• 緑茶摂取でインフルエンザ予防――日本人職域多施設研究

     緑茶の摂取がインフルエンザ予防になるかもしれない。その可能性を示唆するデータが報告された。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らの研究によるもので、緑茶の摂取量が多い人ほどインフルエンザ罹患リスクが低いという有意な関連が示された。詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に11月2日掲載された。

     南里氏らの研究は、血清ビタミンD値とインフルエンザの罹患リスクを検討する目的で、関東・東海地方の企業4社の従業員を対象に行われたコホート研究のデータを用いて行った、コホート内症例対照研究。なお、そのコホート研究の結果は、ワクチン接種を受けていない群でのみビタミンDレベル高値が、インフルエンザ罹患リスクが低いことと有意に関連するというものだった。

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     コホート研究対象者のうち、緑茶の摂取頻度などの生活習慣に関するアンケート調査にも回答していたのは3,327人(18~73歳)で、そのうち2011年11~2012年4月にインフルエンザと診断されたのは182人だった。インフルエンザを発症しなかった人の中から、年齢、性別、勤務先をマッチングさせた上で、ランダムに1対2の割合で抽出した364人を対照群とした。緑茶の摂取量は、1週間での摂取杯数をもとに、ほとんど飲まない(週に1杯未満)、ときどき飲む(週に1~4杯)、ほぼ毎日飲む(週に5杯以上)の3群に分けて解析した。

     データ欠落などのため、最終的な解析対象は、発症群179人、対照群353人となった。この両群間で、年齢、性別(女性の割合)、BMI、喫煙者率、身体活動量などの他、インフルエンザ罹患リスクに影響を与え得る、ワクチン接種率、通勤のための公共機関の利用状況、血清ビタミンD値は、いずれも有意差がなかった。ただし、学童と同居している人の割合は、発症群が46.9%、対照群が36.8%で、前者が有意に高かった(P=0.02)。

     条件付きロジスティック回帰分析により前記の背景因子で調整後、緑茶をほとんど飲まない群に比較して、ほぼ毎日飲む群のインフルエンザ罹患リスクは、オッズ比(OR)0.61(95%信頼区間0.39~0.95)であり、有意なリスク低下が認められた。また、緑茶摂取量が多いほど、インフルエンザ罹患リスクが低いという有意な関連が存在した(傾向性P=0.028)。

     インフルエンザの罹患を、診断キットを用いて診断されていた症例(65%、116人)に限定して解析した場合、緑茶をほぼ毎日飲む人のインフルエンザ罹患リスクはOR0.68(95%信頼区間0.39~1.18)であった。また、ワクチン接種の有無別に解析すると、非接種群では緑茶をほぼ毎日飲む人のOR0.48(同0.28~0.82)と有意に低下していたのに対し、接種群ではOR0.92(同0.39~2.20)であり、ワクチン接種群では緑茶摂取によるリスク低下が認められなかった。

     著者らは、本研究はもともと緑茶摂取によるインフルエンザ罹患リスクへの影響を検討するためにデザインされたものではないことなど、結果を解釈する際の限界点を述べた上で、「日本人労働者において、緑茶の頻繁な摂取はインフルエンザ罹患リスクの低下と関連している」と結論付けている。今後は、インフルエンザ罹患を診断キットなど客観的な方法で把握することや、ワクチン接種と緑茶摂取との交互作用の検討を含めた追試が望まれる。

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  • 座位行動を睡眠に変えるとメンタル不調が減る可能性――明治安田厚生事業団

     睡眠時間や身体活動が少ないとメンタル面に悪影響が現れることは、多くの人が理解している。しかし、1日は24時間だ。例えば睡眠時間を増やすには何か別の時間を減らさなければならない。では、何の時間を減らすことが効果的なのか?

