• コーヒー・緑茶をよく飲む中年期女性はBMIが低く血管年齢が若い

     コーヒーや緑茶の摂取量が多い中年期の女性は、BMIや体脂肪率が低く、血管の柔軟性が保たれていることを示す結果が報告された。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの論文が、「Nutrients」5月11日オンライン版に掲載された。

     コーヒーや緑茶の摂取量と心血管疾患のリスクが逆相関することは既に報告されている。一方、女性は更年期以降、動脈硬化の進行が速くなるが、その進行がコーヒーや緑茶の摂取によって抑制されるかどうかは明らかになっていない。そこで寺内氏らは、東京医科歯科大学病院の更年期外来を受診した患者のデータを用い、以下の横断研究を行った。

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     対象者は、40~65歳の更年期症状のある女性232人(平均年齢51.6±5.0歳)。コーヒーや緑茶の摂取量はアンケートから把握し、全体を以下の4群に分類した。コーヒーおよび緑茶の摂取量がいずれも1日1杯未満の「対照群」(16.8%)、コーヒーは1日1杯以上で緑茶は1杯未満の「コーヒー群」(20.3%)、コーヒーは1日1杯未満で緑茶は1日1杯以上の「緑茶群」(32.8%)、コーヒーと緑茶ともに1日1杯以上の「コーヒー+緑茶群」(30.2%)。動脈硬化の進行レベルは、血管の柔軟性の指標の一つである「CAVI」(数値が大きいほど血管柔軟性が低い)で評価した。

     年齢、月経の有無(閉経前/閉経期/閉経後)、喫煙・飲酒・運動習慣、エネルギー摂取量で調整の上、対照群を基準として各群のBMI25以上の割合を比較すると、コーヒー群はオッズ比(OR)0.14(95%信頼区間0.05~0.46)、コーヒー+緑茶群はOR0.15(0.05~0.50)であり、有意な負の相関が認められた。緑茶群はOR0.38(0.12~1.18)で、有意でなかった。

     体脂肪率30%以上の割合は、コーヒー群はOR0.33(0.14~0.82)、緑茶群はOR0.36(0.14~0.96)、コーヒー+緑茶群はOR0.30(0.12~0.74)であり、いずれも有意な負の相関が認められた。CAVI8.0以上の割合は、同順にOR0.37(0.05~2.53)、0.11(0.01~2.27)、0.05(0.003~0.743)であり、コーヒー+緑茶群のみ有意な負の相関が認められた。

     以上の結果から、著者らは「閉経前後の日本人女性では、毎日のコーヒーおよび緑茶の摂取量が、BMIおよび体脂肪率と逆相関し、コーヒーと緑茶の合計摂取量はCAVIと逆相関していた。これらのデータは、コーヒーや緑茶の摂取が、女性の健康維持と動脈硬化の予防に役立つ可能性を示唆している」と結論づけている。

     なお、CAVIに関してコーヒー、緑茶それぞれ単独では有意な影響が認められなかったことについて、コーヒーと緑茶には動脈硬化の進行抑制において相加的効果があるのではないかと考察している。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

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    HealthDay News 2020年6月29日
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  • フレイルとBMIにU字型の関係――亀岡スタディ

     フレイルの有症率はBMIが低くても高くても上昇することが、日本人対象の研究から明らかになった。国立健康・栄養研究所身体活動研究部の渡邉大輝氏らが「Journal of Clinical Medicine」5月6日オンライン版に報告した。

     フレイルとは、さまざまなストレスへの耐性が低下した「要介護予備群」の状態で、死亡リスクの上昇とも関連する。フレイルの有症率は加齢に伴い上昇するが、BMIとはU字型の関係があるとのデータが海外から報告されている。ただしBMIの分布は人種や民族によって異なり、日本人でもそのような関係があるかどうかは明らかでなかった。

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     渡邉氏らの研究は、京都府亀岡市で2011年から継続中の高齢者を対象とした外傷予防と介護予防を推進・検証するための前向きコホート「亀岡スタディ」のデータを横断的に解析したもの。ベースライン調査の回答者から要支援・要介護認定者などを除いた1万1,985人のうち、調査票の回答を元にフレイル判定が可能で、BMIが14未満または40以上の人を除いた7,191人を対象とした。平均年齢は73.4±6.2歳で、女性が52.7%を占めた。

