• 「加熱式たばこは低リスク」の主張、米FDA諮問委は否定

    米国では加熱式たばこ“iQOS(アイコス)”は他の国のように広く販売されることにはならないかもしれない。

    米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会は1月25日、大手たばこ企業のフィリップモリス社が販売を申請していたiQOSについて、「通常のたばこ製品と比べてたばこ関連の疾患リスクが低い製品」として販売するという同社案が退けられたことを明らかにした。

    iQOSはたばこの葉を高温で加熱することで発生する蒸気を吸入して楽しむ加熱式たばこ(heat-not-burn tobacco devices)の一つで、さまざまなフレーバーの液体(リキッド)を加熱して発生した蒸気を吸う電子たばこ製品(e-cigarettes)とは異なる。

    iQOSは既に30カ国で販売されているが、米国ではまだ加熱式たばこは販売されていない。
    FDAの諮問委員会は今回、フィリップモリス社によるiQOSの販売申請について協議を行ったが、「通常のたばこ製品と比べてたばこ関連の疾患リスクが低い製品」とする同社の主張は否定された。

    一方、「iQOSは通常のたばこ製品と比べて喫煙者がさらされる有毒な物質の量が少ない」とする同社の主張については諮問委員会でも認められたという。
    これによって同社が米国でiQOSを販売する道は残されたが、他の国と比べるとかなり制約がある中での販売となる可能性が高い。

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    FDAは今回の諮問委員会の協議結果を踏まえ、数カ月以内にiQOSの承認の可否を決定する見通しだ。
    FDAは諮問委員会の勧告に従う義務はないが、諮問委員会の協議結果に基づいた判断が下されることが多い。

    なお、加熱式たばこによる健康への影響について検討した研究は少ないが、昨年(2017年)「PLOS ONE」10月11日オンライン版にわずか数年で加熱式たばこへの関心が急速に高まった日本の状況を浮き彫りにした研究論文が掲載されている。
    この論文の筆頭著者で米ペンシルベニア大学ウォートン校公衆衛生学のTheodore Caputi氏は「加熱式たばこによる健康への影響について、われわれはまだ十分な知識を持ち合わせていない。
    この状況は公衆衛生上、極めて危険だ」と警鐘を鳴らしている。

    Caputi氏らの論文によると、日本では加熱式たばこの販売が開始された2015年に加熱式たばこ関連ワードのグーグル検索数が1,400%以上増加し、その後2017年までに約3,000%増加した。
    現在も日本では1カ月当たりの加熱式たばこ関連ワードの検索数は約750万件に上るという。

    Caputi氏は「(米国で)加熱式たばこの販売が開始される前に、こうした製品に関する情報が不十分であることを消費者にも認識してもらう必要がある」と指摘。
    「たばこは回避できるはずの死亡の主な原因の一つとして知られ、公衆衛生における影響力は甚大だ。
    このことを考慮すると、情報が不十分な中で消費者が気軽に加熱式たばこを手に取ることができるような状況は望ましくない」との見解を示している。

    この研究論文の共著者で米サンディエゴ州立大学公衆衛生学のJohn Ayers氏は「残念ながら、加熱式たばこによる健康への影響については明らかにされていない。
    われわれの研究は、ただ加熱式たばこが日本で熱狂的に支持されるようになったことを明らかにしたに過ぎない」と説明。

    その上で「加熱式たばこに興味を持つ米国民が日本の10分の1程度であったとしても、数百万人もの国民がこうした製品を買い求めることになる」と指摘している。

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    HealthDay News 2018年1月25日
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  • 血液検査1回でがん8種を発見、がんの位置も特定

    1回の血液検査で8種類のがんの有無を判定し、がんの位置も特定できる新たな検査法を米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのグループが開発した。

    既にがんと診断された患者約1,000人にこの検査を受けてもらったところ、33~98%の確率でがんを発見でき、現在は有効なスクリーニング検査法がない5種類のがんも69~98%と高い確率で発見できることが分かったという。
    詳細は「Science」1月18日オンライン版に掲載された。

    CancerSEEKと呼ばれるこの検査法は、がんに関連する16種類の遺伝子変異と8種類のタンパク質を1回の血液検査で調べるというもの。
    こうした体液中の遺伝子変異やタンパク質といったがん関連マーカーを調べる検査は「リキッドバイオプシー」と呼ばれ、近年研究が盛んに行われている。

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    しかし、米国がん協会(ACS)医務部長代理のLen Lichtenfeld氏によると、リキッドバイオプシーは「干し草の山の中から縫い針よりも小さな物を見つけ出すような方法」だという。
    リキッドバイオプシーに関する研究の多くは進行がん患者の治療計画に生かすための検査に関するもので、がんの早期発見に有効なマーカーの測定は極めて難しいと考えられていた。

