• 早朝の家庭SBP最大値は糖尿病腎症の予測因子か 京都府立医大

    2型糖尿病患者において、早朝に家庭で測定した収縮期血圧(SBP)の最大値は、合併症の一つである糖尿病腎症の予測因子になり得ることが、京都府立医科大学大学院内分泌・代謝内科学の岡村拓郎氏と牛込恵美氏、福井道明氏らの検討で分かった。一方、家庭で測定した拡張期血圧(DBP)と診察室で測定した血圧との関連は見られなかったという。詳細は「Journal of Diabetes Investigation」3月18日オンライン版に掲載された。

     糖尿病腎症は、治療せずに放置すると末期腎不全(ESRD)に進展し、透析治療につながる可能性があり、早期発見、早期治療が重要とされる。高血圧は糖尿病腎症のリスク因子でもあり、これまでの研究から、家庭で測定したSBP最大値は、糖尿病腎症を含む合併症の発症と関連する可能性が示唆されているが、これらの関連は明らかになっていなかった。岡村氏らは今回、糖尿病患者における家庭血圧コホート研究(KAMOGAWA-HBP study)データを用いて、家庭SBP最大値が腎症の指標となり得るのか否かについて検討した。

     対象は、同研究に参加した正常アルブミン尿の2型糖尿病患者477人。対象患者の平均年齢は63.7歳、うち男性が225人であり、約半数は降圧薬を服用していた。対象患者を前向きに2年間追跡し、尿中アルブミン排泄量30mg/g以上と定義した糖尿病腎症の発症への家庭血圧最大値の影響について調べた。なお、対象患者には、連続した14日間にわたり1分以上の間隔で朝と夕方にそれぞれ3回ずつ家庭血圧を測定してもらった。

     対象患者のうち67人が糖尿病腎症を発症した。多変量ロジスティック回帰分析の結果、年齢や性、喫煙習慣、糖尿病罹病期間、BMIといったさまざまな因子で調整しても、早朝の家庭SBP最大値は糖尿病腎症の発症と有意に関連することが明らかになった(オッズ比1.21、95%信頼区間1.03~1.42、P=0.021)。一方、家庭DBP値と診察室で測定した血圧値は、糖尿病腎症の発症と関連しないことも分かった。

     さらに、早朝の家庭SBP最大値と糖尿病腎症との関連は、65歳未満の患者群では認められたものの、65歳を超える患者群では認められなかったという。

     これらの結果を踏まえ、岡村氏らは「家庭血圧の最大値は一目瞭然で、正常アルブミン尿を呈する糖尿病患者の診療に当たる医療者にとって、糖尿病腎症の有用な指標になり得ると考えられる」と述べている。

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    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年4月1日
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  • 長時間労働で中年男性の心筋梗塞リスク増 JPHC研究

    日本人の中年男性は、1日11時間以上の長時間労働をすると心筋梗塞の発症リスクが高まる可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究で示された。一方で、長時間労働と脳卒中の発症との間に関連はみられなかったという。研究の詳細は「Circulation Journal」3月6日オンライン版に掲載された。

    これまでの研究で、長時間労働は心身ともに健康状態に悪影響を及ぼし、心血管疾患の発症や死亡リスクの上昇と関連することが報告されている。しかし、日本人を対象とした研究は限られていた。研究グループは今回、JPHC研究に参加した40~59歳の男性約1万5,000人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、労働時間と心筋梗塞および脳卒中の発症との関連を検討した。

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    研究では、ベースラインとした1993年に全国5地域に在住した40~59歳の男性1万5,277人を対象に、2012年まで中央値で20年間前向きに追跡した。研究開始時および10年後に実施したアンケート結果の労働時間から、参加者を1日の労働時間で4つのグループ〔7時間未満、7時間以上9時間未満(基準)、9時間以上11時間未満、11時間以上〕に分けて、急性心筋梗塞および脳卒中の発症リスクを評価した。

