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6月 04 2020 ネット検索キーワードから見た一般市民と医療者の情報格差
患者や一般市民が情報収集する際にネット検索する言葉と、医療者が常用する医学用語との差異を明らかにした研究結果が、「Journal of Medical Internet Research」4月13日オンライン版に掲載された。
医学・医療情報の入手にインターネットはもはや不可欠。専門家が医療情報をかみ砕いて解説した一般向けサイトも多数存在する。それにも関わらず、一般市民が求める情報と医療専門家が重視する情報の差異について、十分には検討されていない。そこで京都大学大学院医学系研究科人間健康科の平和也氏(研究時点の所属は滋賀医科大学公衆衛生看護学講座)らは、インターネット検索サイトで用いられる単語を解析し、そのギャップを把握することを試みた。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。平氏らの研究は、一般市民が情報収集に用いる検索サイト「Yahoo!検索」および質問サイト「Yahoo!知恵袋」で多用される語句と、医療関係者の臨床報告検索ログに頻出する語句、それぞれ上位100語を選び、その使用頻度の関連を検討するというもの。加えて、医療者はあまり用いないがネットで検索されることが多い語句についての質的検討を行った。
まず、一般市民が「Yahoo!検索」で検索する語句と医療者の使用頻度が高い語句の関連を見ると、弱い有意な相関が認められた(r=0.290、P=0.003)。質的検討からは、糖尿病、高血圧、頭痛、貧血、腹痛、心不全、脳梗塞など、生活習慣病や日本人の死因の上位に入る疾患名は、両者で高頻度に使われていた。その一方、一般市民の検索件数が多く医療者の使用頻度が低い語句として、甲状腺機能異常、潰瘍性大腸炎、黄疸、心房細動、多発性骨髄腫、腎不全などが抽出された。
一般市民が「Yahoo!知恵袋」で調べる語句と医療者の使用頻度が高い語句の関連も、弱い有意な相関が認められた(r=0.337、P=0.001)。質的検討で、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐、貧血、糖尿病、発熱など、主に症状に関連する語句が、両者で高頻度に使われていた。一方、痛み、しびれ、微熱、潰瘍性大腸炎、腎不全などは一般市民が調べる頻度は高いものの、医療者の使用頻度は低かった。
一般市民の「Yahoo!検索」の検索語句と「Yahoo!知恵袋」で使用される語句の間には、中等度の有意な相関が認められた(r=0.569、P<0.001)。頭痛、腰痛、下痢、腹痛、貧血、糖尿病などの語句は両者でよく使用されていた。検索される頻度は高いが質問サイトで使用される頻度は低い語句として、DIC(播種性血管内凝固症候群)、SLE(全身性エリテマトーデス)などが、検索頻度は低いが質問サイトで多用される語句として、痛み、しびれ、徘徊などが抽出された。
一般市民の平均年齢は34.5歳で、女性が54.6%だった。検索ワードを年齢層別に見ると、40~50代では高血圧や異常陰影、60代では胃がん、肺がん、心房細動、間質性肺炎、肺炎球菌などが多く検索されていた。
これらを踏まえ研究グループは、「医療者の使用頻度が高い語句と一般市民が用いる語句には弱い相関しか認められず、医療者の言葉は一般市民が使用する言葉と異なる可能性がある」としている。また一般市民の検索ワード上位に入った、潰瘍性大腸炎や甲状腺機能異常などが医療者間では使用頻度が低かったことに関連して、「これらの慢性疾患患者の情報収集ニーズは高いが、医療者側の優先度は低いようだ」と述べている。その上で「インターネットを通じて医療情報を提供する場合、このようなギャップを埋める配慮が必要」とまとめている。
なお、検索ワードのうちアルファベットのみの語句は、同じ文字列を含む単語(例えばDICとdictionary、SLEとsleep)が検索された影響を除去しきれていないことは本研究の限界であり、解釈に注意が必要という。
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6月 04 2020 1型糖尿病でも“座り過ぎ”は血糖管理不良に関連――日本人対象の横断研究
1型糖尿病であっても“座り過ぎ”は血糖管理不良につながる可能性が、日本人患者を対象とする研究で示された。藍野大学医療保健学部理学療法学科の本田寛人氏らが、「Healthcare」4月22日オンライン版に報告した。
生活習慣が発症や進行に大きく影響する2型糖尿病では、血糖管理に運動療法が重要であり、そのエビデンスも豊富に存在する。しかし、発症機序に生活習慣が関与していない1型糖尿病の血糖管理における運動療法のエビデンスは限られている。これを背景に本田氏らは1型糖尿病患者を対象とする、自記式質問紙により把握した座位時間、運動の行動変容モデル(TTM)ステージと、HbA1cおよびBMIとの関連を検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。研究の対象は、神戸大学医学部附属病院と公立豊岡病院日高医療センターの外来受療中の成人1型糖尿病患者42人。全員が空腹時血清Cペプチド0.2nmol/L未満で、その他の主な患者背景は、男性33.3%、年齢44.0歳、罹病期間11.0年、BMI22.1、HbA1c7.2%、座位時間6.0時間/日で、TTMステージは前熟考期42.9%、熟考期7.1%、準備期14.3%、実行期2.4%、維持期33.3%だった。血管合併症や運動機能障害のある患者は除外した。
