• 大豆食品摂取量と前立腺がん死亡が関連――JPHC研究

     大豆食品の摂取量が前立腺がんによる死亡リスクと関連することが、日本人対象の研究から明らかになった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「International Journal of Epidemiology」9月23日オンライン版に掲載された。

     大豆食品や大豆食品に多く含まれるイソフラボンは、これまでの疫学研究から、前立腺がんに対して予防的に働くことが報告されている。JPHC研究でも過去に、大豆食品やイソフラボンの摂取量が多いほど一部の前立腺がんのリスクが低いことを報告している。大豆食品による前立腺がんリスク低下のメカニズムとしては、イソフラボンの化学構造が女性ホルモンのエストロゲンに似ていることから、エストロゲン作用が前立腺がんの進展抑制に関与するのではないかと考えられている。

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     しかし、これまで報告されてきた一連の研究は、がんの進行度によって結果が異なり、前立腺がんによる死亡リスクとの関連も明らかにされていなかった。そこで今回、同研究グループでは、大豆食品やイソフラボンの摂取量と、前立腺がんによる死亡リスクとの関連を検討した。

     この研究の解析対象者は、1995年と1998年に、岩手県二戸、東京都葛飾、長野県佐久、沖縄県中部など全国11カ所の保健所管内の住民のうち、がんや循環器疾患の既往歴のない45~74歳の男性4万3,580人。食事調査アンケートの結果から、総大豆食品、および各大豆食品(納豆、みそ、豆腐類)、イソフラボンの摂取量を計算し、それぞれを五分位に群分けした上で、2016年まで追跡して前立腺がん死亡リスクを比較した。

     平均16.9年の追跡期間中に、221人の前立腺がん死亡が確認された。年齢、地域、肥満度、喫煙・飲酒・身体活動習慣、糖尿病の有無、健診の受診状況、コーヒー・緑茶の摂取頻度、果物・野菜類の摂取量で調整した解析により、以下のような関連が認められた。

     まず、総大豆食品の摂取量が最も少ない第1五分位群に比べて、摂取量が最も多い第5五分位群のハザード比(HR)は1.76で有意にリスクが高く、摂取量が多いほど死亡リスクが高まるという有意な関連が認められた(傾向性P=0.04)。また、イソフラボンについても、摂取量が多いほど死亡リスクが高まるという有意な関連が認められた(傾向性P=0.04)。

     大豆食品を個別にみると、みそについては、第3五分位群(HR1.64)と第5五分位群(HR1.73)で有意なリスク上昇が認められたが、傾向性P値は0.09だった。納豆と豆腐に関しても、有意な関連は認められなかった。

     以上の結果から著者らは、「大豆とイソフラボンの大量摂取が前立腺がんによる死亡リスクを高める可能性があることが示唆される」とまとめている。

     エストロゲンは、エストロゲン受容体に結合して初めて作用を発揮できる。しかし同研究グループによると、進行前立腺がんでは、エストロゲン受容体が減少するとの報告があり、イソフラボンの前立腺がん防止効果が弱まる可能性があるという。また、動物実験では、男性ホルモンのアンドロゲンが少ないマウスでは、イソフラボンはアンドロゲン作用を示すという報告があることから、前立腺がんの治療で用いられる抗アンドロゲン薬の効果をイソフラボンが妨げる可能性も考えられるとしている。

     なお、大豆食品摂取は前立腺以外の部位のがんによる死亡や、循環器疾患のリスク低下と関連することが報告されているため、研究グループは、「摂取量については他の疾患への影響を含めて総合的に考えることが大切」と付け加えている。

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    HealthDay News 2020年10月26日
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  • 特定保健指導の効果は限定的?

     2008年にスタートした特定健診(メタボ健診)における特定保健指導の効果が限定的であるという研究結果が報告された。男性を対象とする検討からは、腹囲やBMIの減少には短期的効果があるものの、心血管疾患危険因子への有意な抑制効果は認められなかったという。京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の福間真悟氏らの研究によるもので、「JAMA Internal Medicine」10月5日オンライン版に論文掲載された。

     特定健診・保健指導は、動脈硬化が進展するメカニズムの基盤に位置するとされる内臓脂肪の蓄積を重視した保健システム。40歳以上75歳未満の国民全員を対象に、腹囲計測で内臓脂肪型肥満をスクリーニングし、血液検査などの結果とあわせてリスクレベルを評価。そのリスクレベルに応じて、内臓脂肪減少を目的とする、介入強度にめりはりのある保健指導が行われている。福間氏らは今回、建築関連企業保険組合の被保険者データを解析し、特定健診・保健指導の効果を検討した。

