• 立ち仕事・歩き仕事の人はCKDリスクが低い――J-ECOHスタディ

     日本人労働者において、仕事中の姿勢が「立位や歩行中心」の人は「座位中心」の人と比べて慢性腎臓病(CKD)発症リスクが低いことが分かった。その一方で、余暇時間の運動や通勤のための歩行時間はCKDリスクと関連がなかった。国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学・予防研究部の山本尚平氏らの研究結果であり、詳細は「Scientific Reports」に6月10日掲載された。

     身体活動量とCKD発症リスクには有意な負の関連があることが、メタ解析の結果として報告されている。しかし、総死亡や心血管疾患をアウトカムにした先行研究から、職業上の身体活動と余暇時間の身体活動とでは健康に与える影響が異なることが示唆され、「身体活動のパラドックス」と呼ばれている。ただし、CKDに関してはこの点について十分に検討されていない。以上を踏まえて著者らは、身体活動量を、余暇時間、仕事中、通勤という3つの区分で評価し、これらとCKDの発症リスクとの関連を検討した。

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     この研究では、国立国際医療研究センターが国内十数社の企業と共同で行っている「職域多施設研究(J-ECOHスタディ)」のデータのうち、詳細に身体活動量を評価している1社のデータを使用した。2006年度に同社で健康診断を受診した20~65歳の労働者のうち、ベースライン時点でCKDに該当する人や解析に必要なデータが欠落している人を除いた1万7,331人(平均年齢42.8±10.0歳、男性90%)について分析した。

     身体活動量は、同社で健診用に開発された質問票を用いて評価した。余暇の運動は週当たりの身体活動量(METs-時/週)により4段階に分類し、仕事中の身体活動は「座位中心」「立位や歩行が中心」「より活発」に分類した。通勤については往復の歩行時間が「20分未満」「20分以上40分未満」「40分以上」に分類した。CKDは、血清クレアチニン値をもとに推算した糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満、あるいは尿タンパクが(1+)以上の場合と定義した。2019年3月の追跡終了までに健康診断でCKDが初めて確認された時を発症日とした。

     追跡期間中(中央値10.6年、14万7,752人・年)、4,013人(23%)がCKDを発症した。Cox比例ハザード分析により、年齢、性別、ベースライン時のeGFR、喫煙・飲酒習慣、職種・職位、残業時間、交代勤務への従事、通勤手段、睡眠時間で調整後、ぞれぞれの身体活動量におけるCKDの発症リスクを推定した。その結果、仕事中の身体活動が「座位中心」の人と比較すると、「立位や歩行中心」の人のCKD発症ハザード比(HR)は0.88(95%信頼区間0.81~0.96)、「より活発」な人はHR0.89(同0.78~1.02)であった(傾向性P=0.020)。一方、余暇時間の身体活動量(傾向性P=0.255)と通勤時の身体活動量(傾向性P=0.139)についてはCKD発症との関連を認めなかった。

     著者らは、「本研究の結果から、座り仕事よりも、立ち仕事や歩き仕事に従事している人の方が腎臓病のリスクが低い可能性があることが分かった。スタンディングデスクの導入などによる仕事中の座位時間の短縮が腎機能低下の予防につながることが期待される」と述べている。

     なお、これまでの「身体活動のパラドックス」に関する研究では、余暇時間の身体活動は心血管疾患や総死亡のリスクが低いことと関連し、職業上の身体活動はその逆という結果が報告されている。CKDをアウトカムとした本研究ではそれとは一致しない結果が示されたことについて、「身体活動のパラドックスの存在は、調査対象者や研究対象となるアウトカムの違いに依存するのではないか」との考察を加えている。

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    糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。

    糖尿病性腎症リスクを体の症状からセルフチェック!

