• パンデミックで日本でも大学生の自殺が増加

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、日本国内の大学生の自殺者が増加しているとする、国立大学保健管理施設協議会のデータが報告された。茨城大学保健管理センターの布施泰子氏らが、国内の全国立大学を対象に行った調査の結果であり、「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に8月6日、レターとして掲載された。

     これまでに、COVID-19パンデミック下で自殺率が増加しているとする報告が、国内外から発表されている。また海外からの報告には、大学生の間で、うつ、不安、希死念慮を抱く学生や、自殺既遂に至る学生が増えたとするものもある。

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     パンデミックの影響により大学生はさまざまなストレスにさらされている。例えば、講義は対面ではなく遠隔で行われ、友人とのコミュニケーションの機会が減り、孤立を感じやすい状況にある。また、家族の収入が減少した学生は、授業料と生活費のためにアルバイトを増やさざるを得ないという経済的困難を抱え、さらに4年生の場合は就職活動の支障も生じている。パンデミックは当初の大方の予想よりもはるかに長く続いており、希望を失い始めている学生が少なくないと考えられる。

     国内の国立大学が加盟している国立大学保健管理施設協議会のメンタルヘルス委員会では、ふだんから学生の休学や退学、留年などに関する調査を継続的に行っており、本論文の上席著者である布施氏は現在、同委員会の委員長を務めている。同委員会ではCOVID-19パンデミック発生に対応し、定期調査の一部の項目を通常より前倒しで実施し、2020年度の学生の自殺率の実態を把握した。

     国内の全国立大学82校の保健管理施設に調査協力を要請し、全大学が回答した。2020年5月1日時点の学部生は43万3,032人(男子27万3,308人、女子15万9,724人)だった。2020年度(2020年4月1日~2021年3月31日)に、76人(男子58人、女子18人)の学生が、自殺または自殺の疑いで死亡していた。学生10万人当たりの自殺率は17.6人(男子21.2人、女子11.3人)だった。

     2012年度以降の調査結果(過去の調査の回答大学数は調査年により異なり70校前後)の推移を参照すると、男子学生は直近の6年間で2020年度の自殺率が最も高く、女子学生は直近8年間で2020年度が最も高かった。著者らはこの結果について、「パンデミック下で大学生の自殺率が上昇していることが海外から報告されているが、そのような傾向は日本も例外ではないようだ」とまとめている。

     国内の大学生の自殺が増加していることが明らかになったことから、その予防対策が喫緊の課題とされる。著者らは研究の次のステップとして、「2020年度以降に自殺または自殺の疑いで死亡した学生の背景を調査し、過去の研究と比較する必要がある。COVID-19パンデミック下で自殺リスクが上昇しやすい学生の背景因子が示されれば、ハイリスク集団の特定につながるのではないか」と述べている。

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    HealthDay News 2021年9月6日
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  • 非糖尿病者の低血糖リスク因子が明らかに――特定健診データの解析

     糖尿病でない人の低血糖の頻度やリスク因子に関するデータが報告された。やせている人、喫煙者、そして高齢男性は低血糖リスクが有意に高いという。神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科の田中琴音氏(研究時点ではヘルスイノベーション科)、中島啓氏らが、特定健診データを解析した結果であり、詳細は「World Journal of Diabetes」に7月15日掲載された。

     低血糖は血糖値が下がり過ぎた状態のことで、多くの場合、糖尿病用薬の副作用として発生する。糖尿病患者の低血糖は、心血管イベントや認知症リスクの上昇と関連していることが近年明らかになり、低血糖をできるだけ回避することの重要性が認識されるようになった。一方、糖尿病でない人にも低血糖が起きることが知られている。しかしその実態はほとんど分かっていない。中島氏らは厚生労働省より提供されたレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)のデータを用いた解析により、非糖尿病者の低血糖の頻度とリスク因子の解明を試みた。

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     神奈川県での2012年度特定健診受診者から、糖尿病に該当するHbA1c6.5%以上または空腹時血糖値126mg/dL以上の人、糖尿病の薬物治療を受けている人、データの欠落がある人を除外した69万5,613人(年齢範囲40~74歳、男性56.1%)を解析対象とした。10時間以上絶食後の血糖値が70mg/dL未満だった場合を生化学的空腹時低血糖(fasting biochemical hypoglycemia;FBH)と定義したところ、0.26%がこれに該当した。非FBH群の血糖値は94.3±10.0mg/dLであるのに対し、FBH群は64.7±5.6mg/dLだった。

     FBH群は非FBH群に比較して女性が多かった(59.1対43.9%)。また検査値関連では、BMI、収縮期血圧、中性脂肪値が低く、HDL-コレステロールは高いという有意差が存在した。生活習慣関連では、現喫煙者、朝食欠食者が多く、大量飲酒(エタノール換算で69g/日以上)者や就寝前の摂食習慣がある人の割合は有意に低かった。一方、年齢、および、運動習慣のある人の割合は、有意差がなかった。

     次に、低血糖リスクとなり得る因子(年齢、性別、高血圧・脂質異常症の薬物療法、喫煙・飲酒・運動習慣)を調整した多変量ロジスティック回帰分析により、FBHのリスク因子を検討した。なお、年齢は40代、BMIは21.0~22.9kg/m2、飲酒量はエタノール換算23g/日未満をそれぞれの基準とした。

     まず、性別を考慮せずに対象者全体で解析すると、女性、BMI20.9未満、現在の喫煙、心血管疾患の既往、脂質異常症の薬物療法、運動習慣、朝食の欠食が、FBHと有意に関連するリスク因子として抽出された。特にBMI16.9以下の場合、FBHのオッズ比は約4倍に上った。反対に、FBHリスクの低さと関連する因子は、男性、年齢が50歳代、BMI23.0以上、大量でない飲酒(エタノール換算68g/日以下)だった。

     性別で分けて解析すると、男性では前記の因子に加えて、高齢(60~74歳)、高血圧の薬物治療がFBHリスクと有意に関連していた。反対に、心血管疾患の既往、運動習慣、朝食の欠食は有意性が消失した。

     一方、女性では前記の因子のうち、脂質異常症の薬物療法、運動習慣、朝食の欠食は有意でなくなった。反対に、年齢が50~74歳であることはFBHリスクの低さと有意に関連していた。飲酒については摂取量にかかわらずFBHリスクとの有意な関連が消失した。

     以上より著者らは、「非糖尿病の人でもまれながらFBHが発生していることが確認された。女性は男性よりFBHリスクが高い一方、高齢者では男性においてFBHリスクが上昇するようだ。BMI低値と喫煙習慣は性別を問わず、FBHリスクに関連していた」とまとめている。また研究グループでは、今回の研究データについてAI(Sony Prediction one)を用いた解析も行ったところ、上記と同様の結論が得られたという。ただし、AIの解析では、大量飲酒はFBHのリスクを示していた。

     なお、非糖尿病者に見られる低血糖として、食後の反応性低血糖が知られているが、本研究の解析対象は食後10時間以上経過後に採血された人に限られていることから、反応性低血糖が含まれている可能性は低いという。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2021年9月6日
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