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     解析対象としたのは、2013~2018年に特定健診を受けた人のうち、データに欠落のない男性7万4,693人。女性は被保険者数や保健指導対象者数が少ないため、主な解析の対象から除外した。特定健診受診者のうち腹囲基準(男性は85cm)を超えていたのは53.1%だった。

     対象者の平均年齢は52.1±7.8歳、腹囲は86.3±9.0cm、BMI24.5±3.4。評価項目は、特定健診受診後の肥満関連指標(腹囲、体重、BMI)と心血管危険因子(血圧、HbA1c、LDL-コレステロール)の変化とした。なお、特定保健指導の実施状況については2017~2018年のデータのみ利用可能であり、2017年は対象者の15.9%が指導を受けていた。

     要指導判定を受けた人の1年後の肥満関連指標は、体重が-0.29kg(95%信頼区間-0.50~-0.08、P=0.005)、BMIが-0.10(同-0.17~-0.03、P=0.008)、腹囲が-0.34cm(同-0.59~-0.04、P=0.02)と、いずれも有意な減少が認められた。ただし2年後は、体重が-0.33kg(同-0.61~-0.55、P=0.02)、BMIが-0.10(同-0.20~-0.01、P=0.03)であり、この2項目は引き続き有意な減少が認められたものの、腹囲は-0.33 cm(同-0.64~0.04、P=0.09)であり有意性が消失していた。さらに4年後には全ての肥満関連指標が、特定健診受診前と有意差がなくなっていた。

     一方の心血管疾患危険因子については、特定健診受診から1年後の時点で、収縮期血圧+0.28mmHg(同-0.53~1.47、P=0.36)、拡張期血圧-0.54mmHg(同-1.33~0.04、P=0.07)、HbA1c-0.01%(同-0.04~0.03、P=0.74)、LDL-コレステロール+0.42mg/dL(同-1.38~2.33、P=0.62)であり、いずれも有意な変化は認められなかった。また、2年目以降にも有意な変化が認められた項目はなかった。

     これらの結果を福間氏らは、「特定健診・保健指導による介入は、継続的な体重減少につながらず、また臨床的に意味のある心血管危険因子の抑制を検出できなかった」とまとめている。また、本研究では特定保健指導がどのように実施されたかが評価できていないことなどの限界点を挙げつつ、「特定健診・保健指導の効果を改善するために、改善方法の詳細な検討と前向きな議論が必要である」と提言している。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2020年10月26日
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  • 抗うつ薬治療後の労働生産性は1年程度で回復――産業医大

     国内企業の従業員3万人以上を対象とする調査の結果、うつ病に対する薬物治療が終了してから約1年間は、自己評価による労働機能が有意に低い状態が続くことが分かった。うつ病治療後にも一定期間は職場環境や労働条件などへの配慮が必要であることを示す研究結果と言える。産業医科大学産業生態科学研究所の永田智久氏らによる論文が、「Scientific Reports」に9月24日掲載された。

     疾病を抱えた状態で無理に働くこと「プレゼンティーイズム(疾病就業)」は労働生産性の低下につながり、なかでもうつ病などのメンタルヘルス不調による経済的損失は全ての疾患の中で最も大きいと報告されている。うつ病では思考の鈍化や集中力の低下が現れやすく、その治療や再発予防と仕事を両立させることのできる環境の整備が近年、社会的に重要な課題となっている。

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     こうした中、永田氏らは、うつ病の治療経過と労働機能障害(生産性が低下した状態)との関連を明らかにするため、国内の大手企業13社の従業員を対象とする後ろ向きコホート研究を行った。4万5,404人に対し、労働機能障害に関するアンケート「WFun(Work Functioning Impairment Scale)」へ任意での回答を求め、3万3,415人から回答を得た。また、加入保険組合の医療請求データを基に、アンケート回答日の15カ月前からの受療行動を確認した。両者のデータの欠落のない3万409人のデータが最終的な解析に用いられた。

     WFunは産業医大が開発した質問票で、「丁寧に仕事ができない」「考えがまとまらない」など7項目の質問に1~5点で回答するもの。合計35点中21点以上は労働生産性が損なわれていることが多く、今回の検討においても21点以上を「労働機能障害あり」と判定した。

     解析対象者の主な背景は、男性が85%で、年齢は30歳未満19%、30代24%、40代32%、50代22%、60歳以上3%、役職は管理職が18%、一般社員51%で31%は不明。うつ病との診断の記録があり、かつ、抗うつ薬が処方されていた人のうち、双極性障害でない人を「うつ病で治療を受けた人」と定義。また後述のデータ解析に必要な、抗うつ薬の処方期間、および抗うつ薬治療終了後の経過日数が不明の場合は、検討対象から除外した。