     BMIは以下の六つのカテゴリーに分類した。18.5未満(7.8%)、18.5~19.9(10.9%)、20.0~22.4(30.5%)、22.5~24.9(30.8%)、25.0~27.4(14.0%)、27.5以上(5.9%)。平均BMIは22.7±3.5だった。

     フレイルは、Friedらの表現型モデル(FPモデル)では5点中3点以上、厚生労働省の基本チェックリストでは25点中7点以上とそれぞれ定義した。その結果、フレイル有症率は、FPモデルでは15.2%、基本チェックリストでは36.6%だった。

     BMIカテゴリーごとのフレイル有症率を見ると、FPモデルでは、前記のカテゴリー順に、25.3%、19.6%、14.3%、12.4%、12.6%、19.4%であり、BMI22.5~24.9の群を底値として、U字型の関係が認められた。基本チェックリストで判定した有症率は、同順に55.5%、37.7%、34.2%、32.6%、34.3%、49.2%であり、やはりBMI22.5~24.9の群を底値とするU字型の関係が見られた。

     続いて、ロジスティック回帰分析により、フレイルの有症率に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、身体活動量、学歴、服用している薬剤の数、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心臓病の既往、家族構成、経済状態、義歯の使用など)で調整後のオッズ比を、BMI22.5~24.9の群を基準として比較した。

     FPモデルのフレイル判定による結果は、BMI18.5未満でオッズ比(OR)2.04(95%信頼区間1.58~2.63)、同18.5~19.9でOR1.69(1.33~2.14)、同20.0~22.4でOR1.16(0.96~1.41)、同25.0~27.4でOR1.00(0.78~1.27)、同27.5以上でOR1.54(1.15~2.07)と、低体重者と肥満者の双方で有意なリスク増大が認められた。基本チェックリストの判定に基づいた検討結果も、ほぼ同様のU字型関係が認められた。

     フレイル有症率のオッズ比が最も低いBMIは、FPモデルの場合24.7〜25.7、基本チェックリストでは21.4〜22.8だった。

     今回の研究では、基本チェックリストのチェック項目に含まれている手段的日常生活動作(食事や排泄などの基本的日常生活動作よりも高次に当たる、家事や買い物などの生活機能)や抑うつ症状とBMIの関連についても検討を加えた。その結果、フレイルの有症率と同様にBMIが低くても高くても手段的日常生活動作が低下し、うつ症状のスコアは上昇するというU字型関係が認められた。また、BMIが低いことは口腔フレイル、社会的フレイルの有症率の高さと関連し、一方、BMIが高いことは身体的フレイルの有症率の高さと関連していた。

     これらの結果から著者らは、「日本人高齢者におけるフレイル有症率とBMIのU字型の関係が明らかになった」と結論づけるとともに、「日本を含め、低体重と肥満という栄養障害の二重負荷が進行している国では、フレイルの増加を防ぐためにもその対策を推進すべきと考えられる」と述べている。また、国立健康・栄養研究所では現在、大阪府と連携し「働く世代からのフレイル予防」の実現を目指した取り組みを進めているが、「本研究成果はその取り組みを推進するための貴重なエビデンスとなる」としている。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2020年6月29日
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  • 魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬に?

     魚のエキスが糖尿病網膜症の治療薬となる可能性が報告された。網膜の新生血管という異常な血管の発生が、魚エキスにより抑制されることが動物実験で認められたという。慶應義塾大学医学部眼科学教室、静岡県水産・海洋技術研究所、日本大学医学部視覚科学系眼科学分野の共同研究によるもので、「Nutrients」4月10日オンライン版に掲載された。

     糖尿病網膜症は、糖尿病の治療が不十分な状態が続くことで発症する網膜の病気で、国内の失明原因の上位に位置する。網膜に発生する病的な新生血管が病気の進行に大きく関わる。この新生血管に対し、血管の増殖を促す因子である「VEGF」の働きを抑制する治療薬が使われる。しかしこの治療薬は、眼球への繰り返し投与が必要で医療費が高くなり、副作用のリスクや効果が不十分なこともあるなどの課題が残されている。