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    HealthDay News 2021年7月26日
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  • 緩やかな低糖質食によるメタボ改善を保健指導で実証

     糖質(炭水化物から食物繊維を除いたもの)の摂取量を1食20g以上40g以下に制限する「緩やかな低糖質ダイエット」を用いた保健指導によって、メタボリックシンドローム(MetS)や糖・脂質代謝が改善したとの報告が、「Diabetes, Metabolic Syndrome and Obesity : Targets and Therapy」に6月23日掲載された。北里大学北里研究所病院糖尿病センターの山田悟氏らが、コンビニエンスストアやタクシー会社社員対象に行った研究であり、著者らは「緩やかな低糖質ダイエットの有効性を保健指導領域で評価した日本初の研究」と述べている。

     インスリン分泌を刺激し血糖を上昇させるように働く糖質の摂取を減らし、タンパク質や脂質を増やす低糖質ダイエットは、近年、減量や血糖管理目的で行う人が増えている。ただし、厳格すぎる糖質制限食は、し好に合わなかったりコスト負担のため長続きしないことが多く、リバウンドを招く懸念も指摘されている。それに対して山田氏らは、20~40gの範囲内で毎食の糖質摂取量を減らし、1日10gの糖質でし好品も楽しむ「緩やかな低糖質ダイエット」を提唱している。

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     この研究の参加者は、ローソンの店員と日の丸交通のドライバーから採用された。いずれも交替勤務または長時間の座業のために食事・運動習慣が乱れやすく、MetSリスクが高くなりがちな職場環境。社内告知を通じてこの研究への参加に関心を示した人のうち、特定保健指導判定基準を満たし、糖尿病や脂質異常症に対する薬剤が処方されていない101人が参加した。

     効果的な指導を行うために、1回当たりの介入対象者数を上限30人として、2016年春から2018年秋にかけて計6回、保健指導が実施された。指導期間は12週間で、60分間のセミナーにより糖尿病やMetS、緩やかな低糖質ダイエットのエビデンスなどを解説。また、緩やかな低糖質ダイエットに則したメニューのあるレストランの紹介、食品の選択方法などを指導した。参加者は介入期間中、毎週メールやファックスで食事摂取状況と体重を指導者に報告し、指導者はアドバイスを返信した。また、積極的な運動を奨励した。

     評価項目は、体重やBMI、HbA1c、血清脂質値の変化。一部の参加者では、MetSとの双方向性の関連が報告されている睡眠時無呼吸症の状況も検討した。

     12週間の介入によって、体重は中央値82.5kgから79.7kg、BMIは同27.3kg/m2から26.9 kg/m2へと有意に低下していた(いずれもP<0.001)。また、介入前に睡眠時無呼吸症の見られた39人では、無呼吸・低呼吸指数(AHI)が同24.1から17.1へと改善していた(P<0.01)。

     一方、HbA1c、血清脂質値は有意な変化が見られなかった。しかし解析対象を、介入前にこれらの値が基準値を超えていた人に絞り込むと、全ての指標が有意に改善していた。

     例えばHbA1cが5.6%以上だった60人では、介入前の中央値6.0%から5.6%に低下していた(P<0.001)。また、中性脂肪150mg/dL以上だった57人では242mg/dLから190mg/dLに、HDL-Cが40mg/dL未満だった31人では35mg/dLから40mg/dLとなっていた(いずれもP<0.01)。

     さらに、低糖質ダイエットに伴い、時に上昇することのあるLDL-Cについても、120mg/dL以上だった31人の中央値が133mg/dLから120mg/dLに低下していた(P<0.001)。その他、介入に伴う有害事象は見られなかった。

     著者らは本研究には、対照群を置いておらず、また検討対象者は自主的に研究に参加しておりモチベーションの高い集団であったと考えられるといった限界が存在することから、「この栄養指導法の有効性検証のためには無作為化比較試験が必要」と述べている。その上で、「緩やかな低糖質ダイエットは、MetSを予防・改善するための効果的な介入法と示唆される。保健指導担当者や健保団体は、その可能性を認識すべき」と提言している。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

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    HealthDay News 2021年7月26日
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  • 座位時間が2時間長いと死亡リスクが15%アップ

     1日の座位時間が2時間長いごとに死亡リスクが15%有意に高くなり、余暇時間の身体活動量が多くてもそのリスクはあまり低下しないことが分かった。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らが、6万人以上の日本人を8年近くにわたり追跡して明らかにした知見であり、詳細は「Journal of the American Heart Association」に6月14日掲載された。同氏は、「日本人を長期間追跡して、仕事中と余暇時間双方の座位時間と、死亡リスクとの関連を明らかにした大規模調査は、本報告が初めて」としている。

