• 疾患によって地域ごとに異なる医療需給バランス予測――医療計画の新たな視点

    患者数と医師数の変化を地域・疾患別に予測した研究から、今後、医師数の地域格差は縮小に向かうものの、疾患によっては不均衡な状態があまり改善されない可能性が示された。北海道大学大学院保健科学研究院社会医療情報学研究室の小笠原克彦氏、医療経済研究機構の石川智基氏らによる研究で、詳細は「BioMed Central Health Services Research」9月9日オンライン版に掲載された。

     医療需給バランスの予測は国全体または県単位で示されることが多く、かつ疾患別に推計した報告は限られており、各地域の実態に即した医療計画の基礎データとして利用するには限界がある。特に北海道は面積が最大で人口密度が最も低く、医師の約半数が札幌などの都市部に集中し医療の不均衡が顕著であり、正確な需給予測が必要とされる。

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     今回の研究は、北海道全体および道内に21ある二次医療圏別に、2015年、2025年、2035年の患者数・医師数の推移を予測。かつ全疾患の合計以外に、急性心筋梗塞と脳卒中の患者数および専門医数の推移を個別に推計している。地域格差については所得分布の不平等性指標であるジニ係数を応用し、経時的な変化を考察した。なお推計において、現在の医療提供体制や医療技術、受療動向が継続することを仮定とし、根拠となるデータは国勢調査の他、国立社会保障・人口問題研究所、日本脳神経外科学会、日本循環器学会などが公開している入手可能なものを用いた。

     まず北海道全体での予測を見ると、患者1人あたりの医師数は2015年の0.0321から2025年は0.0252、2035年は0.0247へと減少。2035年には道内の多くの地域で40対1の医師配置基準(患者1人あたり医師数0.025)を下回る病院が出てくる可能性が示された。

     この変化を疾患別に見ると、脳卒中や急性心筋梗塞の患者数は2025年まで増加が見込まれるのに対し、専門医の医師数は一貫して減少。脳卒中患者1人あたりの脳神経外科専門医は2035年までに40.8%減少、急性心筋梗塞患者1人あたりの心血管専門医は32.9%減少し、全疾患の平均(23.1%減)より大きく減ることが予測された。

     次に、二次医療圏別の需給バランスの格差をジニ係数の推移で見ると、2015年の約0.13から2035年の約0.07へと低下し、格差が縮小すると予測された。なお、ジニ係数は0から1の間で変動し、0に近いほど格差が少ないと評価される。

     続いてジニ係数の変化を疾患別にみると、脳卒中は2015年時点で約0.26と前述の全疾患平均の約2倍であり、2035年でも約0.16と他の疾患に比べて格差の解消が遅れることが予測された。急性心筋梗塞も同様に2015年時点で約0.20と高く、2035年でも約0.11と平均より高いと予測された。この他にも本研究からは、都市部への患者の集中が徐々に進行していくという変化が予測された。

     以上の結果から著者らは、「政策立案者は人口ベースの需給指標の代わりに、疾患ごと地域ごとに立てられた医療需給予測を指標とすべきであることが示唆される」とまとめるとともに、急性期医療の地域格差を解消する手段として、ドクターカーやドクターヘリなどのより積極的な導入を提案している。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年9月30日
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  • 特定健診結果からみた被保険者の健康状態――健保連調査

    健康保険組合連合会(健保連)は9月18日、平成29年度の特定健診受診者のデータを解析した調査結果を公開した。特定健診受診者の健康状態を、年齢層、肥満の有無などの背景別に考察している。

     解析の対象となったのは464組合の特定健診受診者(40~74歳)で、計401万3,265人。このうち、特定健診における肥満の判定基準(内臓脂肪面積100cm2以上、BMI25以上、腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上のいずれか)に該当したのは37.3%で、どの年齢層でも3~4割を占めていた。

     血圧は基準範囲内(収縮期血圧130mmHg未満、かつ拡張期血圧85mmHg未満)が66.7%、保健指導判定値(収縮期血圧130mmHg以上140mmHg未満、または拡張期血圧85mmHg以上90mmHg未満)が16.0%、受診勧奨判定値(収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上)が17.4%だった。なお、受診勧奨判定値の該当者の中には、収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上の者が4.2%存在した。

