• 寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連――睡眠中は暗い方が良い?

    夜間の寝室の照明が明るいほど動脈硬化が進行する可能性が報告された。肥満や糖尿病などの既知の動脈硬化危険因子の影響を調整しても、なお有意な関連が認められるという。奈良県立医科大学疫学・予防医学講座の大林賢史氏らの研究によるもので、詳細は「Environment International」10月21日オンライン版に掲載された。

     ヒトは昼と夜が24時間周期で繰り返される環境で進化してきた結果、「概日リズム」という生理機能が備わっている。そのため、夜の不適切な明るさは「光害」として概日リズムを乱す可能性があり、これまでにも夜勤労働者で肥満や高血圧、糖尿病のリスクが高いことが報告されている。今回発表された論文は、夜間の寝室の明るさと動脈硬化の進行の関連を、縦断的に研究したものだ。

    動脈硬化に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     前向きコホート研究「平城京スタディ」に登録されている60歳以上の地域住民を追跡調査し(観察期間中央値34カ月)、動脈硬化の指標である頸動脈IMT(首の動脈の血管壁の厚さ)を測定した。睡眠時の寝室の明るさのほか、動脈硬化の進行に関係する因子として、BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況なども評価した。

     分析対象者数は989人で平均年齢71.4±6.9歳、男性が47.2%、観察開始時の頸動脈IMTは、平均IMTが0.88±0.15mm、最大IMTが1.10±0.32mm。照度計で測定した寝室の明るさにより対象者を4群に分け、観察期間中に頸動脈IMTが厚くなる程度に差があるかを比較検討した。寝室の明るさは、最も暗い第1四分位群が平均0ルクス、第2四分位群は0.3ルクス、第3四分位群は1.6ルクス、最も明るい第4四分位群は9.3ルクスだった。

     BMI、喫煙・飲酒習慣、糖尿病、高血圧、経済状況などを調整した多変量解析で、夜間の寝室が明るい群で有意に頸動脈の平均IMTが厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.028、P=0.019)。同様に最大IMTも厚くなることがわかった(第4四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.083、P<0.001。第3四分位群対第1四分位群:回帰係数=0.046、P=0.048)。

     以上の結果から大林氏らは「夜間の寝室の明るさが動脈硬化の進行と関連していることが示された。この関連は、年齢や肥満、喫煙、高血圧、糖尿病など、既知の動脈硬化危険因子とは独立していた」と結論をまとめている。

     今回の研究では、夜間の寝室の明るさが最も暗い群と最も明るい群で、頸動脈最大IMTの進行に0.083mmの差が見られた。先行研究の結果から、この差は心筋梗塞を10.0%、脳梗塞を11.6%増加させる差に相当すると著者らは述べている。

     また、夜間の寝室の明るさが動脈硬化を進行させる機序について、著者らは、概日リズムが乱れることにより、血管内皮機能の低下が生じること、交感神経活性が亢進すること、血管拡張作用のあるメラトニンの分泌が低下することなどが関与している可能性を考察している。

     なお、数名の著者が、住宅・建材関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

    慢性心不全のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年11月11日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 糖尿病でなくてもHbA1cが高いと痛みに鈍くなる

    糖尿病性神経障害は糖尿病の合併症だが、糖尿病ではなく血糖値が少し高いくらいであってもリスクになることが、日本人対象の研究で明らかになった。弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学講座の水上浩哉氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」10月2日オンライン版に掲載された。

     糖尿病で最も早期に発症し頻度も高い合併症が、糖尿病性神経障害。進行すると、足や手に激しいしびれや痛みを生じたり、反対に痛みに鈍くなって潰瘍や下肢切断のリスクとなったりする。神経障害は血糖コントロールの指標であるHbA1cが高いほど起こりやすいが、糖尿病の診断基準には至らない程度のHbA1c上昇と神経障害発症の関係は、これまで明らかでなかった。

    糖尿病に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     水上氏らは、青森県で2007年から実施されている「岩木健康増進プロジェクト」のうち2017年度登録者から糖尿病患者を除いた地域住民を対象に、HbA1cと足の疼痛閾値との関連を横断的に調査した。調査対象のうち894人が正常血糖、55人が空腹時血糖異常(IFG)に該当。正常血糖者はHbA1cにより、5.4%未満(低HbA1c群)、5.4~5.8%(中HbA1c群)、5.8%~6.4%(高HbA1c群)の3グループに群分けした。疼痛閾値は、足の短趾伸筋から流す電流を徐々に弱めていき、被験者が刺激を感じとれる最低強度で評価した。

     疼痛閾値を性・年齢別に検討すると、男性は平均0.15±0.01mAで年齢による差はなく、女性は0.14±0.01mAで50~60代はやや高かった。男女合計の平均は0.15±0.01 mAで、全体の95パーセンタイル値は0.16 mAであることから、0. 20 mA以上は痛覚の異常と見なされた。

