• 認知症でもドラム叩きで認知機能が改善――理研など

     認知症があっても大勢で輪になりドラムを叩くという体験を楽しむだけで、認知機能が改善する可能性のあることが報告された。理化学研究所計算工学応用開発ユニット(ISC)の宮﨑敦子氏らが、「Frontiers in Aging Neuroscience」7月2日オンライン版に報告した。認知機能だけでなく、上肢機能の改善効果も認められたという。

     認知症の改善に向けてさまざまな介入プログラムが提案されているが、認知症の中核症状である失行(麻痺がないにもかかわらず生じる運動機能障害)が現れると、複雑な動作を伴うプログラムでは、それに参加すること自体が難しくなってくる。一方でリズミカルな運動は、認知症が進行してからでも比較的行いやすいとされている。

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     宮﨑氏らは、複数の人が集まりドラムを叩くという行為が、リズムを感じとって他人を模倣し、自分が何をすべきかの理解の助けになる点に着目。また、ドラムはスティックが跳ね上がるために少ない力で叩くことができ、筋肉が衰えていても無理なく楽しめることから、ドラム叩きを利用した認知症改善プログラムを作成しその効果を検討した。

     特別養護老人ホームの居住者46人を無作為に、プログラム介入群27人、非介入群(対照群)19人に分け、介入群は週に3回、1回30分、12週間にわたり、ドラムインストラクターとともにドラム叩きをしてもらい、対照群は普段どおりに過ごしてもらった。ドラム叩きは必ずしも演奏を目的としたものではなく、即興性を重視して自由にリズムを楽しむ機会とした。なお、介入群の84.78%は車椅子を使用しており、ドラムに両手が届かないため、利き手だけで叩くか、車椅子のテーブルに置いた軽量のフレームドラムを叩いてもらった。

     介入前の認知機能は、MMSEという指標(30点満点)が介入群12.93±6.64点、対照群12.89±6.89点、FABという指標(18点満点)では同順に6.37±3.12点、6.21±3.75点で、いずれも同等だった。また、上肢運動機能(関節可動域)やBMI、骨格筋量指数(SMI)も有意差がなかった。

     12週間の介入期間中のドラム活動への参加率が60%に満たなかった人などを除き、介入群22人、対照群17人を評価対象とした。その結果、MMSEは介入群が2.05点上昇したのに対し、対照群は3.24点低下(P=0.004)、FABも同順に2.36点上昇、0.35点低下して(P=0.043)、ドラム介入による認知機能への有意な効果が明らかにされた。

     上肢の関節可動域は、肩屈曲が介入群で6.14°増加したのに対し、対照群は5.88°減少(P=0.040)、掌屈が同順に10.91°増加、1.47°減少(P=0.000)し、有意差が認められた。肘屈曲や肘伸展、背屈には有意差がなかった。また、体重やBMIの変化には群間差がなかったが、インピーダンス法により評価した全身のタンパク質量、SMI、利き腕の筋肉量は介入群で低下し、群間に有意差が認められた。なお、うつ症状の主観的スコアには群間差がなかった。

     この結果から研究グループは、「認知症の人でもドラムを叩くことで認知機能が改善し、上肢の運動機能の一部が向上することが明らかになった。要介護度の高い高齢者や認知症の人の認知機能と身体機能の維持・改善ツールとして、このプログラムの利用が期待される」とまとめている。なお、介入群で筋組成の一部にマイナスの影響が認められたことに関連し、「筋タンパク合成を維持するための適切なアミノ酸摂取が推奨される」と付け加えている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

    軽度認知障害(MCI)のリスクをセルフチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2020年8月11日
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  • ナトリウム/カリウム比が脂質・糖代謝にも関連――国民健康・栄養調査の解析

     食事中のナトリウムとカリウム摂取量の比が、血圧ばかりでなく糖代謝や脂質代謝の指標とも関連することが報告された。医薬基盤・健康・栄養研究所の岡田恵美子氏、瀧本秀美氏らが国民健康・栄養調査のデータを解析した結果で、詳細は「British Journal of Nutrition」7月17日オンライン版に掲載された。

     ナトリウム(Na)は血圧を上昇させ、カリウム(K)は血圧を低下させるように作用するため、Na/K比は高血圧のリスクと相関することが知られている。ただし日本人での報告は少なく、また、高血圧以外の心血管疾患リスク因子(糖代謝や脂質代謝の指標)への影響は明らかになっていない。岡田氏らの研究はこの点を詳細に検討したもの。

