• 男性では肥満だけでなく、やせ過ぎも長期病休のリスクが高い――国立国際医療研究センター

    肥満とやせの両方が男性労働者の長期病休に関連しているとする日本人対象の研究結果が、「Obesity」1月23日オンライン版に掲載された。国立国際医療研究センターが十数社の企業と共同で行っている「職域多施設研究(J-ECOHスタディ)」のデータを解析したもので、同センター疫学・予防研究部の井上陽介氏らが報告した。

     この研究では、J-ECOHスタディ参加企業の労働者のうち、2011年度に健診を受診した9万7,226人から、20歳未満または60歳以上、心血管疾患やがん、精神疾患の既往者、追跡不能者などを除外した7万7,760人(うち男性が6万6,166人)を最大5年間追跡した。ベースライン時のBMIで、やせ(BMI18.5未満)、標準(同18.5~24.9)、過体重(同25.0~29.9)、肥満(同30.0以上)の4群に分類し、産業医から報告のあった連続30日以上の長期病休の発生率を比較した。

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     BMI区分別の該当者数を見ると、男性は、やせ3.5%、標準体重67.8%、過体重24.0%、肥満4.7%であり、やせと肥満者では喫煙者率が高く、また肥満者では高血圧や糖尿病、脂質異常症が多かった。女性は、同順に15.5%、69.9%、11.0%、3.6%であり、肥満者では喫煙者、高血圧、糖尿病、脂質異常症が多かった。

     2012年4月~2017年3月の追跡期間中に1,686人の男性と377人の女性が長期病休し、1,000人年当たりの発生率は男性5.83、女性7.75だった。

     男性の長期病休発生率を、標準体重群を基準に年齢と喫煙習慣で調整した「モデル1」で比較すると、やせではハザード比(HR)1.56、過体重で同1.22、肥満で同1.81というU字型の関係が認められ、これらのリスク上昇はいずれも有意だった。高血圧、糖尿病、脂質異常症の影響を調整因子に加えた「モデル2」では、過体重での有意性はなくなったが、やせ(HR 1.63)と肥満(同1.47)では引き続き有意なリスク上昇が認められた。

     一方、女性のモデル1では過体重で有意なリスク上昇(同1.54)が認められたが、やせや肥満では有意でなく、過体重もモデル2では有意でなくなった。この理由について研究グループは、女性の解析対象数が少ないことが原因の1つと考察している。

     次に、男性の長期病休の原因疾患を検討すると、モデル1では身体疾患、精神疾患のいずれも、やせ、過体重、肥満で有意なリスク上昇が認められた。さらにモデル2においても、精神疾患による長期病休リスクが過体重で有意でないことを除き全てのBMI区分が、身体疾患および精神疾患による長期病休のリスク上昇と有意に関連していた。なお、事故や外傷による長期病休はBMI区分との関連が認められなかった。

     著者らによると、肥満が病休と関連することは欧米の研究からも示されていたが、日本人に多いやせが病休のリスクか否かはこれまで十分には明らかでなかったという。今回の研究の結果のまとめとして井上氏は、「日本人労働者では肥満とやせの双方が、男性の長期病休のリスクと関連している。今後は肥満や過体重だけでなく、やせに関連する病休リスクにも注意を向ける必要がある」と述べている。

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    HealthDay News 2020年2月10日
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  • 納豆やみその摂取量と死亡率が逆相関――JPHC研究

    発酵性大豆食品を多く食べる人ほど死亡率が低いというデータが報告された。ただし、非発酵性の大豆食品も含めた解析では、関連が有意でないという。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「BMJ」1月29日オンライン版に掲載された。

    今回の研究の対象は、1990年と1993年に全国11カ所の保健所管轄区域に住んでいた40~69歳の成人のうち、がんや循環器疾患の既往がない9万2,915人(うち男性4万2,750人)。大豆製品の摂取量で全体を五分位に分け、2012年まで平均14.8年間追跡した。

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    研究開始から5年後に行った食事調査アンケートの回答から、総大豆食品、発酵性大豆食品(納豆とみそ)、非発酵性大豆食品、および豆腐の摂取量を計算し、総死亡(全死因による死亡)、がん死亡、循環器疾患死亡などとの関連を性別に検討した。解析に際しては、年齢、地域、肥満度、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病・高血圧、健診受診状況、女性の月経の有無・ホルモン剤の使用、食品摂取状況、総エネルギー摂取量を統計的に調整し、影響を取り除いた。

    その結果、総大豆食品摂取量と総死亡リスクの関連については、有意な関連が認められなかった。一方、発酵性大豆食品の摂取量との関連は、男性(傾向性P値0.05)、女性(同0.01)ともに摂取量が多いほど総死亡リスクが低下するという関連が認められた。