     この悩ましい問題の解決につながる研究結果が報告された。平日の座位行動や低強度身体活動(ゆっくり歩行や家事など)の時間を1時間減らし、それを睡眠時間に充てると、メンタル不調を抱えたり仕事への意欲が低下したりする確率が減ると試算された。一方で中~高強度の身体活動時間(運動やスポーツなど)を加減してもメンタル面への影響はそれほど大きくないという結果であった。明治安田厚生事業団体力医学研究所の北濃成樹氏、甲斐裕子氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine Reports」12月号に掲載された。

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     北濃氏らは、生活習慣と健康との関係を継続調査している「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」の一環として、1日の行動とメンタルヘルスとの関連を検討した。データ解析には、ある行動に充てる時間を増やしてその他の行動の時間を減らすという、時間配分変更の影響を総合的に判定可能な、組成データ解析(compositional data analysis:CoDA)という統計手法を用いた。

     研究参加者は明治安田新宿健診センターを受診した労働者のうち、10日間加速度計を装着して生活することに同意した1,647人。加速度計の記録と、睡眠時間に関する調査から、24時間をどのように過ごしているかを分析。メンタルヘルスは、心理的ストレスと、ワークエンゲイジメント(仕事への活力)を評価した。心理的ストレスの評価には、K6スコアという指標を用い、スコアが5点を超える場合を、心理的ストレスがある状態と判定。ワークエンゲイジメントの評価には、UWES-9スコアという指標を用い、スコアが3点未満の場合を、ワークエンゲイジメントが低下した状態と判定した。

     加速度計の記録が不十分な人や精神疾患罹患者、睡眠薬服用者などを除いて、1,095人のデータを解析に用いた。平均年齢は50.2±9.5歳、女性が68.6%を占め、23.4%が営業職であり、大半は短大卒以上のフルタイム勤務者だった。

     24時間の行動とメンタルヘルスの関連をゆがめる可能性のある因子(年齢、性別、BMI、学歴、経済状態、婚姻状況、飲酒・喫煙習慣、職種、雇用形態、残業時間)で調整後の解析で、平日の時間配分とメンタルヘルスに、有意な関連が認められた。具体的には、睡眠時間が長いほど心理的ストレスが低く〔K6スコア5点超のオッズ比(OR)0.20、95%信頼区間0.10~0.44〕、ワークエンゲイジメントが高く維持されていた(UWES-9スコア3点未満のOR0.41、同0.20~0.81)。一方、中~高強度身体活動の時間に関しては、メンタルヘルスと関連がなかった。また、休日の睡眠や身体活動の時間は、いずれもメンタルヘルスと関連がなかった。

     さらに、座位行動や低強度身体活動の時間を減らして、それを睡眠に充てることで、メンタル面の問題を抱えにくい可能性があると明らかになった。例えば1日に60分の座位行動を睡眠に充てた場合、心理的ストレスを抱える確率が20.2%減少し、ワークエンゲイジメントが低下する確率が11.4%減少すると推計された。また60分の低強度身体活動を睡眠に充てた場合は、心理的ストレスを抱える確率が26.6%減少すると考えられた。

     著者らは、「平日の時間配分が、労働者のメンタルヘルスと有意に関連していることが分かった。座位行動や低強度身体活動の時間を睡眠に割り振ることで、心理的ストレスをため込まずにワークエンゲイジメントを高めながら働くことにつながり、労働者のメンタルヘルス管理に有効な対策となる可能性がある」と結論付けている。またそのためにも、「企業経営者は長時間労働(残業)を、従業員は日常生活での座位行動(職場での座業、余暇時のテレビ視聴やパソコン利用など)をそれぞれ見直し、睡眠時間を充分確保する取組みが必要」と解説している。

     ただし留意点として、本研究が主に首都圏の企業に勤める比較的活動量の多い労働者での検討であるため結果を一般化できるとは限らないこと、横断研究であり因果関係には言及できないことなどを挙げている。なお、欧米からは、中~高強度身体活動に充てる時間を増やすことがメンタル不調改善に有効という、本研究とは異なる結果が報告されている。その相違の理由については、「日本は世界的に見て睡眠時間が短い国であるため、睡眠時間を増やすことによるメリットが強く現れるのではないか」と考察している。

