力で授精をするので母体への負担は最小限に抑えられ、安全に行うことがます。

    精子を注入すると精子は卵子の待つ卵管に進み、授精します。

    その後、受精卵となって子宮に進み、着床して妊娠となりますが、妊娠する確率は5~10%程で必ず妊娠できるという保証はありません。

    人工授精のリスクとその症状

    人工授精をする上でのリスクを具体的に挙げていきます。

    ・排卵誘発剤の使用
    排卵誘発剤は卵巣を関節的、または直接的に刺激して卵胞を育てて排卵を起こします。
    人工授精を受けるにあたり、排卵しているかは非常に重要です。
    排卵誘発剤を使用する事で、排卵する確率が排卵誘発剤を使用しない場合に比べてかなり上がるので、人工授精の成功率も必然的に上がります。
    しかし排卵誘発剤は薬剤ですので当然副作用があり、腹痛や吐き気、体重増加等のリスクが伴います。
    そして排卵誘発剤の副作用で一番怖いのは排卵過剰刺激症候群という卵巣が腫れる症状です。
    自然に治まる場合もありますが、腹痛等を感じたら医師の診察を受け、排卵誘発剤の使用について相談する必要があります。
    また、排卵誘発剤を使用して卵子を作るので多胎妊娠の可能性も自然妊娠に比べて20%ほど高くなります。
    双子を妊娠した場合、通常の倍の負担が母体にかかり、切迫早産や帝王切開になる可能性が高まります。妊娠高血圧症候群に罹患する確率も普通の妊娠の6倍と跳ね上がります。
    その為、最近は多胎妊娠を抑制する治療法もあるので医師に相談して下さい。

    ・身体への負担
    人工授精を行うと稀にですが手術器具に付着した菌が原因で感染症にかかる事があります。
    人工授精した後に体調が悪くなったり、身体に異変を感じたらすぐに病院を受診しましょう。
    また人工授精で妊娠した場合、妊娠高血圧症候群や妊娠高血圧腎症になる確率が高くなり、発症した場合は母体の負担が大きくなります。

    ・精神的な負担
    人工授精は排卵のタイミングを狙って治療するので、精神的な負荷も大きいです。

    1回の成功率が5~10%と決して高くないので入念な検査をする必要があり、回数を重ねても妊娠しなかった場合、精神的に大きなダメージを受けます。

    更に仕事をしながら治療を受けている場合、排卵を狙う為の検査や人工授精の為に仕事を休まなければなりません。

    そして人工授精は実費になり、1回の人工授精にかかる費用は病院にもよりますが、15000円から30000円程度、それが回を重ねる毎にのしかかり、その都度の検査代や排卵誘発剤等のお金も発生するので経済的にも負担が大きく、これが精神的負担につながることもあります。

    人工授精で起こる出血や痛みの原因

    人工授精は精子を直接子宮内に注入するだけなので身体への負担はかなり少ないです。しかし中には激痛を感じたり、出血する方もいらっしゃいます。その原因を見ていきましょう。

    ・子宮収縮による痛み
    人工授精で精子を注入する際、2通りの方法があります。

    1.精液を原液のまま注入
    2.精液を洗浄して動きの良い精子だけを選別した後に注入

    精液を原液のまま注入すると精液の中に含まれているプロスタグランジンという成分が子宮の収縮を引き起こしてしまい、強い痛みを感じる事があります。

    このプロスタグランジンは精液を洗浄して注入する場合、この成分も取り除かれて注入されますので子宮収縮は怒らない事が多いです。

    ・カテーテル挿入による痛みや出血
    精液を子宮内に直接注入する際に、膣にカテーテルという器具を挿入します。

    この時にカテーテルが擦れてしまい、痛みや圧迫感を感じる事があります。

    またカテーテルと子宮頚管の摩擦によって出血が数日程続くこともあります。

    しかし、この痛みや出血は人工授精の家庭で起こるものなので、悪化しなければ問題ありません。

    ただ人工授精当日は念のために生理用品を持参する事をお勧めします。

    人工授精の胎児へのリスク

    不妊治療で授かった赤ちゃんは自然妊娠で授かった子よりも障害を持って産まれるリスクが高いのではないかと不安に思っている方も多いのではないでしょうか?

