• 閉経年齢や妊娠回数がADL制限と有意に関連――JPHC研究

     女性の閉経年齢や妊娠回数などと日常生活動作(ADL)制限との関連を調査した研究結果が報告された。閉経の時期が標準的な50~54歳の人に比べて、早い場合も遅い場合も、その後にADLが低下していることが多いと分かった。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に9月5日掲載された。

     ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活を送るために最低限必要な動作のことで、ADLに制限がある状態は要介護につながりやすく、死亡リスクも上昇することが報告されている。これまでの研究から、閉経などによって女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が低下すると、骨粗鬆症が起きやすくなり、さらには身体機能の低下にもつながることが示唆されている。ただしADLとの関連は十分に調査されていなかった。

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     今回発表された研究の対象は、1990年と1993年に、岩手県二戸、長野県佐久、茨城県水戸、東京都葛飾区、大阪府吹田、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古など11の保健所管内に居住していた40~69歳の女性のうち、調査開始時と10年後(2000~2004年)のアンケートに回答した3万9,248人。2回のアンケート結果に基づいて、女性関連要因(初潮年齢、月経周期、月経規則性、妊娠・出産経験と回数、初回妊娠・出産年齢、授乳経験、閉経の有無と閉経年齢、女性ホルモン剤服用の有無)とADL制限との関連を解析した。

     ADLについては、アンケートの回答内容から、「屋内での生活はおおむね自分でできるが、介助なしには外出しない」に該当する、またはそれより低いレベルに該当する場合は「ADL制限あり」と判定し、それら以外を「ADL制限なし」と判定した。その結果、ADL制限ありの該当者は592人(平均年齢68.3±7.6歳)、ADL制限なしの該当者は3万8,656人(61.1±7.7歳)だった。

     ADLに影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、地域、がん・循環器疾患・脳血管疾患の既往、閉経年齢、調査開始時点での月経周期規則性)を統計学的に調整後、閉経年齢が標準的な50~54歳だった群に比較し、40~44歳と早く閉経していた群は、ADL制限ありに該当するオッズ比(OR)が1.44(95%信頼区間1.09~1.90)だった。一方で、55~60歳と遅くに閉経していた群もOR1.55(同1.09~2.18)であって、閉経が早くても遅くてもADL制限に該当する確率が有意に高いことが分かった。閉経年齢が45~49歳の群は50~54歳の群と有意差がなかった。

     妊娠回数に関しては、回数が多いほどADL制限に該当する確率が低い傾向が見られた(傾向性P=0.052)。妊娠回数0回に対して、2回および3回ではOR0.51と、リスクがほぼ半分であり、4回ではOR0.63だった(いずれもP<0.05)。妊娠回数1回ではOR0.71で、妊娠回数0回の群と有意差がなかった。

     その他の女性関連要因はADL制限との関連が見られなかった。

     これらの結果について研究グループでは、「閉経年齢が早い人と遅い人の双方で、ADL制限のリスクが高いという結果が得られた。早期閉経は心疾患などのリスクが高まること、および、閉経年齢が早くエストロゲンに曝される期間が短いと身体機能低下のリスクが高いことが、ADL制限につながった可能性が考えられる」と述べている。また閉経年齢が遅いことによるADL制限リスクの上昇については、「閉経後のエストロゲンレベルが高い方がフレイル(加齢などに伴い心身が弱くなる状態)のリスクが高いという報告がある。しかし、今回の調査では把握されていない、ADL制限につながるほかの要因が存在する可能性もある」として、今後のさらなる研究の必要性を指摘している。

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    HealthDay News 2021年11月8日
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  • 国内高校教師のメンタルヘルスリテラシーに改善の余地

     日本の高校教師のメンタルヘルスリテラシーは高いとは言えないとする論文が、「BMC Psychiatry」に9月30日掲載された。東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻身体教育学講座の佐々木司氏らが行った調査研究であり、同氏らは高校教師に対してメンタルヘルス関連の教育プログラムを提供する必要があると提言している。

     思春期は精神疾患の発症リスクが高い時期に当たり、この年齢の子どもは1日の多くを学校で過ごすことから、教師には生徒のメンタルヘルスの問題を認識し的確に支援する姿勢が求められる。しかし、海外からは、教師のメンタルヘルスリテラシー(MHL)は不十分だとする調査結果が報告されている。一方、国内では教師のMHLに関する研究がほとんど行われておらず、実態が不明。これを背景として佐々木氏らは、公立高校(27校)の教師を対象にMHLに関する調査を行った。調査に回答したのは参加校の全教師の53.3%に当たる665人で、男性が67.8%。

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     メンタルヘルスや精神疾患に関して設定された、20問の質問に対する平均正答率は58.1±18.6%だった。個々の質問の正答率を見ると、例えば「思春期は精神疾患の発症が急増する時期である」を「正しい」と正答したのは51.7%だった。同様に「うつ病の生涯有病率は10%以上」は37.8%、「統合失調症の生涯有病率は約1%」は19.8%のみが「正しい」と正答し、いずれも不正解が目立った。また「精神疾患の生涯有病率は約20人に1人」を「間違い」と答えられた教員は21.9%しかいなかった(正解は5人に1人)。

     「うつ病」、「統合失調症」、「パニック障害」の症例を数行にまとめた文を読み、それぞれの疾患名を回答する質問(前記3疾患に「社会不安障害」、「疾患ではない」、「分からない」を加えた6者択一)では、同順に54.1%、35.3%、78.0%の正答率だった。また、この設問での「うつ病」の症例提示文である「生徒Aは医務室で頭痛や腹痛、倦怠感を訴えた。睡眠に問題があり、食欲がなく、好きなテレビ番組が楽しくなくなり、勉強に集中できないという。最近、遅刻が増えた」について、約4人に1人はこれを「医学的問題ではなく個人の弱さに関連すること」と回答した。

     さらに、「この生徒Aに対して、適切に支援する自信はあるか」という質問には、80.1%が「自信がない」と回答した。また、「メンタルヘルスの知識を生徒に教える自信はあるか」には、88.9%が「自信がない」と回答した。

     多変量解析の結果、女性教師は男性教師に比較し、うつ病、統合失調症、パニック障害の症例提示文からの疾患名の正答率が有意に高かった。また、20~30代の教師は40~60代の教師に比較し、統合失調症の正答率が有意に高かった。うつ病とパニック障害の正答率は、年齢層による有意差はなかった。なお、メンタルヘルス・精神疾患関連の20の質問に対する正答率は、性別や年齢層による有意差がなかった。

     著者らは本研究を「日本の高校教師のMHLを調査した初の研究」と位置付け、「日本の高校教師のMHLは低いことが明らかになった。MHLの低い教師は生徒のメンタルヘルスの問題に気付かない可能性があり、仮に気付いたとしても効果的な支援が難しいと考えられる。教師のMHLを高めるために、教師養成課程に教育プログラムを組み込む必要があるのではないか」と述べている。

     なお、海外からの報告と本研究との比較から、日本の高校教師は特に統合失調症に関する認識が低いことが明らかになった(症例提示での正答率が欧州の研究では6~7割に対し、本研究では前述のように35.1%)。この点について著者らは、かつて使われていた「精神分裂病」からの病名変更が、疾患の正しい理解という点では妨げとなった可能性や、国内の統合失調症患者の入院期間が長いために、社会生活で出会う機会が少ないことが影響しているのではないか、との考察を加えている。

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    HealthDay News 2021年11月8日
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