     HbA1cレベル別に痛覚閾値を見ると、低HbA1c群0.13±0.01mA、中HbA1c群0.14±0.01mA、高HbA1c群0.18±0.01mA、IFG群0.20±0.03mAで、高HbA1c群とIFG群は他の2群に比べて有意に高く(P<0.01)、痛覚の低下が認められた。IFG群の35.3%は痛覚の異常に該当した。

     痛覚閾値の上昇と関連する因子として単回帰分析では、HbA1cのほかに年齢やBMI、高血圧、空腹時血糖、アキレス腱反射などが抽出されたが、重回帰分析ではHbA1cのみが有意な因子として残った(β=0.0784)。また、HbA1cが5.8%を上回る場合、痛覚閾値上昇の調整オッズ比が2.01であり、有意に高リスクとなることもわかった。なお、自覚症状に関しては、HbA1cレベルによる違いはみられなかった。

     以上より研究グループは、「HbA1cが正常域で自覚症状のない一般集団であっても正常高値HbA1cは痛覚閾値の上昇と有意に関連している。因果関係の確認には縦断調査が必要だが、HbA1cが基準値内でも高値の人は将来的な糖尿病性神経障害発症リスクが高いと考えられる」と結論づけている。

    糖尿病のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年11月5日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。
  • 少量飲酒の影響は脂肪肝の有無で異なる

    少量の飲酒は体に良いと言われるが、脂肪肝の有無でその影響が異なる可能性を示す研究結果が「Biomedical Reports」11月号に掲載された。男性において脂肪肝がある人では少量の飲酒に良い面がある一方で、脂肪肝のない人では高血圧のリスクが高くなるかもしれないという。

     市立福知山市民病院消化器内科の原祐氏らは、定期健康診断の受診者データを基に、少量の飲酒習慣の影響を脂肪肝の有無別に検討した。対象者は2017年1年間の男性の健診受診者2,096人から、酒類を1日にアルコール換算で20g以上摂取している人や肝炎患者などを除いた1,190人。このうち505人(42.4%)が非飲酒者、685人(57.6%)が少量飲酒者で、腹部超音波検査により561人(47.1%)が脂肪肝と判定された。

    脂肪肝に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
    郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。

     まず、非飲酒者と少量飲酒者を単純に比較すると、年齢やBMI、喫煙者率、高血圧の有病率、尿酸値、AST・ALT(肝機能の指標)などは有意差がなかった。脂質異常症やIGT(糖尿病予備群)、脂肪肝、CKD(慢性腎臓病)、MetS(メタボリックシンドローム)の有病率、HbA1c(糖尿病の指標)、Fib-4(肝臓線維化の指標)、および蛋白尿を有する割合などは、少量飲酒群が有意に低かった。定期的な運動習慣のある人の割合は少量飲酒群が有意に高かった。

     次に、脂肪肝の有無別に非飲酒者と少量飲酒者を比較検討。すると、脂肪肝のない群では飲酒習慣の違いによる年齢やBMIに有意差はないものの、高血圧の有病率は、非飲酒者26.6%、少量飲酒者が35.3%で、少量飲酒者の方が有意に高かった。

     一方、脂肪肝のある群では、脂質異常症、MetS、IGTの有病率は少量飲酒者の方が低く、群間に有意差があった。CKDの有病率も有意でないが少量飲酒者の方が低かった。年齢やBMIに関しては飲酒習慣の違いによる有意差はなかった。

     年齢、定期的な運動習慣、喫煙、使用中の薬剤で調整しオッズ比(OR)を見ると、脂肪肝のない群において少量飲酒者の高血圧のORは1.73(95%信頼区間1.04~2.88)だった。脂肪肝のある群の少量飲酒者においては、脂質異常症0.64(0.44~0.95)、MetS0.63(0.44~0.92)、IGT0.57(0.37~0.88)、CKD0.58(0.36~0.94)だった。

     これらの結果を踏まえ原氏らは、「脂肪肝の有無により少量飲酒の影響が異なることが示された。脂肪肝のない人では少量飲酒で高血圧のリスクが上昇し、脂肪肝のある人ではMets関連因子の有病率を低下させる可能性がある」と結んでいる。なお、脂肪肝のある群で少量飲酒がMets関連因子に好影響を及ぼす機序については、「脂肪肝はMetsの肝臓における表現型であり、実際に本検討でもMets有病率は脂肪肝のある群で高かった」という事実に着目し、有病率が高いために少量飲酒によって生ずるアディポネクチンレベルの上昇などの良い面が、脂肪肝のない群よりある群でより明確に表れた可能性があるとしている。

    治験に関する詳しい解説はこちら

    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年11月5日
    Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
    SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
    病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
    記載記事の無断転用は禁じます。