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     2003~2017年の国民健康・栄養調査の20歳以上の参加者のうち、栄養摂取状況調査票の回答がない人や、血圧を下げる薬、コレステロールを下げる薬、インスリン注射または血糖を下げる薬を使用している人などを除外した4万8,800人(男性1万9,386人、女性2万9,414人)を解析対象とした。

     食事中のNa/K比の中央値は、男性1.85、女性1.70だった。2003~2017年にかけて、Na/K比は、男性で年率0.51%、女性は0.73%の有意な減少が観察された。

     対象者をNa/K比で五分位に分け、年齢や生活習慣などとの関連を検討すると、Na/K比が高い人は年齢が若く、喫煙・飲酒習慣がある人の割合が高かった。またNa/K比が高い人は、穀類、アルコール飲料、調味料などの摂取量が多く、豆類、野菜、果物、きのこ類、牛乳・乳製品などの摂取量が少ない傾向が認められた。

     続いて、年齢、BMI、喫煙習慣、飲酒量、身体活動量(歩数)、職業、タンパク質・飽和脂肪酸摂取量、調査年による影響を調整後、Na/K比と各検査値の結果との関連を検討。すると、Na/K比が高い人は、収縮期血圧や拡張期血圧が高いばかりでなく、糖代謝の指標であるHbA1cも高いという有意な関連が認められた。また、女性ではNa/K比が高いほどHDL-コレステロールが有意に低かった。

     次に、ロジスティック回帰分析により、Na/K比の第1五分位群(Na/K比が最も低い群)を基準に第5五分位群(Na/K比が最も高い群)の疾患との関連を検討すると、高血圧(140/90mmHg以上)のオッズ比が男性1.27、女性1.12、HbA1c高値(6.5%以上)のオッズ比が男性1.56、低HDL-コレステロール血症(40mg/dL未満)のオッズ比が男性1.17、女性1.50であり、それぞれ有意な有病率の上昇が認められた。なお、高non-HDL-コレステロール血症(170mg/dL以上)については男性、女性ともに、Na/K比との有意な関連が認められなかった。

     著者らは、本研究が横断研究であるため因果関係には言及できないと述べた上で、「食事中のNa/K比は、男性と女性の双方で高血圧、低HDL-コレステロール血症、および男性のHbA1c高値と関連していた。この結果は、カリウムを多く含む野菜や果物を意識して取るなどして、カリウム摂取量が少なくナトリウム摂取量が多い食生活を是正することが、日本人の心血管疾患リスク因子の予防に役立つ可能性があることを示唆している」とまとめている。

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    HealthDay News 2020年8月11日
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  • 塩分過多が直接的にEDリスクを高める可能性

     塩分摂取量が多いと高血圧のリスクが上がることには強いエビデンスがあり、また、高血圧が勃起障害(ED)のリスク因子であることもよく知られている。しかし、塩分過多は高血圧を介した経路とは別に、直接的にEDを引き起こす可能性が報告された。名古屋市立大学大学院医学研究科臨床薬剤学分野の木村和哲氏、徳島大学大学院医歯薬学研究部泌尿器科学分野の岸本大輝氏らの共同研究によるもので、詳細は「The Journal of Sexual Medicine」7月17日オンライン版に掲載された。

     塩分の多い食事は高血圧のリスクであるとともに、それ自体が心血管疾患や腎疾患のリスクを高めることが報告されている。木村氏らは、EDも塩分過多による直接的な影響を受ける可能性を、ラットを用いて検討した。

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     6週齢の食塩感受性モデルラットを3群に分類。1群は通常食(塩化ナトリウム量0.3%)で飼育する対照群とし、別の1群は高食塩食(同8%)で飼育。さらにもう1群は高食塩負荷とともにアルドステロン拮抗薬(エプレレノン)75mg/kg/日を経口投与し、6週間の飼育後に、各群の血圧の変化や勃起機能などを比較検討した。アルドステロン拮抗薬は、食塩負荷などによって亢進する鉱質コルチコイド受容体の活性を抑制し、降圧や臓器保護効果をもたらす薬剤。

     6週間後の収縮期血圧は、対照群の125.1±2.7mmHgに比し、高食塩群は225.8±3.1mmHgで有意に高かった(P<0.01)。高食塩+エプレレノン群は210.8±6.3mmHgで高食塩群と有意差がなかった(P>0.05)。なお、体重は全ての群で群間差がなく、同等に成長していた。

