• 脂質の摂取がDPP-4阻害薬の血糖降下作用に影響する可能性 関電研究所

    関西電力医学研究所糖尿病研究センターの清野裕氏と矢部大介氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者において、脂質の中でも飽和脂肪酸の摂取はDPP-4阻害薬の単剤治療による血糖降下作用を減弱させる可能性があると発表した。

    同薬を服用する2型糖尿病患者は脂質の摂取量を制限することで血糖降下作用を保てる可能性が示唆された。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」11月24日オンライン版に掲載された。

    DPP-4阻害薬の服用を開始した2型糖尿病患者の中には、服用開始から3~6カ月後に血糖降下作用が減弱する患者がみられることが報告されている。
    こうした患者ではDPP-4阻害薬の服用開始後に体重増加が認められることから、健康的な食生活が守れていない可能性があり、研究グループは今回、食習慣による影響に着目した。

    そこでDPP-4阻害薬の単剤治療を受けている2型糖尿病患者を対象に日常的な食習慣について聞き取りを行い、食事に含まれる各栄養素がDPP-4阻害薬の血糖降下作用に与える影響を検討した。

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    対象は、関西電力病院における2006年9月~2017年6月の医療記録から、あらかじめ規定した条件に従い、DPP-4阻害薬の単剤治療を1年間継続した2型糖尿病患者63人のデータを抽出して後ろ向きに解析した。

    対象患者を、DPP-4阻害薬の服用開始半年後から1年後にかけてHbA1c値の推移に変化がみられなかった群(同期間のHbA1c変化量が0.4%未満の患者、53人)と半年後から1年後にかけてHbA1c値が上昇していた群(同期間のHbA1c変化量が0.4%以上の患者、10人)に分けて体重の変化や食習慣の状況を比較検討した。

    その結果、服用開始半年後から1年後にHbA1c値が上昇していた群は、変化がみられなかった群と比較して有意な体重増加が認められた。

    また、食習慣の状況をみると、HbA1c値が上昇していた群では総カロリー摂取量が有意に多く、栄養素別にみると脂質、特に飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に多かった。

    一方で、炭水化物とたんぱく質については、両群間で摂取量に差はみられなかった。
    多変量回帰分析の結果、服薬開始半年後から1年後のHbA1c変化量は飽和脂肪酸の摂取量と独立して有意に関連していることが分かった(P<0.01)。

    以上の結果を踏まえて、研究グループは「脂質の種類と摂取量はDPP-4阻害薬の血糖降下作用に影響を及ぼす可能性があり、同薬を服用する2型糖尿病患者は摂取する脂質の種類や量に注意する必要があるかもしれない。

    また、これまで民族間でみられてきた同薬の血糖降下作用の違いは、食習慣の違いによる可能性も考えられる」と述べている。

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    HealthDay News 2017年12月11日
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  • アンピシリン耐性菌は臨床導入前から存在していた?

    ペニシリン系抗菌薬の一つであるアンピシリンに対する耐性菌は、同薬がヒトの感染症治療に使用されるようになった1960年代よりも前から存在していたことが、パスツール研究所(フランス)のFrancois-Xavier Weill氏らによる研究で明らかになった。

    詳細は「The Lancet Infectious Diseases」11月29日オンライン版に掲載された。

    アンピシリンは広域スペクトルのペニシリン系抗菌薬で、英国では1961年に感染症の治療薬として発売されて以降、尿路感染症や中耳炎、肺炎、淋病などの治療に使用されてきた。
    しかし、同国では発売のわずか数年後(1962~1964年)にアンピシリンに耐性を示す細菌(S. Typhimurium)の感染が広がった。

    今回、Weill氏らは1911~1969年に欧州、アジア、アフリカ、アメリカの各地域における31カ国でヒト、動物、食品、家畜の餌から分離された288のS. Typhimurium株のアンピシリンに対する感受性の検査を実施。
    また、全ゲノムシークエンス解析を行い、アンピシリンに対する耐性獲得のメカニズムを特定した。