    人工授精は、精子を注入する部分以外は自然妊娠と同じ過程を辿ります。
    人工授精を行ったからと言って障害をもって生まれるリスクが高まるわけではありません。

    しかし、人工授精を行う場合に高齢出産が多いこと、多胎妊娠の可能性が通常より高いことが、人工授精によって障害のある子どもが生まれやすいと言われることに関係しています。

    人工授精を希望するご夫婦は35歳以上の高齢出産であることが多いです。

    高齢出産の場合、先天性異常が見つかることや、流産することのリスクは若いときの妊娠・出産に比べて高いです。

    そして前述したように、多胎妊娠になった場合にもリスクが生じてしまいます。

    一卵性双生児の場合、胎盤1つを共有した状態が胎児にとって一番リスクが高いです。

    その中でも双胎間輸血症候群といって母体から供給される血液が双方の胎児にバランスよくいき届かない事で起こるものがあります。

    血液が余分に来る胎児は多尿、羊水過多、心不全になり、血液が不足してしまう赤ちゃんには腎不全、羊水過少、発育不全になってしまいます。

    双胎間輸血症候群は未だに原因が分かっていませんが放っておくと最悪の場合、赤ちゃんがお腹の中で死亡してしまうことがあります。無事に出産できたとしても障害が残る可能性がある恐ろしい症状です。

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    この治療法は2種類あり、羊水吸引除去術という局所麻酔をしてお腹に針を刺し、羊水過多の赤ちゃんの羊水を抜く方法と胎盤鏡下レーザー凝固術をいう内視鏡の一種である胎児鏡を使って共有している血管をレーザーで凝固する方法です。

    ただ胎盤鏡下レーザー凝固術を受ける為には「妊娠16週以上26週未満である」「破水していない」「子宮内の膜に異常がない」等、いくつかの条件を満たす必要があります。

    さらに、この治療は一部の医療機関でしかできないので、事前にどこで受けられるのかを調べておく必要があります。

    多胎児の場合、2500g以下の未熟児で産まれる事も多く、脳性麻痺や奇形等のリスクもあるのです。

    人工授精のリスクを下げるためには

    人工授精は痛みや出血がある可能性は高くありません。

    人工授精のリスク自体は妊娠のプロセスにあるので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。

    ただ、排卵誘発剤の使用による排卵過敏刺激症候群を引き起こしてしまった場合はすぐに受診し、医師を相談する事をお勧めします。

    そして妊娠に伴うリスクは高齢になるにしたがってどうしても上昇してしまいます。

    そのリスクを回避する為には、生活習慣を見直し、3食バランスの良い食事、質の良い睡眠を心掛け、お酒を控えてタバコは止める、ストレスを溜めないようにする等、体調を整えるようにする必要があります。

    まとめ

    今回は人工授精に伴うリスクをご紹介しました。

    様々なリスクを紹介したので不安を感じる方もいると思いますが、これらを知る事がリスクを回避する第一歩です。自分でできる生活習慣等の見直しは是非実践してみましょう!

    人工授精に臨む時には万全の体調で治療を受けられるように準備をしてください。

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  • 「1分間に思い出せる動物の名前の数」でインスリン治療の可否を判定 横浜市大の研究グループ

    「1分間になるべく多くの動物の名前を思い出す」という簡単な記憶力テストの結果で、高齢の2型糖尿病患者がインスリン治療を自己管理できるかどうかを判定できる可能性があるとする研究結果を、横浜市立大学大学院分子内分泌・糖尿病内科学教授の寺内康夫氏らの研究グループが発表した。

    1分間に動物の名前を「11個以上」思い出せると、その患者は1週間以内は自分でインスリン治療を管理できると予測されるという。詳細は「JournalofDiabetesInvestigation」8月28日オンライン版に掲載された。