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  • 黄砂が飛ぶ日は血圧が上がる――京都での検討

     黄砂が飛来する日は血圧が高くなりやすいことが分かった。京都大学大学院医学研究科社会健康医学系の石井正将氏(現在の所属は宮崎県立延岡病院循環器内科)、川上浩司氏らが、10年間にわたる黄砂の飛来状況と健診での血圧測定値との関連を、後方視的に解析して明らかにした。結果の詳細は、「Scientific Reports」に10月19日掲載された。

     大気汚染が高血圧や心血管疾患のリスクを高めることや、黄砂飛来と喘息発作や急性心筋梗塞の発症との間に相関が見られることは知られている。ただし黄砂飛来の血圧への影響はこれまで不明だった。石井氏らは、2005年4月~2015年3月に京都市内の武田病院関連施設で行われた健診データを用いて、黄砂への短期曝露と血圧との関係を検討した。

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     検討対象は、同期間の健診受診者32万5,017人から、降圧薬服用者および未成年者を除外した30万952人分のデータ。気象庁が公開している黄砂情報によると、この期間中の黄砂飛来日は61日であり、その飛来日に受診した人が3,897人、非飛来日に受診した人が29万7,055人だった。

     血圧に影響を与える既知の因子(年齢、性別、平均気温、湿度など)を傾向スコアマッチングで調整し、黄砂非飛来日に受診した群から飛来日受診群と同数の3,897人を抽出、両群の血圧や脈拍を比較した。なお、傾向スコアマッチング後も、受診日の湿度(飛来日54.8±10.3%、非飛来日56.1±11.2%)と、浮遊粒子状物質濃度(49.1±30.4µg/cm3、20.1±10.4µg/cm3)には差があった。

     黄砂飛来日には、血圧と脈拍が上昇するという有意な関連が認められた。具体的には、収縮期血圧はβ=1.85(95%信頼区間1.35~2.35)、拡張期血圧はβ=2.24(同1.88~2.61)、脈拍はβ=0.52(同0.14~0.91)だった。また、収縮期血圧120mmHg以上〔調整相対リスク(RR)1.13(同1.06~1.20)〕や、ステージ1高血圧〔RR1.22(同1.14~1.30)〕、ステージ2高血圧〔RR1.31(同1.15~1.49)〕のリスク上昇と関連していた。なお、ステージ1は130/80mmHg以上、ステージ2は140/90mmHg以上の高血圧。

     黄砂飛来による高血圧患者数への影響(人口寄与割合。PAF)は、収縮期血圧120mmHg以上に関しては11.5%(95%信頼区間5.7~16.7)、ステージ1高血圧に関しては18.0%(同12.3~23.1)、ステージ2高血圧に関しては23.7%(同13.0~32.9)と計算された。この結果は、黄砂飛来日に健診を受けて高血圧と判定された人の約4人に1人は、仮に黄砂が飛来していない日に健診を受けていれば、高血圧と判定されなかった可能性があることを意味する。

     サブグループ解析からは、BMIと年齢により黄砂による血圧への影響が異なることが分かった。BMIに関しては、25以上の肥満群では黄砂飛来日でも血圧が上昇せず、BMI25未満の群との有意な交互作用が認められた。年齢に関しては、41~50歳を底値として、それより若くても高齢でも、黄砂飛来による血圧上昇の影響が大きくなる傾向が見られた。また、非喫煙者は喫煙者よりも黄砂飛来による血圧上昇幅が大きかったが、群間の交互作用は非有意だった。性別や糖尿病の有無では、黄砂飛来による血圧の影響に有意な交互作用はなかった。

     著者らは、「黄砂飛来に起因する高血圧のPAFは比較的高い。よって、黄砂への曝露を避けることは、健康な成人の高血圧発症の予防に有用な可能性がある」と述べている。

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  • 白内障手術を受けた人は幸福感が上昇――慶大など

     白内障の手術を受けた人は、手術を受ける前に比べて主観的幸福感が有意に高くなるというデータが報告された。慶應義塾大学医学部眼科の根岸一乃氏らが行った調査の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月14日掲載された。

