• 米国のがん死亡率、低下続く

    がんの早期発見や治療の向上に加え、禁煙率の上昇が功を奏し、米国では順調にがんによる死亡率が低下し続けていることが分かった。

    米国がん協会(ACS)がこのほど発表した報告書「がん統計2018年版(Cancer Statistics 2018)」によると、米国では1991年から2015年まで毎年がん死亡率の低下を記録しているという。
    報告書は「CA: A Cancer Journal for Clinicians」1月4日オンライン版に掲載された。

    今回の報告書には2014年までのがん罹患率と2015年までのがん死亡率の推移のほか、2018年の年間発症数および死亡数の予測値も示された。
    それによると2015年のがん死亡率は前年と比べ1.7%低下し、1991年以降、低下傾向が続いていることが分かった。
    10万人当たりのがん死亡者数は1991年の215.1人から2015年には158.6人に減少し、この間にがん死亡率は26%低下していた。
    これは、同期間に240万人のがん死亡を予防できたことに相当するという。

    がんの種類別では肺がんや乳がん、前立腺がん、大腸がんによる死亡率が大幅に低下しており、全体的ながん死亡率を引き下げる主な要因となっていた。
    2015年の男性の肺がん死亡率は1990年と比べて45%、女性の乳がん死亡率は1989年と比べて39%、前立腺がん死亡率は1993年と比べて52%、大腸がん死亡率は1970年と比べて52%の低下が認められた。

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    また、この10年で男性のがん死亡率は年間2%の低下が認められているが、女性では横ばいに推移していることも分かった。
    こうした男女差について、報告書の著者の一人でACSサーベイランス・ヘルスサービス・リサーチ部門のAhmedin Jemal氏は「女性よりも男性の方が喫煙率の低下が早く始まったことが要因ではないか」との見方を示す。
    このため、今後女性でも肺がん死亡率が大幅に低下することが予測されるという。

    人種差については、白人と比べて黒人のがん死亡率が33%高かった1993年と比べると縮小傾向にはあるが、それでも2015年のがん死亡率は白人と比べ黒人では14%高かった。

    ただ、65歳未満の黒人では同年代の白人と比べてがん死亡率が31%高かったのに対し、高齢者(65歳以上)では7%高いだけにとどまっていた。
    この点について、Jemal氏らは「メディケア(高齢者向け公的医療保険)によって高齢者が医療を受けやすくなったことが背景にあるのではないか」との推測を示している。

    米レノックス・ヒル病院のStephanie Bernik氏は、「喫煙者を減らし、健康的な生活習慣を奨励し、個別化治療が進めば、さらなる死亡率の低下が期待できる」と話す。

    一方、米ニューヨーク大学(NYU)ウィンスロップがんセンターのEva Chalas氏は、今後のがん対策では肥満や過体重に目を向けることも必要だと指摘。「がんの約10%は(肥満の原因にもなる)生活習慣に起因している。

    したがって、生活習慣を是正することががんの予防につながる」としている。また同氏は一部のがん予防にはヒトパピローマウイルス(HPV)などのワクチン接種という手段がある点についても言及している。

    さらに、喫煙率は低下したものの依然として米国の喫煙人口は約4000万人に上ることを報告書の著者であるJemal氏は指摘。喫煙率の低下をさらに推し進める必要性を強調している。

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    HealthDay News 2018年1月4日
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  • 脳の老化を遅らせるには緑葉野菜を食べると良い?

    ホウレンソウやケール、レタスなどの緑葉野菜を毎日食べている人は、脳が老化する速度が遅い可能性を示唆する研究結果が「Neurology」2017年12月20日オンライン版に掲載された。

    同研究では緑葉野菜をほとんど、あるいは全く食べない人と比べ、毎日1回以上食べている人では脳年齢が11歳若いことが示されたという。

    この研究を実施したのは米ラッシュ大学医療センターのMartha Clare Morris氏ら。
    高齢者の認知機能などを調査するプロジェクトの参加者のうち、食品摂取頻度について回答し、平均4.7年の追跡期間中に2回以上の認知機能評価を受けた58~99歳の男女960人(平均年齢81歳)を対象に、緑葉野菜の摂取頻度と認知機能の低下度との関連について検討した。

