• 魚を食べると認知症になりにくい?――JPHC研究

     日本人一般住民を15年間追跡した研究から、魚介類の摂取量が多いことが認知症リスクの低下につながる可能性が示された。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Journal of Alzheimer’s Disease」に2月2日掲載された。

     これまでの研究から、認知症の3分の1はそのリスク要因を取り除くことで予防できる可能性が報告されており、また、魚介類の摂取が認知症リスク低下と関連しているとの報告もある。しかし、主に欧米で行われた研究報告のメタ解析では、魚介類摂取による明確な認知症抑制効果は示されなかった。その理由として、それらの研究は追跡期間が短いために、長期間かけて徐々に進行する認知機能低下の差異を把握できなかった可能性や、欧米人の魚介類摂取量は日本人に比べて少ないことが関係していると考えられている。

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     それに対して今回発表された研究の対象は日本人であり、追跡期間も15年と長いことが特徴。研究の対象は、長野県佐久保健所管内の居住者のうち、1995年と2000年に実施した食事調査アンケートに回答し、かつ2014~2015年実施の「こころの検診」に参加し認知機能が評価された1,127人。2回の食事調査を基に、魚介類とn-3系多価不飽和脂肪酸(魚油に豊富な脂肪酸)の摂取量の平均値を算出。それらの摂取量の四分位で対象者を4群に分け、軽度認知障害、認知症のリスクとの関連を調べた。

     こころの検診によって380人が軽度認知障害、54人が認知症と診断された。認知機能低下に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、学歴、うつ・脳卒中・心血管疾患・糖尿病・がんの既往歴、飲酒・喫煙・身体活動習慣)を統計学的に調整後、魚介類の摂取量が多いほど認知症リスクが低いという関連が認められた。

     具体的には、魚介類の摂取量の第1四分位群(摂取量中央値56g/日)に比較し、第2四分位群はオッズ比(OR)0.43(95%信頼区間0.20~0.93)、第3四分位群はOR0.22(同0.09~0.54)、摂取量の最も多い第4四分位群(摂取量中央値82g/日)はOR0.39(同0.18~0.86)であり、いずれもリスクが有意に低かった(傾向性P=0.01)。

     n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量と認知症リスクについても同様の関係にあり、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)は、第2四分位群OR0.39(同0.18~0.84)、第3四分位群OR0.30(同0.13~0.70)、第4四分位群OR0.28(同0.12~0.66)だった(傾向性P<0.01)。エイコサペンタエン酸(EPA)も第3四分位群OR0.39(同0.16~0.92)、第4四分位群OR0.44(同0.19~0.98)で有意なリスク低下が認められた(傾向性P=0.04)。また、ドコサペンタエン酸(DPA)も同様だった(傾向性P=0.03)。

     一方、軽度認知障害については、魚介類およびn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量との関連が見られなかった。その理由として研究グループでは、軽度認知障害は認知機能正常な人との差がわずかであることや、認知障害が軽快する人もいるため、1回の評価では診断精度が十分ではなかったことの影響が考えられるとしている。

     なお、今回の調査において魚介類を最も多く取っていた群の摂取量中央値である1日82gという量は、魚1切れをやや上回る量と推計されるという。ただし、アンケートによって把握した摂取量であるため正確な推定は困難であり、この量はあくまで参考値とのことだ。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2021年3月22日
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  • SNS利用頻度とメンタルヘルスへの影響――都民対象の調査

     ソーシャルネットワークサービス(SNS)の利用とメンタルヘルスとの関連が報告された。メンタルヘルス状態はLINE利用者で良好であり、一方でTwitter利用者は良くない傾向が見られるという。東京都健康長寿医療センター研究所の桜井良太氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月3日掲載された。

     これまでの研究から、メンタルヘルスの維持には他者との交流が重要であることが分かっている。しかし、近年急速に普及してきたSNSでの交流が、メンタルヘルスの維持に有効であるかについては明らかでない。そこで桜井氏らは、都民を対象としてアンケート調査を行い、SNS利用の実態を把握するとともに、メンタルヘルスとの関連を調査した。

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     無作為に抽出した都民2万1,300人にアンケートを郵送、回答の得られた9,250人(回答率43.3%)から内容が不完全なものを除外し、8,576人を解析対象とした。評価項目は、主観的幸福感(WHO-5スコア)、悩みや抑うつ(K6スコア)、および孤独感(よく感じる~ほとんど感じないの四者択一)という3項目。なお、SNS利用頻度は、閲覧と発信に分けて、「毎日」「週に数回」「月に数回」「使用しない」の4つのカテゴリーに分類し、閲覧もしくは発信が週に数回以上を「頻繁な利用」と定義した。また、解析は年齢により若年(18~39歳の2,543人)、中年(40~64歳の3,048人)、高齢者(65歳以上の2,985人)という3つの層に分けて行った。

     最初に、SNSを利用するための機器(スマートフォン、タブレット、パソコン)の所有率を見ると、若年層はほぼ100%、中年層も95%以上であり、高齢者でも62.3%に上った。次に、利用しているSNSの種類を見ると、全世代でLINEが最も多く、Twitter、Instagram、Facebookの順に続いた。LINEは60代の半数、70代の3分の1が利用していた。

     メンタルヘルスとの関連は、結果に影響を与え得る因子(性別、年齢、教育歴、生活環境、併存疾患、主観的健康感、経済状態、外出頻度、対面での対話や電話といったSNS以外の従来型コミュニケーションの頻度など)で調整後、以下のような結果が得られた。

     まず、主観的幸福感については、若年層のInstagramの頻繁な閲覧(B=0.89、95%信頼区間0.43~1.36)、中年層のFacebookの頻繁な発信(B=1.00、同0.15~1.84)が、主観的幸福感の高さと関連していた。また高齢者の場合、LINEの頻繁な発信(B=0.85、同0.41~1.29)および閲覧(B=0.97、同0.51~1.42)が、主観的幸福感の高さと関連していた。

     次に、悩みや抑うつについては、若年層のInstagramの頻繁な閲覧(B=-0.88、同-1.30~-0.45)、中年層のLINEの頻繁な発信(B=-0.52、同-0.87~-0.16)が、悩みや抑うつ傾向が低いことと関連していた。しかしその反対にTwitterの頻繁な利用は、若年層(発信B=0.83、同0.34~1.32。閲覧B=0.72、同0.33~1.12)と、中年層(発信B=0.98、同0.15~1.80。閲覧B=0.75、同0.34~1.17)ともに、うつや不安傾向が強いことと関連していた。高齢者では、SNSの利用と悩みや抑うつ傾向との関連は認められなかった。

     最後に、孤独感については、中年層のTwitterの頻繁な発信〔オッズ比(OR)2.22、同1.35~3.65〕と閲覧(OR1.70、同1.28~2.25)は、いずれも孤独感を感じる割合が高いことと関連していた。また高齢者のTwitterの頻繁な発信も、同様の関連が見られた(OR14.3、同4.00~51.2)。若年層では、SNSの利用と孤独感との関連は認められなかった。

     このほか、SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)が少ない人は、年齢層を問わず、全てのメンタルヘルスの指標が悪い傾向が認められた。

     本研究の結果について著者らは、「横断的な研究であり、因果関係を示したものではない」としている。その上で、「顔の見えるFacebookやLINE、または、肯定的なイメージのやりとりが主体になることの多いInstagramであれば、メンタルヘルスの維持に役立つ可能性がある。他方、匿名性と自由度の高いTwitterは、その逆の影響が現れる危険性を含んでいる」と考察し、「バランスのとれたSNS利用が必要と言える」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年3月22日
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