     白内障は眼のレンズである水晶体が濁る、高齢者に多い病気で、かすみ目や羞明(まぶしさ)、視力の低下などが現れる。ほとんどの場合、水晶体を人工眼内レンズに置き換える手術によって視機能が回復する。この手術による視機能回復とともに、生活の質(QOL)が向上することが報告されている。根岸氏らは今回、主観的幸福感に及ぼす手術の影響に焦点を当て、変化の有無と変化に影響する因子を検討した。

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     検討対象は、2016年6月~2018年6月に、慶應義塾大学病院および複数の関連施設で白内障手術を受けた患者のうち、調査に協力した247人(平均年齢67.9±11.4歳、女性59.9%)。手術前後の1カ月に、主観的幸福感尺度(Subjective Happiness Scale;SHS)と、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)に基づき睡眠の質を評価、また術後1カ月に手術に対する満足度を評価した。

     なお、白内障には主に、水晶体の周辺部が濁る「皮質白内障」、水晶体の背側が濁る自覚症状が比較的強い「後嚢下白内障」、水晶体の中央部が濁る「核白内障」というタイプがある。今回の検討対象者では、皮質白内障が71人、後嚢下白内障が54人、核白内障(5段階の進行レベルのうち3以上)が54人を占めていた。また、同時期に両眼の手術を受けた人が173人、片眼のみ手術を受けた人が74人だった。手術は全て超音波水晶体乳化吸引術という、標準的な方法で行われた。

     結果について、まず手術前と手術後の変化を見ると、視力関連指標が手術後に改善していたことに加えて、主観的幸福感(SHS)が手術前の4.6±0.7から手術後は4.8±0.7になり、有意な上昇が認められた(P=0.007)。また、睡眠の質(PSQI)も5.1±2.7から4.8±2.7となり、有意な改善が認められた(P=0.009。PSQIスコアは低いほど睡眠の質が高いことを意味する)。なお、手術に対する満足度は5点満点中4.2±0.9だった。

     手術前の主観的幸福感に関連する因子として、多変量解析の結果、核白内障と矯正視力の2つが、有意な関連因子として見いだされた。次に、手術後の主観的幸福感に関連する因子を見ると、高齢であること、および、手術前の主観的幸福感が高いという2項目が、有意に正相関する因子だった。

     続いて、手術前から手術後の主観的幸福感の変化に関連する因子を検討すると、手術後の満足度スコアが高いことのみが有意な因子として抽出された(β=0.169、95%信頼区間0.051~0.287、P=0.005)。そこで、手術後の満足度スコアに関連する因子を検討すると、術後の主観的幸福感の他に、後嚢下白内障の解消(β=0.277、同0.033~0.520、P=0.026)と、術後の睡眠の質が高いこと(β=-0.041、同-0.079~-0.003、P=0.035)が有意に関連していた。

     これらの結果をもとに著者らは、「白内障手術は視機能だけでなく、患者の主観的幸福感も改善する可能性があることが示された。その主観的幸福感は手術に対する満足度と関連しており、手術に対する満足度は、睡眠の質の改善と後嚢下白内障の解消の影響を受けることが明らかになった」と結論付けている。

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  • コーヒー+パンの朝食がメタボ抑制?――京都府医大

     朝食にコーヒーとパンを食べるという人は少なくないだろう。意外なことに、それがメタボリックシンドロームの抑制につながっているかもしれない。その可能性を示唆する、京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らの研究結果が、「Nutrients」に10月11日掲載された。

     小山氏らはこの研究に、10万人以上の健康な一般住民を20年間追跡し、生活習慣や遺伝的背景と疾患リスクとの関連を調査している「J-MICC STUDY(日本多施設共同コーホート研究)」のデータを用いた。J-MICC STUDYの参加者のうち京都で登録された3,539人(男性1,239人と女性2,300人)を対象とするアンケートで、コーヒーと緑茶の1日の摂取頻度と、朝食にパンを食べるか否かを答えてもらった。