     勃起機能は、海綿体内圧を平均動脈圧で除した値で評価した。結果は、対照群の0.62±0.03に比し高食塩群は0.30±0.02で、勃起機能の有意な低下が認められた(P<0.01)。一方、高食塩+エプレレノン群は0.49±0.07であり、高食塩群より有意に高く(P<0.05)、血圧は高食塩群と同等であるにもかかわらず、勃起機能の低下は抑制されていた。

     勃起のメカニズムには、血管拡張作用のある一酸化窒素(NO)が重要であり、NOの産生には一酸化窒素合成酵素(NOS)が関係している。しかし、そのNOSの働きは、非対称性ジメチルアルギニン(ADMA)という物質により阻害されてしまい、血管拡張作用が弱くなり勃起機能が低下することが知られている。そこで今回の研究では、ADMAのレベルにも検討を加えた。

     その結果、ADMAレベルは対照群の234.1±13.1mg/mLに比し、高食塩群は360.4±19.8mg/mLで有意に高かった(P<0.01)。一方、高食塩+エプレレノン群は265.0±38.8mg/mLであり、高食塩群より有意に低く(P<0.05)、NOSの働きが保たれていることが示唆された。なお、NO合成の基質であるL-アルギニンのレベルは、3群間で有意差がなかった。

     このほか、高食塩群では酸化ストレスマーカーや炎症マーカーが対照群に比し有意に上昇し、高食塩+エプレレノン群ではその上昇が抑制されることなどが分かった。

     これらの結果から研究グループは、「塩分過多は血圧への影響とは別の経路からもEDを引き起こす可能性があり、アルドステロン拮抗薬がその経路を阻害すると考えられる」と結論づけている。なお、本研究の限界点として、食塩感受性ラットを対象としていることを挙げている。ただしこの点に関しては、加齢やメタボリックシンドロームによって食塩感受性亢進状態にある人が少なくない現状を指摘するとともに、たとえ食塩非感受性であっても高食塩によって内皮依存性血管拡張作用は低下するとの報告があることから、「食塩負荷は食塩感受性の有無にかかわらずEDのリスクになり得る」と述べている。

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  • COVID-19への不安や予防行動は性格で異なる――九大

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する不安の強さや感染予防行動の積極性は、個人の性格により異なることが明らかになった。九州大学持続可能な社会のための決断科学センターの錢琨氏、同大学名誉教授の矢原徹一氏が、緊急事態宣言発出直後に行ったネット調査の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に7月10日掲載された。

     錢氏らは、東京や大阪など7都府県に緊急事態宣言が発出された翌日の4月8日から「Yahoo!クラウドソーシング」を利用し、性格特性とCOVID-19による不安やストレス、予防行動の関連についての横断調査を実施。2日間で全都道府県から計2,233人の回答が寄せられ、内容に不備があるものなどを除いた1,856人分を解析した。

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     性格特性は、精神医学領域で用いられている「ビッグファイブ理論」に基づき、外向性、神経症傾向、開放性、勤勉性、協調性という5因子で評価。その結果と、抑うつ不安ストレス尺度(DASS)、および、マスク着用や手洗いなどの予防行動との関連を検討した。また、道徳基盤尺度(MFQ)や、米国からCOVID-19予防行動との関連が報告されている政治的イデオロギーについても評価・検討した。

     解析対象者の平均年齢は46.69±11.29歳、男性56.3%であり、調査時点で緊急事態が宣言されていた7都府県の居住者が49.9%を占めていた。多重回帰分析の結果から、性格特性ごとに以下のような有意な関連が認められた。

     まず外向性は、主観的健康感(β=0.079)や予防行動の積極性(β=0.114)などと正相関した。神経症傾向は、ストレス(β=0.436)や不安(β=0.312)、うつ(β=0.416)レベルと正相関し、主観的健康感(β=-0.240)や他者への評価(β=-0.139)、医師への信頼(β=-0.112)とは逆相関した。勤勉性は、うつレベルと逆相関し(β=-0.073)、予防行動の積極性と正相関した(β=0.135)。協調性は、ストレス(β=-0.120)や不安(β=-0.065)レベルと逆相関し、主観的健康感(β=0.080)、他者への評価(β=0.101)、医師への信頼(β=0.095)と正相関した。

     また、道徳基盤尺度との関連からは、他者への危害を回避し弱者を保護・ケアする「保護/危害」志向がストレス(β=-0.096)や不安(β=-0.179)レベルと逆相関し、予防行動の積極性と正相関(β=0.167)すること、「権威への尊敬」志向が予防行動の積極性と逆相関すること(β=-0.076)などが明らかになった。イデオロギーとの関連では、「平等への選好」志向と医師への信頼の正相関(β=0.118)や、保守的なイデオロギーとストレス(β=-0.086)や不安(β=-0.060)レベルの逆相関といった関連が認められた。