    大豆食品の細分類別の検討では、女性において、納豆(同0.001)、および、みそ(同0.03)の摂取量が多いほど総死亡リスクが低い傾向があった。しかし男性では有意な傾向が見られなかった。豆腐に関しては男性、女性ともに有意な傾向が見られなかった。

    次に、死亡原因との関連を見ると、がん死亡リスクに関しては男性、女性ともに大豆製品摂取量と有意な関連が見られなかった。その一方で循環器疾患死亡との関連は、男性において、発酵性大豆食品(納豆とみそ)の摂取量および納豆の摂取量、女性においては納豆の摂取量と有意な関連が認められた。

    具体的には、男性において発酵性大豆食品の摂取量が最も少ない第1五分位群(13.4g/日未満)に比べ、摂取量が最も多い第5五分位群(50.2g/日以上)の循環器疾患死亡のハザード比は0.82で18%リスクが低かった。同様に、納豆を摂取しない群に比べ、摂取量が最も多い群(26.2g/日以上)のハザード比は0.76で24%リスクが低かった。女性では、納豆を摂取しない群に比べ、摂取量が最も多い群のハザード比は0.79だった。

    総大豆食品摂取量は死亡リスクとの関連が見られず、発酵性大豆食品の摂取量との関連は有意という結果について、研究グループでは「発酵性大豆食品は加工の過程で、大豆に含まれている成分の消失が少ないことが理由の1つではないか」と考察している。

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    HealthDay News 2020年2月3日
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  • 体重と生活習慣の変化が非アルコール性脂肪肝の発症や改善に影響

    生活習慣の改善または悪化と、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症または寛解が有意に関連することがわかった。禁煙や体重の増加でNAFLDの発症が増え、減量および男性では運動を始めることで寛解が増えるという。名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科の吉岡直輝氏、石上雅敏氏らの縦断研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」1月16日オンライン版に掲載された。

     NAFLDはいわゆる「脂肪肝」のうち、アルコール摂取はない、あるいは障害を起こすほどの量ではない人の肝臓に脂肪が蓄積する病気で、メタボリックシンドロームの影響が肝臓に現れている状態と考えられている。進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症し、肝がんのリスクが高まる。国内では近年ウイルス性肝炎が減っているのに対し、NAFLDやNASHの増加が問題になっている。

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     今回の研究の対象は、名古屋第一赤十字病院で2009~18年に健診を2回以上受けた3,121人のうち、ウイルス性肝炎やアルコール性肝疾患患者を除外した1,421人。主な背景は、初回健診時年齢53.0±11.9歳、男性50.0%、脂肪肝指数(FLI)30以上30.4%で、NAFLDの割合は34.1%だった。なお、喫煙者(全体の15.6%)や就寝前2時間以内に夕食を食べる人(21.5%)ではNAFLDが有意に多く、運動習慣のある人(23.1%)では有意に少なかった。

     追跡期間(4.6±2.8年)中に、ベースライン時はNAFLDでなかった人の11.1%がNAFLDを発症し(年率2.4%/年)、NAFLDだった人の26.2%に寛解が見られた(同5.7%/年)。

     NAFLD発症と関連する因子として多変量解析により、男性(調整オッズ比2.07)、追跡期間(同1.11)、脂質異常症(同2.39)とともに、喫煙者の禁煙(同2.86)が抽出された。

     NAFLD寛解と関連する因子は、追跡期間(同1.12)と減量(同2.83)だった。性別に解析した場合は男性において、運動を開始すること(同2.38)も寛解と有意に関連していた。

     次に、体重の変化量との関連を見ると、追跡期間中の体重増加量が大きいほどNAFLD発症が増え、体重減少量が大きいほど寛解が増えるという有意な関連が認められた。ベースライン時にNAFLDであった人の中で、年率1%/年以上の体重減少を維持できた人の約40%にNAFLDの寛解が見られた。なお、追跡期間中に禁煙した人は、非喫煙者や新たに喫煙を開始した人に比べ、体重が1%/年以上増加した割合が有意に高かった。

     就寝前に食事を取ることはNAFLDと関連の深い生活習慣として知られ、今回の検討でも前述のように、ベースライン時ではNAFLD群で夕食を就寝前2時間以内に食べる人が有意に多かった。ただし、追跡期間中にこの生活習慣が変化した場合でも、その変化はNAFLD発症や寛解と独立し関連する因子ではなかった。

     これらを踏まえ研究グループでは、「体重の変化はNAFLDの発症・寛解の双方と相関している。禁煙は、恐らく体重増加を介してNAFLD発症を増やすと考えられる。一方、運動の開始は男性においてはNAFLD寛解と有意に関連している」と結論をまとめている。

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    HealthDay News 2020年2月3日
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