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     解析対象者は、年齢が57.6±10.1歳で、BMI22.2±3.24、内臓脂肪面積61.5±32.7cm2であり、15.7%がメタボリックシンドローム(Met-S)に該当した。コーヒー摂取頻度は、1日1回未満が28.0%、1日1回が28.2%、1日2回以上が43.8%、緑茶は同順に50.6%、15.1%、34.2%であり、朝食にパンを毎日食べるという人が41.6%を占めていた。

     まず、コーヒーや緑茶の摂取回数と、BMIおよび内臓脂肪面積との関連を、年齢、性別、喫煙・飲酒・身体活動量、睡眠時間、高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物治療の有無で調整し、重回帰分析を行った。その結果、コーヒー摂取回数が多いほど内臓脂肪面積が小さいという有意な逆相関が認められた(β=-1.652、P<0.001)。コーヒー摂取回数とBMI、緑茶の摂取回数と内臓脂肪面積およびBMIの間には、有意な相関はなかった。

     次に、コーヒーまたは緑茶の摂取頻度がそれぞれ1日1回未満の人を基準として、1日に1回以上飲む人が、肥満(BMI25以上)、内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm2以上)、Met-Sに該当する割合を、前記同様の因子で調整後に比較。すると、コーヒーを1日1回以上飲む人は、内臓脂肪型肥満のオッズ比(OR)は0.746、Met-SのORは0.706であり、有意に有病率が低いことが明らかになった。ただし、肥満の有病率には有意な影響がみられなかった。また緑茶の摂取回数は、肥満、内臓脂肪型肥満、Met-Sのいずれの有病率にも、有意な影響を及ぼしていなかった。

     続いて、朝食にパンを食べるという習慣を追加して検討。その結果、1日1回以上のコーヒー+朝食にパンを食べる人(1,172人)は、肥満のOR0.613、内臓脂肪型肥満のOR0.549、Met-SのOR0.586であり、全ての有病率が有意に低かった。また、1日1回以上の緑茶+朝食にパンを食べる人(730人)も、肥満のOR0.645、Met-SのOR0.659であり、有意に低かった(内臓脂肪型肥満については非有意)。

     以上の結果をまとめると、コーヒー摂取回数が多いほど内臓脂肪面積が小さくなり、1日1回以上のコーヒーの摂取習慣のある人では、内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率が低いことが明らかになった。さらに、コーヒー摂取に加え朝食にパンを食べる人では、内臓脂肪型肥満やMet-S有病率がより低かった。

     このような関連の背景として著者らは、コーヒーにはエネルギー消費を増やす作用が報告されていることや、朝食にパンを食べるとそれに合わせてコーヒーを飲む機会が増える可能性があるといった考察を加えている。ただし今回の検討では、朝食でのパンの摂取とコーヒーの摂取回数に有意な交互作用がなく、それぞれが独立して内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率に影響を及ぼしていた。

     研究グループは、本研究が横断研究のために因果関係には言及できず、また、コーヒーや緑茶、パンの摂取量を自己申告による摂取回数で判断しており精度が十分ではない可能性に触れている。加えて、摂取されているパンを、肥満を来しにくい全粒粉パンか否か区別していないことも、限界点の一つに挙げている。その上で、「1日1回以上のコーヒーの摂取と朝食時にパンを食べることの組み合わせは、少なくとも内臓脂肪型肥満とメタボリックシンドロームの有病率が低いことと関連している」と結論づけている。

    肥満症のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2020年11月9日
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  • 糖尿病による自殺リスクは3.5倍――日本人労働者研究データの解析

     日本人労働者において糖尿病を有することで、自殺リスクが3.5倍上昇するとの研究結果が報告された。一方、前糖尿病(糖尿病予備群)では自殺リスクの上昇は認められなかった。国立国際医療研究センター疫学・予防研究部の福永亜美氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Psychosomatic Research」11月号に掲載された。

     生産年齢人口における主要な死因の一つに自殺が挙げられる。自殺の原因となるリスク因子として、慢性疾患への罹患が示唆されており、糖尿病もその疾患の一つであることが報告されている。しかしながら、海外からの報告も含めこれまでの研究において、自殺する数年前の糖尿病状態(糖尿病、前糖尿病、正常血糖)については検討されていない。特に前糖尿病と自殺に関する研究はほとんどない。また、自殺者の増加が懸念される労働者を対象に、この関連を検討した研究は限られている。以上を踏まえて、著者らは日本人労働者における糖尿病・前糖尿病と自殺との関連について検討した。