    研究グループは今回、数百種類の遺伝子変異と40種類のタンパク質から特にがん発見に有効な16種類の遺伝子変異と8種類のタンパク質に絞り込み、CancerSEEKを開発した。
    同グループによると、CancerSEEKはがんスクリーニングに役立つ遺伝子変異やタンパク質のみを測定する検査であり、治療の標的を定めるために数多くの遺伝子変異を調べる検査とは異なるものだという。
    「偽陽性の結果を減らし、スクリーニング検査法として導入しやすい費用に抑えるためには、遺伝子パネルを最小限にする必要があった」と、論文の筆頭著者で同大学のJoshua Cohen氏は説明している。

    CancerSEEKの精度は、乳房、大腸、肺、卵巣、膵臓、胃、肝臓、食道のいずれかのがん(ステージ1~3)がある患者1,005人を対象とした研究で検証された。

    その結果、CancerSEEKの感度は中央値で70%だったが、がんの種類による差が大きく、乳がんは33%と低かったが卵巣がんは98%と高かった。

    また、これら8種類のがんのうち現在、有効なスクリーニング法がない5種類のがん(卵巣、肝臓、胃、膵臓、食道)については69~98%の感度で検出できた。さらに、がんのない健康な男女812人から採取した血液を検査した結果、偽陽性率は1%未満だった。

    このほか、CancerSEEKには機械学習(マシン・ラーニング)を用いることでがんの位置を特定できるという利点もあり、今回の研究では患者の83%でがんの位置を正確に特定できたとしている。

    一方で、課題も残る。今回の研究では既にがんと診断された患者を対象にこの検査法の精度が検証された。
    しかし、がんの早期発見を目指したスクリーニング検査法としての有効性を検証するためには、がんのない人を対象とした前向き研究を実施する必要がある。

    スクリーニング検査法として実用化するには費用がどの程度になるのかも重要だ。
    研究グループはCancerSEEKを大腸内視鏡検査などの既に普及している検査法にかかる費用と同等あるいはそれ以下に抑える必要があるとの考えを示しており、将来的には1回当たり500ドル未満で実施できるようにすることを想定しているという。

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    HealthDay News 2018年1月18日
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  • 寝る前にTo-Doリストを書き出すと良く眠れる

    意外かもしれないが、翌日やらなくてはならないことのリスト(To-Do リスト)をベッドに入る前に書いておくと、早く眠りにつける可能性が高まることが、米ベイラー大学のグループによる研究から明らかになった。

    詳細は「Journal of Experimental Psychology」1月号に掲載された。

    明日やらなければならないことを考えはじめて眠れなくなるという経験は誰にでもあるだろう。
    今回の研究を率いた同大学睡眠神経科学・認知科学研究所のMichael Scullin氏は「現代社会は年中無休で次々と予定が入る。
    ベッドに入ってからも終わらせることができなかったタスクが頭から離れず不安を感じてしまうことは珍しくない」と話す。

    Scullin氏らによると、不安に思っていることを書き出すと不安が軽減され、眠りにつきやすくなることが、これまでの研究で明らかにされているという。
    そこで同氏らは今回、寝る前にTo-Do リストを書き出す行為によって寝つきの悪さを改善できるかどうかについて検討した。

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    対象は、18~30歳の健康な大学生57人。
    同研究所の研究室に平日の夜に宿泊してもらい、対象者をベッドに入る5分前に(1)数日以内にやらなければならないことを全て書き出す群(To-Do リスト群)と(2)この数日間に成し遂げたことについて日記をつける群(日記群)にランダムに割り付けた。
    平日の夜に実施されたのは、週末は就寝時間が不規則となりやすいことに加え、平日の方が翌日に持ち越されるタスクが多い可能性が高いためだという。

    なお、対象者は全員10時半にベッドに入るよう指導され、電子機器や宿題などの持ち込みは禁止された。

    その夜の睡眠の状態を「睡眠ポリグラフィー」と呼ばれる検査装置を用いて観察した結果、日記群と比べてTo-Do リスト群ではベッドに入ってから入眠までの平均時間が短いことが分かったという。
    Scullin氏は「有望な結果ではあるが、今後より大規模な研究で検証する必要がある」と説明。

    また、今回の研究は若く健康な成人を対象としていたことに触れ、「今回の研究結果が不眠症患者にも当てはまるかどうかは不明だ」としている。

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    HealthDay News 2018年1月16日
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  • 若年期のBMIやや高めで中年期の高血圧リスク上昇 非肥満の多い日本人でも、順天堂大

    たとえ適正体重の範囲内であっても、20歳までに体格指数(BMI)がわずかでも高まると中年期以降に高血圧になりやすい可能性があると、順天堂大学大学院スポートロジーセンターの染谷由希氏らの研究グループが「PLOS ONE」1月11日オンライン版に発表した。

    BMIが23~24の適正範囲内(日本国内ではBMI 25以上を肥満と定義)でも、BMIが20未満の人と比べて中年期に高血圧を発症するリスクは約3倍に高まることが分かった。