     この研究の対象は、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC STUDY)」の参加者から、解析に必要なデータが欠落している人を除外した6万4,456人(男性45.0%)。1日の座位時間が、5時間未満の群(37.7%)、5~7時間未満の群(22.6%)、7~9時間未満の群(16.3%)、9時間以上の群(23.4%)という4群に分類。平均7.7年間追跡した。

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     追跡期間中に2,257人が死亡した。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、飲酒・喫煙習慣、身体活動量、高血圧・脂質異常症・糖尿病・心血管疾患の既往、居住地域など)を調整後、1日の座位時間が5時間未満の群の死亡リスクを基準とすると、5~7時間未満の群ではハザード比(HR)1.031(95%信頼区間0.918~1.158)、7~9時間未満の群はHR1.205(同1.064~1.364)、9時間以上の群はHR1.540(同1.386~1.712)となり、座位時間7時間以上の群では死亡リスクが有意に高かった。

     また、1日の座位時間が2時間長いごとに、死亡リスクが15%有意に上昇することも明らかになった〔HR1.153(同1.114~1.194)〕。この関係は、心血管疾患リスク因子のある人ではより顕著であり、例えば高血圧ではHR1.202(同1.129~1.270)、脂質異常症ではHR1.176(同1.087~1.273)、糖尿病ではHR1.272(同1.159~1.396)だった。さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病という3つのリスク因子が重複している人のハザード比は1.417(同1.162~1.728)に上ることが分かった。

     次に、座位時間が長いことによるこのような死亡リスクの上昇を、余暇時間での身体活動で相殺し得るかを検討した。余暇時間の身体活動量の四分位で全体を4群に分け、前記と同じ因子で調整後、座位時間が2時間長くなるごとの死亡ハザード比を比較。その結果、余暇時間の身体活動量が多いほど死亡ハザード比は低下していた(傾向性P<0.001)。しかし、第4四分位群(身体活動量の多い上位25%)でもHR1.126(95%信頼区間1.042~1.217)と、有意性は失われていなかった。つまり、座位時間が長いことによる死亡リスクの上昇は、余暇時間に身体活動を積極的に行ったとしても、十分には抑制されないと考えられた。

     著者らは、「コロナ禍のテレワーク普及により、今後も座位時間の延長と身体活動量の低下が予測される。座位行動をこまめに中断して、身体活動を差し挟むなどの対策が重要ではないか」と述べている

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    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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    HealthDay News 2021年3月22日
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  • 甘い飲み物の摂取量と死亡リスクが相関――JPHC研究

    甘味飲料の摂取量が多いことと、全ての原因による死亡(全死亡)、および循環器疾患や心疾患による死亡リスクの高さが有意に関連していることが、日本人を対象とした研究から明らかになった。一方、がん死や消化器疾患、脳血管疾患などによる死亡リスクとは有意な関連がないことも分かった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Preventive Medicine」7月号に掲載された。

    甘味飲料の摂取量が多いことは、体重増加や糖尿病、がん、脳血管疾患のリスクと関連しており、さらに欧米からは死亡リスクとも関連することが報告されている。一方、アジアからは欧米と異なり、甘味飲料の摂取量と死亡リスクとの間に関連はないとの報告がある。また日本人対象の疫学研究の結果はこれまで報告されていない。

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    今回発表された研究の対象は、1995年と1998年に、岩手県二戸、長野県佐久、茨木県水戸、東京都葛飾区、高知県中央東、沖縄県中部などの11保健所管内に居住していた45~74歳の男女7万486人。食事アンケート調査に基づき、清涼飲料水(コーラなど)、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、缶コーヒー、乳酸菌飲料、β-カロテン含有飲料、カルシウム飲料、ドリンク剤の摂取量の合計を算出。その五分位で群分けして平均17.1年追跡し、全死亡やがん死、循環器疾患、消化器疾患などによる死亡リスクを比較検討した。

    追跡期間中に1万1,811人が死亡していた。死因は、がん4,713人、循環器疾患2,766人、心疾患1,412人、脳血管疾患1,088人、呼吸器疾患888人、消化器疾患433人だった。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、コーヒーや緑茶の摂取量、高血圧の既往、居住地域)を統計学的に調整後、以下のような関連が明らかになった。