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     この研究では、国内の複数企業の労働者を対象とする職域多施設研究(J-ECOHスタディ)のデータを使用し、コホート内症例対照研究を実施した。2012年4月~2020年3月の追跡期間中に自殺し、自殺前の3年間の健康診断において空腹時血糖またはHbA1cの情報を得た56人を症例とした。各症例について年齢・性別・会社をマッチングさせた5人を無作為に抽出し、合計280人を対照群とした。

     自殺する直近に受けた健康診断の記録をもとに、対象者の糖尿病状態を「糖尿病」「前糖尿病」「正常」の3群に分類した。具体的には米国糖尿病学会の基準により、空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上、または糖尿病治療の記録があるものを「糖尿病」、これに該当せず空腹時血糖100~125mg/dLまたはHbA1c5.7~6.4%の場合を「前糖尿病」、これらいずれにも該当しない場合は「正常」とした。自殺した56人の糖尿病状態は、7人が糖尿病、13人が前糖尿病、36人が正常であった。対照群280人では同順に、11人、99人、170人であった。

     条件付きロジスティック回帰分析により、BMI、喫煙状況、高血圧、総コレステロールを調整の上、血糖正常群を基準に自殺リスクを比較した。その結果、糖尿病群ではオッズ比3.53(95%信頼区間1.05~11.91)となり、自殺リスクが有意に高いという関連が認められた。一方、前糖尿病ではオッズ比0.67(同0.32~1.41)と、有意な関連は見られなかった。

     著者らは本研究を、「糖尿病および前糖尿病と自殺リスクとの関連を前向きに調べた数少ない研究の一つ」と位置づけ、「日本人労働者において糖尿病を有することは、自殺リスクが高いことと関連している。ただし、前糖尿病での自殺リスク上昇は認められなかった」と結論をまとめている。今後は糖尿病と自殺との関連を説明する背景に着目する必要がある。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2020年11月9日
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  • COVID-19感染リスクは年齢によらない――北大

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡リスクが高齢者で高いのは、COVID-19への感染リスクが高いからではなく、感染後に重症化しやすいためとする研究結果が報告された。北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターの大森亮介氏らが、数理学的な手法を用いて明らかにした結果であり、詳細は「Scientific Reports」に10月6日掲載された。

     COVID-19のパンデミックが続いているが、流行の規模は国ごとに大きく異なっている。その差は、人口当たりの感染者数や、1人の感染者から新たな感染者が何人発生しているかを表す「基本再生産数(R0)」からも把握可能だ。例えば2020年春時点のR0は、日本が1.7だったのに対し、スペインでは2.9、イタリアでは2.4~3.3と高値であったことが報告されている。

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     しかしその一方で、COVID-19による死亡が高齢者に多いことは、世界共通の現象だ。高齢者のCOVID-19による死亡リスクが高い理由として、理論的には2つの仮説が立てられる。1つは若年者よりも高齢者の方がCOVID-19に感染しやすいため、もう1つは感染のしやすさは同等でも高齢者は感染後に重症化しやすいためという考え方だ。大森氏らは、年齢による他人との接触頻度の違いや家庭外での行動制限なども変数に組み入れた数理モデルを構築し、上記いずれの仮説が妥当かを検討した。

     まず、日本とスペイン、およびイタリアの3カ国で、COVID-19による死亡者の年齢分布を比較した。その結果、前述のように基本再生産数に大きな違いがあるにもかかわらず、死亡者の年齢分布はほぼ一致することが確認された。

     次に、「高齢者はCOVID-19に感染しやすい」という1つ目の仮説に基づくモデルを用いて、死亡者の年齢分布をシミュレーションした。すると、基本再生産数が異なると、死亡者に占める60~70代の高齢者の割合に大きな差が生じてしまうことが明らかになった。

