• 覚醒剤使用受刑者の4人に3人は小児期に逆境体験があり、希死念慮と関連

     国内の覚醒剤使用による受刑者600人以上を対象とする調査から、小児期に逆境を体験している者の割合が高く、そのことが希死念慮や非自殺性の自傷行為のリスクの高さと関連していることが明らかになった。お茶の水女子大学生活科学部心理学科の高橋哲氏らの研究によるもので、詳細は「Child Abuse & Neglect」9月号に掲載された。

     小児期の逆境体験(adverse childhood experience;ACE)が、成人後の薬物使用リスクに関連のあることが報告されている。あらゆる犯罪の中で薬物使用は最も再犯率が高く、受刑者に対する治療介入に改善の余地がある可能性が指摘されている。一方、ACEは成人後の希死念慮や非自殺性の自傷行為(non-suicidal self-injury;NSSI)のリスクとも関連があり、また受刑者が釈放された後の主要な死因の一つが自殺であることも知られている。ただし、これらの関連は主として海外での研究から報告されたもので、国内での実態は不明点が多い。

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     このような背景のもと、高橋氏らは法務省法務総合研究所と国立精神・神経医療研究センター薬物依存部が共同で行った薬物使用犯罪者を対象とする調査のデータを用いた解析を行った。解析対象は、2017年7~11月に覚醒剤(メタンフェタミン)使用により全国78カ所(医療刑務所以外)の刑務所に入所した受刑者のうち、調査への参加拒否者や回答に不備のあった者を除外した636人。

     質問票により、18歳以前のACE体験の有無を調査。家庭機能に関する7項目(保護者の飲酒、薬物乱用、精神疾患、死別や離婚、受刑、家庭内暴力など)と、虐待に関する5項目(身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトなど)、計12項目を把握し、0~12点にスコア化して評価した。また、希死念慮およびNSSIの有無を把握した。NSSIについては、「自殺するつもりがなく、故意に自傷行為をしたことがあるか」との質問への回答で判断した。

     解析対象者は、平均年齢43.4±10.0歳、男性65.7%、累犯者73.7%であり、性別での比較からは、男性の方が高齢で未婚者が多く、累犯者率が高いという有意差が見られた。全体の4人に3人以上(76.1%)に一つ以上のACE体験が認められ、半数以上(54.1%)は複数のACE体験を報告していた。なお、先行研究によると、国内の一般人口のACE体験を有する割合は32%、世界21カ国の平均は38%とされており、今回の研究ではそれらよりもはるかに高い値が示された。

     ACEスコアは平均2.45±2.36で、女性(3.26±2.56)は男性(2.03±2.14)より有意に高値だった(P<0.01)。最も多く認められたACEは、親との死別または離婚であり、53.5%が該当した。希死念慮は28.9%(男性20.3%、女性45.4%)、NSSIは19.3%(男性8.1%、女性40.8%)が有しており、女性においてそれらの割合が高かった(いずれもP<0.001)。

     希死念慮を目的変数、年齢、性別、過去の受刑回数、ACEスコアを説明変数とするロジスティック回帰分析の結果、女性〔調整オッズ比(aOR)2.84(95%信頼区間1.94~4.16)〕、ACEスコア〔aOR1.18(同1.09~1.27)〕が、それぞれ独立して希死念慮を有することに関連していることが分かった。また、NSSIについては、女性〔aOR6.96(同4.39~11.18)〕とACEスコア〔aOR1.18(同1.08~1.28)〕が有意な正の関連因子、年齢〔aOR0.96(同0.93~0.99)〕が有意な負の関連因子として特定された。希死念慮とNSSIを統合した解析では、女性〔aOR5.84(同3.36~10.17)〕とACEスコア〔aOR1.21(同1.10~1.34)〕が有意な関連因子だった。

     著者らは、「われわれの研究結果は、トラウマ体験に対する早期の予防と介入の重要性を示唆している。また、世代間の虐待の連鎖を断ち切るために、特に女性受刑者に対してジェンダーの特性を考慮した介入が必要と考えられる」と述べている。さらに、「現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりメンタルヘルス関連の問題が増加しており、違法薬物使用の潜在的なリスクが高まっているため、この問題への対策が急がれる」とも付け加えている。

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  • メタボ構成因子該当数とがん死リスクに有意な関連――J-MICC研究

     日本人のメタボリックシンドローム(MetS)とがん死との関係を解析した研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部医科学部門社会医学系予防医学分野の有澤孝吉氏らの研究によるもので、日本の診断基準でのMetS該当者はがん死リスクが高く、またMetSの構成因子を多く有している人ほどそのリスクが高いことが分かった。詳細は「PLOS ONE」に7月8日掲載された。

     MetSは心血管疾患ハイリスク状態を早期に検出するために定義された症候群だが、がんリスク上昇とも関係のあることが示唆されている。ただし、MetSと日本人のがん死との関連についてのこれまでの研究結果は一貫性がない。有澤氏らは、国内多施設共同コホート研究「J-MICC研究」のデータを用いてこの点を検討した。