    欧米人では20歳までに過体重や肥満になると中年期以降の高血圧発症リスクが上昇することが知られている。
    一方で、日本人を含むアジア人は欧米人と比べて若年期の肥満率は低いが、中年期以降では適正体重でも高血圧発症率が高いことが明らかとなっている。
    日本人では中年期以降のBMI上昇が高血圧のリスク因子と考えられているが、若年期のBMIの違いによる高血圧リスクへの影響は明らかにされていない。
    染谷氏らは今回、同大学の学生を約27年間追跡したコホートデータを用いて、若年期のBMIと中年期以降の高血圧発症リスクとの関連について調査を行った。

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    対象は、同大学体育学部(現スポーツ健康科学部)の卒業生で、順天堂大学同窓生研究(Juntendo University Alumni Study)に参加した男性636人。
    在学中のBMIの記録があり、2007~2011年の追跡調査で回答した者とした。
    対象者を在学中のBMIで6つの群(20未満群、20以上21未満群、21以上22未満群、22以上23未満群、23以上24未満群、24以上群)に分けて追跡調査時の高血圧発症率との関連を調べた。
    なお、高血圧の有無は2007~2011年に行った自記式調査の結果から判定した。

    追跡期間は27年間に及んだ(17万59人年)。
    年齢中央値は在学時が22歳、追跡終了時が49歳であった。追跡期間中に120人が高血圧を発症した。

    解析の結果、BMI区分別(20未満群、20以上21未満群、21以上22未満群、22以上23未満群、23以上24未満群、24以上群)の高血圧発症率はそれぞれ9.4%、14.6%、16.1%、17.5%、30.3%、29.3%であった(傾向P<0.001)。BMI 20未満群を基準値とした各BMI群の高血圧発症ハザード比はそれぞれ1.00(基準値)、1.80(95%信頼区間0.65~4.94)、2.17(同0.83~5.64)、2.29(同0.89~5.92)、3.60(同1.37~9.47)、4.72(同1.78~12.48)であり(傾向P<0.001)、BMIが20未満の群と比べて23以上24未満群、24以上群で高血圧リスクは3~4倍に上った。
    年齢や卒業年、喫煙歴、中年期の運動習慣や食習慣を調整した解析でも同様の結果が得られた。

    若年期に適正体重でもわずかにBMIが高いと中年期に高血圧になりやすい機序について、染谷氏らは、欧米人と比べて日本人の成人はBMIが同じでも体脂肪、特に内臓脂肪量が多いことや、研究グループではこれまで、日本人は太っていなくても筋肉の効きが悪くなるインスリン抵抗性になりやすく、生活習慣病を引き起こしやすい可能性を報告していること(J Clin Endocrinol Metab 2016; 101: 3676-3684)を指摘。

    これらの結果を踏まえて、同氏らは「若年期にたとえ適正体重の範囲内であってもBMIがやや高めの人は、中年期以降の高血圧に気をつける必要がある」と述べている。

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  • 特定保健指導に長期的なメタボ改善効果 2008年度受診者データを後ろ向きに解析、国循グループ

    40歳以上を対象とする特定健診(メタボ健診)で生活習慣病の発症リスクが高いと判定された人のうち、特定保健指導を受けた人は、受けなかった人と比べて3年後のウエスト周囲長やBMI、血圧や脂質などの心血管代謝の指標が有意に改善することが、国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部の中尾葉子氏と宮本恵宏氏(部長)らの研究グループの調査で分かった。

    厚生労働省の集計によると特定健診・特定保健指導ともにその受診率は同省の目標(各70%、45%)には届いておらず、受診率向上に向けたさらなる取り組みが求められる。詳細は「PLOS ONE」1月9日オンライン版に掲載された。

    研究グループは、特定健診・特定保健指導の長期効果を検証するため、2008年度の特定健診受診者1996万9,722人のうち、特定保健指導(保健師や管理栄養士などの面談による生活習慣への介入)の対象とされた40~74歳の成人男女101万9,688人を抽出し、特定保健指導への参加の有無で分けて後ろ向きに追跡し、メタボリック症候群の指標について分析した。

    評価項目は、ウエスト周囲長とBMIの減少、メタボリック症候群に該当しなくなった人の割合、血圧や脂質、血糖などの心血管代謝指標の変化とした。
    解析対象者のうち11万1,779人が特定保健指導を受診し、90万7,909人は受診しなかった。

    解析の結果、3年後にウエスト周囲長とBMIが5%以上減少した人の割合は、特定保健指導を受けた群では受けなかった群と比べて有意に高かった(ウエスト周囲長:21.4%対16.1%、BMI:17.6%対13.6%、それぞれP<0.001)。

    また、特定保健指導を受けた群ではメタボリック症候群に該当しなくなった人の割合も有意に高かったほか(47.0%対41.5%、P<0.001)、血圧と脂質(中性脂肪やHDL-コレステロール)の値が有意に改善した。
    これらの結果は、プロペンシティスコアマッチや操作変数(instrumental variable)法を用いた解析でも同様に確認された。

    以上の結果から、研究グループは、健康への意識が高い人ほど積極的に特定保健指導を受診した可能性を指摘しつつ、「ナショナルデータベース(NDB)を用いた効果検証により、特定健診・特定保健指導により腹部肥満やメタボリック症候群のリスク因子が長期的に改善する可能性が示された」と結論づけている。

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  • 計画分娩とは?自然分娩、無痛分娩、帝王切開でもできる?

