• 手足の冷却で抗がん薬による「しびれ」の副作用が軽減

    抗がん薬の点滴中に冷却したグローブとソックスを着用して手足を冷やすことで、抗がん薬の副作用として問題となることの多い手足のしびれなどの末梢神経障害を予防できる可能性が新たな研究で示された。

    詳細は「Journal of the National Cancer Institute」10月12日オンライン版に掲載された。

    この研究を実施したのは京都大学大学院医学研究科の華井明子氏ら。
    同氏らによると、乳がんや肺がんなどの治療で抗がん薬のパクリタキセルを投与された患者の67~80%が副作用としてしびれを経験するという。
    その詳細なメカニズムは明らかになっていないが、その予防法として同氏らは局所的に血流の量を減らすことができる「冷却」に着目。
    Akromed社(フランス)から販売されている「Elasto-Gel」シリーズの冷却用のグローブとソックスを用いて今回の研究を実施した。なお、同社による研究への資金提供はされていない。

    対象は、乳がん治療のためにパクリタキセルを投与する女性40人。対象者には、パクリタキセルの点滴中に利き手側の手足を-25~-30度下で冷やしたグローブとソックスで冷却し、もう片方の手足には何も行わなかった。
    グローブとソックスは12週間以上の治療期間中、毎回着用してもらった。

    このうち肺炎や肝機能障害などが原因で試験を完遂できなかった4人を除いた36人を対象に解析した結果、治療後にしびれがみられた割合は、何もしなかった手の80.6%に対して冷却した手では27.8%、何もしなかった足の63.9%に対して冷却した足では25.0%といずれも低かった。
    また、手先の器用さを評価する検査を実施したところ、何もしなかった手と比べて冷却した手では悪化度が小さかった。

    今回の研究で検討した末梢神経障害の予防法について、華井氏は「簡便かつ安全な方法」と説明している。

    ただし、同氏はこの研究が小規模研究であることに注意を促すとともに、対象はパクリタキセルによる治療を受けている患者に限定されているため、他の抗がん薬を使用している患者にも結果が当てはまるかどうかは不明だとしている。

    この研究結果について、米コロンビア大学医療センター乳がんプログラムのDawn Hershman氏は「心が躍る結果だ」と評価。「末梢神経障害は患者のQOL低下だけでなく、治療の中止にもつながりうる問題。
    今後、大規模なランダム化比較試験で検証する必要はあるが、この効果が再び確認されれば、この予防法は低リスクで低コストの選択肢になる可能性がある」と期待を示している。

    一方、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのElizabeth Comen氏も「さらなる検証が必要」とした上で、「この予防法にマイナス面はほとんどなさそうだ。
    もし、私のもとにこの方法を試したいという患者が来たら、私はそれをサポートするだろう。
    (末梢神経障害の予防法として)これは妥当な選択肢といえる」と話している。

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    HealthDay News 2017年10月18日
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  • 高病原性H7N9鳥インフルエンザ、感染拡大の可能性も

    現在は中国にとどまっているとみられているH7N9鳥インフルエンザの感染が、今後より広い地域へと拡大する可能性があることが、米ウィスコンシン大学マジソン校/東京大学医科学研究所教授の河岡義裕氏らによる研究で示唆された。

    これまで、H7N9鳥インフルエンザがヒトからヒトに感染するのかどうかは不明だったが、最近見つかった高病原性のH7N9鳥インフルエンザウイルスが、哺乳類から哺乳類へと飛沫感染することが明らかになったという。
    この研究結果は「Cell Host & Microbe」10月19日オンライン版に掲載された。

    中国でH7N9鳥インフルエンザのヒトへの感染が初めて確認されたのは2013年だった。その後、これまでに同国を中心に約1,600人が感染し、このうち約600人が死亡した。
    これらはヒトに感染すると死亡率は高いが、家禽では感染しても無症状あるいは軽い呼吸器症状や下痢などの症状のみで済むことが多い低病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスの感染例だった。

    ところが、2016年に家禽にも全身症状や死亡をもたらす高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスが中国で検出され、2017年には同国でこの高病原性ウイルスの家禽からヒトへの感染例も確認された。
    現時点では低病原性と高病原性のいずれのウイルスについても全てのヒト感染例は家禽からの感染例とみられており、ヒトからヒトへの感染例はないと考え

    られているが、今後ウイルスが変異してさらに毒性や薬剤耐性、感染性が強まる可能性はあるという。

    河岡氏らは今回、中国の感染者から分離された高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスの性状を解析するとともに、マウスとフェレットを用いた実験で哺乳類から哺乳類に感染するのかどうか、また既存の抗ウイルス薬による効果はあるのかどうかについて調べた。

    その結果、高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスのウイルス粒子表面にあるタンパク質(ヘマグルチニン)にヒト型受容体への認識を高める変異があり、哺乳類で効率良く増殖できる能力を有していることが明らかになった。