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     J-MICC研究は、日本人の生活習慣病リスクの解明を目的として2005年から14カ所で継続されている前向きコホート研究。この参加者のうち、ベースライン時点でがん・脳心血管疾患の既往のある人や解析に必要なデータが欠落している人を除外し、2万8,554人(男性49.4%)を解析対象とした。MetSの判定には、米国コレステロール教育プログラム治療パネルIII(NCEP ATP III)の基準を用い、腹囲長の代わりに肥満の判定基準であるBMI25以上を使用した。また、日本肥満学会(JASSO)によるMetSの判定基準のうち、腹囲長高値をBMI25以上に置き換えた場合での検討も加えた。

     MetS該当者はNCEP ATP III基準で16.5%、JASSO基準では8.9%だった。平均6.9年間の追跡で396人が死亡し、そのうち192人ががん死だった。

     がん死リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、閉経前/後、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴など)を調整後、NCEP ATP III基準でのMetSに該当することは、がん死リスクと有意な関連が見られなかった〔ハザード比(HR)1.09(95%信頼区間0.78~1.53)〕。MetSの構成因子別にがん死リスクとの関連を検討すると、高血糖(空腹時100mg/dL以上)のみが有意であり〔HR1.41(同1.05~1.89)〕、肥満、血圧高値、中性脂肪高値、HDL-コレステロール低値は有意な関連がなかった。

     一方、JASSO基準でMetSに該当することは、がん死リスクの上昇と有意な関連があった〔HR1.51(1.04~2.21)〕。MetSの構成因子別にがん死リスクとの関連を検討すると、やはり高血糖(空腹時110mg/dL以上)のみが有意であり〔HR1.74(1.27~2.39)〕、他の因子は有意な関連がなかった。

     次に、MetS構成因子の数とがん死リスクの関連を検討した結果、NCEP ATP III基準ではわずかに非有意だった(傾向性P=0.06)。一方、JASSO基準では該当する因子数が多いほどがん死リスクが高いという有意な関連が認められた(傾向性P=0.01)。より具体的には、該当因子がない場合に比べて、該当因子数が2項目でHR1.65(1.06~2.56)、3項目以上ではHR1.79(1.11~2.89)だった。

     続いて、非肥満でMetS構成因子のない群、非肥満でMetS構成因子が一つ以上該当する群、肥満ながらBMI高値以外のMetS構成因子のない群、肥満でBMI高値以外のMetS構成因子が一つ以上該当する群という4群に分け、がん死リスクを比較検討した。その結果、NCEP ATP III基準で分類した場合と、JASSO基準で分類した場合ともに、肥満でBMI高値以外のMetS構成因子が一つ以上該当する群でのみ、有意なリスク上昇が認められた〔非肥満でMetS構成因子のない群に比較して、NCEP ATP III基準での比較ではHR1.76(1.10~2.80)、JASSO基準ではHR1.69(1.09~2.63)〕。

     このほか、JASSO基準でのMetS該当者で見られたがん死リスクの上昇を、がんの部位別に検討すると、胃、大腸、肝臓、膵臓のがんによる死亡でハザード比が1を上回っていたが、有意なリスク上昇は大腸がんでのみ認められた〔HR2.95(1.04~8.40)〕。

     まとめると、日本のMetS基準の腹囲長をBMIに置き換えた基準でMetSに該当する場合、がん死の有意なリスク上昇が認められ、かつMetS構成因子の該当数が多いほどそのリスクが高かった。特に高血糖ががん死リスクの上昇と関連していた。また、肥満かつMetS構成因子を有する「代謝的に不健康な肥満」でがん死リスクが高いことも明らかになった。

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    肥満という言葉を耳にして、あなたはどんなイメージを抱くでしょうか?
    今回は肥満が原因となる疾患『肥満症』の危険度をセルフチェックする方法と一般的な肥満との違いについて解説していきます。

    肥満症の危険度をセルフチェック!一般的な肥満との違いは?

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  • 慢性腎臓病+睡眠時無呼吸で死亡リスク上昇――国内医療費請求データの解析

     慢性腎臓病(CKD)に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を併発している場合、死亡や心血管疾患などのリスクが有意に高いことを示すデータが報告された。名古屋大学医学部附属病院腎臓内科の田中章仁氏らが、国内医療機関の医療費請求データを解析した結果であり、詳細は「Frontiers in Medicine」に5月31日掲載された。SASに対して持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行っているCKD患者では、リスク上昇が見られないことも分かった。

     CKD患者はSAS有病率が高いことが知られているが、両者の併発が予後へどの程度の影響を及ぼすかは明らかでなく、またSASに対してCPAP治療を行った場合に予後が改善するのか否かも不明。そこで田中氏らは、国内449病院の医療費請求データベースを用いて、この点の解析を行った。

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     2008年4月~2021年8月にCKDとして治療が行われたと考えられる92万4,238人から、年齢が20歳以上で血清クレアチニンが2回以上測定され1年以上の追跡が可能であり、ベースライン時に腎代替療法(透析療法、腎移植)を受けていない3万2,320人を解析対象とした。このうち1,026人(3.2%)がSASを併発していた。

     傾向スコアを用いて、年齢、性別、eGFR、ヘモグロビン、高血圧・糖尿病・心不全・心房細動・心房粗動の既往などをマッチさせ、SAS併発群と非併発群それぞれ940人からなるデータセットを作成。この両群を比較すると、アルブミン(3.76対3.87mg/dL)や総蛋白(6.83対6.94mg/dL)、およびカリウム(4.40対4.46mEq/L)はSAS併発群で有意に低値だったが、その他の臨床検査値やCKD病期(KDIGOステージ)、併発疾患有病率などは有意差がなかった。

