• エリスロポエチン低値は貧血の2型糖尿病患者の腎機能低下に先行

    貧血を伴う2型糖尿病患者では、エリスロポエチン(EPO)レベルが低いことが、その後の腎機能の低下に関与していることがわかった。糖尿病性腎症を発症していない段階でもEPO低値が将来の腎機能低下に関連し、特に正常上限値(23.7IU/L)を下回る場合に腎機能低下が急速に進むという。大阪大学大学院医学系研究科腎疾患臓器連関制御学の濱野高行氏らの研究によるもので、「Scientific Reports」10月16日オンライン版に掲載された。

     EPOは赤血球の産生を促進する造血因子で主に腎臓で作られるホルモン。貧血状態では代償的にその分泌が増えて赤血球数を増やすように働く。糖尿病患者のEPOレベルは糖尿病がない人よりも低いことが報告されている。一方、貧血も糖尿病患者によく見られ、腎症や網膜症、心疾患などの糖尿病合併症に影響を及ぼすことが知られている。ただしEPO値と腎機能との関連は明らかでない。このような背景から濱野氏らは、貧血を伴う外来2型糖尿病患者290人を2年間前向きに追跡し、EPOレベルと腎機能(eGFR)低下との関連を検討した。

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     ベースライン時の主な患者背景は、年齢71歳(中央値)、男性61%、BMI23.5、HbA1c6.9%、eGFR53mL/分/1.73m2。ヘモグロビン(Hb)の中央値が11.8g/dLと大半が軽度の貧血を有する群であるにもかかわらず、EPOの中央値は14.4IU/Lと低値だった。EPO14.4IU/Lを基準に低EPO群と高EPO群に分け比較すると、低EPO群は年齢が若くてBMIが低く、群間に有意差が見られた。

     EPOレベルが基準値上限の23.7IU/Lを下回る場合を、貧血患者を対象とする本検討における「相対的なEPO欠乏」と定義すると、全体の73.1%が該当した。また体内の鉄貯蔵量のマーカーである血清フェリチンが50ng/dL以下の場合を「鉄欠乏」と定義すると44.1%が該当した。この結果をCKDの病期別に検討すると、病期進行に伴い相対的なEPO欠乏を呈する患者の割合が増加し(傾向性P=0.02)、鉄欠乏患者の割合は減少することがわかった(傾向性P<0.01)。またCKDでない患者でも58.7%が相対的なEPO欠乏だった。

     EPOレベルと腎機能低下との関連について、まず対象全体のeGFR低下速度を見ると、1年につき-1.3mL/分/1.73m2(中央値)であることがわかった。これを前述の低EPO群と高EPO群とで比較すると、前者は-1.7 mL/分/1.73m2、後者は-0.8 mL/分/1.73m2であり、低EPO群では腎機能の低下が有意に速いことが見いだされた(P=0.02)。またEPOが23.7IU/Lを下回る場合、eGFRが特に急速に低下することが示された。

     ベースライン時の対数変換EPO(logEPO)とeGFR低下速度との関係を検討すると、両者に有意な関連が認められた(β=0.83、P=0.04)。この関連は、年齢や性別、eGFR、尿アルブミン/クレアチニン比、Hb、血圧、HbA1c、RAS阻害薬の使用、ビタミンD、FGF23、L-FABPなど、腎機能に関連する因子で調整してもなお有意だった(β=0.93、P=0.04)。またlogEPOは鉄欠乏との間でのみ交互作用があり(P=0.01)、他の因子との関連は見られなかった。

     これらの結果を踏まえ著者らは「低EPOレベルは貧血を有する2型糖尿病患者の腎機能低下を予測する。これはCKDのない場合においても同様であり、貧血のある2型糖尿病患者のEPOレベルを積極的に評価すべき」と結論をまとめている。なお、最近登場したEPOレベルの上昇作用をもつ低酸素誘導因子(HIF)安定化薬については、「投与により腎転帰が改善するか否か今後の検討が必要」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2019年11月18日
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  • 新婚男性の勃起の硬さ不足は、精液の質の低下と関連

    「陰茎は大きくなるが硬くない」「硬いが挿入に十分でない」といった、勃起の硬さや困難さを表す症状がある場合、精液の‘質’が低下している可能性があることが報告された。日本人の新婚男性を対象とした順天堂大学浦安病院泌尿器科の辻村晃氏らの研究によるもので、詳細は「Sexual Medicine」10月24日オンライン版に掲載された。多変量解析では、勃起の硬さの不足が精液の質の低下を予測する独立因子として示されたという。

     近年、日本を含む先進諸国では出生率の低下が問題となっている。出生率の低下の原因の1つとして男性不妊が考えられるが、新婚男性の精液の質に関する報告は少ない。そこで辻村氏らは、結婚直前・直後に不妊症スクリーニングのため同院やDクリニック東京などの関連施設に受診した男性564人を対象として、精液の質を調査し関連する因子を検討した。対象者の平均年齢は35.5歳、BMI22.7、喫煙者率15.2%で、精巣容積は約20mLだった。

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     精液検査の結果を世界保健機関(WHO)基準に基づいて判定すると、対象の11.0%が精液量1.5mL未満、9.2%が精子濃度1500万/mL未満、10.6%が精子総運動率40%未満であり、これら3つの異常所見のいずれか1つが該当する人は全体の25.4%を占めた。また無精子症も1.8%の頻度で見られた。