     抗うつ薬の処方期間と労働生産性の関連の検討では、WFun回答前15カ月以内にうつ病の治療を受けていなかった人(2万9,564人)を基準として、抗うつ薬が処方されていた人の処方期間の長さ別に、労働機能障害の頻度を比較した。その結果、処方期間が4カ月未満の場合(該当者63人)では労働機能障害のオッズ比(OR)が3.2(95%信頼区間1.9~5.2)、4~10カ月未満(58人)ではOR2.6(同1.5~4.4)、10~14カ月未満(33人)ではOR2.3(同1.1~4.6)、14カ月以上~16カ月未満(250人)ではOR2.3(同1.8~3.0)となり、処方期間の長さにかかわらず労働機能障害に該当する頻度が有意に高かった。

     次に、抗うつ薬治療終了後の経過日数との関連を、上記の検討と同様にWFun回答前15カ月以内にうつ病の治療を受けていなかった人と比較すると、治療終了から3カ月未満(81人)では労働機能障害のORが2.3(同1.5~3.7)、3~8カ月未満(48人)ではOR2.0(同1.1~3.6)、8~11カ月未満(21人)ではOR3.0(同1.3~7.1)で有意に頻度が高かった。しかし、抗うつ薬処方終了から11カ月以上~14カ月未満(23人)ではORが1.4(同0.6~3.5)であり、うつ病の治療記録のない人と有意差がなかった。

     これらの結果を研究グループでは、「抗うつ薬治療中はその期間にかかわらず労働機能障害に該当する頻度が高く、特にうつ病の急性期と考えられる処方期間4カ月未満ではオッズ比が最も高かった。また、抗うつ薬治療終了後にオッズ比が有意でなくなるのは約1年後であり、その間は中等度以上の労働機能障害が認められた」とまとめている。その上で、「うつ病治療歴のある労働者に対して、労働安全衛生の専門家と精神科医が協力し、長期間フォローアップすることが重要」と述べている。

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    HealthDay News 2020年10月19日
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  • 減塩効果のない高血圧には腸内細菌叢が関係――金沢大

     高血圧の予防や治療には減塩が重要だが、減塩しても血圧管理上のメリットを得られない人の存在が知られている。そのようなケースに、腸内細菌叢のパターンが影響を及ぼしている可能性が報告された。金沢大学大学院医薬保健学総合研究科の長瀬賢史氏、同医薬保健研究域保健学系の岡本成史氏、同融合研究域融合科学系の米田隆氏らのグループの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Medicine」に9月2日掲載された。

     減塩による血圧管理上のメリットを得られない場合の原因として、遺伝的な影響、腎疾患の存在、食事摂取量が多いことなどが指摘されているが、十分には明らかになっていない。一方、近年、腸内細菌叢のパターンの違いが、多くの疾患の発症や経過に影響を及ぼすことが報告されており、血圧へも影響を及ぼし得ることが動物実験の結果として報告されている。ただし、ヒトを対象とした研究報告は限られている。

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     今回発表された研究では、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀研究」のデータが用いられた。検討対象者は、志賀研究の参加者のうち便サンプルが採取されている人から、抗菌薬やステロイド薬が処方されていた人を除く239人。平均年齢は63±10歳、女性52.3%、BMI23.3±3.1、収縮期血圧136±17mmHg、拡張期血圧80±11mmHgで、44.8%が高血圧に該当した。また、食塩摂取量は9.4±1.9g/日(中央値は9.6g/日)だった。

     マイクロバイオーム解析結果の主成分分析により、腸内細菌叢のパターン(エンテロタイプ)を、タイプ1とタイプ2の2群に分類。かつ、食塩摂取量が中央値以下の群と中央値を超えている群の2群に分類。合計4つのグループに分け、臨床的背景を比較検討した。

     各群の高血圧有病率は、食塩摂取量が多い群のエンテロタイプ1では49.4%、エンテロタイプ2では46.7%であり、有意差はなかった(P=0.83)。一方、食塩摂取量が少ない群では、エンテロタイプ1が47.0%、エンテロタイプ2では27.0%であり、群間に有意差が認められた(P=0.04)。

     年齢、性別、BMI、エンテロタイプを説明変数とする多変量解析からは、食塩摂取量が少ない群ではエンテロタイプの相違が、高血圧と有意に関連する因子として抽出された〔タイプ2のタイプ1に対するオッズ比0.39(95%信頼区間0.15~0.99)〕。その一方で、食塩摂取量が多い群では、有意な因子は特定されなかった。

     次に、食塩摂取量と血圧との関連をエンテロタイプ別に見ると、タイプ2はタイプ1よりも両者の間に、より強い関連が認められた(近似直線の傾きが、収縮期血圧はタイプ1が1.23、タイプ2が2.00、拡張期血圧は同順に1.18、1.30)。