     主要評価項目を、死亡、腎代替療法の開始、心不全・虚血性心疾患・脳卒中による入院で構成される複合エンドポイントとして、カプランマイヤー法で経過を比較すると、SAS併発群はイベント非発生率が有意に低値で推移していた。ただし、SAS併発群の35%に当たるCPAP施行群(330人)では、イベント非発生率がSAS非併発群と同レベルで推移していた。

     SAS非併発群を基準にイベント発生リスクを比較すると、未調整モデルではハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.10~1.45)であり、交絡因子(年齢、性別、eGFR、アルブミン、カリウム)を調整後にもHR1.25(同1.08~1.45)と、SAS併発群は有意にハイリスクであることが示された。

     次に、SAS併発群をCPAP施行の有無で二分して検討すると、CPAPを施行していない群では、未調整モデル〔HR1.42(1.22~1.65)〕、交絡因子調整モデル〔HR1.32(1.12~1.55)〕ともに、有意なリスク上昇が認められた。一方、CPAP施行群では、未調整モデル〔HR1.00(0.84~1.23)〕、交絡因子調整モデル〔HR0.96(0.76~1.22)〕であり、イベント発生リスクはSAS非併発群と同等であることが明らかになった。

     このほか、eGFRの低下速度を比較すると、有意差はないながらもSAS併発群で速く、特にCPAPを施行していない群で速いことが分かった(SAS非併発群は-1.7±5.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP施行群は-2.0±4.7/分/1.73m2/年、SAS併発CPAP非施行群は-2.2±5.1/分/1.73m2/年)。

     著者らは、本研究が医療費請求データの解析であるため、SASの重症度を含めて詳細な患者背景が不明であることを限界点として挙げた上で、「SASを併発しているCKD患者は予後不良となりやすく、CPAP治療が予後を改善する可能性がある」と結論付けている。それらのメカニズムとしては、CKDによる体液貯留傾向とSASによる上気道の狭窄がともに心不全などの心血管イベントリスクを押し上げ、それに対してCPAPはSASとともに心不全を改善するように働くのではないかとの考察を加えている。

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  • DAA治療後の肝がんリスクはIFN治療後と同等――国内勤労世代の患者での検討

     C型肝炎に対して直接作用型抗ウイルス薬(DAA)による治療によって持続性ウイルス学的著効(SVR)を達成した患者の肝細胞がん(HCC)リスクは、インターフェロン(IFN)ベースの治療でSVRを達成した患者と同レベルに抑制されることが明らかになった。関西労災病院消化器内科の萩原秀紀氏らが、勤労世代の患者の医療記録を後方視的に解析した結果であり、詳細は「JGH Open」に5月18日掲載された。SVR達成後のHCC発症に、糖尿病やアルブミン低値などが有意に関連していることも分かった。

     C型肝炎の治療にはかつてIFNが軸として用いられていたが、治療期間が長く奏効率も高くなかった。これに対して近年はIFNを用いないDAAによる治療が普及し、短期間で100%近い奏効率を得られるようになっている。しかし、C型肝炎を有する勤労世代の日本人患者がDAA治療によりSVRを達成した場合に、HCCリスクがどの程度抑制されるかはまだ十分明らかになっていない。萩原氏らは、同院や大阪大学病院など27の医療機関が参加している「Osaka Liver Forum」のコホート研究データを解析し、この点を検討した。

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     同コホート研究の登録者の中から、SVRを達成した20~64歳のC型肝炎患者2,579人を解析対象とした。C型肝炎以外の肝炎患者や非代償性肝硬変患者、データ欠落者は除外されている。なお、肝硬変を来している患者は3~4カ月ごと、そうでない患者は半年ごとに経過観察が続けられた。

     2,579人のうち1,615人はIFNベースの治療、964人はDAA治療が行われていた。両群のベースライン(治療開始前)データを比較すると、DAA群はIFN群より高齢で糖尿病有病率が高く、肝線維化が進行していた。また、血小板数、ビリルビン、AST、ALT、α-フェトプロテイン(AFP)はDAA群の方が有意に低く、アルブミンはDAA群が有意に高かった。SVR後4年間のHCC累積発症率は、IFN群1.8%、DAA群3.4%でIFN群の方が有意に低かった(P=0.044)。

     次に、傾向スコアを用いて、年齢、性別、BMI、FIB-4インデックス、糖尿病、血小板、ビリルビン、AST、ALT、アルブミン、AFPをマッチさせ、各群644人のデータセットを作成して比較。IFN群はSVR後51.0カ月(中央値)の追跡で9人、DAA群は35.7カ月の追跡で11人がHCCを発症していた。SVR後4年間のHCC累積発症率は、IFN群1.6%、DAA群2.8%で群間差は非有意となった(P=0.186)。

