• 座位時間が2時間長いと死亡リスクが15%アップ

     1日の座位時間が2時間長いごとに死亡リスクが15%有意に高くなり、余暇時間の身体活動量が多くてもそのリスクはあまり低下しないことが分かった。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らが、6万人以上の日本人を8年近くにわたり追跡して明らかにした知見であり、詳細は「Journal of the American Heart Association」に6月14日掲載された。同氏は、「日本人を長期間追跡して、仕事中と余暇時間双方の座位時間と、死亡リスクとの関連を明らかにした大規模調査は、本報告が初めて」としている。

     この研究の対象は、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC STUDY)」の参加者から、解析に必要なデータが欠落している人を除外した6万4,456人(男性45.0%)。1日の座位時間が、5時間未満の群(37.7%)、5~7時間未満の群(22.6%)、7~9時間未満の群(16.3%)、9時間以上の群(23.4%)という4群に分類。平均7.7年間追跡した。

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     追跡期間中に2,257人が死亡した。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、飲酒・喫煙習慣、身体活動量、高血圧・脂質異常症・糖尿病・心血管疾患の既往、居住地域など)を調整後、1日の座位時間が5時間未満の群の死亡リスクを基準とすると、5~7時間未満の群ではハザード比(HR)1.031(95%信頼区間0.918~1.158)、7~9時間未満の群はHR1.205(同1.064~1.364)、9時間以上の群はHR1.540(同1.386~1.712)となり、座位時間7時間以上の群では死亡リスクが有意に高かった。

     また、1日の座位時間が2時間長いごとに、死亡リスクが15%有意に上昇することも明らかになった〔HR1.153(同1.114~1.194)〕。この関係は、心血管疾患リスク因子のある人ではより顕著であり、例えば高血圧ではHR1.202(同1.129~1.270)、脂質異常症ではHR1.176(同1.087~1.273)、糖尿病ではHR1.272(同1.159~1.396)だった。さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病という3つのリスク因子が重複している人のハザード比は1.417(同1.162~1.728)に上ることが分かった。

     次に、座位時間が長いことによるこのような死亡リスクの上昇を、余暇時間での身体活動で相殺し得るかを検討した。余暇時間の身体活動量の四分位で全体を4群に分け、前記と同じ因子で調整後、座位時間が2時間長くなるごとの死亡ハザード比を比較。その結果、余暇時間の身体活動量が多いほど死亡ハザード比は低下していた(傾向性P<0.001)。しかし、第4四分位群(身体活動量の多い上位25%)でもHR1.126(95%信頼区間1.042~1.217)と、有意性は失われていなかった。つまり、座位時間が長いことによる死亡リスクの上昇は、余暇時間に身体活動を積極的に行ったとしても、十分には抑制されないと考えられた。

     著者らは、「コロナ禍のテレワーク普及により、今後も座位時間の延長と身体活動量の低下が予測される。座位行動をこまめに中断して、身体活動を差し挟むなどの対策が重要ではないか」と述べている

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

    参考情報:リンク先1リンク先2
    HealthDay News 2021年3月22日
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  • 甘い飲み物の摂取量と死亡リスクが相関――JPHC研究

    甘味飲料の摂取量が多いことと、全ての原因による死亡(全死亡)、および循環器疾患や心疾患による死亡リスクの高さが有意に関連していることが、日本人を対象とした研究から明らかになった。一方、がん死や消化器疾患、脳血管疾患などによる死亡リスクとは有意な関連がないことも分かった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「Preventive Medicine」7月号に掲載された。

    甘味飲料の摂取量が多いことは、体重増加や糖尿病、がん、脳血管疾患のリスクと関連しており、さらに欧米からは死亡リスクとも関連することが報告されている。一方、アジアからは欧米と異なり、甘味飲料の摂取量と死亡リスクとの間に関連はないとの報告がある。また日本人対象の疫学研究の結果はこれまで報告されていない。

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    今回発表された研究の対象は、1995年と1998年に、岩手県二戸、長野県佐久、茨木県水戸、東京都葛飾区、高知県中央東、沖縄県中部などの11保健所管内に居住していた45~74歳の男女7万486人。食事アンケート調査に基づき、清涼飲料水(コーラなど)、100%りんごジュース、100%オレンジジュース、缶コーヒー、乳酸菌飲料、β-カロテン含有飲料、カルシウム飲料、ドリンク剤の摂取量の合計を算出。その五分位で群分けして平均17.1年追跡し、全死亡やがん死、循環器疾患、消化器疾患などによる死亡リスクを比較検討した。

    追跡期間中に1万1,811人が死亡していた。死因は、がん4,713人、循環器疾患2,766人、心疾患1,412人、脳血管疾患1,088人、呼吸器疾患888人、消化器疾患433人だった。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、コーヒーや緑茶の摂取量、高血圧の既往、居住地域)を統計学的に調整後、以下のような関連が明らかになった。

    甘味飲料摂取量の第1五分位群(摂取量が最も少ない下位20%)に比較して、第5五分位群(摂取量が最も多い上位20%)は全死亡リスクが1.15倍高く〔ハザード比(HR)1.15(95%信頼区間1.09~1.22)〕、甘味飲料摂取量が多いほど全死亡リスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P<0.001)。また、第5五分位群は第1五分位群に比較して、循環器疾患による死亡がHR1.23(同1.09~1.38)であり(傾向性P=0.02)、心疾患による死亡はHR1.35(同1.14~1.60)と(傾向性P=0.01)、摂取量の多さがリスクの高さと関連していた。

    一方で、がん死や、脳血管疾患、呼吸器疾患、消化器疾患による死亡リスクについては、甘味飲料摂取量との有意な関連が見られなかった。

    これらの結果は欧米の先行研究と同様で、アジアの先行研究とは異なると言える。その理由として著者らは、甘味飲料を摂取している人の割合の違いが関係している可能性を考察している。すなわち本研究では、月に1度以上甘味飲料を摂取する人の割合が85%であり、アジアの先行研究での26%よりも欧米の先行研究での58~76%に近かった。

    また、甘味飲料の摂取が循環器疾患や心疾患による死亡リスクと関連していたことについては、「甘味飲料は血糖値やインスリン濃度を上昇させるグリセミックインデックスが高く、心血管系や代謝系の機能へ悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2021年7月19日
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