     血清脂質は基準範囲内(LDL-C120mg/dL未満、かつTG150mg/dL未満、かつHDL-C40mg/dL以上)が39.3%、保健指導判定値(LDL-C120mg/dL以上140mg/dL未満、またはTG150mg/dL以上300mg/dL未満、またはHDL-C35mg/dL以上40mg/dL未満)が29.9%、受診勧奨判定値(LDL-C140mg/dL以上、またはTG300mg/dL以上、またはHDL-C35mg/dL未満)が30.8%だった。なお、受診勧奨判定値の該当者の中には、LDL-C180mg/dL以上またはTG1,000mg/dL以上の者が4.4%存在した。

     血糖は基準範囲内(空腹時血糖100mg/dL未満、非空腹時採血ではHbA1c5.6%未満)が68.7%、保健指導判定値(空腹時血糖100 mg/dL以上126mg/dL未満、HbA1c5.6%以上6.5%未満)が26.3%、受診勧奨判定値(空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上)が5.1%だった。なお、保健指導判定値の該当者の中には、空腹時血糖110mg/dL以上126mg/dL未満(HbA1c6.0%以上6.5%未満)であり、境界域と考えられる者が7.4%存在した。

     肝機能は基準範囲内(AST31U/L未満、かつALT31U/L未満、かつγ-GT51U/L未満)が68.9%、保健指導判定値(AST31U/L以上51U/L未満、またはALT31U/L以上51U/L未満、またはγ-GT51U/L以上101U/L未満)が20.3%、受診勧奨判定値(AST51U/L以上、またはALT51U/L以上、またはγ-GT101U/L以上)が10.8%だった。

     対象を肥満の有無で分けると、肥満者の77.9%が保健指導判定値以上のリスクを1つ以上保有していた。保有しているリスクの数で分けると、リスク1つのみが36.8%、リスク2つが30.3%、リスク3つが10.9%だった。一方、非肥満者でリスクを有する者の割合は44.2%で、リスク1つが31.0%、リスク2つが11.3%、リスク3つが1.9%だった。

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年9月24日
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  • 肥満と腸内細菌の関係に新知見――ポイントは「食用油の代謝」

    近年、さまざまな疾患領域で腸内細菌の関与がトピックとなっているが、肥満との関連において新たな知見が発表された。ポイントは我々が摂取する食用油に含まれる多価不飽和脂肪酸。腸内細菌が多価不飽和脂肪酸を他の脂肪酸に変換する過程で、宿主のエネルギー代謝を調節しており、その能力次第で肥満が改善または悪化するという。東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学代謝機能制御学の木村郁夫氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に9月5日オンライン掲載された。

     食生活の欧米化とともに、サラダ油などに含まれるオメガ6系多価不飽和脂肪酸の摂取量が増える一方で、魚類に含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸の摂取量は減少している。また高脂肪食は、高脂肪であること自体が代謝性疾患のリスクであると同時に、腸内細菌叢のバランスを変化させて肥満や代謝性疾患を誘発する可能性がある。しかしこれまでの研究では、多価不飽和脂肪酸が腸内細菌によって代謝される過程で生じる新たな脂肪酸の影響は明らかでなかった。

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     木村氏らは、通常食で飼育したマウスと高脂肪食で飼育したマウスの腸内細菌叢を解析するとともに、多価不飽和脂肪酸の腸内細菌代謝物を定量的に解析した。その結果、高脂肪食飼育マウスの腸内では善玉とされる乳酸菌が有意に減少していること、および、リノール酸(オメガ6系多価不飽和脂肪酸の一種)の腸内細菌代謝産物である水酸化脂肪酸(HYA)が有意に減少していることを確認した。この結果は、高脂肪食によって腸内細菌叢のバランスが乱れるだけでなく、腸内細菌の代謝産物にまで影響が及ぶことを意味している。

     また、高脂肪食にリノール酸を添加して飼育したマウスは脂肪組織に炎症が誘発されたが、HYAを添加し飼育したマウスは炎症所見が少なく体重増加も有意に抑制された。さらに、腸内HYA濃度が通常食マウスと同等になるように調節して飼育したマウスでは、体重抑制作用のある腸管ホルモンGLP-1の分泌が亢進した。これらの結果、腸内細菌による多価不飽和脂肪酸の代謝産物であるHYAが、肥満および肥満に伴う組織の炎症を抑制することが示唆される。なお、HYA産生能のある乳酸菌を腸内に定着させたマウスでも同様の代謝改善効果が認められた。

     以上一連の結果から、腸内細菌叢は食事中に含まれている多価不飽和脂肪酸の代謝を制御しており、高脂肪食によって誘発される肥満や炎症に関与していることがわかった。著者らは、「肥満や代謝性疾患に対する新たな治療法につながる知見であり、今後の研究と応用が期待される」と述べている。

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2019年9月24日
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