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1月 05 2018 早期乳がん患者の内分泌療法、より短期間でも予後変わらず
ホルモン受容体陽性の早期乳がん患者への内分泌療法の期間は5年間が標準とされていたが、その後さらに5年間継続しても、2年間継続した場合と比べて予後に差はないことがオーストリアで実施されたランダム化比較試験(RCT)で示された。この試験結果はサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS 2017、12月5~9日、米サンアントニオ)で発表された。
この試験を率いたウィーン医科大学総合がんセンターのMichael Gnant氏によると、乳がん治療の進歩にかかわらず、早期乳がん患者のうちホルモン受容体陽性の患者は再発リスクが持続してみられることが分かっている。
そこで、一般的に再発予防のために乳がん細胞の増殖を促すエストロゲンを抑える薬剤を用いた内分泌療法が行われる。こうした患者に対する内分泌療法の標準的な期間は5年間とされていたが、近年の研究ではより長期の内分泌療法によって再発リスクがさらに低減することが示されているという。
ただ、どの程度治療を延長すべきかについては不明だった。今回の試験では、術後に5年間の内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬のいずれかまたは両方を使用)を受けたホルモン受容体陽性で閉経後の早期乳がん患者約3,500人を、同療法をさらに2年延長(通算で7年間)する群と、5年延長(同10年間)する群にランダムに割り付けた。
その結果、診断から平均で14年後の時点で再発することなく生存していた患者の割合は、2年延長群と5年延長群のいずれにおいても78%だった。
一方、骨折の発生率は5年延長群の6%に対して2年延長群では4%と低かった。乳がんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。この結果を踏まえ、Gnant氏は「内分泌療法は2年の延長で十分であり、それ以上の治療を行うべき理由はない。
また、治療期間が短い方が骨折などの副作用の低減につながる」と説明している。内分泌療法で使用されるアロマターゼ阻害薬などの薬剤では骨折やホットフラッシュ、性機能不全、筋肉痛および関節痛などの副作用が問題となることがある。
今回の試験には関与していない米ペンシルベニア大学AbramsonがんセンターのSusan Domchek氏は「内分泌療法がうまくいく患者がいる一方で、副作用に苦しみ治療を中止したいと望む患者もいる」と説明する。ただ、Domchek氏や米ダナ・ファーバーがん研究所のErica Mayer氏は「再発リスクなどに基づき個別に治療を決定する必要がある」と強調。
今回の試験結果は患者ごとに適した治療を決める際に、その選択肢を広げることにつながるが、再発リスクの高い一部の患者には長期の内分泌療法が有益である可能性があるとの見解を示している。今回報告された試験は、内分泌療法で使用される薬剤を製造するAstraZeneca社の資金提供を受けて実施された。
なお、学会発表された研究は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。治験に関する詳しい解説はこちら
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1月 05 2018 「スマホ1日5時間以上」で中高生の自殺リスク上昇か
米国でスマートフォン(スマホ)が一気に普及した2012年を境に、米国の中高生で抑うつ症状や自殺念慮の経験者、自殺者が急増したことが、米サンディエゴ州立大学心理学教授のJean Twenge氏らによる研究で明らかになった。スマホやパソコンなどの1日当たりの使用時間が平均で5時間以上の中高生では自殺念慮や自殺企図などのリスクが上昇することも分かったという。
同氏らは「中高生でスマホなどの端末の使用時間が増えていることが、自殺者の増加につながっている可能性がある」と警鐘を鳴らしている。
詳細は「Clinical Psychological Science」11月14日オンライン版に掲載された。Twenge氏らは今回、米国の中学2年生~高校3年生の男女計50万人超を対象に、抑うつ症状や自殺念慮の経験、インターネットでのソーシャルメディアの使用状況を含む生活や行動について尋ねた2件の調査データと、13~18歳の男女の自殺に関する米疾病対策センター(CDC)の統計データを分析した。
その結果、2010年から2015年までに中高生の自殺率は31%上昇しており、特に女子では65%上昇したことが分かった。
また、抑うつ症状を経験したことがある中高生の割合も、女子では2010年の16.7%から2015年には26.4%へと58%上昇していたほか、自殺念慮や自殺企図といった自殺につながりうる経験(自殺関連アウトカムの経験)がある女子中高生の割合も同期間に12%上昇していた。治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。さらに、自殺関連アウトカムの経験者の割合は、スマホやパソコンなどの端末を使用する時間が1日当たり1時間未満の中高生では29%だったが、2時間の者では33%、5時間以上の者では48%を占めていた。
また、端末の使用時間が1日1時間未満の中高生と比べて5時間以上の中高生では自殺関連アウトカムのリスクが66%上昇することが示された。
抑うつ症状の経験者の割合も端末の使用時間が長くなるほど高まることが明らかになった。Twenge氏は「今回、2012年を境に13~18歳の中高生、特に女子中高生で抑うつ症状や自殺関連アウトカム、自殺による死亡が急増したことが分かった。これはスマホが普及した時期とちょうど一致する」と説明している。
また、端末の使用時間の長さによる抑うつ症状や自殺関連アウトカムへの影響は特に女子で強くみられたが、同氏はこの点について「これまでの研究からソーシャルメディアの使用時間が長いと精神面に悪影響があることが分かっているが、男子はソーシャルメディアよりもゲームに費やす時間が長いため、影響が弱まっているのかもしれない」との見方を示している。
なお、今回の研究では端末の使用時間が1日2時間未満の子どもでは精神的な問題のリスクは上昇しないことが示されたため、Twenge氏は「親は子どもにスマホの使用を1日2時間まで制限し、寝室にはスマホを持ち込ませないといった対策を取るべき」とアドバイスしている。
今回の報告を受け、専門家は「さほど驚くべきものではない」と口をそろえる。米ミシガン大学のScott Campbell氏は「食べ物やアルコール、セックス、買い物などと同様に、インターネットの使用も過剰になると有害だ」と指摘。
一方、米ワシントン大学のAnne Glowinski氏は「インターネットの長時間使用は特に夜間に多くみられるが、それによって睡眠の質が低下し、抑うつ症状や自殺のリスクを高める可能性がある。
さらに対面での人との交流や家族と過ごす時間も奪い、精神的な問題を引き起こしうる」と説明し、親は子どもにスマホを与える前に十分話し合い、明確に使い方のルールを決めるべきだと助言している。治験に関する詳しい解説はこちら
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