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10月 23 2017 空腹時血糖異常と腹部肥満は糖尿病の強力な危険因子 日本人の成人男女で解析
日本人の成人男女はメタボリック症候群の危険因子の数が増えるほど将来、糖尿病になりやすく、特に空腹時血糖異常(IFG)があるとリスクはさらに高まる可能性のあることが医薬基盤・健康・栄養研究所(東京都)栄養疫学・食育研究部の黒谷佳代氏らの研究で分かった。「Journal of Epidemiology」9月号に掲載されたこの研究では、保有する危険因子に腹部肥満が含まれると、危険因子の数は同じでも糖尿病リスクはより高まることも明らかにされた。
これまで欧米で行われた小規模研究では、メタボリック症候群を構成する危険因子のうちIFGと腹部肥満はその他の因子よりも糖尿病リスクと強く関連することが報告されている。
黒谷氏らは今回、日本の12企業で働く会社員10万人を対象とした職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study;J-ECOH Study)のデータを用いて、メタボリック症候群を構成する危険因子の数やその組み合わせと糖尿病リスクとの関連をIFGの有無別に調べる観察研究を行った。糖尿病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
お近くの治験情報を全国から検索できます。対象は、2008~2013年に定期健診を受診した11企業で働く会社員5万5,271人(うち男性が4万7,160人)。
メタボリック症候群を構成する危険因子は(1)ウエスト周囲長(男性90cm以上、女性80cm以上)、(2)中性脂肪150mg/dL以上または脂質異常症治療薬を服用、(3)HDL-コレステロール値が男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満、(4)血圧が130mmHgまたは85mmgHg以上あるいは降圧薬を服用、(5)空腹時血糖値が100mg/dL以上とし、(5)の空腹時血糖値が100~125mg/dLの場合をIFGと定義した。追跡期間中(中央値で4.95年)、3,183人が糖尿病を発症した。
解析の結果、空腹時血糖値が正常な対象者では、危険因子がない場合と比べて糖尿病リスクは1個では2.0倍、2個では4.3倍、3個では7.0倍、4個では10.0倍にそれぞれ増加した。
また、IFGがあると糖尿病リスクはさらに高まり、IFGのみのでも12.7倍、IFGに加えて危険因子が1個増えると17.6倍、+2個で23.8倍、+3個で33.9倍、+4個で40.7倍にまでリスクが増加することも分かった。さらに、危険因子(IFG、腹部肥満、高血圧、脂質異常症)の組み合わせ別に糖尿病リスクを比べたところ、危険因子に腹部肥満が含まれると、保有する危険因子の数がたとえ同じであってもさらに糖尿病リスクは増加することも明らかにされた。以上の結果から、黒谷氏らは「メタボリック症候群の危険因子の数やIFGの有無で将来の糖尿病リスクを予測できる可能性がある。
また、保有する危険因子の数や血糖コントール状況が同じでも、腹部肥満があるかどうかで糖尿病リスクは変わってくることも分かった」と結論づけている。糖尿病の基本情報についての詳しい解説はこちら
糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。
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10月 23 2017 高齢自殺者の4人に1人が事前に予告
米国の50歳以上の自殺者の約4人に1人が事前に周囲にその意思を打ち明けていたことが、同国で発生した傷害死のデータ分析から明らかになった。また、高齢になるほど打ち明ける自殺者の割合が高まることも分かったという。この研究結果は「American Journal of Preventive Medicine」10月3日オンライン版に掲載された。
この研究は、米テキサス大学オースティン校老年学部長のNamkee Choi氏らが実施したもの。
2005~2014年に発生した傷害死のデータを分析した結果、50歳以上の自殺者の23.4%が自殺前にその意思を周囲に打ち明けていたことが分かった。また、ロジスティック回帰分析の結果、抑うつや健康上の問題を抱えている人では、自殺する前に誰かにその意思を打ち明ける確率が高いことが示された〔調整後オッズ比(OR)はそれぞれ1.57、1.56〕。
さらに、50歳以上59歳以下の自殺者と比べ、70歳以上79歳以下および80歳以上の自殺者は、自殺する前にその意思を打ち明ける可能性が高いことが示された(調整後ORはそれぞれ1.13、1.28)。
60歳代、70歳代、80歳以上のいずれの年齢層においても、健康問題があると自殺の意思を事前に打ち明ける確率が高まることも分かった。自殺に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
お近くの治験情報を全国から検索できます。このほか、メンタルヘルス関連のケアや薬物またはアルコール乱用の治療を最近受けていた人も、自殺する前に誰かにその意思を打ち明ける確率が高いことも明らかになった。
一方、銃による自殺者および縊死や窒息による自殺者は意思を打ち明ける可能性が低かった。自殺前にその意思を打ち明けた相手として最も多かったのは、パートナーまたはそれ以外の家族だった。
Choi氏は「自殺したいという意思を事前に誰かに打ち明けているということは、自殺を予防するチャンスがあるということだ。
医師や周囲の人は、自殺リスクの高い人を見つけ出し、支援できるようにしておく必要がある。
抑うつや健康上の問題などがあると、事前に打ち明ける確率が高いことが分かったため、これらの問題に対して必要なサービスを提供することで自殺を予防できる可能性がある」と指摘している。治験に関する詳しい解説はこちら
治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。
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10月 23 2017 40代女性の高血圧は認知症リスクを上昇させる?