    また、同ウイルスをフェレットに感染させたところ、肺や脳で増殖し、死に至っただけでなく、フェレット間で飛沫感染すること、それによって感染したフェレットも死ぬことが分かったという。

    さらにマウスの実験では、高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスは既存のノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビルなど)への感受性は低いが、現在日本でのみ承認(ただしパンデミック発生時の使用に限定)されているRNAポリメラーゼ阻害薬のファビピラビルを使用すれば増殖を抑制できることが示された。

    この研究報告を受け、米国感染症学会(IDSA)公衆衛生委員会の委員長であるMatthew Zahn氏は重要なポイントとして(1)高病原性H7N9鳥インフルエンザウイルスは公衆衛生に重大なリスクをもたらしうる(2)ウイルスは絶えず進化するため、それによるリスクも変化する可能性がある―という2点を挙げ、「監視を継続することの重要性があらためて強調された」としている。

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    HealthDay News 2017年10月19日
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  • 米国で2剤目の遺伝子治療薬、特定の血液がん治療で承認

    米食品医薬品局(FDA)は10月18日、血液がんの一種である大細胞型B細胞性リンパ腫の成人患者に対する治療薬として、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法と呼ばれる遺伝子治療に使用するaxicabtagene ciloleucel(商品名Yescarta)を承認したと発表した。

    8月には同じCAR-T療法の新薬であるKymriahが小児および若年者の急性リンパ性白血病の適応で承認されており、Yescartaは米国で2剤目の遺伝子治療薬となる。

    Yescartaの適応は、2種類以上の治療を受けたが奏効しなかったか、治療後に再発した成人の大細胞型B細胞性リンパ腫〔びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、高悪性度のB細胞性リンパ腫など〕。
    中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は適応外とされている。

    大細胞型B細胞性リンパ腫のうちDLBCLは成人の非ホジキンリンパ腫として最も頻度の高いタイプのもので、米国では年間7万2,000人が非ホジキンリンパ腫を新たに発症し、その約3分の1がDLBCLだという。

    Yescartaによる治療では、患者から白血球の一種であるT細胞を採取し、遺伝子操作によりリンパ腫細胞を標的として死滅させる新たな遺伝子を組み込み、この細胞を再び患者の体内に注入する。今回の承認の根拠とされているDLBCLを含む大細胞型B細胞性リンパ腫患者100人超を対象とした多施設共同臨床試験では、治療後の完全寛解率は51%に達していたという。

    FDAのScott Gottlieb氏は「今回のYescartaの承認は、重篤な疾患の治療における全く新しいパラダイムの構築で節目となるものだ。わずか数十年の間に遺伝子治療は“有望な概念の1つ”から現実的な治療法へと進化した」とコメント。

    一方、米ワシントン大学臨床腫瘍学のArmin Ghobadi氏も「がん治療における新たな時代が始まった。CAR-T療法があれば、患者自身の細胞を、がんを攻撃する強力な武器に作り替えることができる。これは極めて高度な個別化医療であり、さまざまな種類のがんに対する効果が期待できる」と話している。

    ただし、Yescartaにもリスクはある。
    FDAによれば、重篤な副作用として高熱やインフルエンザ様症状を引き起こすサイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性が生じる可能性があることが報告されているという。

    CRSや神経毒性はいずれも死亡リスクがある。その他の副作用としては、重症感染症、血球減少症、免疫低下などが報告されている。

    なお、Gottlieb氏によると、FDAは近日中に細胞ベースの再生医療の開発支援計画に関する包括的な方針を発表する。
    この方針ではCAR-T療法を含む遺伝子治療で使用する画期的製品への促進プログラムの適用についても明示されるという。

    また、先ごろ開かれたFDA諮問委員会では主に小児の視力障害を引き起こすまれな眼科疾患に対しても遺伝子治療の承認を勧告することが全会一致で決まった。
    この治療法はRPE65遺伝子の変異による視力障害をある程度回復させるものであり、極めて画期的なものだと専門家は話している。

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  • 便秘に「小さな足置き台」が有効な可能性

    もし便秘に悩んでいるなら、小さな足置き台をトイレに用意すると良いかもしれない―。排便しやすくなる姿勢を保つ足置き台の使用によって短時間でスムーズに排便できることが健康な男女52人を対象とする前向き研究で示された。

    この研究結果は世界消化器病学会議(WCOG 2017、10月13~18日、米オーランド)で発表された。

    欧米人は一般的に椅子に座るときと同じようにトイレの便座に座る。
    しかし、座った状態よりもスクワットの姿勢の方が内臓をスムーズな排便に適した角度に保ちやすいという。