     DAA群でHCC発症に関連する因子を検討すると、単変量解析では、高齢、FIB-4インデックス高値、糖尿病、血小板・アルブミン低値、ビリルビン・ALT・AFP高値などが有意に関連していた。これらを独立変数とする多変量解析の結果、高齢〔1歳あたりのハザード比(HR)1.139(95%信頼区間1.036~1.253)〕、糖尿病〔HR3.4(同1.266~9.132)〕、治療終了後24週(SVR24)のAFP高値〔1ng/mLあたりHR1.273(同1.186~1.365)〕が独立した正の関連因子、SVR24のアルブミン高値〔1g/dLあたりHR0.218(同0.070~0.683)〕が独立した負の関連因子として抽出された。

     ROC解析の結果、DAA群でのHCC発症予測のための最適なカットオフ値は、年齢は61歳(感度60.0%、特異度74.8%、AUC0.714)、SVR24のアルブミンは4.0g/dL(感度60.0%、特異度90.6%、AUC0.711)、SVR24のAFPは4.1ng/mL(感度85.0%、特異度69.5%、AUC0.812)であることが分かった。

     以上より著者らは、「C型肝炎に対しDAA治療によりSVRを達成した国内の勤労世代の患者におけるHCC発症率は、IFNベースの治療を受けた場合と同程度に抑制されていることが示された。一方、高齢であることや糖尿病、SVR24のアルブミン低値やAFP高値は、SVR後のHCC発症リスクと関連していた。これらのリスク因子を持つ日本人勤労世代の患者では、DAA治療によるSVR達成後も、より厳格なフォローアップが必要と考えられる」と結論付けている。

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  • 浴槽入浴が糖尿病患者の治療を後押し?

     湯に漬かる入浴(浴槽入浴)の頻度が高い糖尿病患者は、血糖コントロールの指標であるHbA1cが良好であるというデータが報告された。国立国際医療研究センター国府台病院糖尿病・内分泌代謝内科の勝山修行氏らの研究によるもので、詳細は「Cardiology Research」6月発行号に掲載された。HbA1c以外に体格指数(BMI)や拡張期血圧も、浴槽入浴の頻度が高い患者の方が良好だという。

     サウナや浴槽入浴の頻度が、心血管イベント発生率と逆相関することが既に報告されている。ただし、これまでに国内で行われた研究は解析対象者数が少なく、また、心血管イベントの既知のリスク因子を網羅的に解析した研究は見られない。勝山氏らは、同院の外来糖尿病患者約1,300人を対象とする横断研究を実施し、この点を検討した。

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     2018年10月~2019年3月に同院を受診し、入浴の習慣に関するアンケートに回答した糖尿病患者のうち、2型以外の糖尿病、および必要なデータが欠落している患者を除外して、1,297人を解析対象とした。解析対象者の主な特徴は、平均年齢66.9±13.6歳、男性55%、BMI25.9±5.3、HbA1c7.17±1.14%で、冠動脈疾患の既往者が6.6%、脳卒中の既往者が5.5%含まれていた。また、99.9%は自宅に浴槽付きの風呂を有していた。なお、季節による入浴頻度への影響を抑えるため、アンケート実施期間を冬季に限定した。

     浴槽入浴の頻度は週に平均4.2±2.7回で、1回当たりの入浴時間は16±14分だった。浴槽入浴の頻度は年齢と有意に正相関(高齢であるほど頻度が高い)していた(R=0.098、P<0.001)。反対に、HbA1c(R=-0.078、P=0.005)、BMI、(R=-0.104、P<0.001)、拡張期血圧(R=-0.118、P<0.001)とは有意な負の相関が認められた。収縮期血圧や血清脂質(コレステロール、中性脂肪)、および腎機能(eGFR)や肝機能(AST、ALT、γ-GT)の指標は、浴槽入浴との有意な相関がなかった。

     浴槽入浴の頻度に基づき全体を3群(週に4回以上、1~3回、1回未満)に分類して比較検討した結果も同様に、浴槽入浴の頻度の高い群は、高齢で(P<0.001)、HbA1c(P=0.012)やBMI(P=0.025)、拡張期血圧(P=0.001)が低いという関係が認められた。一方、性別(女性の割合)や収縮期血圧、血清脂質、および腎機能の指標は、この3群間で有意差がなかった。また、心血管代謝関連の処方薬のうち、GLP-1受容体作動薬のみ、浴槽入浴の頻度が低い群で処方率が有意に高く(P=0.038)、その他の薬剤の処方率は有意差がなかった。

     次に、入浴頻度との有意な関連が認められた、HbA1c、BMI、拡張期血圧について、それらを従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、HbA1c(β=-0.078、P=0.020)、BMI(β=-0.074、P=0.012)、拡張期血圧(β=-0.110、P=0.006)、いずれに対しても、入浴頻度が独立した有意な関連因子として抽出された。

     著者らは本研究の限界点として、横断研究であり因果関係は不明であること、入浴頻度の高い患者は身体活動量が多い可能性があることなどを挙げている。その上で、「われわれの研究結果は習慣的な浴槽入浴が、肥満、拡張期血圧および血糖コントロールを、わずかながら改善する可能性のあることを示唆している。浴槽に漬かるという温熱療法は、2型糖尿病患者の心血管疾患抑制のための補助的なオプションとなる可能性があるのではないか」と結論付けている。なお、既報文献を基にした考察から、浴槽入浴による効果発現のメカニズムとして、「体温上昇と血管拡張による血流や血管内皮機能の改善、一酸化窒素(NO)産生の増加、インスリン感受性の亢進などが考えられる」と述べている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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  • 毎日コーヒーを飲む高血圧患者は血管の機能が良好