    緑葉野菜の摂取頻度で五分位に分けて解析した結果、摂取頻度が最も高い群(1日当たり平均1.3回)では、最も低い群(同0.1回)と比べて認知機能の低下度が小さく、年齢に換算すると11歳若いことが示された。
    また、このような関連は認知機能に影響する可能性がある喫煙や高血圧、肥満、学歴、身体活動量、認知面の活動量といった因子を考慮しても認められた。

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    ただ、この研究は緑葉野菜を毎日摂取すれば脳の老化が遅くなるという因果関係を証明したものではない。アルツハイマー協会のKeith Fargo氏は、その点を指摘した上で、「脳の健康には食事などの生活習慣に関連した因子がいかに重要かを裏付けるエビデンスが集積しつつあるが、今回の研究結果もその一つだと言える」と説明している。

    一方、研究を実施したMorris氏らは、緑葉野菜に含まれているビタミンKやルテイン、葉酸などの栄養素が脳の老化を遅らせることに関係しているとの見解を示しているが、同氏やFargo氏らはこれらの栄養素をサプリメントで摂取することについては批判的だ。

    Morris氏は「食品に含まれている栄養素の複雑なバランスはサプリメントでは再現できない」として、これらの栄養素は野菜そのものを食べて摂取すべきだと強調している。

    また両氏は今回の研究が因果関係を証明したものではないことは認めつつも、「食事に葉物野菜を追加することによるデメリットは小さいはずだ」と指摘。脳の健康には食事を含めた全般的な生活習慣が影響することを認識してほしいと呼び掛けている。

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    HealthDay News 2017年12月20日
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  • 糖尿病網膜症の硝子体切除術、手術時間で術後出血リスクを予測 阪大

    増殖糖尿病網膜症に対する硝子体切除術(pars plana vitrectomy;PPV)施行後、早期(術後12週まで)および1年以内の再出血リスクを予測するには、手術時間の長さが重要な因子となる可能性があると、大阪大学大学院糖尿病病態医療学寄附講座准教授の岩橋博見氏らが「Journal of Diabetes Investigation」2017年12月19日オンライン版に発表した。

    PPVは糖尿病網膜症や黄斑浮腫などに広く施行される手術だが、術後の合併症に及ぼす全身状態や周術期の指標について検討した報告は限られている。
    岩橋氏らは今回、硝子体出血に対するPPVを施行した糖尿病網膜症患者を対象に、血糖コントロールや手術に関連した因子などの周術期の指標とPPV施行後の再出血の関連について調べた。

    研究では、2010年4月~2014年3月に、同大学病院で増殖糖尿病網膜症による硝子体出血へのPPVを施行した患者64人(平均年齢63.2歳)の72眼を対象に後ろ向きに調査し、術後の再出血に関連する周術期の因子(BMI、血圧、術前の空腹時血糖値、術後1週以内の低血糖の発生、抗血小板薬や降圧薬の使用、レーザー凝固療法の有無、手術時間、白内障手術の有無など)を探索した。

    その結果、術後の再出血は12眼で確認され、このうち術後1週以内が5眼、4週以内が3眼、12週以内が4眼であった。
    年齢と術前のHbA1c値で調整したロジスティック回帰分析の結果、術後12週以内の再出血リスクには手術時間の長さだけが有意に関連していた。

    また、ポアソン回帰分析の結果、術後1年以内の再出血頻度(出血の重症度を加味したもの)には、手術時間の長さのほか、手術直前の空腹時血糖値、周術期に抗血小板薬の投与がないこと、また周術期に降圧薬の使用があることも関連する因子として浮かび上がった。

    以上の結果から、岩橋氏らは「PPV施行後の再出血リスクの予測因子として手術時間が有意な因子となる可能性がある。PPV施行後には、手術時間が長いほど術後の患者を注意深く観察する必要のあることが示唆された」と述べている。

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    HealthDay News 2018年1月2日
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