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9月 19 2019 糖尿病患者のHbA1c変動性が、がん発症リスクと関連する ――聖路加国際病院グループ
外来受診時のHbA1cの変動性が、糖尿病患者のがん発症リスクと関連するとする研究結果を、聖路加国際病院内科の小林大輝氏らのグループが報告した。研究の詳細は「Cancer Journal」7月号に掲載された。
糖尿病患者のがん発症リスクが非糖尿病者よりも高いことが近年注目されている。例えばわが国における多目的コホート研究(JPHC Study)からは、糖尿病と診断されたことのある人が何らかのがんを罹患するリスクは、男性では1.27 倍(95%信頼区間:1.14-1.42)、女性では1.21倍(95%CI:0.99-1.47)と報告されている。しかし、糖尿病における血糖コントロールの変動性が発がんに与える影響はあまり検討されておらず、小林氏らはこの点に着目し後ろ向きコホート研究を行った。
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お近くの治験情報を全国から検索できます。対象は50歳以上の糖尿病患者2,640人。血糖変動性は、外来受診時に測定されていたすべてのHbA1c値から各個人の標準偏差(SD-HbA1c)を算出し、それを尺度として評価した。SD-HbA1cを四分位に分け、Cox回帰モデルにて、がん発症との関連を検討した。
追跡期間中(中央値4.1年)に330人(12.5%)ががんを発症した。SD-HbA1cの第1四分位(最も血糖変動性が少ない群)と比較し、血糖変動性がより大きい群ではがん発症が多く、用量依存的な関連がみられた。具体的には、第2四分位のオッズ比が1.20(95%CI:0.88-1.65)、第3四分位で1.43(95%CI:1.02-2.00)、第4四分位2.19(95%CI:1.52-3.17)だった。一方で、HbA1cの平均値や糖尿病罹病期間は、がんの発症と有意な関連が認められなかった。補正する共変量を変更してもこれらの結果は一貫していた。
以上から、外来受診時のHbA1cの変動性が、その後のがん発症の潜在的な危険因子であることが示された。この結果について小林氏らは、「酸化ストレスまたはホルモンの変動が関与しているのではないか」と考察。また「血糖コントロールが不安定な糖尿病患者には、日常的ながんスクリーニング検査が必要かもしれない」と述べている。
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9月 19 2019 腸内細菌が漏れ出すことによる動脈硬化進行を便秘薬が抑制 動物実験で効果を確認、横浜市大
動脈硬化の進展に腸内細菌の漏出が関与しており、腸管バリア機能を強化する新規便秘薬がその経路を抑制する可能性が、横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の石上友章氏、荒川健太郎氏らによる研究で示された。詳細は「PLOS ONE」に6月17日掲載された。
血清脂質や血圧、血糖の管理が徹底されるようになり、動脈硬化の発症・進展は抑制されてきてはいるが、その効果は十分とは言えず、日本を含む先進国において、いまだ動脈硬化性疾患が死亡原因の上位に位置する。このため、動脈硬化の進展には、既知のリスクとは異なる「残余リスク」と呼ばれる機序の存在が想定されており、その探索が続けられている。
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お近くの治験情報を全国から検索できます。残余リスクの一つとして近年、腸内細菌の関与が注目されている。例えば石上氏らは、不適切な食生活により腸内細菌が体内に取り込まれ、脾臓からIgG/IgG3という抗体が分泌されることで動脈硬化が促進されることを報告してきた。
今回、同氏らの研究グループは、動脈硬化を易発症するApoEノックアウトマウスに対し、高カロリー・高脂肪食を15週間与えた後、クロライド・チャネル活性化薬「ルビプロストン」を投与し、動脈硬化の進展の程度を検討した。ルビプロストンは腸上皮に作用する比較的新しい便秘薬で、腸管バリア機能の低下を防ぐことが知られている。ルビプロストン投与群とは別に、他の機序による便秘薬(センノシド、マグネシウム)を投与する群を比較対照とした。
投与開始から10週後、ルビプロストンを投与した群は投与しなかった群に比べて、動脈硬化の進展が約60%有意に抑制されていた。他の2剤では有意な動脈硬化抑制は観察されなかった。また、IgGはルビプロストン投与群で有意に抑制され、IgG3はルビプロストン投与群とマグネシウム投与群で有意に抑制されていた。
以上より同氏は「動脈硬化の進展には、腸内細菌の血中への移行を制御する、腸管粘膜のバリア機能の障害が関係しており、ルビプロストンがその病態を修正し、抗動脈硬化作用を発揮する可能性が明らかになった。今後はヒトを対象にした研究により、動脈硬化の根治につながる治療法の開発を目指していきたい」と語っている。
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9月 19 2019 血清ビタミンD値は2型糖尿病リスクと逆相関する 日本人でのコホート内症例対照研究:日立健康研究
日本人において血清ビタミンD値が2型糖尿病のリスクに関連することが、国立国際医療研究センター疫学・予防研究部のアクターシャミマ氏らと日立健康管理センタの中川徹氏らの共同研究で明らかになった。研究の詳細は「Clinical Nutrition」5月21日オンライン版に掲載された。
糖尿病に対するビタミンDの予防的作用を示唆する報告が増えているが、アジア人を対象とした疫学研究は少ない。アクター氏らは、健康診断受診者を5年間追跡したコホート内症例対照研究により、日本人の血清25-ヒドロキシビタミンD3(25 [OH] D3)と2型糖尿病罹患との関連を検討した。
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お近くの治験情報を全国から検索できます。研究対象は日立健康管理センタにおいて2008年度に健康診断を受け、血液保管に同意した従業員4,754人(ベースライン時の年齢34~69歳)。糖尿病の罹患は、追跡期間中に受けた健康診断の血糖値、HbA1c、および糖尿病治療の自己申告に基づいて把握した。
各糖尿病症例について、糖尿病に罹患しなかった人から性、年齢、健診受診日(日照時間の差異によるビタミンD値への影響を除外するため)をマッチさせて2名の対照を選んだ。血中ビタミンDを測定できた症例336名と対照668名について、2型糖尿病リスクとの関連を条件付きロジスティック回帰で分析した。
BMIを除く既知の危険因子で調整したモデルで、血清25(OH)D3値が高いほど2型糖尿病リスクが低下する傾向が認められた(最高四分位に対する最低四分位のオッズ比0.58,95%信頼区間=0.36-0.92,傾向性P=0.03)。この関連は、BMIを調整に加えることでやや弱まった(OR=0.65,95%CI=0.40-1.08,傾向性P=0.08)。
こうした血中ビタミンDと2型糖尿病リスクとの逆相関は、日照量が比較的少ない季節(11月から4月)に健康診断を受けた人において、より顕著にみられた(OR=0.45,傾向性P=0.01)。また前糖尿病状態から糖尿病に進展するリスクを調べたところ、25(OH)D3が最も高い群は最も低い群に比べて約37%低下していた。
研究を統括した国際医療研究センターの溝上哲也氏は「日常生活で日光を浴びる機会が減っている現代、ビタミンD不足は蔓延している。体内のビタミンDを充足させる生活習慣が大切ではないか」と述べている。
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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。