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12月 30 2017 男性がインフルや風邪の症状に弱いのには理由がある?
インフルエンザや風邪といった呼吸器感染症の症状はつらいものだが、特に男性はその症状を大げさに訴える傾向があると感じている医師や女性は多いのではないだろうか。しかし、男性が呼吸器感染症の症状に弱いのは、ただ弱虫だからではなく、男性は実際に女性と比べて免疫系が弱く、症状が重くなりやすいからではないかとする研究論文が発表された。
この論文は毎年ユーモラスなテーマの研究論文を集めることで知られる「BMJ」12月11日オンライン版のクリスマス特集に掲載された。この論文を執筆したのはニューファンドランド・メモリアル大学(カナダ)のKyle Sue氏。英語圏では軽い風邪の症状でも「インフルエンザに罹った」と騒ぎ立てる男性を揶揄する際に“man flu(男性特有のインフルエンザ)”という言葉がよく使われる。
同氏は今回、動物およびヒトの複数の研究をレビューし、“man flu”に科学的根拠があるのか否かについて検証した。その結果、ある香港の研究では、女性よりも男性の方がインフルエンザによる入院リスクが高いことが示されていた。
また、インフルエンザを含む呼吸器疾患を発症した場合の合併症リスクは女性と比べて男性で高いことを示した研究もあった。さらに、複数のマウスの研究において、男女の性ホルモンの違いがインフルエンザの症状の重症度に関係している可能性が示されているほか、ヒトの研究でも男性と比べ女性ではインフルエンザ発症時の免疫反応が強いこと、また男性ホルモンの分泌量が多いと免疫反応が抑制されることが示唆されているという。
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お近くの治験情報を全国から検索できます。Sue氏は、さらに詳細な検討が必要であることを認めつつも、「男性が呼吸器症状に弱いことには、ある程度の根拠はある」と述べ、「インフルエンザの治療も性差を考慮する必要があるかもしれない」との見方を示している。
さらに、同氏は「女性よりも男性の方が若いうちに心血管疾患を発症しやすいとして、男性には早期から心血管疾患のスクリーニングが実施されているにもかかわらず、なぜ男性が風邪やインフルエンザの症状でより苦しんでいると問題視されるのだろうか」と疑問を投げかけている。一方、米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のEbbing Lautenbach氏は、今回の論文について「われわれが共通して抱いている印象を裏付けるデータが、実際にどの程度あるのかを調べたという点は素晴らしい」と評価した上で、「女性と比べて男性では呼吸器感染症への免疫反応が弱いということは証明されているわけではない」と指摘。
性差が本当に存在するのか、もし存在するならどのような機序で性差が生じるのかについて、今後さらなる研究が必要だと強調している。治験に関する詳しい解説はこちら
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12月 30 2017 ノロウイルスの拡散を防止する
ノロウイルスは、嘔吐や下痢を引き起こす非常に感染力の強い病原体です。クルーズ船や学生寮などの人が大勢集まっている閉じられた空間に潜んでいることが多いとされています。米国では年間のノロウイルスの感染者数は2,100万人に上り、ノロウイルス感染によって約7万人が入院し、800人が死亡しています。ノロウイルスから身を守るため、以下の対策によって感染を防ぎましょう。
- こまめに石けんで手を洗いましょう。
- 食品を扱う際には十分に注意しましょう。
- 感染した人が接近した後は、壁や床などを殺菌しましょう。
- 汚染された体液や排泄物のついた衣類は、お湯を使って念入りに洗濯しましょう。
情報元:米疾病対策センター(CDC)
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12月 30 2017 難治性てんかんに食事療法が有効、2件の研究で明らかに
薬物治療が奏効しない難治性てんかんの小児患者に対し、ケトン食療法と呼ばれる食事療法を実施したところ、発作症状が軽減したとする2件の研究結果が米国てんかん学会(AES 2017、12月1~5日、米ワシントンD.C.)で発表された。AESはプレスリリースで「小児てんかん患者の約5人に1人は薬で発作をコントロールできないのが現状。これらの研究結果はそうした薬剤抵抗性てんかんの患者に希望をもたらす研究結果だ」と紹介している。
ケトン食療法とは糖質を減らし、脂肪を増やす食事療法で、脳内でのエネルギーの使われ方を変化させ、てんかん発作を抑える効果があると考えられている。
標準的なケトン食療法では、食事中の脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率が3~4:1となるように厳密に管理することが求められる。
脂肪は主にクリーム、バター、ナッツや種子のオイルから摂取する。
ケトン食用の食品を除けば、一般的なクッキーやキャンディーなどの菓子類は食べられない。パンや米、イモ類、パスタなどの炭水化物も制限の対象となる。てんかんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。今回報告された一つ目の研究は、米デル・チルドレンズメディカルセンター・オブ・セントラルテキサスのDave Clarke氏らが生後8カ月~20歳の薬剤抵抗性てんかん患者210人を対象に実施したもの。
このうち150人が迷走神経刺激法(VNS)、44人が脳梁離断術と呼ばれる外科手術、98人がケトン食療法を受けた。その結果、50%以上の発作軽減がみられた患者の割合は、VNS群で52%、外科手術群で54%、ケトン食療法群で63%だった。一方、二つ目の研究ではマクマスター大学(カナダ)のRajesh RamachandranNair氏らが生後5カ月~16歳の薬剤抵抗性てんかん患者40人を対象に比較的緩やかなケトン食療法について検討した。
従来のケトン食療法は短期入院により集中的に実施されるが、この研究では脂肪の割合を低め(脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率を0.67~1:1)に設定したケトン食療法を開始。
これによって発作がコントロールできるようになった場合には同じ比率のケトン食療法を継続し、効果がみられない場合には2~3週間ごとに脂肪の割合を徐々に高めた。その結果、6カ月後に約半数の患者で50%以上の発作の低減が認められ、完全に発作がみられなくなった患者も6人(15%)いた。最終的なケトン食療法の脂肪に対する糖質およびたんぱく質の比率は平均で1.5~2:1だった。
AESのスポークスパーソンであるJames Wheless氏は「てんかん治療では薬物治療が主軸となるが、ケトン食療法も極めて効果の高い治療選択肢となりうる」とコメントしている。
ただし、全ての患者で食事療法の効果が得られるわけではない。同氏によると、6週間試せばその患者にケトン食療法が有効かどうかを見極めることができるという。
学会発表された知見は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
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