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     魚油に多く含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3系多価不飽和脂肪酸には、血管保護作用があることが知られており、糖尿病網膜症のリスク低下も報告されている。ただし、魚のエキスの作用は知られていない。

     今回、研究グループはまず、82種類の海洋生物から抽出したエキスの作用を検討した。その結果、オアカムロ、キビナゴ、ムロアジ、カンパチなどの6種類の魚エキスには、VEGFの発現につながる「HIF」という低酸素誘導因子の作用を抑制する働きがあることが分かった。

     そこで、糖尿病網膜症モデルマウスにオアカムロのエキス3g/kgを5日間経口投与したところ、対照群に比べて網膜の新生血管の面積が有意に縮小するという結果が示された(P=0.015)。他方、新生血管発生の原因となる網膜の無血管野(血管が閉塞し血流が途絶えている部分)の面積には、有意差が認められなかった(P=0.6)。

     次に、ストレスを負荷しHIFを過剰発現する条件下で培養した網膜の細胞に、魚エキスを添加するという実験を行った。すると、魚エキスを添加した網膜細胞ではHIFの発現が低下するとともに、HIF作用の標的遺伝子であるvegfやepoの発現が低下することが明らかになった。

     これらの結果について研究グループは、「魚の積極的な摂取が糖尿病網膜症の進行を予防する可能性を示唆する新しい知見」とし、「この成果をさらに発展させることで、糖尿病網膜症患者にとっての新たな治療法となることが期待される」とまとめている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2020年6月22日
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  • 認知症患者の家族介護者の就労状況が明らかに――厚労省調査データの解析

     認知症患者を家族内で介護している人の就労実態が明らかになった。現役世代に該当する65歳以下の介護者のうち、有給の仕事に就いている人は6割に満たなかった。獨協医科大学精神神経医学講座の菅原典夫氏らの研究によるもので、「PLOS ONE」5月29日オンライン版に掲載された。

     国内では、認知症の増加と就労人口の減少が同時に進行している。これに世帯人数の減少傾向も加わり、就労を続けながら家族内介護を担う人が増加しているが、その詳しい実態は明らかでない。菅原氏らは、2013年に厚生労働省が行った介護や健康状態に関する全国調査のデータから、認知症患者を家族内で介護しており、介護者の年齢が65歳以下であった452世帯を抽出。介護者の就労状況を調べるとともに、就労に関連する因子を検討した。

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     解析対象世帯の被介護者の要介護度は、要介護2~3が約45%で最も多く、要支援~要介護1が約37%、要介護4~5が約18%だった。介護者の平均年齢は57.1±6.8歳で、女性が70.6%、被介護者の子が52.7%を占めていた。

     介護者のうち、有給の仕事に就いているのは57.5%だった。就労している介護者は就労していない介護者に比較し、年齢が若く(55.9±6.8対58.6±6.3歳)、男性の割合が多く(34.2対22.9%)、高学歴であることが多く(専門学校以上が26.9対16.1%)、持ち家率が高い(96.9対88.5%)という有意な差が認められた。

     一方、1日の大半を介護に充てている人の割合は、就労している介護者よりも就労していない介護者の方が高かった(15.0対32.8%)。また、トイレや入浴、食事の介助や体位変換、洗濯、買い物などの家事を行っている割合も、就労していない介護者の方が高かった。

     被介護者の要介護度、介護者の抑うつレベル、世帯支出額などについては、介護者の就労の有無での有意差は認められなかった。

     ロジスティック回帰分析により、介護者の就労に関連する因子として、男性(オッズ比2.52)、専門学校以上の学歴(同1.77)、持ち家であること(同3.65)が抽出された。反対に、高齢(同0.94)、1日の大半を介護に充てていること(同0.32)、トイレ介助を行っていること(同0.53)、洗濯を行っていること(同0.52)、介護者自身が定期的に通院していること(同0.42)は、非就労に関連する因子だった。

     これらを基に研究グループでは「認知症患者の介護者の就労状況と関連する、年齢や性別、その他の因子が明らかになった」と結論するとともに、「今後は、認知症患者のBPSD(周辺症状)や医療・福祉サービスの利用状況などを、より詳細に調べ、患者・介護者双方のサポートを強化していく必要がある」と述べている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2020年6月22日
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