    計画分娩について

    お産はいつ始まるかわからないもの。しかし、旦那さんの立ち合いや、上の子の都合、赤ちゃんやお母さんの状態などによっては、「この日に産まれてほしい」という場合もあると思いますが、そんな時に検討したいのが計画分娩です。計画分娩の方法やメリット・デメリットなどをまとめました。
    1. 1.はじめに
    2. 2.計画分娩とは
    3. 3.計画分娩の種類と特徴
    4. 4.計画分娩の流れ
    5. 5.計画分娩の費用
    6. 6.計画分娩のメリット
    7. 7.計画分娩のデメリット
    8. 8.まとめ

    はじめに

    出産には自然分娩や無痛分娩、帝王切開などがありますが、今回は計画分娩について
    メリットやデメリットについて紹介していきます。

    計画分娩とは

    分娩の仕組み
    通常、お産はいつ始まるかわかりません。
    赤ちゃんのほうで出産OKのサインが出ると、お母さんの体内のホルモンバランスが変化します。すると、子宮を収縮させたり、母乳の分泌を促す作用を持つホルモンの分泌量が高まってきます。
    妊婦モードから出産・育児モードへとスイッチが切り替わるのです。
    これが自然な出産の流れです。
    しかし、このスイッチはいつ切り替わるのかは誰にもわかりません。
    出産予定日を決めておきたい
    様々な理由で、出産予定日をあらかじめ決めておきたい妊婦さんもいます。
    そのような場合に、出産日を定めておき、その日に人工的に分娩を行うことができることもあります。
    これが計画分娩です。

    一般的に計画分娩が行われる理由として、

    • 逆子などで帝王切開による出産が決まっている
    • 赤ちゃんやお母さんの状態によって、できるだけ早く妊娠期間を終了させる

    必要がある

    • 無痛分娩を行う
    • 立ち合い出産や、家族のスケジュールの都合

    などがあります。

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    計画分娩の種類と特徴

    計画分娩にはいくつかの種類があります。
    それぞれの特徴を見てみましょう。

    誘発分娩
    子宮口を広げるためにバルーンという器具を挿入します。バルーンは水分を含んで徐々に膨らんでいきます。それによって人工的に子宮口を開かせていくのです。

    そして、陣痛促進剤の点滴や内服を行います。
    陣痛促進剤とは、人工的に作られたホルモンで、子宮収縮を促すオキシトシンやプロスタグランチンという物質です。
    これらのホルモンを体内に入れることによって、人工的に陣痛を起こすのです。

    陣痛が順調についてきて、子宮口も十分に開けば、分娩台に乗って、通常通りの出産が行われます。

    帝王切開
    帝王切開とは、子宮までメスを入れて切開し、そこから赤ちゃんを取り上げる出産方法です。

    帝王切開は手術ですから、一般的な手術と同様に、麻酔を施して行われます。
    陣痛を感じることはありませんが、経膣分娩と比較すると産後の回復は時間がかかります。

    無痛分娩
    産院によっては、自然に陣痛がついてから無痛分娩が行える施設もあります。
    しかし、麻酔処置を行える医師が限られる場合、分娩日時をあらかじめ決めておき、その日に無痛分娩を行うことになります。

    計画分娩の流れ

    計画分娩を行うことを決めた場合、どのような流れで分娩が行われるのでしょう?
    一般的な計画分娩の流れを説明します。

    1.出産予定日を決める
    まずは、赤ちゃんやお母さんの状態を見ながら、計画分娩が可能かどうかの判断を行う必要があります。
    はれて計画分娩を行うことになった場合、出産日を決定します。

    お母さんや家族の都合だけでなく、産院側の受け入れ状況も考慮して決定されます。

    2.出産方法を決める
    出産方法については、ほとんどの場合に医師が決定します。
    基本的に、帝王切開は医師の判断によらない限り行うことができません。
    例えば、逆子や多胎妊娠、赤ちゃんやお母さんの状態に問題がある場合などです。

    ですから無痛分娩や誘発分娩の中から決定するのが通常です。
    無痛分娩を実施している施設はまだまだ限られています。お母さんの持病などといった身体的な都合によらない場合、誘発分娩が選択されるのが一般的となっています。