    高齢の糖尿病患者では、加齢に伴って認知機能が低下すると1人でインスリン注射ができなくなったり、経口薬の服薬時間や用量を守れなくなることが課題とされている。

    寺内氏らは、高齢の糖尿病患者がインスリン治療を自己管理できるか否かを認知機能検査で評価した報告はほとんどないことに着目。高齢の2型糖尿病患者を対象に認知機能検査を行い、インスリン治療に必要な自己管理能力との関連を調べるため、後ろ向きの観察研究を行った。

    対象は、2014年6月~2016年5月にインスリン治療を開始した60歳以上の2型糖尿病患者57人。対象患者には、MMSE(Mini-MentalStateExamination)と、動物の名前や指定した頭文字で始まる名詞を1分間になるべく多く思い出す簡単な言語流暢性課題(verbalfluencytest)による認知機能検査を受けてもらった上で、12項目で評価したインスリン治療の自己管理能力との関連を調べた。

    その結果、多変量ロジスティック回帰分析により、1週間以内にインスリン治療を自己管理できるかの予測には、MMSEよりも言語流暢性課題の方が適していたほか、言語流暢性課題の中でも動物の名前を思い出す記憶力テストが最も信頼性が高い方法であることが分かった。

    動物の名前を「11個」以上思い出せることは、感度73%、特異度91%の精度で1週間以内のインスリン治療の管理能力の有無を予測できた。

    寺内氏らは、後ろ向き解析であることやインスリン注射の教育を行う看護師が複数いたこと、対象患者の手段的日常生活活動(IADL)は評価していないことなど、今回の研究の限界点を指摘しつつ、「1分間にできるだけ動物の名前を思い出すといったカテゴリー流暢性テストにより、高齢の糖尿病患者がインスリン治療を自分で管理できる能力があるかを判別できる可能性があり、そのカットオフ値は11個だと考えられる」と述べている。

    糖尿病の基本情報についての詳しい解説はこちら

    糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。

    糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2017年9月11日
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  • 痛いけど必要…注射薬の種類について解説

    注射の種類について

    病院での治療や予防接種に用いられる注射には様々な方法や種類があります。そんな注射薬の目的や種類、メリットについて解説します。
    1. 1.はじめに
    2. 2.様々な投与経路
    3. 3.様々な注射の薬液
    4. 4.輸液治療の分類
    5. 5.電解質輸液の分類
    6. 6.複合電解質輸液の分類と使用目的
    7. 7.栄養輸液製剤
    8. 8.まとめ

    はじめに

    病院などで必要な時に打たれる注射薬、予防接種などで1度は経験したことがあると思います。針で刺され痛みを伴うので好きな方はいないでしょう。しかし、注射薬にはしっかりと病気を治すための利点があるのです。
    今回はそんな注射薬の種類やメリットについて解説します。

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    様々な投与経路

    皆さんのイメージとしては注射は血管の中へ直接針を刺して薬品を注入するイメージの方が多いと思います。実は注射は血管以外にも薬の特性や治療の目的に合わせて皮下、筋肉、静脈、髄腔内と様々な投与経路が存在するのです。

    皮下注射
    薬剤を皮膚の下の脂肪の部分(皮下組織)に投与する注射方法です。投与された薬は毛細血管に入って、太い血管の血流に入るか、リンパ管を経由して血流にはいって全身を巡ります。
    糖尿病の人が血糖を下げるために使用するインスリンは内服(経口)では胃酸によって分解される為に皮下注射されます。
    またインスリンは一気に血管に入ると効きすぎて低血糖を起こす恐れもある為、ゆっくりと血液内に入る皮下投与が向いているのです。

    筋肉注射
    上腕の三角筋やお尻の中臀筋に薬を投与します。
    皮下注射よりも大量の薬の投与量が必要な場合には筋肉注射が選択されます。
    また皮下注射よりも早く吸収される為、早めに効果を出したい時にも選択されます。

    静脈注射
    血管に薬を直接注射する方法です。
    筋肉注射よりも大量の薬液を注入する事ができます。
    注射方法の中で最も速く薬の効果が現れやすい方法になります。その為、救命時の緊急処置などに適しています。