40歳代で高血圧を発症した女性は後に認知症を発症するリスクが高いとする研究結果が「Neurology」10月4日オンライン版に掲載された。研究を率いた米カイザー・パーマネンテ北カリフォルニア研究部門のPaola Gilsanz氏は「これまで考えられていたよりも早い時期から高血圧は脳に影響を及ぼす可能性が示唆された」としている。
これまでの研究で高血圧と認知症との関連は示されていたが、50歳前の高血圧がリスク因子となるかどうかは明らかにされていなかった。
そこでGilsanz氏は今回、男女5,646人の医療記録データと健康調査データを用い、1964~1973年(平均年齢32.7歳)および1978~1985年(同44.3歳)の時点における高血圧の有無と、1996年(平均年齢59.8歳)から2015年までの認知症リスクとの関連について検討した。その結果、30歳代での高血圧はその後の認知症リスクに関連していなかったが、40歳代で高血圧だった女性では、正常血圧だった女性と比べて認知症リスクが65%高いことが分かった。
また、30歳代では正常血圧だったが40歳代に高血圧を発症した女性では、いずれの時点でも正常血圧だった女性と比べて認知症リスクが73%高いことも示された。
さらに、こうした関連は喫煙、糖尿病、過体重などの因子を考慮しても認められたという。認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報をsmtで検索
お近くの治験情報を全国から検索できます。一方、男性では40歳代の高血圧と認知症リスクとの関連は認められなかった。
これについてGilsanz氏は「男性は認知症を発症しやすくなる年齢に達する前に死亡する確率が高いことが一因として考えられる」と説明。
また、今回の研究には関与していない米アルツハイマー病協会(AA)のKeith Fargo氏は「遺伝的因子や生活習慣、ホルモンの違いなども男女で異なる結果が得られた要因となっている可能性がある」との見方を示している。さらにGilsanz氏は「男性よりも女性の方が認知症の有病率が高いことを考慮すると、女性でのみ40歳代の高血圧が認知症リスクに関係していることについて関心を持つ人は少なくないだろう。
今後の研究では性差をもたらす経路に着目し、男女それぞれのリスク因子を明らかにしていく必要がある」と話している。今回の研究は「高血圧が原因で認知症を発症する」という因果関係を示したものではないが、Fargo氏は「長期間にわたって高血圧だった人で認知症の発症率が高いのは理にかなっている」とした上で、「認知症の症状は高齢期に現れる場合が多いため、高齢になってから初めて認知症について考える人が多い。
しかし、それよりももっと前の段階から、さまざまな因子が認知機能を低下させている」と説明。
このうち高血圧は薬物治療や生活習慣の改善でコントロールできる因子であることから、「認知症と戦う上で、高血圧などの修正可能な因子に対処することは強力な武器になる」と強調している。軽度認知症の基本情報についての詳しい解説はこちら
軽度認知障害(MCI)の症状や原因、セルフチェック方法。また認知症へ進行しないための予防策や治療方法にはどのようなものがあるのか、詳しく解説しています。