    そこで、米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのRohan Modi氏らは今回、便座に座った時にスクワットの姿勢を保つことのできる足置き台の使用が排便パターンにどのように影響するのかについて検討するため、健康な研修医の男女52人(平均年齢29歳、女性が40.1%)を対象に前向き研究を実施した。
    研究で使用された足置き台は便器の下に設置するタイプのもので、米国では既に市販されているという。

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    なお、対象者は健康ではあったが、研究開始時に28.8%が「排便後に残便感がある」と報告し、44.2%が「排便時のいきみ」を訴えていた。さらに、55.8%が「過去1年間に排便後トイレットペーパーに血が付いていたことがある」と回答していた。

    計1,119回の排便(足置き台を使用した排便が384回、足置き台なしでの排便が735回)を対象に解析した結果、排便にかかった時間は足置き台なし群の5.60分に対して足置き台使用群では4.24分と有意に短縮していた(P<0.001)。
    また、足置き台使用群では排便時のいきみの評価スコアや残便感も有意に改善していた(いずれもP<0.001)。さらに研究対象者の67.3%(35人)が研究終了後も引き続き足置き台を使用する意向を示していた。

    特に研究開始時に残便感を訴えていた対象者は、長期間にわたって使用を継続する確率が高かった。

    Modi氏は「アジアやアフリカ、中東などではスクワットの姿勢で排便することは珍しくないが、先進国では西洋型の便器を使用するのが一般的になっている。しかし、慢性の便秘に悩んでいる人には、足置き台が排便時間やいきみ、残便感に良い影響をもたらす」と説明。その上で、「足置き台は非薬物療法の選択肢の1つとなる可能性がある」と期待を示している。

    ただし、同氏は「特に高リスク患者に対する有効性を調べるにはさらなる研究が必要だ」としており、便秘など排便の問題に悩む人に対して「まずは通常の排便習慣について医師に率直に話すことが重要」と強調している。

    なお、この研究で使用された足置き台は販売元の米Squatty Potty社が提供したが、それ以外で同社は研究に関与していない。また、同社からの資金提供もなかったとされている。

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    HealthDay News 2017年10月16日
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  • “ヘルシー”と表示された食品を食べるとかえって太る?

    “健康的(healthy)”と表示された食品には注意が必要かもしれない。“健康的”と表示されていても、含まれている糖分が多いと、その後の間食が増える可能性があるからだ。

    一方、含まれている糖分の量が多くても、“自分へのご褒美(indulgent)”というキャッチフレーズが表示された食品の場合、その後に間食が増える可能性は低いという。
    これらのことは米アリゾナ州立大学マーケティング学部教授のNaomi Mandel氏らが実施した研究で明らかになった。

    Mandel氏らによると、糖分の多い食物を摂取すると、その日は空腹感が高まることは以前の研究で明らかにされていた。
    そこで今回の研究で同氏らは、糖分の多い食品のラベルに表示された内容が、その後の空腹感にどのように影響するのかについて検討した。

    まず、大学生76人に2種類の「プロテインシェイク」のいずれかを飲んでもらった。これらのシェイクは、味は同じで含有するタンパク質やエネルギー量も同量だが、一方は糖分が多く脂肪分が少ないもの、もう一方は糖分が少なく脂肪分が多いものだった。
    シェイクを飲んだ後はビデオを鑑賞してもらい、その間にポテトチップスを提供した。その結果、予想通り糖分が多いシェイクを飲んだ学生の方が食べたポテトチップスの量が多かった。

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    次に、別の大学生193人を対象に、これら2種類のシェイクにそれぞれ2パターンのラベル表示をした計4種類のシェイクを用意し、いずれかを飲んでもらった後にポテトチップスを提供した。
    ラベル表示は“健康的な生活”というフレーズとともに「低脂肪、低糖質、低カロリー」という栄養情報を示したパターンと、“自分へのご褒美”というフレーズとともに「高脂肪、高糖質、高カロリー」という栄養情報を示したパターンとした。

    その結果、これらの4種類のシェイクのいずれかを飲んだ学生のグループの中で、食べたポテトチップスの量が最も多かったのは、“健康的な生活”と表示された糖分の多いシェイクを飲んだ学生だった。
    これに対し、“自分へのご褒美”と表示された糖分の多いシェイクを飲んだ学生のグループでは、その後食べたポテトチップスの量が最も少なかった。

    この結果について、Mandel氏らは「糖分が多くても食品のパッケージにそのことを警告する表示があれば、食べた後に襲ってくる空腹感を抑えられる可能性が今回の研究で示された」と説明。
    また、同氏は「“健康的”というキャッチフレーズで販売されているが糖分の多いシリアルやヨーグルトなどを朝食で取ることによる影響が特に懸念される」と話し、食品のパッケージに表示された栄養成分表と成分リストを確認して実際に健康的かどうか判断するよう勧めている。

    この研究結果は「Appetite」7月号に掲載された。

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    HealthDay News 2017年10月17日
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