     これらの結果から、腸内細菌叢のパターンがエンテロタイプ1に該当する場合、減塩による血圧管理上のメリットが減弱する可能性が明らかになった。なお、エンテロタイプ1はタイプ2に比べて、Blautia、Bifidobacterium、Escherichia-Shigella、Lachnoclostridium、Clostridium sensuという6種類の微生物の割合が低いという有意差が存在した。

     以上の検討の結論として研究グループでは、「高血圧の予防や治療において減塩の効果のない人もいる。新しい介入法として、腸内細菌叢へのアプローチが期待され、両者の関連とメカニズムの詳細を探る今後の研究が求められる」と述べている。

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  • フレイルと交通格差の関係が明らかに――東京都健康長寿医療センター

     国内の都市、郊外、農村に住む高齢者の移動手段を比較した研究結果が発表された。フレイルに該当する場合、どの地域に住んでいるかにかかわらず、移動手段が限定的になる傾向が見られたが、郊外や農村の居住者は都市部の居住者に比べて、他者が運転する車に同乗する人の割合が高いなどの相違が認められた。移動の機会や手段が限られることで、身体的フレイルに加え社会的フレイルが助長されることも懸念される。

     フレイルとは、加齢による心身機能の低下などにより身体的・心理的ストレスに対する耐性が脆弱化した状態で、要介護予備群に相当する。適度な運動を継続し、社会との接点を保つことが予防対策として重要とされ、それには高齢者が気軽に外出できる環境の整備が必要とされる。交通インフラは地域によって異なり、都市に比べて郊外や農村は高齢者の移動手段が限られている。しかし、その違いがフレイル該当者の移動にどの程度影響を及ぼすかについては、これまで十分明らかにされていなかった。

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     東京都健康長寿医療センター研究所の阿部巧氏らは、国内3地域で実施された高齢住民を対象とした調査の結果を比較し、この点に関する詳細な検討を行った。その結果が「International Journal of Environmental Research and Public Health」に9月1日、掲載された。

     解析には、東京都大田区(人口密度1万1,814人)を都市、埼玉県鳩山町(同541人)を郊外、群馬県草津町(同132人)を農村とし、それぞれの地域に居住する65歳以上で要介護認定を受けていない5,032人、2,853人、1,219人から得た調査結果を利用した。フレイルの判定は、東京都健康長寿医療センターが開発した「介護予防チェックリスト」に基づき、15点満点中4点以上をフレイルと定義した。移動手段は、歩行、自転車、自動車の運転、他者が運転する車への同乗、公共交通機関について、それぞれ週に1回以上利用するかどうかを評価した。

     対象者9,104人の平均年齢は73.5±5.7歳、女性が51.1%、独居者が15.2%で、1,714人(18.8%)がフレイルに該当した。年齢、性別、独居か否か、脳卒中または骨・関節疾患の既往で調整後、フレイルに該当するか否かで移動手段を比較すると、都市、郊外、農村のいずれにおいてもフレイル該当者は非該当者に比べて、車への同乗を除き全ての移動手段の利用が有意に少なかった。

     他者が運転する車の利用は、都市ではフレイル該当者と非該当者で有意差がなかったが〔非該当者に対するオッズ比(OR)1.08(95%信頼区間0.87~1.33)〕、郊外ではOR1.73(同1.32~2.25)、農村ではOR1.61(同1.10~2.35)と、フレイル該当者は有意に利用することが多いという、居住地域による相違が認められた。

     次に、フレイルの有無による交通手段の利用状況により生じる交互作用を、都市での差を基準として比較した結果から、自身で車を運転する割合の差が、農村では有意に大きいことが分かった。その一方、公共交通機関の利用に関するフレイルの有無による差は、都市に比較し農村では有意に小さいことが分かった。ただし後者の公共交通機関の利用割合は、農村においてはフレイルの有無にかかわらず20%未満と少なく、都市(フレイル該当者58.7%、非該当者74.9%)より大幅に低かった。なお、歩行や自転車については、有意な交互作用は見られなかった。

     これらの結果を著者らは、「フレイル該当者は非該当者に比べて移動の選択肢が限られており、その不利益は特に郊外や農村でより顕著であることが明らかになった」とまとめている。また、「フレイルに該当する高齢者のニーズを満たすための適切な移動手段を確保することが重要であり、都市と郊外・農村の交通格差を埋めるために、例えばライドシェアなどの代替手段を積極的に導入する必要がある」と結んでいる。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2020年10月12日
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  • ふくらはぎ周囲長のサルコペニア判定カットオフ値――早大