     具体的には、基本再生産数が低い場合は死亡者に占める60代の割合が低い一方で70代は高くなり、基本再生産数が高い場合はその逆になると想定され、現実との乖離が認められた。仮に、実際に起きている死亡リスクの差を年齢による感染リスクの違いで説明しようとすると、高齢者の感染リスクを非現実的なレベルの大きさに設定しなければならなかった。

     他方、「高齢者は感染後に重症化しやすい」という2つ目の仮説に基づくモデルで行ったシミュレーションの結果は、基本再生産数が異なっても死亡者の年齢分布はほぼ同一であり、世界で観察されている実際のデータと一致した。

     以上の検討から大森氏らは、「COVID-19による死亡が高齢者に偏っているのは、COVID-19への感染しやすさではなく、感染後の病状の進みやすさが年齢によって異なるためと考えられる」と結論づけている。その上で、「COVID-19重症化の年齢依存性メカニズムの解明により、治療の進歩が期待される」と付け加えている。

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    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2020年11月2日
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  • 子ども手当は子どもを幸せにしているか?――医科歯科大

     子どもの貧困は世界各国で深刻化しており、わが国でも約7人に1人に当たる13.5%の子どもが貧困に該当し、その割合はOECD加盟国の平均より高いことが指摘されている。そのような格差を縮小することを目的に、養育世帯への児童手当(子ども手当)が社会的サポートの一つとして運用されている。しかし、子ども手当が実際に子どもの健康や保護者の行動にプラスになっているかどうかは、これまで明らかになっていなかった。この点にスポットを当てた東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男氏、研究室所属大学院生の小山佑奈氏らの研究結果が、「BMC Public Health」に10月6日掲載された。

     小山氏らはこの研究に、2016年に高知県で実施された「高知県子どもの生活実態調査」のデータを用いた。同調査は、高知県内の通信教育学校と特別支援学校1校を除く全ての公立・私立の小学1年生、5年生、中学2年生の生徒と保護者を対象に、子どもたちの生活環境と健康状態を把握するために実施された横断調査。

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     保護者には、子ども手当受給の有無、子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire;SDQ)、子どもの体重と身長(BMI)、子どもに対する投資に関する質問などに回答してもらった。抑うつ症状(Depression Self-Rating Scale;DSRS)と主観的健康観(Self-rated health;SRH)は、子ども自らに評価してもらった。

     全調査対象8,207組の親子のうち、子ども手当を受給していないのは219組(2.7%)だった。子ども手当を受給していない世帯は受給世帯に比べて、県都(高知市)に居住している割合が高く、世帯収入や学校以外にかける教育費が高いという有意差が見られた。また、両親ともに高齢で教育歴が長く、喫煙率や精神的苦痛レベルは低いという点にも有意差が認められた。

     保護者の年齢や世帯人員・収入、居住地域、労働時間、心理的苦痛(K6スコア)、および子どもの性別や学年などの潜在的な交絡因子を傾向スコアマッチングにより調整して、背景因子の一致した各群217組を抽出。子ども手当受給の有無と、子どもの健康状態や問題行動のレベルとを比較した。

     その結果、保護者が報告した子どもの問題行動(SDQの総合的困難さスコア)は、子ども手当受給世帯の方が有意に少なく、その差は1.29点(95%信頼区間−2.32~−0.25)だった。また、過体重(BMIが+1標準偏差以上)の割合は、オッズ比0.51(95%信頼区間0.29~0.91)で受給世帯の子どもの方が低かった。

     その他、低体重の割合、SDQの向社会的な行動スコア、抑うつ症状のスコア、主観的健康観には、有意差が見られなかった。学校以外にかける教育費や、家族行事の有無、親子の関わりも、傾向スコアマッチング後は有意差が見られなかった。

     これらの結果から著者らは、「子ども手当は、子どもの問題行動や肥満のリスクを減らす可能性があることが示唆された。今後、縦断調査などにより子ども手当の影響を詳細に検討し、子どもの健康との関係のメカニズムを明らかにする必要がある」とまとめている。

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    HealthDay News 2020年11月2日
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