• COVID-19スーパースプレッダーの特徴が明らかに――医科歯科大

     新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時に、ウイルスを他者へ伝播させる確率が高い「スーパースプレッダー」と呼ばれる患者の特徴が明らかになった。複数の基礎疾患を有する患者、糖尿病や関節リウマチの患者、脳卒中既往者がそれに該当するという。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の河原智樹氏、藤原武男氏らの研究によるもので、「Journal of Infection」に12月30日、レターとして掲載された。

     ウイルス性感染症では、体内のウイルス量が多い患者ほど、他者を感染させやすいことが知られている。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2012年の中東呼吸器症候群(MERS)流行時にも、一部のウイルス量の多いスーパースプレッダーの存在が、感染拡大に寄与していたと考えられている。COVID-19でも同じような患者が存在すると想定されているが、これまでのところ、どのような患者がCOVID-19のスーパースプレッダーなのかは十分明らかになっていない。

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     河原氏らの研究の対象は、2020年3月~2021年6月に東京医科歯科大学病院に入院し、PCR検査が1回以上行われており、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のコピー数の記録があるCOVID-19患者379人〔年齢中央値59歳(範囲20~95)、女性32.7%〕。なお、PCR検査でのウイルスコピー数が大きいほど、体内のウイルス量が多いことを意味する。

     対象患者のうち、基礎疾患がない患者が33.8%であり、23.8%は1種類、21.6%は2種類、20.8%は3種類以上の基礎疾患を有していた。有病率の高い基礎疾患は、高血圧38.5%、糖尿病21.6%、がん18.7%、脂質異常症18.5%、アレルギー疾患17.9%などで、その他に慢性腎臓病が6.6%、脳卒中の既往5.0%、関節リウマチ2.1%などが見られた。

     PCR検査の施行回数は1~26回の範囲にあり、1回が46.7%、2回が21.9%、3回が16.1%、4回以上が15.3%で、中央値は2回だった。1回目のPCR検査で最大コピー数が記録された患者が63.9%を占め、2回目のPCR検査で最大コピー数が記録された患者が27.2%であり、9割以上の患者は2回目までのPCR検査で最大コピー数に達していた。

     最大コピー数を対数変換した値と患者背景との関連を解析した結果、3種類以上の基礎疾患を有する患者、および、糖尿病、関節リウマチ、慢性腎臓病の患者や脳卒中既往者は、それらの疾患の既往がない患者よりも、コピー数が有意に多いことが分かった。一方、高血圧やがん、脂質異常症、アレルギー疾患などはコピー数と有意な関連がなく、また、年齢や性別、喫煙習慣も有意な関連がなかった。

     年齢、性別、喫煙習慣の影響を調整すると、慢性腎臓病に関しては関連の有意性が消失した。しかし、3種類以上の基礎疾患を有する患者〔β=1.83(95%信頼区間0.45~3.20)〕、糖尿病患者〔同1.25(0.16~2.35)〕、関節リウマチ患者〔同3.22(0.14~6.31)〕、脳卒中既往者〔同2.37(0.34~4.41)〕では、引き続き有意な正の関連が保たれていた。このほか、入院時点の血小板数〔同-0.15(-0.20~-0.09)〕やC反応性蛋白〔同-0.07(-0.13~-0.004)〕は、最大コピー数の対数変換値との有意な負の関連が認められた。

     著者らは、「疾患既往歴や入院時検査の情報からスーパースプレッダーの可能性が高い患者を特定することで、より厳重な感染対策を実施し、院内での二次感染拡大を予防できるのではないか」と述べている。

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    HealthDay News 2022年2月14日
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  • 脳卒中や心臓発作と網膜静脈閉塞症との有意な関連が明らかに

     網膜の静脈の流れが滞り、視野の異常などが生じる「網膜静脈閉塞症」の患者は、心臓や脳の血管が詰まったり心不全になるリスクが有意に高いことが、日本人を対象とする研究から明らかになった。順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の小野浩一氏らの研究によるもので、詳細は「Medicine」に12月30日掲載された。

     網膜静脈閉塞症(RVO)は、眼底の網膜にある静脈が閉塞して血流が遮られ、網膜に出血や浮腫が起きる病気。視野が欠けたり、しばらくたってから出現する新生血管の影響で網膜剥離や血管新生緑内障などが引き起こされ、より深刻な視覚障害を招くことがある。RVOが起きる原因の多くは、静脈と隣接している動脈に生じる動脈硬化にある。そのためRVOの患者は、動脈硬化によって生じる心筋梗塞や脳卒中などにもなりやすいと考えられる。しかし、その関係を実際に証明した日本人対象の研究データはこれまでなかった。小野氏らは、この点を検証するために以下の検討を行った。

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     この研究は、単一施設の後ろ向きコホート研究として実施された。順天堂東京江東高齢者医療センター眼科で2012~2019年にRVOと診断され、解析に必要なデータに欠落のない患者57人を「RVO群」(76.8±9.4歳、男性40.4%)とし、2012年1~4月に同院で白内障手術を受けた125人を「非RVO群」(75.6±8.6歳、男性34.4%)とした。

     両群の特徴を比較すると、RVO群は血圧が高く有意な群間差があった(収縮期/拡張期血圧ともにP<0.001)。ただし、年齢や男女比、BMI、血清脂質、腎機能(eGFR)、糖尿病患者の割合、飲酒・喫煙習慣、抗凝固薬・抗血小板薬の処方状況の群間差は非有意だった。なお、新生血管の活動を抑えるために用いる、血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑制する抗VEGF薬の眼球内投与の回数は、RVO群の方が多かった(P<0.001)。

     虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心不全入院、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、心血管死で構成される複合エンドポイントを評価項目として、カルテの記録を解析。RVO群はRVOの診断から追跡を開始、非RVO群は白内障手術施行日から追跡を開始して、複合エンドポイントのイベント発生まで、イベント非発生の場合は最終診察日まで追跡した。

     RVO群は2.68±2.04年の追跡で7件(脳卒中5件、心不全入院とTIAが各1件)、非RVO群は2.81±2.70年の追跡で2件(心筋梗塞と心不全入院が各1件)のイベントが記録されていた。罹患率比は8.07(95%信頼区間1.54~79.6)、相対リスクは7.68(同1.65~35.8)と計算され、RVO群の方が有意にハイリスクだった。

     多変量解析の結果、イベント発生に独立して関連する因子として、RVOの既往〔ハザード比(HR)16.1(同2.29~113.74)〕、および、年齢〔1歳ごとにHR1.26(同1.06~1.49)〕の2項目が抽出された。

     以上から、RVO患者は脳心血管イベントや心不全リスクが高いことが明らかになった。著者らは、「眼底の評価は、特に高齢者の脳心血管イベントを予測する上で意義のあるツールと言える。眼底検査の結果は眼科医だけでなく内科医にも共有されるべきだ」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

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    HealthDay News 2022年2月14日
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