     コーヒー摂取習慣のある高血圧患者は、血管の内皮と平滑筋の機能が良好であることを示すデータが報告された。広島大学病院未来医療センターの東幸仁氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に6月29日掲載された。

     適量のコーヒー摂取には健康上のさまざまなメリットのあることが報告されているが、高血圧の治療に対する有益性の研究結果は一貫性がない。東氏らはこの点について、血管内皮機能と血管平滑筋機能の面から検討を加えた。

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     動脈血管の最も内側の層に当たる内膜の内皮細胞は、血管を拡張する一酸化窒素(NO)を産生するなどの役割を担い、中膜の平滑筋は血管のしなやかさに関与している。動脈硬化の初期段階では内皮機能が低下し、続いて平滑筋機能が低下してくる。これらを測定することで、血管が狭くなるなどの形態学的な変化や臓器障害が現れる前に、動脈硬化のリスクを把握でき早期介入が可能となる。

     一般に内皮機能は、上腕(二の腕)の血流を一時的に駆血(遮断)し、それを開放した時に血流の刺激を受けた内皮細胞がNOを産生することで起こる血管拡張反応(flow-mediated vasodilation;FMD)で評価する。測定結果は、ベースライン(駆血前)の血管径を基準に開放後の血管径を比較してパーセントで表す。一方の平滑筋機能は、ニトログリセリン投与による血管拡張反応(nitroglycerine-induced vasodilation;NID)で評価し、やはりベースラインからの血管径の変化の割合で結果を表す。いずれも数値が大きい方が、内皮や平滑筋の機能が良好と判定される。

     研究の対象は、2016年4月~2021年8月に同大学病院で健診を受けた高血圧患者462人。血管拡張作用のある硝酸薬が処方されている患者、NYHA分類III以上の心不全患者、コーヒー摂取習慣に関する情報のない患者は除外されている。FMDとNID測定値への影響を避けるため、研究参加者には一晩の絶食のほか、検査の12時間前からは、アルコール、カフェイン(コーヒーなど)、抗酸化ビタミン、喫煙を控えてもらった。

     研究参加者の主な特徴は、年齢65±13歳、男性59.7%、BMI24.4±3.8で、血圧は130±17/79±12mmHgであり、糖尿病患者が29.2%、心血管疾患既往者が20.6%、喫煙者(現喫煙者と前喫煙者の合計)が54.7%含まれていた。コーヒー摂取習慣のある患者が84.6%で、その平均摂取量は1日2杯だった。コーヒー摂取習慣の有無で比較すると、摂取習慣のある群は、男性の割合、クレアチニン、心血管疾患既往者の割合が低く、LDL-コレステロールと糖尿病の有病率が高いという有意差があり、年齢やBMIなど、その他の指標は有意差がなかった。

     FMDは全体の平均が3.2±2.9%、NIDは11.0±5.4%であった。コーヒー摂取習慣の有無別に見ると、FMD(2.6±2.8対3.3±2.9%、P=0.04)、NID(9.6±5.5対11.3±5.4%、P=0.02)ともに、摂取習慣のある群の方が有意に高値だった。

     次に、FMDの三分位で3群に分け、第1三分位群(FMD1.6%未満)を内皮機能障害と定義。ロジスティック回帰分析により内皮機能に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、収縮期血圧、喫煙、脂質異常症・糖尿病・心血管疾患の既往)を調整後、習慣的なコーヒー摂取群では内皮機能障害該当者が有意に少ないことが分かった〔オッズ比(OR)0.55(95%信頼区間0.32~0.95)〕。

     NIDの第1三分位群(NID8.4%未満)を平滑筋機能障害と定義して解析した結果も同様に、習慣的なコーヒー摂取群では平滑筋機能障害該当者が有意に少なかった〔OR0.50(同0.28~0.89)〕。コーヒーの摂取量との用量反応関係を解析した結果、1日に0.5~2.5杯(約100~500mL)の範囲で、内皮・平滑筋機能障害のオッズ比が最も低いことが分かった。

     著者らは本研究が単施設での横断研究であること、コーヒー摂取者でも海外からの報告に比べて摂取量が少なく、大量摂取した場合にマイナスの影響が生じる可能性が不明であることなどを限界点として挙げた上で、「適量のコーヒー摂取は高血圧患者の血管内皮機能と平滑筋機能にメリットをもたらす可能性がある」と結論付けている。また、その機序として、カフェインに含まれているポリフェノールであるクロロゲン酸による抗酸化作用、カフェインによる内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性上昇などが考えられるとの考察を加えている。

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    心不全のセルフチェックに関連する基本情報。最善は医師による診断・診察を受けることが何より大切ですが、不整脈、狭心症、初期症状の簡単なチェックリスト・シートによる方法を解説しています。

    心不全のセルフチェックに関連する基本情報

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    HealthDay News 2022年8月10日
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  • 高齢者宅へのIH調理器導入のタイミングが遅すぎる可能性