     この他、性別の解析からは、男性は女性よりも他者の評価(P=0.013)や医師への信頼が高いこと(P<0.001)や、感染状況を過小評価しがちなこと(P<0.001)が分かった。一方、女性は男性よりも予防行動に積極的で、家族や子どもをより心配する傾向が見られた(いずれもP<0.001)。

    また、パートナーがいる人はいない人より、ストレス(P=0.015)やうつ(P<0.001)レベルが低かった。教育歴の長い人は、他者への評価、医師への信頼が高かった(いずれもP<0.001)。

     以上は研究結果の一部だが、その他の明らかになった解析結果も含めて、著者らは「COVID-19の予防行動やパンデミックにより影響を受ける心理状態は、性格によって大きな個人差が認められる。このような個人差に配慮した感染予防対策と心理的ケアが必要なことが示唆される」とまとめている。

     なお、このオンライン調査は本論文の発表データ解析後も週1回のペースで継続され、6月中旬までに計10回実施されている。現在、10回分の時系列データから、COVID-19による一般市民の精神的負担、予防行動、生活への影響などの変化について解析中という。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2020年8月3日
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  • メタボ解消のポイントは「休日の座位時間」を減らすこと

     メタボリックシンドローム(MetS)を防ぐには、身体活動を増やすことが大切だが、特に休日の座位時間(座っている時間)を減らすことが重要である可能性が報告された。労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の蘇リナ氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Environmental Research and Public Health」5月30日オンライン版に掲載された。

     身体活動量が少ないことがMetSのリスクと関連することを示した報告は多いが、それらの多くはテレビやインターネットの視聴時間など、日常生活の一部分のみに焦点を当てており、生活のリズム全体を考慮した研究は少ない。そこで蘇氏らは、平日の仕事中の座位時間、平日の仕事以外の座位時間、および休日の座位時間と、三つの場面に細分化し、MetSリスクとの関連を検討した。

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     調査手法として、インターネットによる回答者の自記式アンケートを用いた。2018年1~7月に寄せられた1万件の回答から、内容に不備があるものなどを除いた5,530人分を解析対象とした。座位時間は、「労働者生活行動時間調査票」を用い、就寝、起床、外出、職場への到着、帰宅などの時刻の詳細な記述に基づいて、できるだけ正確に把握した。対象者の平均年齢は44.4±11.1歳、男性が70.0%を占め、MetS該当者数は432人(7.8%)だった。

     座位時間を三分位で3群に分類し、年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、勤務形態(シフト勤務か否か)で調整後に、MetSリスクとの関連を検討。すると、休日の座位時間の第3三分位群(最も座位時間が長い群)でMetSリスクが有意に上昇し〔オッズ比(OR)1.43、95%信頼区間1.12~1.83〕、休日の座位時間が長いほどMetSリスクが高いことが明らかになった(傾向性P<0.001)。一方、平日の仕事中の座位時間(傾向性P=0.969)や、平日の仕事以外の座位時間(傾向性P=0.259)とMetSリスクには有意な関連がなかった。

     また、日常的な運動習慣のある人(厚生労働省の定義による、1回30分以上の運動を週2回以上行い1年以上継続している人)に比べ、そうでない人はMetSリスクが有意に高かった(OR1.44、1.15~1.80)。

     日常的な運動習慣があり、休日の座位時間の第1三分位群(最も座位時間が短い群)を基準として、他の群のMetSリスクを検討すると、運動習慣のない人では休日の座位時間第3三分位群(OR1.84、1.30~2.59)だけでなく、第2三分位群(座位時間が中程度)でも、有意なリスク上昇(OR1.49、1.03~2.14)が認められた。平日の仕事中の座位時間や仕事以外の座位時間は、運動習慣の有無にかかわらず、MetSリスクとの有意な関連は認められなかった。

     これらの結果を基に研究グループでは、「特に休日の座位時間の長さがMetSのリスクを増大させる可能性がある」とまとめるとともに、保健指導などに際しては総座位時間のみで評価すると、MetSとの関連が明瞭でなくなることに留意を促している。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2020年7月27日
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  • 夏と冬では急性冠症候群の成因が異なる

     急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症。ACS)の成因は季節で異なる可能性が報告された。プラーク破綻によるACSの発症率は冬に高く、プラークびらんによる発症率は夏に高いという結果である。日本を含む6カ国の国際研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association」7月2日オンライン版に掲載された。