    3.入院する
    いよいよ出産日が近くなると、分娩に向けた準備が始まります。

    通常、予定日前日に入院し、母子の状態をモニタリングします。
    異常がない場合、出産方法に応じた前処置が行われます。

    4.分娩のための準備を行う
    入院中に、分娩方法に応じた前処置を行います。

    • 誘発分娩ならば、バルーンの挿入や陣痛促進剤の使用開始
    • 帝王切開ならば絶食、浣腸、剃毛などの処置
    • 無痛分娩の場合は麻酔の注入

    産院によって細部は異なりますが、一般的にはこのような処置が行われます。

    5.出産する
    出産準備がすべて整ったら、いよいよ出産です。
    医師や助産師の指示に従いながら、赤ちゃんとの対面を待ちましょう。

    ちなみに、帝王切開や無痛分娩では局所麻酔を使用します。意識を保ったままでの出産になりますから、赤ちゃんの産声を聞くことが可能です。

    計画分娩の費用

    出産は基本的に健康保険の提要になりません。
    よって産院によって費用には幅があります。

    中でも重要になってくるのが「計画分娩の理由」です。

    理由によって異なる
    計画分娩を行う場合、その理由によって費用は大きく異なってきます。

    例えば、逆子やお母さんの持病、赤ちゃんの状態などによって「やむなく」計画分娩が行われる場合です。これは妊娠・出産時の異常と認められますから、健康保険が適用されます。
    保険が適用されることによって、出産にかかる費用も抑えられますし、個人で加入している医療保険から保険金が支払われることもあります。

    一方、家族のスケジュールの都合など、「個人的な事情」による計画分娩は異常ではありませんから、処置などにかかる費用は全額自己負担となります。
    通常の出産費用に加えて数万~数十万円が必要になってきます。

    費用は行われる処置や産院によって異なりますから、事前に確認が必要です。

    計画分娩のメリット

    計画分娩には多くの利点があります。
    計画分娩の持つメリットを紹介しましょう。

    スケジュールが立てやすい
    計画分娩の最大のメリットは、なんといっても出産日が決定していることです。
    特に、上のお子さんの世話や行事、旦那さんの立ち合いなどの都合がある場合には、出産日があらかじめ決まっていることは大きな利点といえるでしょう。

    出産への準備ができる
    出産の具体的なスケジュールや方法があらかじめわかっていると、出産に向けた準備がスムーズに行えます。

    必要となるものの用意やファミリーサポートなどの手配から、ゴミ出しや冷蔵庫の中身まで。細部まで準備を終えてから出産に臨むことができます。

    お母さんと赤ちゃんの安全のため
    これは、医学的な理由から計画分娩が行われる場合のお話です。

    中には、切迫早産や進行性の病気などで、ぎりぎり妊娠生活を送っている人もいます。
    例えば切迫早産の場合、赤ちゃんがお腹の外に出てきても生きていける状態に育つまで、ひたすら点滴や安静の日々が続きます。

    また、お母さんが進行性の病気や慢性疾患を抱えている場合も、できるだけ早くお母さんの治療を行う必要があります。しかし妊娠中にできる治療は非常に限られます。

    赤ちゃんがNICUなどの環境下であれば生きていける程度に成長するのを待って、速やかに出産に臨むことは、赤ちゃんやお母さんの命を守ることになります。

    このような理由のために計画分娩が行われることも非常に多いのです。

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    計画分娩のデメリット

    メリットの裏にはデメリットも存在します。
    計画分娩とは、自然の摂理に沿った出産ではありません。
    どのようなデメリットがあるのかも知っておく必要があります。

    陣痛促進剤のデメリット
    誘発分娩で陣痛促進剤を使用する場合です。

    陣痛促進剤の量が多すぎたり、強く効きすぎたりすると「過強陣痛」になるリスクがあります。
    過強陣痛とは、文字通り陣痛が強すぎる状態のことです。
    過強陣痛によって、お母さんへの痛みが強くなるだけでなく、子宮の収縮が強くなりすぎることから赤ちゃんに危険が及ぶ可能性もあります。

    陣痛促進剤の正しい知識を持つ医師のもとで、適切な管理下において使用される分にはほとんど心配はないでしょう。

    麻酔のリスク
    無痛分娩や帝王切開に関するリスクです。

    ごくまれなことですが、麻酔の成分に対してアレルギーを持つ人が存在しています。
    アレルギー症状が激しく出てしまうと、母体はショック状態になりお母さんだけでなく赤ちゃんにも生命の危機が訪れる危険性があります。