     高齢者世帯の火災予防のために、調理用コンロをIH調理器に交換するよう勧められることがあるが、その交換のタイミングが総じて遅すぎるのではないかとする論文が発表された。認知機能が低下している高齢者では、マニュアルを見ながらでもIH調理器をほとんど操作できず、認知機能が正常の高齢者でも困難だという。東北大学未来科学技術共同研究センター/高齢者高次脳医学研究プロジェクトの目黒謙一氏らの研究によるもので、詳細は「Dementia & Neuropsychologia」に4月11日掲載された。

     2018年の消防庁の統計によると、全火災事故の約13.9%がコンロの取り扱いに関連している。また、高齢者では鍋を焦がしてしまうという体験と、記憶力や判断力、実行機能の低下が有意に関連していることが報告されている。このような高齢者のコンロの取り扱いミスによる火災リスクを抑制する対策として、自治体によってはIH調理器への交換を推奨している。しかし、認知機能の低下した高齢者でもIH調理器を使用可能かどうか明らかでない。目黒氏らは、宮城県涌谷町の高齢者を対象として、この点を検討した。

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     研究参加者は、75歳以上の地域在住高齢者166人。臨床的認知症尺度(CDR)により、66人はスコア0で「健康」、79人はスコア0.5で「認知症の疑い」、21人はスコア1以上で「認知症」と判定された。また、本人と家族へのインタビューから、過去の火災につながるような体験(鍋を焦がす、タバコやストーブの消し忘れ、畳を焦がすなど)の有無を把握し、その頻度と重大性から、火災を引き起こすリスクを判定。その結果、98人は該当する経験がなく「安全」、39人は「低リスク」、29人は「高リスク」と分類された。

     研究参加者に、「IH調理器を使って、インスタント麺を作るのに必要な水をできるだけ速く沸騰させるように」との課題を与え、実行可能かを判定した。なお、調理器のマニュアルは自由に読んでよいこととし、読みやすいように拡大したものを手渡した。また、手順が分からず先に進めない場合は、研究スタッフが作成した説明書を参照してもらったり、スタッフが助言をした。

     やかんを置き、主電源、加熱ボタンの順にオンにし、パワーを最大にして、沸騰したら電源をオフにするという手順を全て完了できたのは、健康な群では約15%、認知症疑い群では約8%であり、認知症群では0%だった。この3群で課題を完了できた人の割合に有意差はなかったが、全体的に課題を完了できない人の多さが際立つ結果となった。なお、健康な群であっても、過去の体験から火災「高リスク」と分類された群には、課題を完了できた人が1人もいなかった。

     次に、認知症群を除外して健康な群と認知症疑い群を、完了できた/できなかった人に二分して、認知機能(MMSE)を比較。すると、課題を完了できた人の認知機能スコアの方が有意に高かった(26.1±2.9対24.5±3.1、P<0.05)。また、実行機能(数字記号置換テスト)の結果も、課題を完了できた人の方が有意に高かった(35.1±11.4対29.7±8.8、P<0.05)。ただし実行機能の別の指標(TMT-A)は有意差がなかった。

     著者らは本研究の限界点として、課題を実行できるか否かを1機会のみで確認し、学習効果を評価していないことなどを挙げている。その上で、「火災予防のためにIH調理器を導入するタイミングは、火災につながる何らかのインシデントがあってからでは遅すぎる。また、IH調理器に交換する前に、高齢者の認知機能や実行機能を評価すべきではないか」と述べている。

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    軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。

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    HealthDay News 2022年8月8日
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  • クレアチニン/シスタチンC比で糖尿病患者の動脈硬化を評価可能

     血清クレアチニンとシスタチンCの比が、2型糖尿病患者の無症候性アテローム性動脈硬化の存在と有意な関連があるとする論文が報告された。松下記念病院糖尿病・内分泌内科の橋本善隆氏、京都府立医科大学大学院医学研究科内分泌・代謝内科の福井道明氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open Diabetes Research & Care」に6月23日掲載された。

     糖尿病が動脈硬化の強力なリスク因子であることは古くから知られており、心血管イベントの発症前に動脈硬化進展レベルを評価した上での適切な治療介入が求められる。一方、近年は高齢化を背景に、糖尿病患者のサルコペニアも増加している。サルコペニアの診断には歩行速度や骨格筋量の測定が必要だが、より簡便な代替指標として、血液検査値のみで評価可能な「サルコペニア指数(sarcopenia index;SI)」が提案されている。SIは、血清クレアチニンをシスタチンCで除して100を掛けた値であり、低値であるほどサルコペニアリスクが高いと判定される。またSIは、心血管イベントリスクと相関するとの報告がある。ただし、SIと動脈硬化進展レベルとの関連は明らかでない。

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     これを背景として橋本氏らは、京都府立医科大学などが外来糖尿病患者を対象に行っている前向きコホート研究「KAMOGAWA-DMコホート」のデータを用いて、SIによる糖尿病患者の無症候性アテローム性動脈硬化を検出可能か検討した。2016年11月~2017年12月に登録された患者から、データ欠落者、および動脈硬化性疾患〔虚血性心疾患、脳卒中、末梢動脈疾患(ABI0.9未満)〕や心不全、腎機能障害(血清クレアチニン2.0mg/dL超)の既往者などを除外した174人を解析対象とした。動脈硬化進展レベルは上腕-足首脈波伝播速度(baPWV)で評価した。