     ACSは冠動脈内の血栓形成を主病因とし、血栓により内腔が急速に狭窄・閉塞することで心筋が虚血や壊死に陥る疾患である。ACSを引き起こすメカニズムは病理学的には、(1)線維性被膜の破裂により血栓形成を来す「プラーク破綻」、(2)線維性被膜の破裂を伴わずに軽微な内膜障害部位に血栓が形成される「プラークびらん」、(3)結節状の石灰化が血管内腔に突出して血栓症を来す「石灰化プラーク」と、3パターンに分類される。

    冠動脈疾患に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
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     一方、血管内画像診断法の一つである光干渉断層法(OCT)は、近赤外線を用いてプラークを含む冠動脈壁や血栓の画像を構築するシステムで、高い解像度をもつことが特長。そのためOCTは、これらの病態の識別に優れている。

     以前からACSは冬に発症率、死亡率が増加する傾向があるという報告があったが、成因ごとに季節により差があるかどうかを検討したデータはなかった。日本医科大学千葉北総病院循環器内科の高野雅充氏、米マサチューセッツ総合病院循環器科の栗原理氏らは、ACSの国際レジストリのデータから、OCTにより責任病変の性状評価が行われていてACSの成因が判定可能な症例を抽出、前記3パターンの季節性の有無を検討した。

     解析対象数は1,113人(平均年齢65.8±11.6歳、男性79.5%)で、春の発症が284人(25%)、夏が243人(22%)、秋が290人(26%)、冬が296人(27%)であった。全体の75.6%は日本で登録された症例だった。

     臨床経過を知らされていない2人の解析者がOCT画像を基にACSの成因を判定し、判定が一致しない場合には3人目の解析者を含めて検討し最終判断した。その結果、ACSの成因の内訳はプラーク破綻が561人(50%)、プラークびらんが417人(38%)、石灰化プラークが135人(12%)と分類された。

     季節別の検討では、プラーク破綻、プラークびらん、石灰化プラークの順に、春は50%、39%、11%、夏は44%、43%、13%、秋は49%、39%、12%、冬は57%、30%、13%であり、プラーク破綻の割合が全ての季節を通じて多いものの、その頻度は冬では特に高く、夏は低かった(P=0.039)。対照的にプラークびらんによるACSの割合は夏に高く、冬に低い傾向が認められた。石灰化プラークは季節性変動が見られなかった。

     年齢や性別、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、喫煙などの冠危険因子による影響を多変量解析で調整した後に季節別のリスクを検討すると、冬はプラーク破綻によるACSのリスクが有意に高く(夏に対するオッズ比1.652、95%信頼区間1.157~2.359)、冬のプラークびらんによるACSのリスクは有意に低かった(オッズ比0.623、95%信頼区間0.429~0.905)。

     冬は血圧が上昇する傾向があり、冠動脈のプラーク破綻を起こしやすいことが想定されるが、本検討においても冬にプラーク破綻で発症した症例における高血圧症の有病率は、夏に比べて有意に高かった(P=0.010)。一方、プラークびらんや石灰化プラークによるACSの高血圧症有病率は、季節による有意差を認めなかった。

     これらの結果から著者らは、「ACSの成因に季節性の差がある可能性が示された。成因としてのプラーク破綻は冬に多く、プラークびらんは夏に多い。ACSの予防には季節ごとのアプローチが必要であろう」とまとめている。なお、冬にプラーク破綻による発症が増える理由として、血圧、冠動脈内圧が上昇しやすいこと、夏にプラークびらんによる発症が増える理由として、軽微な内膜障害部位にも脱水の影響で血栓が形成されやすくなる可能性の影響を指摘している。

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    HealthDay News 2020年7月27日
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  • CKD患者ではBMI低値が感染症や全死亡と関連

    慢性腎臓病(CKD)患者ではBMIが低いことが感染症による死亡や全死亡のリスクの高さと関連するとの報告が、「BMC Nephrology」6月30日オンライン版に掲載された。仙台市立病院内科の山本多恵氏(研究時点の所属は東北大学大学院医学研究科腎・高血圧・内分泌科)らが、CKD患者を対象とした前向き観察コホート研究「艮陵研究」のデータを解析した結果、明らかになった。

     BMIが高いことは、一般的には心血管疾患や腎疾患の発症率の高さと関連している。しかし、CKD患者ではむしろBMIが高いほうが死亡リスクは低いとする報告があり、BMI低値は予後不良のリスクと捉えられている。また、CKD患者の死因として心血管死以外では感染症関連死が多いことが知られている。ただし、感染症関連死とBMIの関連は明らかでなかった。