    その結果、ヒトから採取された分離株の約4%で多様なアンピシリン耐性遺伝子が同定された。
    また、ヒトの感染症治療にアンピシリンが使用されるようになる前の1959~1960年にフランスやチュニジアでヒトから採取された分離株において、アンピシリン耐性に関連する遺伝子(blaTEM-1)が認められた。

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    Weill氏によると、北米や欧州では1950年代から1960年代にかけて、家畜の餌に低用量のペニシリン(主に狭域スペクトルのペニシリン系抗菌薬であるベンジルペニシリン)が添加されていた。
    同氏は「今回の研究では直接的な因果関係を明らかにすることはできなかった」としながらも、「病気の治療以外の目的で家畜にペニシリン系抗菌薬を投与していたことが、1950年代後半の耐性菌の出現につながった可能性がある」との見方を示している。

    さらに、同氏は同誌のニュースリリースで「この研究結果は農場の土壌や排水、肥料などに残留する抗菌薬が、考えられていた以上に耐性菌の拡大に影響していることを示唆している」と指摘。
    「細菌には国境はない。世界レベルでヒトだけでなく動物における耐性菌の監視と調査を実施すべきだ」と強調している。

    ヒトに重篤な感染症をもたらす細菌の多くは、アンピシリンなどの抗菌薬に対する耐性を獲得している。耐性菌による世界の死亡者数(年間)は2050年には1000万人を超えると予測されている。
    こうした問題を背景に、世界保健機関(WHO)は最近、健康な家畜への日常的な抗菌薬の使用を中止するよう呼び掛けている。

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    HealthDay News 2017年11月30日
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  • 厚労省推奨の全身持久力を達成すると2型糖尿病予防につながる 継続的な達成が重要、東北大

    厚生労働省が推奨する全身持久力(cardiorespiratory fitness)の基準を継続的に達成すると2型糖尿病リスクが低減できる可能性があると、東北大学大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の門間陽樹氏らが発表した。

    この研究は60歳未満の男性会社員を最大で23年間追跡したもの。
    2型糖尿病の予防には、厚労省が勧める全身持久力の基準を一時的にではなく、継続的に達成することがより重要であることが分かった。
    詳細は「Journal of Epidemiology」11月25日オンライン版に掲載された。

    全身持久力は定期的な中強度~高強度の身体活動によって高まることが知られており、2型糖尿病などの生活習慣病を予防するには全身持久力を高く保つことが有効であることは世界的にも認められている。

    日本では、2013年に厚労省が公表した「健康づくりのための身体活動基準2013」において、例えば40~59歳の男性の場合、167m/分(10km/時)の速度のランニングを3分間以上継続できる程度の全身持久力が推奨されている。

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    しかし、2型糖尿病のリスクを減らすためには、この基準をどのくらいの期間満たすべきなのか、また全身持久力は一時的に達成すればよいのか、最初に達成し、その後は達成できなくてもリスク低減に有効であるのかなどは明らかにされていなかった。

    そこで、門間氏らは今回、全身持久力を複数回測定した2型糖尿病を発症していない男性会社員を長期にわたり追跡し、全身持久力の基準達成状況と2型糖尿病の発症リスクとの関係を調べた。

    対象は、追跡調査を開始する以前の8年(1979年4月~1987年3月)の間に全身持久力を4回以上測定し、1986年4月~1987年3月に登録した糖尿病のない21~59歳の男性会社員2,235人。
    参加者それぞれの全身持久力の曲線下面積(AUC)を算出し、厚労省の基準に基づいて算出された面積を超えているか否かで2群に分け、2型糖尿病の発症率を2010年まで最大で23年(中央値で15年)間追跡した。

    追跡期間中に400人が2型糖尿病を発症した。複数の因子を調整した解析の結果、全身持久力の面積が基準に基づく面積を超えていた群と比べて、超えていなかった群では2型糖尿病の発症リスクは33%高いことが分かった(ハザード比1.33、95%信頼区間1.06~1.65)。