     解析対象者は平均年齢66.9±10.1歳、男性56.3%、BMI23.5±3.5kg/m2、糖尿病罹病期間17.7±11.6年、HbA1c7.3±0.9%であり、血清クレアチニンは0.76±0.23mg/dL、シスタチンCは0.99±0.26mg/dLで、SIは77.6±15.8、baPWVは1,802±372cm/秒だった。baPWVが1,800cm/秒を超える場合を無症候性アテローム性動脈硬化と定義すると、43.7%が該当した。

     相関を検討した結果、SIは男性(r=-0.25、P=0.001)、女性(r=-0.37、P=0.015)ともに、baPWVと有意な負の相関が認められた。性別を区別せずに全患者を対象としてROC解析を行ったところ、無症候性アテローム性動脈硬化の検出能は、AUC0.66(0.57〜0.74)であり、SIの最適なカットオフ値は77.4(感度0.72、特異度0.58)と計算された。

     続いてロジスティック回帰分析にて、共変量(年齢、性別、BMI、喫煙・運動習慣、収縮期血圧、HbA1c、降圧薬・血糖降下薬・スタチンの使用)を調整後に、無症候性アテローム性動脈硬化の存在に独立して関連する因子を検討。その結果、年齢〔オッズ比(OR)1.19(95%信頼区間1.11~1.28)〕、収縮期血圧〔OR1.06(同1.03~1.09)〕が有意な正の関連因子として抽出され、反対にスタチン使用〔OR0.33(同0.13~0.86)〕とSI〔1上昇するごとにOR0.95(同0.91~0.99)〕が有意な負の関連因子として抽出された。性別や喫煙・運動習慣、HbA1cなどは有意でなかった。

     以上より著者らは、「SIは2型糖尿病患者の無症候性アテローム性動脈硬化の存在と関連しており、患者のイベントリスク評価に有用と考えられる」とまとめている。両者の関連のメカニズムについては、サルコペニアと動脈硬化に、身体活動量の低下、酸化ストレス、炎症、インスリン抵抗性などの共通の病因が存在しているため、SI低下と動脈硬化が並行して進行する可能性を考察として述べている。その上で、「因果関係を明らかにするには、さらなる大規模な前向き研究が必要」と付け加えている。

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    糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

    糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

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  • 病院排水のオゾン処理で細菌と残留抗菌薬の不活化に成功

     病院内の排水貯留槽に含まれる一般細菌や、代謝により尿・便として排泄される残留抗菌薬をオゾン処理によって不活化するシステムの有効性が報告された。1m3の試験排水に対して20分の処理で多くの細菌が不活化され、40分の処理でほぼ全ての抗菌薬についても不活化可能であるという。東邦大学医学部一般・消化器外科/医療センター大橋病院副院長の渡邉学氏、大阪医科薬科大学の東剛志氏、国立感染症研究所の黒田誠氏らによる共同研究の成果が、国際科学誌「Antibiotics」に6月27日掲載された。

     感染症治療には抗菌薬が使用されるが、抗菌薬に対する耐性(antimicrobial resistance;AMR)を獲得した細菌が生まれ、治療困難な感染症の拡大が懸念され、世界中でAMR対策が推進されている。その手段としてこれまで、一般市民へのAMR対策の重要性の啓発活動や、医療現場での抗菌薬適正使用の推進などの措置がとられてきた。しかし、適正使用された抗菌薬であっても一部は薬効を持ったまま体外に排泄され、排水を経由して環境中に拡散している。

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     また、国内の水質汚濁防止に関する法律では、大腸菌群については下水道に流す前に排出量(濃度)を一定レベル以下に処理することを定めているが、その他の細菌や抗菌薬の濃度については定めがない。現状では、下水を介して環境中に排泄される薬剤耐性菌や抗菌薬が生態系に影響を及ぼし得るのかというリスク評価のデータは乏しく、今後の調査が重要である。また、環境に放出された薬剤耐性因子をそのままにしておくことで、新たな薬剤耐性菌を生み出してしまう懸念も警鐘されている。

     医療機関からの排水中の細菌や抗菌薬の濃度は、一般家庭などからの排水よりも高い傾向にあり、下水道に流入する前の処理によりそれらを取り除くことが可能であれば、新たなAMR対策手段となり得る。渡邉氏らはこのような背景のもと、東邦大学医療センター大橋病院の下水処理システムにオゾン処理装置を増設し、予備実験で排水中の細菌や抗菌薬を不活化する試みを実施した。病院施設に高度な排水処理システムを応用し、細菌や抗菌薬の不活化効果について科学的な評価を行った成果の報告は、本事業が初めてとのことだ。

     排水中の細菌や抗菌薬を不活化する方法は複数存在する。その中から、同院ではオゾン処理という方法に着目した。この方法には、化学薬品の添加が不要で細菌の不活化や環境汚染物質の除去が可能であり、脱色や脱臭効果にも優れているという特徴がある。ただし、その効果は実験室レベルでの小規模な検討にとどまっていて、病院の排水処理への適用はこれまで検討されていなかったという。