    追跡期間中に212人が急性心筋梗塞を発症し、745人が脳卒中を発症した。年齢やBMI、心血管リスク因子、職業で調整した解析の結果、1日の労働時間が「7時間以上9時間未満」だった群と比べて、「11時間以上」だった群では急性心筋梗塞の発症リスクが1.63倍であることが分かった(P<0.05)。一方で、脳卒中の発症リスクについては、全体でも病型別でも関連は認められなかった。

    また、労働者の中でも会社勤めをする人では、長時間労働により急性心筋梗塞リスクは2.11倍に上ったが、会社経営者や自営業の人ではこうした関連はみられなかった。さらに、追跡を開始した時点で50~59歳だった人では、長時間労働によりこのリスクは2.6倍に上ることも明らかになった(それぞれP<0.05)。

    これらの結果について、研究グループは、先行研究と同様に、長時間労働による睡眠時間の短縮や疲労回復が不十分であることのほか、精神的ストレスの増加が一因ではないかと推測している。

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    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先リンク先2
    HealthDay News 2019年3月25日
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  • 高齢者の慢性疾患併存は年間介護給付費の増大と関連 筑波大ほか

    日本人の後期高齢者は慢性疾患の併存度合いが高いほど、年間医療費だけでなく介護給付費も増大することが、筑波大学ヘルスサービス開発研究センター准教授の森隆浩氏らの検討で明らかになった。こうした高齢者では医療費と介護給付費の合計も高額になるという。研究の詳細は「BMC Geriatrics」3月7日オンライン版に掲載された。

    2016年度の年間の国民医療費は42.1兆円を超え、年間の介護給付金は10兆円近くにも上り、今後ますます増大すると予想されている。高齢者は複数の慢性疾患を抱えやすいが、これまで高齢者の多疾患併存と介護給付費、あるいは医療費および介護給付費の合計との関連を調べた研究はほとんどなかった。そこで、森氏らは今回、東京大学、東京都健康長寿医療センターと共同で、千葉県柏市の後期高齢者の医療レセプトと介護レセプトのデータを用いて、高齢者における多疾患併存と年間医療費および介護給付費の関連について調べた。

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    この研究は、千葉県柏市における後期高齢者の医療レセプトおよび介護レセプトから2012年4月~2013年9月のデータを用いたもの。両者のデータを匿名化した上で突き合わせ、介護レセプトに含まれていない疾患情報を把握し、分析を行った。対象は、医療保険サービスを1回以上使用し、かつ12カ月以上の追跡ができた75歳以上の高齢者3万42人であった。

    多疾患併存の指標には、2011年に改訂されたCharlson Comorbidity Index(CCI)値を用いて評価し、参加者をCCI値(0、1、2、3、4、5以上)で分類した。なお、改訂版のCCIには、慢性合併症を伴う糖尿病、心不全、腎疾患、肝疾患、慢性肺疾患、リウマチ疾患、認知症、片麻痺または対麻痺、悪性腫瘍、AIDS/HIVが含まれていた。

    その結果、12カ月間の医療費および介護給付費の合計は、平均で108.6万円であった。分析の結果、CCI値が1高いごとに平均年間医療費は15.7万円、平均年間介護給付費は12万円、両者の合計は27.1万円と有意に高く(いずれもP<0.001)、多疾患併存の度合いが高いほど医療費だけでなく介護給付費も高額であることが分かった。一方、要介護度が同じ範囲内であれば、CCI値と介護給付費の関連は認められなかった。

    これらの結果について、森氏らは「複数の慢性疾患を抱える高齢者は、もともと介護の必要性が高い傾向にある。今回の結果でもCCI値が高いほど要支援・要介護状態となる割合も高いという結果が得られており、要介護度が上昇するに伴い利用限度額も増えるため、結果として介護給付費が増えたのではないか」と考察している。その上で、同氏らは「高齢者の多疾患併存による経済的影響を評価するには、医療費とともに介護給付費も考慮する必要がある」と付け加えている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2019年3月25日
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