    甘味飲料摂取量の第1五分位群(摂取量が最も少ない下位20%)に比較して、第5五分位群(摂取量が最も多い上位20%)は全死亡リスクが1.15倍高く〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間1.09~1.22)〕、甘味飲料摂取量が多いほど全死亡リスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。また、第5五分位群は第1五分位群に比較して、循環器疾患による死亡がHR1.23(同1.09~1.38)であり(傾向性P=0.02)、心疾患による死亡はHR1.35(同1.14~1.60)と(傾向性P=0.01)、摂取量の多さがリスクの高さと関連していた。

    一方で、がん死や、脳血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患による死亡リスクについては、甘味飲料摂取量との有意な関連が見られなかった。

    これらの結果は欧米の先行研究と同様で、アジアの先行研究とは異なると言える。その理由として著者らは、甘味飲料を摂取している人の割合の違いが関係している可能性を考察している。すなわち本研究では、月に1度以上甘味飲料を摂取する人の割合が85%であり、アジアの先行研究での26%よりも欧米の先行研究での58~76%に近かった。

    また、甘味飲料の摂取が循環器疾患や心疾患による死亡リスクと関連していたことについては、「甘味飲料は血糖値やインスリン濃度を上昇させるグリセミックインデックスが高く、心血管系や代謝系の機能へ悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2021年7月19日
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  • 趣味やスポーツ・就労で介護コストが13~25%減少

     高齢者が趣味やスポーツを行ったり仕事を継続した場合、介護コストを大きく削減できる可能性を示す研究結果が報告された。日本福祉大学社会福祉学部の斉藤雅茂氏らが行った、国内12市町村の高齢者を6年間前向きに追跡したコホート研究の結果であり、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に5月19日、論文が掲載された。

     この研究の対象は、2010年8月~2011年12月に日本老年学的評価研究(JAGES)の調査に協力した65歳以上の高齢者のうち、要介護認定を受けていない5万1,302人。この人たちを2010年8月から2016年11月まで約6年間追跡。転居により追跡不能となった人などを除外して、4万6,616人を解析の対象とした。このうち4,350人(11.8%)が追跡期間中に死亡し、7,348人(15.8%)が新たに介護保険の利用を開始していた。

    認知症に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
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     介護保険の利用点数から介護コストを算出し、研究参加時に行った質問紙による調査に基づいて、社会活動(趣味、スポーツ、ボランティア)への参加や就労の有無別に、その後の介護コストを比較検討した。その結果、以下に示すように、社会活動に参加したり就労を続けていた人では介護コストが少ないことが明らかになった。

     まず、趣味に関する活動に全く参加していない人(全体の54.1%)では6年間で13.9%が死亡し、23.6%が要介護状態になり、1人当たり平均42.8万円の介護コストが発生していた。それに対して趣味活動に年数回参加している人(8.7%)の介護コストは21.4万円、1カ月1~2回の人(13.6%)は20.7万円、週1回の人(11.5%)は22.5万円、週2回以上参加している人(11.8%)は18.6万円だった。

     同様に、スポーツ活動に全く参加していない人(72.8%)は39.2万円であるのに対して、年に数回参加している人(4.1%)は17.2万円、1カ月1~2回の人(4.5%)は18.6万円、週1回の人(7.1%)は15.9万円、週2回以上参加している人(11.6%)は15.5万円だった。また、就労していない人(同76.1%)が37.9万円であるのに対して、就労している人は14.8万円だった。

     なお、ボランティア活動に関しても、参加していない人より参加している人の介護コストの方が低かった。ただし、ボランティア参加が高頻度の場合にコスト縮小幅が減少するという点で、他の社会活動への参加とは異なる傾向が見られた。

     次に、要介護リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、婚姻状況、独居か否か、併存疾患・障害、教育歴、収入、主観的健康感、物忘れの自覚、居住地域など)を調整した上で、同様の検討を行った。その結果、やはり研究参加時に社会活動に参加していた人や就労していた人の方が、有意に介護コストが低いことが確認された。全ての人が社会活動に参加したり就労を続けたと仮定して、6年間の介護コストを試算したところ、介護コストは趣味に関する活動で19.9%、スポーツ参加で25.3%、就労継続で13.4%抑制されると考えられた。