まず、HbA1cと有意な関連のある因子を検討。その結果、HbA1cは座位時間が長いほど高く(r=0.60、P<0.01)、高齢であるほど高い(r=0.35、P=0.02)という正の相関が認められた。またBMIは、罹病期間が長いほど高く(r=0.39、P=0.01)、一方、TTMステージとは逆相関した(r=-0.40、P<0.01)。
次に、HbA1cが7%以下の群(16人)と7%を超える群(26人)の2群に分け、群間差を検討。すると、座位時間(4.0対7.3時間/日、P<0.01)とTTM(P=0.04)の2項目に有意差が認められ、年齢や罹病期間、BMIなどの群間差は有意でなかった。HbA1cレベル(7%以下または7%超)を目的変数、BMI、座位時間、TTMを説明変数とするロジスティック回帰分析(年齢および性別で調整)の結果、座位時間のみが有意な因子として抽出された(オッズ比3.53、P<0.01)。
続いて座位時間を基に四分位に分けHbA1cを比較したところ、第1四分位群(座位時間4.6時間/日未満)は第4四分位群(同8.0時間/日以上)に比べHbA1cが15%、有意に低値だった(P<0.01)。
著者らは本研究を「日本人成人1型糖尿病患者を対象とした、座位時間、TTMと血糖管理状態の関連を調査した初めての研究」とし、対象患者数が少ないという限界点を挙げた上で、「1日の座位時間が4.6時間未満であることは、1型糖尿病患者の良好な血糖管理に関連している可能性がある」と結論をまとめている。なお、先行研究から、日本人の平均座位時間は7.0時間/日であり、世界で最も座位時間が長い国の一つと言われている。
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6月 04 2020 受動喫煙でも糖尿病リスクが上昇――JPHC研究
喫煙が糖尿病発症リスクを上昇させることは知られている。しかし本人がタバコを吸わなくても身近に喫煙者がいると、受動喫煙のため糖尿病発症リスクが高くなることが分かった。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」3月30日オンライン版に掲載された。
今回の研究は、1990年と1993年に全国9カ所の保健所管轄区域に住んでいた、タバコを吸わず糖尿病のない40~69歳の女性2万5,391人を対象に行われた。アンケート調査により、同居する配偶者の喫煙状況、および職場や公共スペースでの受動喫煙の頻度を把握し、糖尿病新規発症との関連を検討した。
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郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。配偶者の喫煙状況は、過去にもタバコを吸ったことがない「非喫煙者」が6,569人(25.9%)、以前は吸っていた「過去喫煙者」が6,390人(25.2%)、現在も吸っている「現喫煙者」が1万2,432人(49.0%)だった。配偶者が過去喫煙者である女性は他群よりも高齢で無職の割合が高く、配偶者が現喫煙者である女性は余暇時間に身体活動をしていない割合が高かった。
追跡開始から最初の5年間で334人、次の5年間で374人が新たに糖尿病を発症した。配偶者が非喫煙者の女性に比較して、1日40本以上喫煙する配偶者を持つ女性は、年齢調整後の糖尿病発症オッズ比(OR)が1.40(95%信頼区間1.01~1.95)で、有意に高リスクであることが分かった。
調整因子として年齢のほかに追跡期間、BMI、高血圧、親の糖尿病歴、余暇時間の身体活動、コーヒー・アルコール摂取、居住地域を追加すると、この関連の強さはやや低下したが(OR1.34、95%信頼区間0.96~1.87)、配偶者の喫煙本数が多いほど糖尿病発症リスクが高くなるという有意な傾向が認められた(傾向性P=0.02)。
次に、職場や公共スペースでの受動喫煙の頻度と糖尿病発症リスクの関連を検討した。研究対象全体の解析では、毎日受動喫煙の機会があると回答した女性は、受動喫煙の機会がないと回答した女性に比べ、OR1.16(95%信頼区間0.96~1.40)だった。仕事を持っている女性に解析対象を絞ると、ORは1.23(同0.995~1.53)に上昇した。
研究グループでは、「わが国は男性の喫煙率が女性よりも高く、タバコを吸わない女性であっても家庭で配偶者から受動喫煙の影響を受けている場合のあることが考えられる。家族の健康を守るためにも、ヘビースモーカーの男性は、まず毎日吸うタバコの本数を減らし、その後の禁煙へつなげることが望まれる」と述べている。
なお、受動喫煙で糖尿病発症リスクが上昇するメカニズムについては、「はっきりしたことは分かっていないが、これまでの研究から能動喫煙によりインスリン抵抗性や血糖上昇が誘導されることが示されており、受動喫煙でも同じことが起きていると考えられる」としている。
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