     ふくらはぎ周囲長は年齢や肥満の有無にかかわりなく、サルコペニアのスクリーニングに有用との研究結果が「Geriatrics & Gerontology International」9月4日オンライン版に掲載された。早稲田大学スポーツ科学学術院の川上諒子氏らが、同大学の同窓生を対象とする「WASEDA’S Health Study」のデータを解析し、明らかにした。

     サルコペニアは、筋肉量や筋力が低下して、転倒、骨折、死亡のリスクが高くなった状態。加齢に伴いその頻度が増えるが、筋力トレーニングなどによって予防・改善が可能。そのため、早期に発見することが重要とされる。サルコペニアの診断には、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)などによる筋肉量測定が行われるが、多くの一般住民に施行するには、コストや時間、放射線被曝などのハードルが高い。

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     サルコペニアの簡便なスクリーニング法として2019年にアジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS)から、ふくらはぎ周囲長が「男性34cm未満、女性33cm未満」という基準が提案された。ただしこの値を日本人に適用可能かどうかは十分に検証されておらず、また肥満や年齢の影響もよく分かっていなかった。川上氏らは、これらの点を明らかにするために以下の検討を行った。

     検討の対象は、2015年3月~2020年1月に早稲田大学同窓生対象の健康調査を受けた人のうち、ふくらはぎ周囲長、およびDXA法とBIA法(生体インピーダンス法)による筋肉量が測定された40歳以上の1,239人。

     対象者のうち男性(827人)は、平均年齢が57±10歳、BMI23.8±3.0kg/m2、体脂肪率20.4±4.7%で、ふくらはぎ周囲長37.6±2.6cm、骨格筋量指数(SMI:四肢筋肉量を身長の二乗で除した値)はDXA法では7.9±0.8kg/m2、BIA法では8.3±0.9kg/m2、握力は37.9±5.8kgだった。一方、女性(412人)は平均年齢52±9歳、BMI21.4±2.9kg/m2、体脂肪率27.2±5.1%で、ふくらはぎ周囲長34.4±2.2cm、SMIはDXA法で6.1±0.7kg/m2、BIA法で6.4±0.6kg/m2、握力24.5±3.7kgだった。

     サルコペニアをAWGSのDXA法によるSMI判定基準(男性7.0g/m2未満、女性5.4kg/m2未満)で定義すると、男性の8.6%、女性の12.9%が該当した。サルコペニア群と非サルコペニア群の比較で、男性・女性ともに年齢や身長、体脂肪率に有意差は認められなかった。

     ふくらはぎ周囲長とSMIには、有意な正の相関が認められた(DXA法で男性r=0.78、女性r=0.76。BIA法で男性r=0.81、女性r=0.73)。サルコペニアの診断に用いられる握力とは、弱い正の相関であった(男性r=0.33、女性r=0.31)。

     ROC解析の結果、ふくらはぎ周囲長によるサルコペニアの判定は、男性のDXA法による診断に対してAUC0.88、BIA法による診断に対して同0.93、女性では同順に0.84、0.89となった。スクリーニングに最適なふくらはぎ周囲長のカットオフ値は、男性のDXA法による診断に対しては35.8cm(感度81.7%、特異度80.4%)、BIA法による診断に対しては35.4cm(感度91.2%、特異度83.5%)、女性では同順に33.5cm(感度84.9%、特異度72.4%)、32.7cm(感度81.5%、特異度83.6%)という値が算出された。

     次に、肥満の有無(DXA法での体脂肪率が男性25%以上、女性30%以上を肥満と定義)、および年齢(60歳未満/以上)で層別化しサブクループ解析を行った。その結果、全てのグループで、ふくらはぎ周囲長とSMIの有意な相関が引き続き認められ、スクリーニングのカットオフ値もほぼ同等だった。

     これらより著者らは、「ふくらはぎ周囲長は肥満や年齢に関係なく骨格筋量と正相関し、サルコペニア診断の簡便な代理マーカーとなり得る」と結論づけている。

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  • 医師発の外出自粛メッセージが効果大――緊急事態宣言下での東大の研究

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第一波、第二波の拡大局面では、行政府からの外出自粛要請に加え、各方面からステイホームの呼びかけが行われた。それらの呼びかけの中で、最も説得力があり市民の心に届いたのは、治療の最前線で働く医師が発したメッセージだったようだ。緊急事態宣言発出中に実施された調査の結果であり、詳細は「Patient Education and Counseling」8月21日オンライン版に掲載された。

