• 孤立している高齢者のメンタルを犬が救う?――大田区民での調査

     社会的に孤立した生活の高齢者はメンタルヘルスが悪化しやすいことが知られているが、犬を飼っている人や過去に飼ったことのある高齢者は、そのリスクが低いという研究結果が報告された。一方、猫を飼うことには、そのような効果が認められなかったという。東京都健康長寿医療センター研究所の池内朋子氏らの研究によるもので、詳細は「Animals」に2月24日掲載された。

     ペットを飼うことによるメンタルヘルスへの影響を検討した研究は少なくないが、社会的に孤立した状態の高齢者での研究は少ない。池内氏らは、そのような高齢者でもペットを飼うことのメリットがあるとの仮説を立て、東京都大田区の住民を対象に行われている「大田元気シニアプロジェクト」のデータを用いて以下の検討を行った。

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     2016年8月に大田区在住の65~84歳で要介護状態でない高齢者1万5,500人にアンケートを郵送。得られた回答1万1,925件(回答率76.9%)から、記載内容に不備のあるものなどを除き、9,856人分の回答を解析対象とした。対象者の平均年齢は79.9±5.5歳、50.1%が女性であり、19.6%は独居だった。また93%以上の人は、移動や買い物、金銭管理などを自分自身でできると回答した。

     「友人や隣人と会ったり外出したりする頻度」、「電話で友人や隣人と話す頻度」などの4つの質問に対する全ての回答が「週に1回以下」だった場合に、「社会的に孤立している」と定義すると、家族と同居している人でのその割合は29.7%、独居の人では25.3%だった。

     メンタルヘルス状態は、世界保健機関による指標(WHO-5)で評価した。これは主観的な幸福感を25点満点でスコア化するもので、点数が低い場合にうつ傾向が強いと判定される。本研究では13点未満をメンタルヘルスが不良と定義したところ、27.7%がこれに該当した。

     ペットの飼育経験については、14.1%が現在、犬または猫を飼っており、29.7%は過去にいずれかを飼っていた時期があり、56.2%は犬や猫を飼ったことがなかった。

     これらのデータを基に、社会的孤立やペットの飼育経験とメンタルヘルス状態との関連を、多重ロジスティック回帰分析により検討した。なお、メンタルヘルス状態に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、独居/同居、収入、居住地域)は調整した。

     まず犬の飼育経験の有無で比較すると、犬の飼育経験があり社会的に孤立している高齢者に比べ、犬の飼育経験がなく社会的に孤立している高齢者は、メンタルヘルス不良の起こる可能性が有意に高いことが明らかになった〔オッズ比(OR)1.22、95%信頼区間1.03~1.46〕。その一方で、猫の飼育経験の有無で比較した場合、メンタルヘルス不良の起こる可能性に有意な差はなかった(OR1.11、同0.90~1.37)。

     なお、社会的に孤立していない高齢者では、犬や猫の飼育経験の有無にかかわらず、メンタルヘルス不良に該当する確率が、ペットの飼育経験があり社会的に孤立している高齢者より有意に低かった。

     この結果を基に著者らは、「犬の飼育経験がある社会的に孤立した高齢者のメンタルヘルス状態は、飼育経験がない人よりも良好と言える」と結論付けている。なお、猫の飼育経験と犬の飼育経験とで異なる結果となった理由については、犬を散歩させる習慣がメンタルヘルスに好影響をもたらす可能性や、犬は人間との豊かな意思疎通が可能であることが関係しているのではないかと考察している。

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    HealthDay News 2021年4月19日
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  • 家庭血圧を下げるには減塩・野菜摂取+睡眠効率の改善を

     近年、血圧管理の指標として診察室血圧(医療機関での測定値)よりも、家庭血圧(自宅での測定値)が重視されるようになった。その家庭血圧に影響を及ぼす因子として、従来から知られている肥満や飲酒に加え、尿中ナトリウム/カリウム比(尿Na/K比)と睡眠効率が重要であることが明らかになった。「Hypertension Research」に2月15日、北海道大学大学院医学研究院公衆衛生学教室/東北大学東北メディカル・メガバンク機構の平田匠氏らの論文が掲載された。