     著者らは本研究を、高齢者の社会活動参加や就労継続が公的な介護費の抑制に寄与することを示した初の研究と位置付けている。研究の限界点として、社会活動の内容の詳細が把握できていないこと、寿命の延伸に伴い生涯の総介護コストは増大する可能性を否定できないことなどを挙げた上で、「高齢者の社会活動と就労を促進することが、将来の介護コストの削減に役立つ可能性がある」と結論付けている。なお、ボランティア活動への参加頻度が高い場合に介護コスト抑制幅が減少することの理由として、「あまりに頻繁なボランティア活動は“無償の強制労働”という側面が生じてしまうのではないか」と考察を述べている。

    軽度認知障害(MCI)のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら

    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2021年7月12日
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  • 日本の子どもの睡眠負債の現状――2万人超の調査結果

     秋田大学大学院医学系研究科精神科の竹島正浩氏らの研究結果が「Scientific reports」に6月1日掲載された。2万人以上の小中学生の保護者を対象とする全国規模の調査から、日本の子どもたちの睡眠実態が明らかになった。日本の子どもは睡眠時間が不足している可能性があり、18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当した。また、情緒・行動面の問題に睡眠に関する症状や睡眠潜時、中途覚醒時間の延長が関連していたという。著者らは、「子どもたちに情緒・行動面の問題がある場合、睡眠に関する問題を考慮する必要がある」と述べている。

     子どもの発達において睡眠は重要な役割を果たしている。子どもの睡眠負債は覚醒度の低下だけではなく多動、不注意などの症状とも関連する。また、子どもの睡眠障害はうつ病などの精神障害のリスク因子である。このように、睡眠と情緒・行動面の問題および精神疾患との関連について多くの研究がなされている一方で、日本の一般児童における睡眠実態や、睡眠と情緒・行動面の問題との関連については明らかにされておらず、医療、教育、支援の現場における理解はきわめて不十分である。

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     これらを背景に竹島氏らは文部科学省と各地域の教育委員会の協力を得て、北海道から九州の10県にある小学校148校と中学校71校の子どもたちを対象に睡眠の実態調査を行った。2009年12月~2010年4月に、6~15歳の子ども8万7,548人の保護者に対してアンケート調査を行い、回答のあった2万5,779人から内容に不備のあるものなどを除外した2万2,604人(平均年齢10.3±2.5歳、男児51.0%)を解析対象とした。

     子どもの睡眠習慣については、過去1カ月間の就床時刻、起床時刻、昼寝時間の平均を保護者が質問票に記載した。就床時間は就床時刻から起床時刻までの長さとし、総睡眠時間は就床時間から入眠潜時(寝付くまでに要した時間)、中途覚醒時間(寝付いてから起床するまでの間に覚醒した時間)を引いて算出した。睡眠効率は就床時間あたりの総睡眠時間の割合とした。

     対象児童の過去1カ月間の睡眠の状況については小児・児童用簡易睡眠質問票(BCSQ)を用い、就床時の症状4項目(就床抵抗など)、睡眠中の症状9項目(夜驚、悪夢など)、起床時の症状5項目(覚醒困難など)、眠気の症状1項目(突然眠る)を調査した。睡眠症状のサブスケール(就床時、睡眠中、起床時、眠気)を有する割合は、週2回以上の項目が1つ以上該当する場合に「あり」とし、BCSQの合計得点が24点以上の場合「睡眠障害の疑いあり」とした。

     情緒・行動面の問題については子どもの強さと困難さ質問票(SDQ)で評価し、Total difficulties scores(TDS)を算出した。

     では結果だが、睡眠習慣については就床時刻の変化が最も顕著であった一方で、起床時刻は概ね一定だった。小学校1年生から中学校3年生の9年間で就床時刻は約2.2時間後退し、その結果9年間で睡眠時間は2時間減少していた。