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     山本氏らが解析に用いた艮陵研究は、宮城県を中心とする腎臓専門医所属医療機関11施設で行われており、登録患者数は4,015人。その中から、データに欠落のある患者などを除き、2,648人を今回の研究の対象とした。BMIの四分位で4群に群分けして前向きに5年間(中央値3.9年)追跡。全死亡および末期腎不全への進行をエンドポイントとし、それらの発生率と、死因別に関連因子を解析した。死因のうち感染症関連死は、肺炎、インフルエンザ、敗血症などによるものを集計した。

     対象者の主な背景は、年齢中央値63歳、男性53.5%で、eGFRは中央値53.4mL/分/1.73m2、BMIは男性23.8±3.5、女性23.1±4.1。追跡期間中に、114人が死亡し、308人が末期腎不全に進行した。

     全死亡リスクはBMI低値群で高いという有意な関連が認められた(P=0.0014)。一方の末期腎不全への進行については、BMIカテゴリーとの関連は認められなかった。なお、最も多い死因は心血管疾患(41%)で、感染症(21%)、がん(19%)と続いた。心血管死とがん死は全世代で見られたが、感染症関連死は65歳以上のみで見られ、その25%が前期高齢者、75%が後期高齢者だった。

     年齢、性別、血清アルブミン、喫煙、糖尿病、心血管疾患の既往、血圧、CKDステージなどで調整後、BMI低値群の全死亡リスクはハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.04~1.52)で、有意なリスク因子であることが分かった。末期腎不全への進行はHR1.03(同0.92~1.15)であり、BMI低値は有意な因子ではなかった。多変量解析の結果、全死亡と関連する因子としてBMI低値以外に、高齢、喫煙、心血管疾患の既往、血圧低値が抽出された。

     死因別に見ると、高齢であることは、心血管死、感染症関連死、がん死の全てにおいて有意な関連因子だった。BMI低値は感染症関連死と有意な関連が認められたが〔HR1.56(同1.05~2.33)〕、心血管死やがん死との関連は有意でなかった。このほか、カプランマイヤー法により、BMI低値による死亡リスクへの影響は、後期高齢者と血清アルブミン4g/dL未満の群でより大きくなることが明らかになった。

     これら一連の結果から研究グループでは、「CKD患者においてBMI低値は、全死亡と感染症関連死の独立した重大なリスク因子。感染症予防がCKD患者の転帰改善に寄与する可能性がある」とまとめている。

    糖尿病性腎症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2020年7月20日
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  • 血管攣縮性狭心症患者のイベント抑止に抗血小板薬は無効?

     血管攣縮性狭心症に対する抗血小板薬の有用性を検討した、国内多施設共同研究の結果が報告された。抗血小板薬が処方されていなかった群との比較において、主要心血管イベントの発生率に有意差は認められなかったという。昭和大学藤が丘病院循環器内科の森敬善氏らの論文が、「International Journal of Cardiology Heart & Vasculature」6月9日オンライン版に掲載された。

     狭心症の発作が起きる原因は、冠動脈の動脈硬化と血管攣縮(血管が痙攣して細くなること)の、大きく二つに分けられる。動脈硬化に対しては、動脈内に血栓ができるのを防ぐ抗血小板薬が処方され、前者のタイプの狭心症の治療や心筋梗塞の予防などに広く用いられている。一方、後者の血管攣縮によって起きる狭心症の予後に対する抗血小板薬の影響は、これまで明確にされていなかった。

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     今回報告された研究は、日本冠攣縮研究会によって実施されたもので、国内47施設の血管攣縮性狭心症患者を、抗血小板薬の処方の有無で2群に分けて追跡し、イベント発生率を比較した。登録患者数は1,429人(後方視的に1,276人、前方視的に153人を追跡)、追跡期間の中央値は32カ月。一次評価項目は心臓死、非致死性心筋梗塞、不安定狭心症による入院、心不全、植込み型除細動器(ICD)の作動などで構成される主要心血管イベント(MACE)とし、二次評価項目は全死亡とした。

     全対象者のうち、抗血小板薬が処方されていたのは669人(47%)で、760人(53%)には処方されていなかった。抗血小板薬療法施行群は、高齢で男性が多く、高血圧や糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞の既往がある患者の割合が高かった。これに関連し、カルシウム拮抗薬やスタチン、ACE/ARBなどの薬剤の処方率も、抗血小板薬療法施行群の方が高かった。傾向性スコアによるマッチングにより、これらの背景因子に偏りのない各群335人を抽出した。

