• 糖尿病患者の服薬順守影響因子が明らかに――HbA1c7%未満達成とも関連

    社会保険レセプトデータを3年間にわたり観察し、2型糖尿病患者の服薬順守状況と、順守に影響する因子を解析した結果が報告された。年齢が50代、3剤以上の併用薬があることなどが良好な順守率に影響し、それらが血糖管理状態とも関係していることが明らかになった。北里大学薬学部臨床薬学研究・教育センター・薬物治療学1の堀井剛史氏らの研究で、詳細は「PLOS ONE」に10月8日掲載された。

     解析対象は、2005年5月~2013年1月までを観察期間として、血糖降下薬が処方されており、3年以上記録を観察可能な18~74歳の2型糖尿病患者884人。観察開始時の主な患者背景は、年齢47.0±8.1歳、男性の割合が90.2%、BMI26.5±4.7kg/m2、HbA1c7.9±2.0%など。

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     レセプトデータを基に、対象患者が定期的に内服している薬を処方されている日数が観察期間の8割以上を占めた場合に「アドヒアランス良好」と定義したところ、440人(49.8%)が該当した。また、アドヒアランスが良好な群は不良の群に比べて、観察開始時の併用薬の数が多い、男性の割合が少ない、平均年齢が高いという因子で有意な差があったが、BMIやHbA1cに有意差はなかった。血糖降下薬の種類では、DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の処方率がアドヒアランス良好群で有意に高かった。

     3年間での対象者の平均受診回数は24.1±16.0回だった。受診回数とアドヒアランスの関係をROC解析で検討した結果、3年間の受診回数17回が、アドヒアランス良好におけるカットオフ値として算出された(AUC:0.86)。

     この「受診回数が3年間で17回」という条件と前述の患者背景の中から、良好なアドヒアランスに影響する因子をロジスティック回帰分析で検討すると、併用薬が3剤以上(1~2剤を基準として3~4剤のオッズ比1.68、ポリファーマシーに該当する5剤以上で2.74)、年齢50~59歳(40歳未満を基準としてオッズ比2.15)、3年間で17回以上の受診(オッズ比29.9)が有意な因子として抽出された。一方、男性は女性に比べオッズ比0.45(P=0.022)で、アドヒアランス不良に関連していた。

     続いて研究グループは、3年間の観察終了時点の血糖コントロール状況を検討。HbA1cは平均7.2±1.4%に低下し、対象の52.3%が一般的なコントロール目標とされるHbA1c7%未満を達成していた。観察終了時点のHbA1c7%未満の達成に関連する因子として、服薬アドヒアランスが良好、年齢50~60歳、スルホニル尿素薬の使用などが抽出された。

     血糖降下薬の服薬状況に関するこれまでの研究の多くは観察期間が短期間な研究がほとんどだったが、本研究は3年間であり、長期にわたる糖尿病治療の実態を表すものとして注目される。著者らは、解析対象が被雇用者であるために高齢者や女性が少ないことを本研究の限界として挙げつつ、「ポリファーマシーや定期的な受診がより良好な服薬順守と関連していることがわかり、目標HbA1cの到達に対するアドヒアランスの影響も明らかになった」と結論している。また「女性やより若い患者など、さらに幅広い患者層を含めた大規模なコホート研究を予定している」という。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2019年10月28日
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  • 人工神経で脳の障害部位をバイパスして手に接続――脳卒中後遺症に光

    本来は手の動きを司らない脳部位と手の筋肉を人工神経接続システムでつなぎ、麻痺した手を動かせるようにする技術が開発された。公益財団法人東京都医学総合研究所の西村幸男氏らによる研究の成果によるもので、詳細は「Nature Communications」に10月16日オンライン掲載された。

    西村氏らが開発した人工神経接続システムは、脳の神経細胞と似た役割をするコンピューターを用いて、脳に近い側の神経細胞の情報を受け取り(入力)、その情報を末梢側の神経細胞へと伝える仕組み。脳表面の複数の領域からの電気信号を記録し、記録された信号から特定の脳活動を見つけ出して、脳活動パターンを検出。その脳活動パターンを電気刺激に変換し、筋肉へ伝えることができる。