    事前に麻酔アレルギーの検査が可能ですから、念のため検査を行っておくと安心です。

    赤ちゃんの発育状態が十分でない場合もある
    当初の出産予定日よりも早めて計画分娩を行う場合、赤ちゃんの発育が十分でないこともあります。

    原則的には医師が問題ないと判断しての分娩になりますが、出産後の一定期間は赤ちゃんがNICUなどで過ごす場合もあります。

    計画分娩ができない場合もある
    意外と盲点になってしまいますが、計画分娩を予定していても、状況によっては行えなくなることもあります。

    例えば、

    • 計画分娩予定日よりも早くにお産が始まってしまった
    • お母さんや赤ちゃんの状態が変化してしまい、その日の分娩が出来なくなった
    • 個人的な理由では計画分娩を受け付けてもらえない

    などがあります。

    まとめ

    妊娠中は健康であってもなにが起こるかは誰にもわかりません。

    計画分娩はメリットが大きい面もありますが、当然リスクやデメリットも存在しています。
    事前に医師や家族と十分に話し合ってから検討しましょう。

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  • 帝王切開とは?手術の方法や術後の注意点を詳しく説明します

    帝王切開について

    帝王切開での出産件数は、近年増加傾向にあります。帝王切開はどのような場合に選択されるのでしょう?

    帝王切開にはどのようなリスクがあるのか。帝王切開におけるメリットとは何か?そんな帝王切開に関する疑問にお答えします。

    1. 1.帝王切開とは
    2. 2.帝王切開の条件
    3. 3.帝王切開の方法
    4. 4.帝王切開に伴う痛みや傷跡
    5. 5.帝王切開のリスク
    6. 6.帝王切開のメリット
    7. 7.まとめ

    帝王切開と聞くとなんだか痛かったり怖いとマイナスのイメージをお持ちの方もいるとは思います。
    そこで今回は帝王切開について方法や痛み、リスクやメリットなどについて紹介します。

    帝王切開とは

    帝王切開とは、子宮にメスを入れて切開し、赤ちゃんを取り出す出産方法のことを言います。
    帝王切開とはどうして行われる必要があるのでしょうか?

    帝王切開は緊急的な出産方法
    妊娠や出産は病気ではありません。生物としてごく当たり前の自然の摂理に基づいた行為です。
    自然分娩とは経膣分娩のことを指し、子宮から直接赤ちゃんを取り出す帝王切開は、生物としてはイレギュラーな出産方法ととらえることができます。

    しかし、帝王切開は赤ちゃんにとってはもっとも負担が少ない出産方法であるといえるのです。

    赤ちゃんは、お母さんの産道を通過する過程で、何度も体勢を変えながらゆっくり時間をかけて産まれてきます。
    それは小さな赤ちゃんにとってはとても負担大きいことなのです。

    しかし帝王切開によって直接子宮から出られるこで、赤ちゃんに負担はかかりません。
    さらに、陣痛やいきみなどでお母さんに危険を及ぼすリスクを避けることができます。

    帝王切開は、赤ちゃんとお母さんを守るための緊急的な出産方法なのです。

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    帝王切開の条件

    では、帝王切開が選択されるケースにはどのような場合があるのでしょう?
    妊娠高血圧症や心疾患などの持病がある
    妊娠前からの持病や妊娠中のトラブルなどで、血圧が高い状態のお母さんや、心臓に疾患を抱えているお母さんは、自然分娩でいきむ行為は大変なリスクを伴います。

    いきむ行為は心臓や血管に大きな負担をかけ、大量出血や心筋梗塞などを招く危険と隣り合わせにあるからです。

    このような場合、いきむことのない帝王切開が選択されることになります。

    双子などの多胎妊娠
    双子だからと言っても、厳密には普通分娩が不可能というわけではありません。
    しかしお産の時間が長引く傾向にあり、母子ともに状態が悪化するリスクが存在しています。

    お母さんの状態が悪くなるということは、赤ちゃんの命に直結します。

    そのようなリスクを避けるために、安全なお産を確保する目的で帝王切開が選択される傾向が強くなっています。

    逆子
    通常、赤ちゃんは頭を下にした逆立ちのような体勢でお母さんのお腹のなかにいます。
    ところが、逆子の赤ちゃんでは、その体勢が逆で、頭が上で足が下になっています。

    赤ちゃんは頭が一番大きく、出産時には頭が一番先にお母さんの産道から出てくるようになっています。
    すると、手足やも関節の動きに逆らわずにスムーズに出てこられるようになるのです。

    しかし、逆子の場合、足から先に産道を通ることになります。
    すると途中で関節や頭が引っ掛かり、赤ちゃんはそれ以上進むことができなくなってしまうのです。
    最悪の場合、お母さんも赤ちゃんも命の危険を伴うのが逆子の状態です。

    そんなリスクを避けるためにも、逆子がなおらない場合は帝王切開での出産が選択されます。

    骨盤が狭い
    お母さんの骨盤が狭い場合、赤ちゃんは骨盤を通り抜けることができません。

    無理に普通分娩を行おうとすると赤ちゃんに危険が及ぶ可能性が高まります。そのような場合も帝王切開を選択して、安全なお産となるように配慮します。
    太りすぎ
    妊娠中にお母さんが体重を増やしすぎてしまった場合や、もともとが肥満傾向のある場合です。
    産道にも脂肪がついてしまっているため、赤ちゃんが通れるだけの広さが有りません。