     東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野の奥原剛氏らは、緊急事態宣言下の2020年5月9日~11日に、年齢、性別、居住地域を日本の人口構成に一致させた18~69歳の1,980人を対象とするインターネット調査を実施。外出自粛を呼びかける5種類のメッセージの中から1つを無作為に示して、そのメッセージを読む前と読んだ後に、外出を自粛しようという意思がどの程度変化したかを答えてもらった。

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     5種類のメッセージとは、都道府県の知事、感染症対策の専門家、治療現場で働く医師、COVID-19に罹患した人、COVID-19流行が急拡大している地域の住民というそれぞれの立場から発した内容で、報道されている情報を基に作成した。外出自粛の意思は、COVID-19を理由に今後、(1)「人と会う」「外食をする」「イベントに参加する」などの予定をキャンセルや延期しようと思うか、(2)店での買い物の時間を減らそうと思うか、(3)人混みを避けようと思うか、という三つの質問に対し、「絶対にしない」から「絶対にする」までの6段階で回答してもらい、その平均値で評価した。

     その結果、特別警戒地域に指定されていた都道府県の居住者(1,274人)の回答からは、医師のメッセージを読んだ時に、外出自粛の意思が0.34点上昇し、5種類の中で最も大きく変化することが分かった。2位は患者のメッセージで変化は0.21点、3位は専門家のメッセージで0.19点、知事と住民のメッセージは0.17点だった。医師のメッセージによる変化は、他のメッセージによる変化に比較して有意に大きかった(P=0.003)。

     解析対象を全国に拡大しても、上昇幅が最も大きかったのは医師のメッセージの0.27点で、以下、患者0.22点、専門家0.19点、住民0.18点、知事0.17点と続いた。なお、全国対象の解析では、医師のメッセージと他のメッセージの変化の差は統計的有意水準に至らなかった(P=0.098)。

     今回の調査で用いた医師のメッセージは以下の内容(一部省略)。「私の病院では、新型コロナウイルスの患者さんでベッドも集中治療室も埋まっていて、患者さんを新規に受け入れることができません。医師と看護師が総動員で治療にあたっていますが、マスクも防護服も不足しています。感染の危険と隣り合わせで、もう本当に限界です。同僚の一人でも感染したら、何人もの医師と看護師が自宅待機となり、治療を続けることができなくなります。もし皆さんの誰かが感染して重症化しても、治療できなくなるのです。私たちは踏みとどまって病院にいて治療を続けます。ですから、皆さんは家にいてください。皆さんが務めを果たすことで、私たちも務めを果たすことができます」。

     著者らは本研究の結論を、「医療崩壊によって治療を提供できなくなる危機と、医療従事者の使命感を伝えるコロナ病棟の現場の医師によるメッセージが、外出自粛の気持ちを最も高めることが分かった」とまとめている。また、考察として、「知事や専門家のメッセージは、人の理性に向けた知識の提供や指示であり、情報の受け手が意図どおりに動くとは限らない。一方、現場の医師のメッセージは知識も指示も与えないが、危機感と使命感で感情に訴える。今後、再び外出自粛が要請される事態になった場合に、現場の医師が積極的にメッセージを発信することが重要だろう」と述べている。

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    HealthDay News 2020年10月5日
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  • シニア女性の物忘れに銅が関係?――東京医科歯科大

     銅の摂取量が多いシニア世代の女性は、物忘れが多いことが明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座の寺内公一氏らの研究による結果で、詳細は「Food Science & Nutrition」7月1日オンライン版に掲載された。

     閉経期や閉経後の女性は、閉経前女性に比較して記憶障害が多いことが報告されている。その原因として、女性ホルモンの分泌量低下のほか、摂取栄養素との関係を示唆する海外からの報告も見られるが、詳細は分かっていない。そこで寺内氏らは、日本人女性を対象とする横断研究を行い、栄養摂取状況と物忘れの重症度との相関を検討した。

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     研究対象者は、2009年1月~2017年8月に東京医科歯科大学病院の更年期外来を受診し栄養教育プログラムを受けた40歳以上の患者のうち、食事調査および生活の質(QOL)や不安・うつに関する調査に回答した245人(平均年齢53.4±6.8歳)。ホルモン補充療法を受けている人や子宮摘出術既往者、向精神薬服用者、閉経状態が不明の人などは除外した。

     物忘れの重症度は、本人の自覚を基に、物忘れの頻度が月に0~1回の場合を「物忘れなし」、週1~2回を「軽度」、週に3~4回を「中等度」、ほぼ毎日を「重度」と4段階に分類した。それぞれの該当者数は同順に、82人(33.5%)、87人(35.5%)、39人(15.9%)、37人(15.1%)だった。