    また、初回の測定で基準に達し、その後も継続的に基準を満たしていた群(参照群)と、初回は基準に達していなくてもその後、継続的に基準を満たした群は2型糖尿病リスクが同程度であった。

    一方、参照群と比べて、初回からその後も基準に達しなかった群では糖尿病リスクは約40%高いことも分かった。なお、同様に初回は基準を達してもその後、継続的に基準を満たさなかった群の場合も糖尿病リスクは約40%高い値を示したが、これらは統計学的な差は認められなかった。

    以上の結果を踏まえて、門間氏らは「今回の結果から、厚労省が勧める全身持久力の基準を継続的に達成すると中年期の男性は2型糖尿病リスクを低減できる可能性があることが分かった。
    厚労省が公表している全身持久力の基準は、2型糖尿病予防の観点から妥当なものだと言えるだろう」と述べている。

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    HealthDay News 2017年12月11日
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  • 米俳優の訴訟で話題のMRI用造影剤、有害性認められず

    米国では11月初旬、「MRI検査で使用したガドリニウムを含む造影剤が原因で、妻が重篤な状態に陥った」として俳優のチャック・ノリスが妻とともに訴訟を起こしたことが報じられ、その安全性をめぐって懸念が広がっている。

    しかし、ガドリニウム造影剤による脳神経への影響は認められなかったとする最新研究の結果が北米放射線学会(RSNA 2017、11月26日~12月1日、米シカゴ)で発表された。

    ガドリニウムはMRI検査用の造影剤に含まれている重金属の一種で、通常、静脈投与される。今回の研究を実施した米メイヨー・クリニックのRobert McDonald氏によると、ガドリニウムは1988年以降、長年にわたって使用され、これまでの使用回数は累計で約4億回と推定されているという。

    しかし近年、脳内に微量のガドリニウムが蓄積する可能性があるとの報告があったことなどから、米食品医薬品局(FDA)は2017年9月にガドリニウムを使用した造影剤の製品ラベルに、脳など複数の器官にガドリニウムが蓄積する可能性があるとの警告を追記するよう指示した。

    ノリスの妻はMRI検査の後、脱力感や疲労感、疼痛発作、灼熱感などに苦しんだとされている。しかし、実際に脳などに蓄積したガドリニウムは健康に悪影響を与えるのだろうか?

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    McDonald氏らは今回、メイヨー・クリニック加齢研究(MCSA)と呼ばれる前向きコホート研究に登録された50~90歳の正常な認知機能の男女4,261人(平均年齢71.9歳)のデータを用いて、ガドリニウムを含有するMRI用造影剤の使用による神経学的機能および神経認知機能への影響について検討した。

    対象者の25.6%(1,092人)にガドリニウム造影剤の使用経験が1回以上あった。使用経験者の使用回数の中央値は2回で、初めてガドリニウム造影剤を使用した日からベースライン時までの期間は中央値で5.6年だった。

    年齢や性、教育レベル、ベースライン時の神経認知機能などで調整して解析した結果、ガドリニウム造影剤の使用は認知機能の低下や認知症、神経心理学的能力の低下あるいは運動能力の低下に関連していなかった。

    また、ガドリニウム造影剤が認知機能の低下を速めたり、認知症への進行を速めたりするとのエビデンスも得られなかった。

    今回の研究結果を踏まえ、McDonald氏は「一般的に使用されている用量のガドリニウム造影剤であれば、仮に脳内に蓄積したとしても有害な影響をもたらすとのエビデンスはないことが分かった」としている。

    一方、米ケースウエスタンリザーブ大学放射線科准教授のVikas Gulani氏は「今回の研究ではガドリニウムの脳内での蓄積による害は認められなかったが、他の神経学的問題を引き起こす可能性は否定できない」と話す。
    同氏は「造影剤はMRIによってがんや心疾患、肝疾患などを正確に診断するために重要なものであり、リスクとベネフィットのバランスが大切だ」と強調するとともに、「造影剤を使わずにMRIを実施できる場合には使用を回避すべきだ」と助言している。

    なお、学会発表された研究は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

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