    このような場合、一度は通常分娩を試みはするものの、赤ちゃんがなかなか先に進むことができずに緊急で帝王切開に切り替えることがみられます。

    子宮にメスを入れたことがある
    過去の出産で帝王切開だった、子宮の手術の経験がある。
    このように、過去に子宮を切開した経験のある人も帝王切開を選択するのが一般的です。

    一度切開した場所は、どうしても他の部分と比べると組織が弱くなっています。
    無理にいきんだりすると子宮損傷の危険があるためです。

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    切迫早産
    切迫早産とは、赤ちゃんがぎりぎりお腹の中にとどまっている状態です。
    お腹から出ても、保育器などの環境があれば生存できる週数になるまで成長するのを待ってから、帝王切開での出産に踏み切ります。

    これは、例えばお母さんに進行性の持病があって、妊娠期間をできるだけ短縮したい場合などにも行われる措置です。
    へその緒が絡まっている
    赤ちゃんの首などにへその緒が絡まっている場合、通常分娩を行うと、絡まっている箇所が締め付けられてしまいます。

    すると血流や呼吸が阻害されるため、赤ちゃんの命に危険が及んでしまうのです。
    エコーなどでへその緒が絡んでいることが確認された場合、安全のために帝王切開が選択されるのが一般的です。

    前置胎盤
    胎盤は、通常では子宮の上の方に作られます。
    しかし、子宮口を塞ぐような形で胎盤が作られてしまうことを前置胎盤と呼びます。

    子宮口が塞がれてしまうため、物理的に経膣分娩が不可能となります。

    胎盤早期剥離
    赤ちゃんが産まれる前に、胎盤が子宮から剥がれてきてしまうことを胎盤早期剥離といいます。

    胎盤の機能が維持できなくなっているので、緊急で帝王切開による出産を行う必要があります。

    破水後、長時間が経過した
    破水から長時間たっても赤ちゃんが産まれて来ない場合、羊水の量が減ってしまうなどの理由で赤ちゃんの状態が悪くなってしまいます。
    赤ちゃんの命を守るために緊急で帝王切開が行われます。

    赤ちゃんの心拍が落ちた
    難産や分娩中のトラブルなどで、赤ちゃんの心拍が落ちる場合があります。心拍が落ちるということは、血流が悪くなっている証拠です。脳などに障害がおこる危険も考えられます。

    一時的に心拍が落ちることはそれほど珍しいことではありませんが、状態が改善されない場合は帝王切開に踏み切ります。

    帝王切開の方法

    帝王切開というと、とにかくお腹を切って赤ちゃんを取り上げる方法だということは想像がつきますが、詳しいやり方についてはわからない部分も多いところです。

    帝王切開時に使用される麻酔や切開方法について解説します。

    麻酔の方法
    通常、帝王切開では意識を保つことのできる局所麻酔が選択されます。
    ですから、赤ちゃんの産声を聞くことができますし、産まれたての赤ちゃんと対面することができます。
    局所麻酔では赤ちゃんに麻酔成分が及ぶことはほぼありませんから、安全な麻酔方法と言えます。

    一方、あまり頻度は高くありませんが、全身麻酔で帝王切開をしなければならない場合も存在します。
    それは一刻を争うような危険な状態になった時です。

    全身麻酔は局所麻酔よりも効果が現れるのが速いため、局所麻酔の効果を待っていられないような場合に選択されます。
    全身麻酔では意識もなくなるため、気が付いたころには出産が終了しています。

    切開の方法
    帝王切開では、皮膚・筋肉・腹膜・子宮の4層を切開していきます。
    切開の仕方は2種類あり、緊急度などによって使い分けられることになります。

    1:皮膚を横に切る場合

    • 皮膚と筋肉を横切り
    • 腹膜を縦切り
    • 子宮を横切り

    と、横と縦を組み合わせて行います。
    メリットは術後の傷跡が目立ちにくいことで、デメリットは時間がかかることです。

    2:皮膚を縦に切る場合

    • 皮膚筋肉腹膜を一気に縦切り
    • 子宮を横切り

    この方法のメリットは、短時間で赤ちゃんを取り上げることができることです。緊急度が高い場合に選択されます。
    皮膚の横切りに比べると、傷跡が目立ちやすいというデメリットがあります。

    帝王切開に伴う痛みや傷跡

    帝王切開は立派な手術ですから、痛みや傷跡についても気になりますよね。
    術中や術後の痛み、傷跡についてまとめました。

    術中の痛みは?
    帝王切開では麻酔を使用しますから、術中の痛みを感じることはありません。ただし、局所麻酔で腰から麻酔薬を入れる場合、麻酔注入時に痛みを感じることがあります。