     BCSQでは18.3%の子どもが何らかの睡眠障害に該当した。睡眠症状のサブスケールについては起床時の睡眠症状が最多で41.7%、続いて就床時が34.5%、睡眠中が32.9%であり、日中は0.3%だった。SDQでは情緒や行動面の問題は学年が上がるに従い減少し、特に多動性と不注意を示すスコアが成長とともに大きく低下していた。

     続いてTDSを従属変数、年齢や性別、睡眠習慣、BCSQで測定した睡眠症状(就床時、睡眠中、起床時、日中)を独立変数として重回帰分析を行った。その結果、すべての睡眠症状および入眠潜時の延長、中途覚醒時間の延長が情緒・行動面の問題と有意に関連していたが、睡眠時間は関連していなかった。情緒・行動面の問題と睡眠時間に有意な関連が認められなかった理由として、最適な睡眠時間は人により異なることのほか、この研究では本人ではなく保護者が子どもの睡眠時間を判断したため、入眠潜時や中途覚醒時間の補正が正しくなされていなかった可能性があるという。

     著者らは本研究が横断研究であり因果関係には言及できないと述べた上で、「日本の多くの子どもたちが睡眠負債や睡眠障害を抱えている可能性があり、睡眠習慣や睡眠障害が情緒・行動面の問題に関連している」と結論付けている。

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    治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

    治験・臨床試験についての詳しい説明

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    HealthDay News 2021年7月12日
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  • 自分の認知症は早く知りたいが配偶者の場合は別?――国内大学病院での調査

     日本人が認知症をどのように捉えているかを調査した結果が報告された。認知症の有病率が過大評価されていること、自分自身が認知症の場合は早めに知らされることを望む一方、配偶者の認知症については早期診断を望む割合が高くないことなどが分かった。弘前大学大学院保健学研究科の大庭輝氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Health Services Research」に5月3日掲載された。

     大庭氏らの調査は、(1)日本人が恐れている疾患とその理由、(2)認知症の有病率に関する知識、(3)認知症である場合にどのように診断結果を伝えられたいか、という3点をテーマとして、2017年9月~2019年3月に実施された。調査対象は、大学病院の精神科、耳鼻咽喉科、内分泌代謝科、循環器内科の予約受診患者、または18歳以上の同伴者、計217人。重度の身体または精神障害を有する人は除外された。平均年齢は64.4±13.0歳、男性61.8%で、77.3%は配偶者またはパートナーがいると回答した。患者と同伴者とで以下の回答内容に有意差がなかったため、解析は両者をあわせて行われた。

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     まず、(1)の最も恐れられている疾患について、冠動脈性心疾患、認知症、脳血管疾患、がん、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、心不全の中から選択してもらったところ、1位はがんで43.8%を占めた。続いて認知症と脳血管疾患が同率で2位(各18.0%)だった。65歳未満/以上で二分すると、65歳未満では認知症を最も恐ろしいとする回答が30.8%だった一方、65歳以上では69.2%に上り、有意な群間差があった(P=0.016)。認知症以外の疾患は、年齢による有意な群間差は見られなかった。最も恐れる病気として認知症を選択した人は、その理由として、生活上の問題、社会的な影響、感情的な影響、法的な問題を挙げた割合が、がんを選択した人に比べて有意に多かった。

     次に、(2)の認知症の有病率に関する知識については、65歳および85歳までに、日本人の何パーセントが認知症と診断されているかという質問で検証した。結果は、65歳で18.1±15.0%、85歳で43.7±22.6%との回答だった。しかし実際は、65~69歳で1.5%、85歳で27%であり、認知症の有病率が過大に捉えられていることが分かった。

     続いて(3)の認知症である場合にどのように診断結果を伝えられたいかについては、自分自身が診断されるケースと、配偶者やパートナーが診断されるケースに分けて回答を得た。まず自分自身が診断されることを想定したケースでは、ほぼ全て(95.9%)が、できるだけ早く診断結果を伝えられることを望んでいた。その理由は、「診断を受け入れるため」が67.8%と最も多く選択された。

     一方、配偶者またはパートナーが認知症と診断されることを想定したケースでは、できるだけ早く診断結果を伝えられることを望むとの回答は67.5%で、自分自身が診断されることを想定したケースよりも有意に少なかった(P<0.001)。配偶者やパートナーに診断を早く伝えたくないことの理由としては、「できるだけ長く普通の生活を送ってほしい」(75.5%)、「不必要な心配を避けるため」(73.6%)などが多く選択されていた。