     主な患者背景は、抗血小板薬療法施行群、非施行群の順に、年齢65.41±9.88歳、66.67±10.25歳、男性の割合73.7%、75.5%、心筋梗塞の既往2.7%、3.9%、多枝攣縮25.7%、26.9%、ST変化20.9%、18.8%などで、いずれも有意差はなかった。抗血小板薬療法には、低用量アスピリンとチエノピリジン系薬が使われていた。

     追跡期間中のMACE発生率は、抗血小板薬療法施行群5.7%、非施行群3.6%で有意差は認められなかった(P=0.20)。MACEの中で最も多かったイベントは両群ともに不安定狭心症だった。二次評価項目の全死亡も、同順に0.6%、1.8%で有意差がなかった(P=0.16)。

     性別や年齢、保有リスク因子数、心筋梗塞の既往、多枝攣縮、ST変化などで層別解析を行った結果、65歳以上では抗血小板薬療法施行群においてMACE発生リスクの有意な上昇が認められた〔ハザード比2.29(95%信頼区間1.22~4.31)〕。その他の因子については、各群の有意な交互作用は認められなかった。

     研究グループによると、本研究は、血管攣縮性狭心症に対する抗血小板薬療法の効果を調査した日本初の多施設共同研究という。結論としては、「抗血小板薬療法は血管攣縮性狭心症患者のMACEに有益な影響を及ぼさなかった」とし、「どのような血管攣縮性狭心症患者が抗血小板薬療法の恩恵を受けることができるかを明らかにするために、さらなる研究が必要」と今後の展望を述べている。

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    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2020年7月20日
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  • 花の画像を数秒見るだけでストレスは軽減される

     花の“癒し効果”が科学的に証明された。ディスプレイに表示された花の画像を見るだけでも効果があるという。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の望月寛子氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Environmental Psychology」6月号オンライン版に掲載された。

     花を見ると気分が癒されることは多くの人が経験的に理解しているし、プレゼントやお見舞いに花を届けるという習慣も社会に定着している。しかし、花の鑑賞によってストレス反応が本当に軽減されるのかどうかは十分に検証されていない。望月氏らは、その実証を試みた。

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     検討に先立ち、大学生34人(平均年齢20.3歳)に「花と聞いてどんな形を思い浮かべるか」と質問したところ、約6割が、丸を中心に花びらが広がっている絵を描いた。これを参考に、農研機構が育成した「キクつくば1号」という花の画像を、以下の実験に用いた。

     最初に行ったのは、花の鑑賞による血圧や情動への影響を調べる実験。対象者は35人(平均年齢24.4歳)。ディスプレイに不快な画像(事故場面、ヘビや虫など)を6秒間表示した後、花、青空(心地良い画像)、椅子(不快でも心地良くもない画像)の3種類の中から一つを6秒間表示し、その後26秒間は何も表示せず、この間の血圧と情動スコアの変化を調べた。これを一人に対して花、青空、椅子を各10回、計30回、ランダムに施行しその平均を評価した。情動スコアは最もネガティブな感情を「-3点」、最もポジティブな感情を「+3点」とし、対象者自身に採点してもらった。

     その結果、血圧は不快な画像が表示されている6秒間に上昇、画像が切り替わると低下し、花の画像が表示された時の低下幅は最大3.4%に達した。花の画像が表示された時の平均血圧は、青空や椅子の時に比べ約2mmHg有意に低く(P<0.05)、有意差のある状態が8秒間続いた。情動スコアについては、不快な画像から花または青空に切り替わった時に有意に上昇し(いずれもP<0.01)、マイナスからプラスに転じたが、椅子が表示された場合はマイナスのままだった。

     次に行ったのは、コルチゾール(ストレスホルモン)への影響を調べる実験。対象者は32人(平均年齢21.6歳)。不快な画像を4分間表示した後、花、または花のモザイク(使われている色は花と同じ緑や白など)を8分間表示し、唾液中のコルチゾール濃度を測定した。その結果、花を表示した時にコルチゾール濃度が約21%有意に低下した(P<0.01)。一方、花のモザイクを表示した時には有意な変化は見られなかった。

     続いて、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて脳活動を検討した。対象者は17人(平均年齢25.5歳)。不快な画像を表示した後に、花、花のモザイク、固視点(十字の印)を表示し、脳活動の変化を比較したところ、花を表示した時のみ、脳の右半球の扁桃体から海馬にかけて活動が有意に低下することが判明した(P<0.05)。海馬は記憶に、扁桃体は情動に、それぞれ重要な役割を果たす領域であることから、花の画像を見たことでこれら二つの領域の活動が低下して、不快な画像の記憶やネガティブな情動が抑制されたと考えられる。