    全身麻酔は点滴などから注入されますから、麻酔処置時の痛みを感じることはありません。

    産後の痛みは?
    これは普通の手術と同じです。

    術後も痛み止めを使用してもらえますが、やはり経膣分娩と比べると数日間は痛みに耐える日々が続くでしょう。

    腹筋を切っていますから、体勢を変える、咳、笑う、排せつなど、ほぼすべての動作に痛みが伴います。
    帝王切開は産んでからが辛いと言われる理由はここにあるのです。

    傷跡は残る?
    縦切りと横切りを比較すると、縦切りのほうが傷跡が目立ちやすくなります。
    体質には個人差がありますが、数年するとほとんど目立たなくなっている場合が多いようです。
    ただし傷跡が残りやすい人やケロイド体質の人は、傷跡が残ってしまう事もあります。

    とは言っても、ほとんどのお母さんが「名誉の傷」と肯定的にとらえているようです。

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    帝王切開のリスク

    お産にリスクはつきものです。

    特に帝王切開は手術ですから、帝王切開ならではのリスクも存在しています。
    代表的なものを見てみましょう。

    大量出血や輸血
    体を切るという行為ですから、当然出血が起こります。
    その場合、大量出血やそれに伴う輸血のリスクがあります。

    ほとんど起こることはありませんが、輸血による感染やアレルギー症状によるショック状態が起こるリスクはゼロではありません。

    麻酔に対するアレルギー
    ごくまれに、麻酔成分に対してアレルギーを持つ人がいます。そのような場合、急激なアレルギー反応によって血圧の急低下や呼吸困難などのショック症状を起こすことがあります。

    麻酔のリスクで一番危険度が高いのが、このアレルギー症状なのです。
    術後の臓器の癒着
    現代では、早期離床が積極的に行われています。術後で痛みがあるからと、いつまでもベッドで安静にしていると回復がかえって遅れてしまうためです。

    例えば、帝王切開で切った場所が不自然にくっついてしまったり、子宮と筋肉などが癒着してしまったりする可能性があります。

    そのため、痛みをコントロールしながら、術後2日目から徐々に体を動かしていくことになります。

    腸閉塞
    赤ちゃんを子宮から取り上げる際、腸の位置がずれてしまいます。医師はとりあえず腸をお腹の中に戻して傷口を縫合します。

    腸が自然な位置に戻れないと、腸閉塞を起こすこともあります。ガスが出たかの確認が行われるのはこのためなのです。

    感染症や腹膜炎
    傷口の衛生状態が良くないと、そこから細菌などに感染して炎症などを起こしやすくなります。
    炎症がひどくなると腹膜炎を起こすこともあり、最悪、命の危険を伴います。

    ほとんどみられることはありませんが、お母さんの免疫力の状態などによっては起こることがあります。

    妊娠に関する制限
    一人目を帝王切開で出産した場合、二人目もほぼ必然的に帝王切開が選択されます。
    このように何度も子宮を切っていると、子宮破裂の危険が高まります。

    そのため、次の妊娠までには最低でも1年以上は間を開けることや、個人差はありますが、出産回数はおよそ3回が限界などといった制限が設けられます。

    帝王切開のメリット

    大変なことばかりのように思える帝王切開ですが、メリットも存在しています。
    帝王切開のメリットとはどんな点なのでしょうか?

    出産時のリスクを最小限に抑える
    帝王切開は、普通分娩にリスクが伴う場合に選択される方法です。
    もしかしたら危険な状態になるかもしれないことが予想されるとき、そのリスクを最小限にするのが帝王切開による出産なのです。

    これだけでも大きなメリットになるのではないでしょうか。
    健康保険が適用になる
    妊娠や出産は病気ではありません。そのため、通常は健康保険の対象とはなりません。

    ところが帝王切開は出産時の異常とみなされるため、健康保険が適用されます。

    つまり費用面での負担が軽く済むのです。
    また、契約している医療保険や生命保険からも保険金の支給対象となります。
    帝王切開での出産になったことで、お産の費用が「黒字」になることも珍しくありません。

    母子の安全を最優先にした出産方法
    パパやママ、祖父母や兄弟といった家族、医師も看護師も助産師も、全ての人が母子ともに安全にお産ができますようにと心から願っています。

    確かに帝王切開は術後の痛みや次の妊娠の制限など、デメリットも多くあります。
    しかし、一番大切なのは赤ちゃんもお母さんも無事健康な状態でお産を終えることです。

    お母さんと赤ちゃんの安全を最優先にした選択が帝王切開なのです。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか、帝王切開でのリスクやメリットなどお分りいただけましたでしょうか?
    しっかりと理解しご自身と赤ちゃんの健康を考え、リスクなどを考慮した上で帝王切開を選択しましょう。

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