     この4群間に、年齢や閉経状態(閉経前/閉経期/閉経後の人が占める割合)、BMI、除脂肪体重、併存疾患、喫煙・飲酒・身体活動習慣などの有意差はなかった。ただし、物忘れの重症度が高いほど、不眠や不安、抑うつなどの訴えが多く、生活満足度が低かった。また、物忘れの重症度と有意な関連のある摂取栄養素は見つからなかった。

     次に、対象者全体を40~54歳の中年群(166人)と、55歳以上のシニア群(79人)に分類した上で同様の検討を行った。すると、中年群では全体解析と結果が変わらず、物忘れの重症度と摂取栄養素の相関は見られなかった。一方、シニア群では、カリウム、マグネシウム、銅、ビタミンB1の摂取量が多いほど物忘れが重症という有意な関連が認められた。また摂取栄養素以外では、身体の自覚症状、生活満足度、不安、抑うつなども物忘れと有意に関連していた。

     これら、有意な関連が見られた因子を独立変数とする多重ロジスティック回帰分析の結果、栄養素の中では銅の摂取量のみが引き続き有意な因子として残った〔10mg/kJ/日あたりの調整オッズ比(aOR)1.34(95%信頼区間1.11~1.66)、P=0.004〕。さらに、年齢やBMI、その他の背景因子を加えて調整しても、銅の摂取量が多いことは、やはり物忘れの重症度と有意に関連していた〔aOR1.25(1.08~1.50)、P=0.006〕。

     この結果から著者らは、「銅の過剰摂取は高齢日本人女性の主観的な物忘れの重症度と正の関連がある。銅の摂取量を減らすことが、高齢女性の物忘れ症状を抑制するかもしれない」と述べている。銅の過剰摂取が物忘れにつながる機序については、「アミノ酸と結合した銅の一部は血液脳関門を通過して脳に到達し、酸化ストレスや細胞障害を惹起する可能性がある」などの考察を加えている。

     なお、一部の著者が食品関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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    HealthDay News 2020年10月5日
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  • 産後は夫婦ともにメンタル不調になりやすい――国立成育医療研究センター

     子どもの出産後、妻だけでなく夫もともにメンタル面の不調を抱えていることが少なくなく、日本国内で毎年3万組の夫婦が苦しんでいる可能性が報告された。国立成育医療研究センターの竹原健二氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」8月13日オンライン版に掲載された。

     出産後の女性に産後うつなどの不調が現れやすいことはよく知られている。また近年では女性だけでなく、新たに子どもを授かった男性もメンタル不調に陥りやすいとする報告が多い。しかし、世帯単位の夫婦を調査対象とした研究はこれまで行われておらず、その実態は明らかでなかった。竹原氏らは、2016年の国民生活基礎調査のデータから生後1年未満の子どもがいる世帯のうち、夫婦のメンタルヘルス状態に関する調査データのある3,514世帯を対象として詳細な検討を行った。

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     対象者の背景は、平均年齢が夫33.9±6.0歳、妻32.1±5.1歳、子どもが1人の世帯が45.3%、世帯支出額5万7,000円(月1人当たりの中央値。四分位範囲は4万~7万5,000円)。夫の99.3%は被雇用者で、26.4%は週に55時間以上勤務していた。妻の44.0%は有職者で、19.6%が週に1時間以上勤務していた。

     メンタルヘルス状態は、Kessler心理的苦痛スケール(K6)という指標を用いて評価した。この指標は、緊張や絶望の感じ方や、努力が大切だと思うか、といった6項目の質問に対し0~4点で回答してもらい、24点満点のスコアで判定する方法。本研究では、9~12点を中等度の心理的苦痛、13点以上を重度の心理的苦痛と定義した。

     結果をまず夫婦別々に見ると、夫の11.0%は中等度以上の心理的苦痛を感じており、さらに3.7%は重度の苦痛を感じていることが明らかになった。また妻の10.8%は中等度以上の心理的苦痛、3.5%は重度の苦痛を感じていた。これにより、産後の女性がメンタル面の不調に陥る頻度と同程度に、夫もまたメンタル不調になりやすいことが分かった。

     続いて、夫婦単位で検討した結果を見ると、夫と妻がともに中等度以上の心理的苦痛を感じている世帯が3.4%に上ることが明らかになった。この3.4%という数値を国内の出生数(2019年は約86万5,000人)に当てはめて推算すると、毎年約3万組の夫婦が、子どもを授かった後に2人ともメンタル面の不調で悩んでいる可能性が考えられる。なお、夫婦がともに重度の心理的苦痛を感じている世帯も0.4%存在した。