    髄腔内投与
    髄腔内投与では背骨である脊柱を構成している椎骨と椎骨の間に薬液を注入します。髄膜炎の治療の為の抗生剤や歯科などで麻酔薬を局所的に作用させるために使用されることが多い投与方法です。

    様々な注射の薬液

    注射液にはその有効成分の溶かし方によって様々な種類に分けられます。

    水性注射剤
    有効成分を蒸留水で溶かした注射液です。

    非水性注射剤
    有効成分を蒸留水以外の植物油やプロピレングリコールで溶かした注射液です。溶かす溶媒の種類によっては有効成分の効果を持続化させることもできます。

    懸濁性注射剤
    水や有機溶媒で溶けない成分を細かく砕いて溶媒に分散させた注射剤です。
    投与の際にはよく振って均一に分散させる必要があります。

    固形注射剤
    有効成分の薬剤を凍結乾燥させて、投与の際に溶かして使用します。抗生剤などに多い注射剤です。

    輸液治療の分類

    静脈注射で薬液をゆっくりと投与してゆくいわゆる点滴と呼ばれる注射を輸液と呼びます。
    輸液療法では、食事や飲水が不十分な場合の体液(水分)バランスの補正、体液バランスの維持、栄養の補給、原疾患の治療を主な目的として行われます。
    輸液療法は大きく分けて電解質輸液と栄養輸液に分類されます。

    電解質輸液の分類

    電解質輸液は単一電解質輸液と複合電解質輸液に分けられます。
    単一電解質輸液は体に必要な電解質であるナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム等を補給する電解質補正液と体内の酸性、アルカリ性のバランスであるpH補正液があります。
    複合電解質輸液はさらに細胞外液補充液と低張電解質輸液に分かれます。

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    複合電解質輸液の分類と使用目的

    細胞外液補充液
    嘔吐や下痢などによる発熱や急性腎不全、ショックなどに用いられます。

    低張電解質輸液
    低張電解質輸液は入っている電解質や糖質の割合によって1号~4号に分類されます。

    開始液(1号)
    カリウムを含んでいない輸液になります、カリウムは時に心停止を起こしたりする為、脱水の原因が不明な場合にこの開始液が用いられます。

    脱水補給液(2号)
    1号液にカリウムを加えたもので細胞内補充液といわれます。電解質の濃度は最も濃い輸液です。

    維持液(3号)
    2000~2500mLの投与で成人に必要なナトリウムやカリウムの1日量を補給出来ます。

    術後回復液(4号)
    3号液からカリウムを除いたものになります。カリウムを投与したくない場合に選択されます。

    栄養輸液製剤

    口からの食事や飲水が出来ない場合に栄養補給として、点滴から栄養分を補給する事があります。栄養輸液製剤は糖・アミノ酸・脂肪乳剤の3つがあります。

    糖質液製剤
    糖質液製剤にはブドウ糖が含まれています。
    ブドウ糖1gは4キロカロリーに相当します。栄養が供給されない飢餓状態では、体内の筋肉のタンパク質を崩壊させ、エネルギーやアミノ酸を供給する為にやせ細ってしまいます。糖分が1日に100g供給されれば筋肉のタンパク質の崩壊を約半分に抑えることが出来ます。

    アミノ酸輸液製剤
    アミノ酸は生体に必要なタンパク質の合成、生命活動に必要な体内物質の原料、飢餓状態のような場合でのエネルギーとして重要な働きを持っています。
    十分なエネルギーが投与されていないとアミノ酸はタンパク質合成の成分として利用されないため、糖質液製剤と一緒に投与する必要があります。

    脂肪乳剤
    1g当たりのカロリーが糖質やアミノ酸の約2.3倍あり少ない量で高カロリーのエネルギーを補給できます。
    必須脂肪酸であるリノール酸やリノレン酸を含んでいます。