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    今回の研究では、脳梗塞を発症したモデル動物を作成。上下肢の片麻痺のある状態で、神経経路が損傷している部位を人工神経接続システムによってバイパスし接続させた。すると、システムを使い始めてからおよそ10分で、麻痺した上肢(手)を自分の意思で動かすことができるようになった。

    さらに、顔や肩の運動を司る脳領域から人工神経接続システムに入力しても、手の運動をコントロールできた。また、もともとは運動機能を持たずに感覚機能を担う体性感覚野という領域に接続しても同様に、手を動かすことができた。これは、脳のどの領域であっても運動野手領域として、新たな役割を担わすことができることを意味する。

    このほか、このような変化の過程において、人工神経接続システムへの入力の源になる大脳皮質の脳活動は、麻痺した手の運動が上達するのにあわせて手の運動を司る脳領域が小さく集中するような適応が起こることも観察された。西村氏らは脊髄損傷モデル動物を用いた以前の研究で、人工神経接続システムの有効性を確認しているが、今回の研究では脳自体を損傷した脳梗塞モデル動物でもこのシステムが神経経路の代わりになることが示された。

    今回の研究の成果について同氏は、「コンピューターと脳とを融合させる医工学によって新たな治療の可能性が開かれた」とし、「今後は、長期にわたる人工神経接続システムで脳損傷・脊髄損傷から免れた神経のつながりを強化し、人工神経接続システムがなくても身体を自分の意思で動かせるように回復できるかどうかを検証する必要がある」と述べている。

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    HealthDay News 2019年10月28日
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  • 脳内の神経ネットワークで空腹が「最高の調味料」に?

    生きていくために欠かせない本能的な行動の中でも最たるものが、摂食――食事をとること。摂食行動は「味覚」によって支えられていて、栄養が豊富な食物はおいしいと感じ、有害な食物はまずいと感じる。しかも味覚は時と場合によって変化し、特に空腹時と満腹時の差が大きい。

    このような味覚の変化はヒトに限らず動物や昆虫にも認められる。そのメカニズムはよくわかっていなかったが、AgRP神経という神経細胞を起点とするネットワークが調節していることが報告された。大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所の中島健一朗氏の研究によるもので、詳細は「Nature Communications」10月8日オンライン版に掲載された。

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    研究グループではまず、味のついた液体をマウスが何回舐めるかというリックテストと呼ばれる実験を、マウスが通常環境にいる時と絶食させた時に実施。その結果、通常なら舐める回数が減る甘味の薄い液体でも絶食中の空腹時には回数があまり減らないこと、および、通常ならあまり舐めない苦味のある液体でも空腹時にはよく舐めることを確認した。

    次に、神経細胞の活動を光刺激でコントロールするオプトジェネティクスと呼ばれる手法を用いて脳内のAgRP神経を刺激し、満腹のマウスが脳の中では空腹を感じる状態にしたところ、実際に空腹である時と同様に味覚が変化することがわかった。さらに、この変化は外側視床下部という部分につながっているAgRP神経を刺激したときにだけ起こることもわかった。なお、AgRPはアグーチ関連ペプチドの略で、脳内の視床下部弓状核という部位に存在する神経はAgRPを有し食欲を高めるように働く。

    研究グループは上記のほか、AgRP神経の下流にあたる外側視床下部の神経が脳内のさまざまな部位と接続していることに注目し検討を続けた。その結果、不安中枢を抑制すると、空腹時同様に甘味の薄い液体でも舐める回数があまり減らないこと、しかし苦味への反応は変化しないことがわかった。また、嫌悪に関する応答部位を抑制すると、苦味のある液体でも舐める回数があまり減らないものの、甘味への反応は変化しないこともわかった。これらの結果、甘味と苦味は脳の中で別々の経路をたどり情報伝達されていることが明らかになった。

    これらの結果を踏まえ、中島氏は「空腹時の味覚の変化は、視床下部AgRP神経を起点とした神経ネットワークにより調節されることがわかった。この味覚調節システムの元来の役割は、飢餓が身近な野生環境において、糖など栄養価の高い食物を普段以上に好むように嗜好を変化させ、多少悪くなった食物でも妥協して食べるようにすることと思われる」と述べ、「この神経ネットワークが不安・嫌悪などの感情に関わる脳部位の活動を制御することから、空腹や満腹により味の感じ方が変化する現象の神経基盤であると考えられる」とまとめている。

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    HealthDay News 2019年10月21日
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