     多重ロジスティック回帰分析の結果、夫婦が同時期に中等度以上の心理的苦痛を感じている世帯に関連する因子として、夫の労働時間が週55時間以上〔調整オッズ比(aOR)1.61(95%信頼区間1.05~2.49)〕、妻の睡眠時間が6時間未満〔aOR1.81(同1.17~2.79)〕、1人当たりの世帯支出が中央値以上〔aOR2.09(同1.33~3.28)〕、子どもが生後6~12カ月〔生後6カ月未満に対しaOR1.58(同1.02~2.45)〕という項目が抽出された。夫婦の年齢や、夫婦以外の保護者の存在などは有意な関連因子でなかった。

     研究グループは、「夫婦が同時期にメンタルヘルスの不調を来してしまうと、養育環境が著しく悪化しやすくなり、世帯全体に大きな影響が生じることが懸念される。それを防ぐためにも、産後のケアや支援の対象を母子に限定するのではなく、父親も含めた世帯全体をアセスメントすることが重要と考えられる」と考察している。また、「日本では働き方改革の議論が進んでいるが、特に子どもが幼い間は、父親の長時間労働が母親や子どもの健康や成長に影響を与える可能性があり、さらなる改革が急務」と述べている。

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    HealthDay News 2020年9月28日
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  • 食事の多様性が脳の海馬の萎縮を抑制――国立長寿医療研究センター

     多様性に富んだ食習慣の人ほど、加齢による脳の海馬の萎縮が抑制されることが明らかになった。国立長寿医療研究センターの大塚礼氏らによる日本人対象の縦断研究の結果であり、詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」9月2日オンライン版に掲載された。

     大塚氏らは以前、多様性の豊かな食習慣が認知機能テスト(Mini-Mental State Examination)のスコア低下を抑制することを報告している。今回の研究では、より客観的に、MRI検査によって計測した海馬と灰白質の容積を指標とした検討を行った。海馬や灰白質は加齢に伴い萎縮していくが、アルツハイマー病などの認知症では早期から萎縮することが知られている。

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     検討対象は、国立長寿医療研究センターが行っている、地域住民を対象とした老化に関する長期縦断疫学研究の参加者のうち、2008年7月~2012年7月に実施した2時点の調査に参加した、認知症の既往者などを除く40~89歳の1,683人(男性50.6%)。2時点の調査でMRI検査を施行し海馬と灰白質の容積を計測。またベースライン時点では、3日間にわたって食事内容を記録してもらい、それを基に食事多様性スコア(Quantitative Index for Dietary Diversity)を算出した。

     食事多様性スコアは、摂取した食品を13のグループに分けて評価した。このスコアが高いほどより多彩な食品を摂取していることを表す。ベースライン時の食事多様性スコアを性別の五分位に分けると、スコアの高い群ほど高齢で身体活動量が少なく、高血圧や糖尿病、脂質異常症の割合が高かった。また、穀類の摂取量は少ない一方、他の12のグループの食品摂取量が多かった。

     ベースラインから2年後に再度MRI検査を行い、海馬と灰白質の容積を計測すると、海馬は平均(±標準偏差)1.00(±2.27)%減少し、灰白質は0.78±1.83%減少していた。

     海馬や灰白質の萎縮に影響を及ぼす可能性のある因子(年齢、性別、教育歴、喫煙・飲酒・身体活動状況、脳卒中・脂質異常症・糖尿病・高血圧・心疾患の既往。モデル1)で調整の上、食事多様性スコアの五分位群で比較すると、海馬(傾向性P=0.004)、灰白質(傾向性P=0.018)ともに、スコアの高い群ほど容積の減少が少ないという有意な関係が認められた。調整因子にベースライン時の海馬または灰白質の容積を追加した解析(モデル2)でも、海馬(傾向性P=0.003)、灰白質(傾向性P=0.028)ともに、やはり同様の有意な関連が維持されていた。

     2年間での海馬容積の変化率(モデル1の因子で調整)で比較すると、第1五分位群(食事多様性が最も少ない群)が1.31±0.12%の減少、以下、第2五分位群が1.07±0.12%、第3五分位群が0.98±0.12%、第4五分位群が0.81±0.12%の減少を示し、最も食事多様性に富む第5五分位群は0.85%±0.12%の減少にとどまっていて、食事多様性スコアが高いほど萎縮が抑制されていた(傾向性P=0.003)。また灰白質も、同様の関係が認められた(傾向性P=0.017)。

     この結果について著者らは、「食事の多様性の高さが海馬や灰白質の萎縮と負の関連があることが示された。海馬の平均的な萎縮は2年間で1.00%であるのに対して、食事の多様性の違いによって萎縮度の差が最大0.5%に及ぶという顕著な違いが認められた。よって、さまざまな食品を食べることは、海馬の萎縮を防ぐ新しい効果的な栄養戦略になり得る」と研究の成果を強調している。

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    HealthDay News 2020年9月28日
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