     尿Na/K比は塩分摂取量および野菜・果物の摂取量のバランスを示す指標とされ、この値が高い場合、塩分の摂取過多、もしくは野菜・果物の摂取不足と考えられる。一方、睡眠効率は就床時間に占める睡眠時間の割合であり、この値が低い場合、睡眠の質が良くないと考えられる。血圧管理における尿Na/K比や睡眠効率の重要性を指摘した研究が増えているが、それらが日本人で高血圧の有病率にどのくらいの影響を及ぼすかを検討した報告はない。

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     平田氏らは、東北大学東北メディカル・メガバンク機構がオムロン ヘルスケア(株)と共同で行っている成人を対象としたコホート研究の参加登録時のデータを用いて横断研究を実施し、家庭血圧高値に対する従来の危険因子(肥満、中等度以上の飲酒)と、その他の危険因子(尿Na/K比高値、睡眠効率低値)の集団寄与危険割合(Population Attributable Fraction;PAF)を算出した。各危険因子は以下の基準で定義した。肥満はBMI25以上、中等度以上の飲酒はエタノール換算1日当たり46g以上で定義し、尿Na/K比は5.20〔全解析対象者の第3四分位数(上位25%に該当する値)〕以上を高値、睡眠効率は85%未満を低値と定義した。また、朝の平均家庭血圧が135/85mmHg以上、または高血圧治療を受けている人を「家庭血圧高値」と定義した。

     解析対象者は1,384人(男性28.4%、年齢58.8±12.9歳、BMI22.9±3.3)であり、各危険因子を有する対象者の割合は、肥満22.5%、中等度以上の飲酒14.2%、尿Na/K比高値24.9%、睡眠効率低値13.7%であった。また、解析対象者のうち、18.6%が従来の危険因子のみ、20.2%がその他の危険因子のみを有し、両者を有していたのは14.3%であった。

     全解析対象者の39.0%に家庭血圧高値を認めた。多変量解析で血圧に影響を与え得る因子(年齢、性別、喫煙状況、1日の平均歩数の対数変換値)で調整後、評価した全ての因子が家庭血圧高値と有意に関連していた。各因子の家庭血圧高値に対する相対危険度は、肥満でオッズ比(OR)3.14(95%信頼区間2.33~4.25)、中等度以上の飲酒でOR1.52(同1.06~2.19)、尿Na/K比高値でOR1.40(同1.04~1.88)、睡眠効率低値でOR2.51(同1.71~3.70)となった。また、各因子の家庭血圧高値に対するPAFは同順に、23.7%、6.5%、7.9%、11.6%であった。

     従来の危険因子とその他の危険因子で分類すると、従来の危険因子の家庭血圧高値に対する相対危険度はOR2.80(同2.15~3.65)、PAFは30.2%であり、その他の危険因子の家庭血圧高値に対する相対危険度はOR2.50(同1.93~3.22)、PAFは39.0%であった。また、従来の危険因子がなくても、その他の危険因子がある場合は家庭血圧高値の相対危険度がOR1.68(同1.19~2.37)と有意に高かった。このほか、評価した4つの危険因子の家庭血圧高値に対するPAFを年齢で層化して算出したところ、65歳未満は44.9%となり、65歳以上の35.2%よりも高い値を示した。

     以上をまとめると、従来の危険因子とその他の危険因子の双方が家庭血圧高値と有意に関連しており、PAFは肥満が最も高く、以下、睡眠効率低値、尿Na/K比高値、中等度以上の飲酒と続いた。また、従来の危険因子がない場合でも、睡眠効率低値と尿Na/K比高値が該当する場合は、家庭血圧高値の相対危険度が有意に高いこと、および、各危険因子の家庭血圧高値に対する影響は高齢者より若年者の方が大きいことが明らかになった。

     著者らは、「高血圧の予防には、従来の危険因子に加えて、尿Na/K比と睡眠効率の改善が望まれる」と結論付けている。

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    HealthDay News 2021年4月19日
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