• 心血管死を減らすにはCKDを減らす必要あり――特定健診データの解析

     特定健診のデータを利用して、生活習慣と全死亡、がん死、心血管死のリスクの関係を、慢性腎臓病(CKD)の有無別に比較して解析した結果が報告された。健康的な習慣に該当する項目数が多くなるに従い、いずれの原因による死亡リスクも低下するという関係が認められた。しかし、CKDがある場合は健康的な生活習慣の該当数が多くても、心血管死リスクはあまり低下しない傾向があるという。

     一般住民では、禁煙や健康的な食生活、適正体重の維持、身体活動、節酒という5つの健康的な習慣の該当数が多いほど、死亡リスクが低下することが明らかになっている。しかし、CKD患者でも同様の関連が存在するかは明確でない。そこで、新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学寄附講座の若杉三奈子氏らは、2008年の特定健診のデータ(福島、大阪、沖縄など1府6県)を解析してその関係を検討した。結果の詳細は、「Internal Medicine」に2月15日掲載された。

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     解析対象者数は40~74歳の26万2,011人で、そのうち4万8,462人(18.5%)がCKDを有していた。追跡期間4.7年(中央値)で3,471人(CKD群948人、非CKD群2,523人)が死亡。10万人年あたりの粗死亡率は、CKD群476.5、非CKD群267.8だった。全死因の約半分はがんで、心血管疾患が2番目に多く、約5分の1を占めていた。

     年齢と性別で調整後、非CKD群に対するCKD群の死亡率(標準化死亡比)は、全死亡が1.32(95%信頼区間1.24~1.41)、がん死が1.15(同1.05~1.26)、心血管死が1.94(1.69~2.20)といずれも有意に高く、心血管死は2倍近いリスク差があった。

     年齢、性別に加え、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中の既往などで調整後、健康的な習慣の該当数が多いほど死亡リスクが低下するという有意な傾向が、CKDの有無を問わず認められた。しかし、健康的な習慣の該当数が同じ場合、CKD群の死亡リスクは非CKD群より常に高かった。特に心血管死に関しては、健康的な5つの習慣の全てが該当するCKD患者でも、1~2個しか該当しない非CKD者と同程度のリスクがあることが分かった(交互作用P=0.07)。

     また、上記と同じ因子で調整後も身体活動が多いことは、CKDの有無を問わず、全死亡、がん死、心血管死のリスク低下と関連していた。健康的な食生活(朝食を欠食せず夕食後に軽食を取らないこと)は、全死亡のリスク低下と関連していた。

     一方、禁煙はCKDの有無を問わず、全死亡とがん死のリスク低下と関連していたが、心血管死についてはCKD群での有意なリスク低下が認められず〔ハザード比(HR)0.83、95%信頼区間0.58~1.20〕、非CKD群(HR0.43、同0.34~0.56)との相違が観察された(交互作用P=0.008)。ただしこの点は、かつて喫煙していて現在は禁煙している前喫煙者の存在が、結果に影響を及ぼしている可能性があるという。

     反対に、心血管死リスクに対する健康的な食生活の保護効果は、非CKD群では認められず(HR1.11、同0.85~1.45)、CKD群では認められ(HR0.68、同0.50~0.93)、CKD患者でのみ有意という相違が観察された(交互作用P=0.04)。

     以上から著者らは、「日本人の大規模コホート研究により、CKDの有無に関係なく、5つの健康的な習慣の数が増えるにつれて、全死亡とがん死のリスクが減少することが明らかになった。しかし心血管死のリスクはCKDによって変化する。これは、心血管死を減らすにはCKDの予防が重要であることを強く示唆している」と結論付けている。

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    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2021年3月29日
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  • 口の中の健康状態が悪いと認知症医療費がかさむ――三重県での調査

     歯の本数や歯周病の重症度が認知症の医療費と有意に関連することが、日本人対象の研究から明らかになった。愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の嶋﨑義浩氏らが、三重県在住高齢者の医療データを解析した結果であり、詳細は「American Journal of Alzheimer’s Disease and Other Dementias」に2月25日掲載された。

     認知症は世界的に増加しており、医療・福祉財政の負担が問題になりつつある。一方、口腔健康状態が認知症リスクと関連することが、近年注目されている。しかし、医療費の視点から両者の関係を検討した研究は見られない。

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     嶋﨑氏らは、三重県の後期高齢者医療制度のデータを用いて、三重県歯科医師会が行った歯科検診の結果と認知症医療費との関連を検討した。口腔健康状態は、歯の本数、歯周病の重症度(Community Periodontal Index;CPI)で評価した。医療費は、2015年4月~2019年3月の4年における、主病名が認知症であった患者の各医療機関での医療費の合計金額とした。その他、アンケートにより、喫煙習慣、BMI、既往疾患(脳卒中、心血管疾患、糖尿病)を把握した。

     2014年度に歯科検診を受診した人は4,984人で、そのうち同年度内に認知症治療を受けず、かつ2019年3月まで生存していた4,275人(75歳が2,573人、80歳が1,702人)を解析対象とした。4年間の追跡中、201人が新たに認知症の治療を受けていた。

     認知症の人の医療費について、まず残っている歯の本数で比較すると、20本以上ある人に対して、9本以下の人の認知症医療費比は3.79倍であり、有意に高額だった(P=0.006)。また、CPIが0~2(歯周病なし~歯科検診時の歯肉出血または歯石のみ)の人に対して、CPIが4(6 mm以上の歯周ポケット)の人の医療費比は4.04倍高額だった(P=0.009)。なお、歯の本数が10~19本の場合やCPIが3(4~5 mmの歯周ポケット)の場合の医療費は、対照群と有意差がなかった。

     この関連は、医療費に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、現在の喫煙習慣、BMI、および疾患既往歴)の影響を統計学的に調整後にも、引き続き有意だった。具体的には、歯が20本以上ある人に対して9本以下の人では4.13倍(95%信頼区間1.79~9.56)、CPI0~2の人に対してCPI4の人では3.48倍(同1.71~7.08)高額だった(いずれもP=0.001)。

     著者らは、本研究の解析対象が歯科検診受診者であるため、口腔衛生への意識が高い人が多いという選択バイアスが存在する可能性があるとしている。実際に本研究の参加者の口腔衛生状態は、同年齢の一般住民に比較して良好だったという。また、BMIが本人の申告によるため正確とは言えないことや、他の交絡因子の影響が調整できていないことも、解釈上の注意点としている。

     これらの限界点を挙げた上で、著者らは「口腔健康状態は、認知症の医療費と有意に関連している。歯の喪失を防ぎ、健康な歯周状態を維持することは、医療費の抑制につながる可能性がある」と結論付けている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2021年3月29日
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