     精子に異常所見がある群はない群に比較し、年齢とBMIが有意に高く、精巣容積が有意に小さかった。その他、γ-GTP、空腹時血糖、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンに有意差があり、いずれも精子に異常所見がある群が高かった。なお、男性ホルモンのテストステロン値は有意差がなかった。

     また質問票を用いた評価の結果、勃起機能(SHIM)や勃起の硬さ(EHS)、男性更年期症状(AMS)に群間の有意差があり、異常所見のある群で低評価だった。前立腺症状(IPSS)は有意差がなかった。

     これらの有意差が見られた因子を用いて多変量解析を実施。その結果、年齢、黄体形成ホルモンと並び、EHSで評価した勃起の硬さが、精液の質低下の有意な説明変数として抽出された。EHSスコア4点(陰茎は完全に硬く、硬直している)を基準とすると、0~3点(順に「陰茎は大きくならない」「陰茎は大きくなるが、硬くはない」「陰茎は硬いが挿入に十分なほどではない」「陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない」)では、精液の質低下のオッズ比が1.844(P=0.009)だった。

     以上の結果から研究グループは「挙児を希望する男性においても4分の1の割合で精液所見の異常が見られ、勃起の硬さや困難さというED症状が精液の質低下に関連している」と結論づけている。また、「一般に加齢やテストステロン分泌の減少に伴い男性の生殖能力と勃起能力の双方が低下するが、本検討ではEHSスコアが独立した因子であったことは興味深い」として強調。その背景として、動脈硬化がEDのみならず精子形成不全のリスクだとする報告があることから、血管内皮機能低下と精子の質低下が並行し進行している可能性を考察し、「今後の研究課題としたい」と述べている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2019年11月18日
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  • 一過性蛋白尿で心血管死リスクが上昇、一過性eGFR低下は関連せず

    一過性の蛋白尿が心血管疾患(CVD)による死亡リスクの上昇と関連する一方、一過性の腎機能(eGFR)低下は有意なリスクでないことが、30万人以上の特定健診データを追跡した結果から示された。筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科の永井恵氏、山縣邦弘氏らの研究によるもので、「PLOS ONE」10月2日オンライン版に掲載された。

     持続的な蛋白尿やeGFRの低下が確認された時に診断が確定する慢性腎臓病(CKD)は、腎不全のリスクであるだけでなく、CVDのリスクでもある。実際、CKD患者の死亡原因は、CVDとがんがそれぞれ3割以上を占めている。その一方、一時的に蛋白尿やeGFR低下が見られることも少なくない。しかしその意義は十分にわかっておらず、永井氏、山縣氏らはこの疑問を明らかにするため特定健診のビッグデータを用いて検討を行った。

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     解析対象は、2008~14年の特定健診受診者のうち、尿検査の判定とeGFRの値が2回以上記録されていた33万8,094人。それぞれの検査について、2回とも所見なしの(-/-)群、1回目だけ所見あり一過性の異常と考えられる(+/-)群、2回目に所見が見られた(-/+)群、および2回とも所見がありCKDに該当する(+/+)群の4群に分類。年齢や性別、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などで調整の上、CVDによる死亡、がんによる死亡、および全死亡のリスクを比較した。なお、尿蛋白は尿試験紙で「1+」以上、eGFRは60mL/分/1.73m2未満を所見ありとした。

     各群の該当者数の割合は、尿蛋白での分類では(-/-)群91.8%、(+/-)群2.9%、(-/+)群3.1%、CKD群2.2%。eGFR低下での分類では(-/-)群81.2%、(+/-)群4.3%、(-/+)群4.9%、CKD群9.6%。観察期間4.3年(中央値)中に、CVD死510人(20.6%)、がん死1,328人(53.5%)を含む2,481人の死亡が発生した。

     一過性蛋白尿は、CVD死の有意な増加と関連していた。具体的には、男性において、(-/-)群を基準とした場合、一過性蛋白尿に該当する(+/-)群の調整ハザード比(aHR)が1.94(P<0.01)であった。それに対し、観察期間中に新たに蛋白尿を認めた(-/+)群はaHR1.32で有意でなかった。また女性においても(+/-)群がaHR2.78(P<0.01)、(-/+)群はaHR2.04(P<0.05)で、一過性蛋白尿の方が高リスクだった。CKD群では男性・女性ともにCVDリスクが上昇していた。

     一方、全死亡との関連は、男性・女性ともに(-/+)群とCKD群とで有意なリスク増加が見られた。がん死との関連は、男性のCKD群と女性の(-/+)群で有意なリスク増加が見られた。

     他方、eGFRの低下と死亡リスクの関連で有意な関連が認められたのは女性のCKD群のみで、前記3つの死因と関連していた。男性はeGFRが持続的に45mL/分/1.73m2未満まで低下している場合に全死亡リスクが有意に増加していた。

     今回の研究について研究グループは「尿試験紙により判定した一過性蛋白尿と原因別死亡リスクとの関連を検討した初めての大規模調査だろう」と述べた上で、「一過性蛋白尿は特にCVD死の重要な危険因子と考えられるが、一時的なeGFRの低下と死亡リスクとの関連は弱い」と結論づけている。

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    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

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    HealthDay News 2019年11月11日
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