    まとめ

    注射薬についてまとめました、病院などで取り扱っている注射や点滴には様々な種類や投与方法があります。治療に重要な有効成分を効率よく投与出来たり、体に必要な水分や栄養を補給する為に必要であることが分かったかと思います。針を刺すのは痛いけど病気を治すの為にぐっとこらえてしっかりと治療してもらいましょう。

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  • 「PSA検診で死亡リスク低下」新たな解析結果

    前立腺特異抗原(PSA)の血液検査による前立腺がん検診の必要性については賛否両論があり、議論が続いている。こうした中、その議論の発端となった2件の大規模研究のデータを新たに解析した結果が「AnnalsofInternalMedicine」9月5日オンライン版に掲載された。

    それによると、PSA検診によって前立腺がんによる死亡リスクを25~32%低減できることが示されたという。
    米国では50歳以上の男性に対し、PSA検診を年に1回受けることが2008年ごろまで推奨されていた。
    しかし当時、PSA検診が実際に死亡リスクを低下させることを示した臨床研究はなかった。

    そこで実施されたのが欧州のERSPC研究と米国のPLCO研究だ。いずれの研究も、PSA検診に死亡リスクを低下させる効果があるのか否かを明らかにすることを目的としていたが、2009年に発表されたこれらの研究の結果は混乱をもたらすことになった。
    というのも、ERSPC研究ではPSA検診によって死亡リスクが20%低下したとする結果が得られたのに対し、PLCO研究ではPSA検診にベネフィットはないとする、相反する結果が得られたからだ。

    これを受け、米国予防医療作業部会(USPSTF)は2012年、「PSA検診を実施すべきでない」とする勧告を発表し、議論を呼んだ。

    一方、米国がん協会(ACS)などは医師に対し、これらの研究結果について患者に情報を提供し、PSA検診を受けるかどうかについては個別に判断すべきとの推奨を示した。
    ただ、ERSPC研究とPLCO研究では遵守率や環境が異なっていたことが指摘されていた。
    特に、PLCO研究では、PSA検診を定期的に受ける介入群に割り付けられていたにもかかわらず、実際には検診を受けなかった男性がいた一方で、通常ケアを受けるとされていた対照群にPSA検診を受けた男性がかなりの割合で含まれていたことが問題視されていた。

    そこで、米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのRuthEtzioni氏らは今回、これら2件の研究データを用い、数学的モデルを用いてPSA検診を「受ける群」と「全く受けない群」を同条件で比較検討した。

    その結果、これら2件の研究結果はかなり近いものとなり、PSA検診によりERSPC研究では25~31%、PLCO研究では27~32%の死亡リスク低下が認められたという。
    この結果を踏まえ、Etzioni氏は「PLCO研究では、介入群と対照群の両群でPSA検診が効果を発揮したため、両群の間に差が認められなかったと考えられる」と説明。

    ただし、「定期的なPSA検診の導入によって治療を必要としないがんに対する過剰な治療が行われる可能性も高い」として、PSA検診を受けるかどうかは医師と相談して決めるべきだと助言している。

    なお、前立腺がんの手術は性機能障害や失禁の原因となる場合があり、男性のQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性がある。

    また、前立腺がんの多くは進行が遅く、ほとんどの患者が心疾患など前立腺がん以外の疾患が原因で死亡していることも、早期発見を目的としたPSA検診の意義をめぐる議論の背景にある。

    今回の解析結果について、ACSチーフ・メディカル・オフィサーのOtisBrawley氏は「大きな混乱が生じていた領域に明確さをもたらした」と評価。
    「今なら検査のリスクとベネフィットについて、7年前よりも自信をもって患者に説明できる」と話している。

    今年4月、USPSTFはPSA検診に関する新たな勧告の草案を公表し、「70歳以上の男性には推奨しないが、55~69歳の男性では医師と相談の上で検診を受けるかどうか判断すべき」とするACSのガイドラインに類似した推奨案を示した。

    今回のEtzioni氏らの報告を受け、USPSTFはPSA検診に反対していたこれまでの姿勢をさらに軟化させる可能性がある。

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