• 脳からの神経信号が膵β細胞を増やす仕組みを解明 東北大

    脳からの神経信号が膵β細胞を増やす仕組みを解明したと、東北大学大学院糖尿病代謝内科学の今井淳太氏(講師)と山本淳平氏、井泉知仁氏、片桐秀樹氏(教授)らの研究グループが「Nature Communications」12月5日オンライン版に発表した。

    研究では、膵β細胞を増やす働きを持つ迷走神経由来物質を新たに同定し、これらの物質を膵β細胞に作用させて細胞を増やすことにも成功した。
    膵β細胞を増やして糖尿病の根治を目指す新しい治療法の開発につながるものと期待される。

    インスリン抵抗性がみられる肥満などの病態下では、膵β細胞が増殖してインスリンの分泌量を増やす仕組みが働くため、体重が多少増えても必ずしも糖尿病の発症にはつながらないことが知られている。
    しかし、こうした膵β細胞の増殖が起こる仕組みは明らかにされていなかった。

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    研究グループではこれまで、肥満時に膵β細胞の増殖が起こる仕組みには、肝臓→内臓神経→脳→迷走神経→膵臓の順路をたどる神経信号の伝達系を使って膵臓に信号を送ることが重要であることを見出していた(Science 2008; 322: 1250-1254)。
    研究グループは今回、マウス実験を行った結果、膵β細胞の増加に働くアセチルコリンとPACAP(pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide)、VIP(vasoactive intestinal polypeptide)といった3つの迷走神経由来物質を同定し、これらの物質がFoxM1経路と呼ばれる膵β細胞内のシグナル伝達経路を活性化させて膵β細胞を増やしていることを突き止めた。

    また、こうした膵β細胞を増やす仕組みは、食べ過ぎなどで栄養過多になると体重が増える前の段階でβ細胞を増やし、インスリン量を増やすことで血糖値を正常レベルに保っていることも分かった。
    さらに、試験管内でこれらの神経物質を膵β細胞に直接作用させるとβ細胞の数が増えることも明らかにした。

    これらの結果から、研究グループは「脳からの神経信号を介して膵β細胞を増やす仕組みによって、過体重や多少の肥満でも正常血糖を保てる背景が明らかになった。
    これは糖尿病の病態解明につながる成果であるとともに、膵β細胞を増やす治療法の実現に寄与すると期待される」と述べている。

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    HealthDay News 2017年12月18日
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  • 戦場でも使用可能、眼の外傷の応急処置にゲル材

    戦場で眼に外傷を負った兵士の視力を守ることができるかもしれない特殊なゲル材を開発したと米南カリフォルニア大学眼科部門のJohn Whalen氏らが「Science Translational Medicine」12月6日号に掲載された論文で報告した。

    眼科医による手術をすぐに受けられない状況での応急処置に役立つ可能性があるという。

    Whalen氏らが開発したのは、低温では液状だが眼に塗布するとシール状に固まるゲル材。ウサギを用いた実験では、眼の穿通性外傷にこのゲル材を塗布したところ眼圧が改善し、使用後4週間にわたって炎症や感染は認められなかった。
    現時点では動物実験で有効性が認められた段階だが、同氏らは2019年にヒトを対象とした臨床試験を開始し、まずは安全性について検証する予定だという。

    眼の外傷はすぐに手当てをしないと失明する可能性がある。
    同氏らは「われわれが開発したゲル材があれば、戦場のような眼科医による治療をすぐに受けられない環境でも迅速に応急処置ができる可能性がある」と話す。

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    使用法は簡便で、低温で保存しておいた液状のゲル材を眼の受傷部分に塗布するだけだ。ゲル材は眼の温度でシール状に固まるため、迅速に外傷をふさぐことが可能だという。
    応急処置を受けた患者が眼科医による手術を受ける際には、冷水をかけるだけで除去できる。

    Whalen氏らは、塗布する前にゲル材を短時間で冷却できる専用のシリンジも開発しており、これを使えばゲル材を前線まで持ち運び、近くにいる兵士が眼に外傷を負った兵士の応急処置を行えるとしている。

    同氏らによると、戦場での眼の外傷は近年、増加傾向にある。
    即席爆発装置の使用が広がっていることなどが増加の要因として考えられるという。
    今回のゲル材の開発も、米国国防総省は研究者らに眼の外傷の新たな治療アプローチの開発を求めたことがきっかけだったと同氏は説明している。

    なお、同氏らは「事故で一度に多数の傷病者が出たときや、眼科手術を行える施設がない地域の救急外来などでも、眼の外傷に対する応急処置にこのゲル材を活用できる可能性がある」としており、戦場に限らずさまざまな状況で使用できるのではないかと期待を寄せている。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2017年12月6日
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