     これらの結果から研究グループでは、「花の画像がストレス軽減に有効なことが明らかになった」と結論づけている。そのメカニズムとして、花の画像を見ることにより、ストレスから意識をそらす「ディストラクション効果(気そらし効果)」と呼ばれる作用が働いた可能性を考察している。

     なお、今回の研究には花の画像を用いたが、本物の「生花」は画像よりもストレス反応の低減により効果的であることが推察される。ただし生花の観賞が、血圧や心血管疾患、うつ症状などの改善に、どの程度寄与するのかは不明だ。望月氏は、今後の検討でこれらを明らかにしたいと語っている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2020年7月13日
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  • 前向きな気持ちがアレルギーを改善するメカニズム

     アレルギー疾患の症状は、気持ちが前向きなときは軽快することが、その詳しいメカニズムとともに明らかになった。脳内の「ドパミン報酬系」が活性化すると、アレルギー反応が抑制されるのだという。山梨大学医学部免疫学講座の中尾篤人氏らの研究によるもので、詳細は「Allergy」6月13日オンライン版に掲載された。

     花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、精神的なストレスにより症状が悪化することが知られている。その一方で、アレルギー疾患に対する新薬の臨床試験では、プラセボ効果(有効成分のない薬剤であってもそうと知らずに飲んだ際に、暗示などで生じる効果)が強く現れて、新薬の評価が困難になることも少なくない。

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     このように、アレルギーの症状は精神的な影響を受けることは、経験的、疫学的に分かっていた。しかし、なぜ精神的状態によって症状が変わるのかは明らかにされていなかった。中尾氏らは、さまざまな精神的状態の中でもプラセボ効果との関係が深い「前向きな感情(やる気)」を司る脳内の特定部位が、アレルギーに与える影響について検討した。

     前向きな感情は、脳内のドパミン報酬系という神経ネットワークが司っている。そこで、マウスを用い、このドパミン報酬系を以下の三つの方法で活性化し、アレルギー反応への影響を検討した。

     まず行ったのは、マウスのドパミン報酬系を人為的に直接活性化する方法。これには、DREADD(designer receptor exclusively activated by designer drugs)と呼ばれる脳の一部分のみを変化させる新しい技術を用いた。マウスを2群に分け、一方の群にはドパミン報酬系の中心的な部位である中脳腹側被蓋野という部分を、DREADDによって活性化させた。もう一方の群はこの処置を加えない対照群とした。5週間後、アレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンE(IgE)を注射し、蕁麻疹様の皮膚症状が現れた面積を比較したところ、中脳腹側被蓋野を活性化させたマウスでは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

     2番目の方法は、マウスの脳内報酬系を自然なかたちで活性化させる方法。これには、人工甘味料のサッカリンを用いた。2群に分けたマウスの一方の飲水ボトルにサッカリンを混ぜておき、飼育中のマウスが自発的に水を飲むたびに、その「甘味」によって中脳腹側被蓋野が活性化するようにした。もう一方の群には水を与えた。その後、1番目の実験と同様の方法でアレルギー反応を引き起こし、蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、サッカリンを混ぜた水で飼育したマウスは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

     最後は薬によってマウスの脳内報酬系を活性化させる方法を試みた。これには、ドパミンの前駆体のL-ドパを用いた。L-ドパはパーキンソン病の治療にも使われており、脳内でドパミンに変換される。2群に分けたマウスの一方のみにL-ドパを注射し、前述と同様の手法で蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、L-ドパを注射したマウスは、対照群と比べて有意にその面積が小さかった。

     この結果について研究グループは、「前向きな精神状態を生み出す特定の脳内ネットワークが、アレルギーを生じる免疫のしくみと密接にリンクしていることを直接的に証明した世界で初めての知見」としている。そして「脳内ドパミン報酬系の活性化にアレルギー反応を抑える効果のあることが示された」と結論づけるとともに、「現在のアレルギー疾患の治療は投薬が中心だが、患者に前向きな気持ちを保ち続けてもらうよう、コミュニケーションを図ることも大切であることが示唆された」と付け加えている。

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    アトピーとは?アトピー性皮膚炎・アトピー性湿疹に関する基本情報を掲載しています。ハウスダストやアレルギー反応が原因として考えられます。アレルギーテストを受けることで特定することも非常に重要です。
    アトピー性皮膚炎・湿疹をセルフチェックするには?危険度をチェックしてみよう!

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    HealthDay News 2020年7月13日
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