     なお、海外で行われた同様の調査では、配偶者の認知症の診断もできるだけ早く伝えられることを望むという回答が多く、その割合は例えば韓国では97%、オーストラリアでは88%、台湾では76%に及ぶと報告されている。日本でその割合が低いことについて、日本人の認知症に対する否定的な捉え方が背景にあるのではないかと著者らは考察している。

     本研究には、大学病院の専門外来受診者を調査対象としていて、日本人の平均的な考え方を反映したものとは言えないこと、認知症以外の恐れられている疾患については詳しい質問を行っていないこと、一部の質問では仮定に基づく回答を評価していることなど、解釈上の限界点がある。それらを踏まえた上で著者らは、「がんに次いで認知症が最も恐れられている疾患であり、認知症が正しく理解されておらず、啓発活動の必要性が示された。また医師は患者や家族と認知症診断の可能性について話し合う必要があると考えられ、それによって患者や家族の不安が軽減されるのではないか」と述べている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    参考情報:リンク先
    HealthDay News 2021年7月5日
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  • 高血圧治療とCOVID-19リスクは逆相関する――都道府県別の検討

     日本国内で高血圧治療を受けている患者数の人口比と、新型コロナウイルス陽性者の人口比とが逆相関するとのデータが報告された。国立病院機構宇多野病院脳神経内科の木下真幸子氏らが、全都道府県の状況を比較検討した結果であり、詳細は「International Journal of Infectious Diseases」に6月2日掲載された。著者らは、高血圧に対する治療が新型コロナウイルス感染に対して保護的に働いている可能性を述べている。

     新型コロナウイルスはアンジオテンシン変換酵素II(ACE2)を足場として細胞内に侵入する。ACEは血圧調節にかかわっており、ACE2はACEと同族だが逆の働きを持つ。国内では高血圧の治療にACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が多用されている。これらの降圧薬はACE2を増加させるため、パンデミック当初は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発症や重症化リスクを高める可能性が懸念されていたが、その後に否定され現在に至っている。ただし、高血圧自体がリスクを高める可能性については議論が続いており、また日本人対象の研究報告は十分でない。

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     木下氏らは、2017年の「患者調査」と新型コロナウイルス陽性者数報告のデータから、都道府県ごとに代表的な慢性疾患の患者数と陽性者数の人口比を算出。両者の間に有意な相関があるか否か検討した。なお、新型コロナウイルス陽性者数は、2020年4月の緊急事態宣言発出直前に当たる3月29日時点のデータを用いた。

     解析の結果、患者調査における疾病大分類のうち「循環器系の疾患」やそのサブカテゴリーである「高血圧」の人口当たり患者数が多いほど、新型コロナウイルス陽性者率が低いという逆相関の関係が明らかになった。具体的には、スピアマン順位相関係数が、循環器系の疾患では-0.469、高血圧では-0.456だった(いずれもP<0.01)。

     次に、高血圧患者数と新型コロナウイルス陽性者数の人口比を年齢で層別化して解析すると、35~44歳、45~54歳、55~64歳、75~84歳、および85歳以上の年齢層で、有意な逆相関が認められた。なお、高血圧以外に脳血管疾患や統合失調症などでも同様の有意な逆相関が認められたが、相関係数は高血圧が最も大きかった。

     この結果から著者らは、「今回検討した種々の疾患の中で、新型コロナウイルス感染リスクと最も強い逆相関が示された疾患は高血圧であり、年齢を調整しても有意性が保たれていた。高血圧が新型コロナウイルス感染リスクを高める基礎疾患の一つに挙げられていることを勘案すると、この予想外とも言える関連を最も無理なく説明可能な理由は、国内で頻用される降圧薬の潜在的な保護効果ではないか」と述べている。その具体的なメカニズムについては、既報からの考察として、ACE阻害薬やARBは一酸化窒素(NO)を誘導し血管内皮機能を改善すること、NOには抗ウイルス作用も認められること、また、ACE2にも血管や肺の保護作用があることなどを挙げている。

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    HealthDay News 2021年7月5日
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