     オゾン処理後の排水を解析した結果、大半の細菌が20分で処理前の0.02%程度のレベルに不活化されることが明らかになった。ただし、病原性の低い環境細菌と想定されるRaoultella ornithinolyticaやPseudomonas putidaなどの一部の細菌は80分のオゾン処理後も若干検出され、オゾンに対する低感受性が認められた。著者らは、「これら一部の細菌は細菌自体が有する特徴としてオゾンに対する抵抗性を持っていると考えられ、環境中でAMRリザーバー(貯蔵庫)としての役割を果たす可能性があるかもしれず、今後注意深く見ていく必要がある」と述べている。

     抗菌薬については、国内での使用量の多い15種類についてオゾン処理の効果が検討され、40分のオゾン処理によって対象とした全ての抗菌薬の96~100%が除去された。セフジニル、レボフロキサシン、クロルテトラサイクリン、バンコマイシンについては10分以内に90%が除去された。また、アンピシリンとクラリスロマイシンは、20分後にも20〜22%検出されたが、40分後には96〜99%が除去された。

     以上の結果から著者らは、「ろ過や生物学的な前処理を行わず、病院排水に直接的なオゾン処理を行うことで、薬剤耐性菌と残留抗菌薬が同時にかつ効率的に不活化されることを明らかにした。どの病院からもある一定数の耐性菌が一般下水へ排出されていると推察され、社会的な対策の必要性が求められつつある。東邦大学医療センター大橋病院として排水浄化の取り組みを世界に先駆けて実施し、オゾン処理が効果的であることを実証した。これらの成果をもとに社会実装を視野に入れ、病気の治療にとどまらず、人々の健康や安全に責務のある病院としてさらなるクリーンな環境作りに貢献したい」と述べている。

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  • ガイドライン改訂とパンデミックで日本人の血圧はどう変わった?

     健診データを用いて、2015~2020年度に日本人の血圧がどのように変化したかを解析した結果、2019年のガイドライン改訂や2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響が確認されたとする論文が報告された。東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の佐藤倫広氏らの研究結果であり、詳細は「Hypertension Research」に6月20日掲載された。

     近年の日本では国民の血圧に影響を与え得る二つの出来事があった。一つは2019年に日本高血圧学会がガイドラインを改訂し、75歳未満の成人の降圧目標を以前の140/90mmHg未満から130/80mmHg未満(いずれも診察室血圧)に引き下げたこと。もう一つは2020年のCOVID-19パンデミックで、生活様式の変化やストレスが、人々の血圧に影響を及ぼしている可能性が指摘されている。佐藤氏らは、健康保険組合および国民健康保険の健診データを用いた後ろ向きコホート研究によって、一般住民の血圧の変化を調べた。

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     2015~2020年度に定期健診を複数回受診していて、血圧の変化を把握可能な15万7,510人(平均年齢50.9±12.3歳、男性67.5%)を解析対象とした。後期高齢者医療制度の対象である75歳以上は含まれていない。解析対象者は、高血圧治療を受けていない男性が56.2%、同女性が27.9%、高血圧治療を受けている男性が11.0%、同女性4.9%で構成されていた。

     まず、ガイドライン改訂前までの2015~2018年度の変化を、季節による血圧の影響を除外するため健診を受けた月を調整して検討した結果、収縮期血圧は前記の4群の全てで有意な上昇が観察された。血圧に影響を及ぼし得る季節以外の交絡因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、腎疾患・虚血性心疾患・脳血管疾患の既往、および血清脂質・血糖・肝機能関連指標などの健診で把握可能な全ての因子と時間依存性共変量)を調整すると、高血圧治療を受けている男性のみ、2015~2018年度にかけて有意な収縮期血圧の低下が観察された。一方でその他の3群の収縮期血圧は、いずれも有意に上昇していた(治療を受けていない女性は+0.33mmHg、同男性は+0.15mmHg、治療を受けている女性は+0.43mmHg、同男性は-0.24mmHgの変化)。

     次に、ガイドライン改訂の影響を調べるため、2018年度と2019年度の差を見ると、前記の全交絡因子を調整したモデルでは、高血圧治療を受けていない女性を除く3群で、有意な収縮期血圧の低下が認められた(治療を受けていない男性は-0.16mmHg、治療を受けている女性は-1.01mmHg、同男性は-0.25mmHgの変化)。治療を受けていない女性は有意な変化が認められなかった。

     続いて、パンデミックの影響を調べるため、2019年度と2020年度の差を前記の全交絡因子を調整したモデルで見ると、全群で有意な収縮期血圧の上昇が認められた(治療を受けていない女性は+2.13mmHg、同男性は+1.62mmHg、治療を受けている女性は+1.82mmHg、同男性は+1.06mmHgの変化)。

     まとめると、日本人の血圧は、2019年のガイドライン改訂後にわずかに低下し、2020年のパンデミック後に収縮期血圧が1~2mmHg程度上昇していた。パンデミックによる血圧の上昇について著者らは、「一般住民で認められたこの血圧上昇幅は、米国からの報告とほぼ一致している。一人一人で見ればわずかな変化と言えるかもしれないが、全国規模では合併症罹患率などに大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べている。

     また、パンデミック後の血圧上昇幅が、男性よりも女性で大きいことの背景として、「パンデミックが女性に対して、より大きな精神的ストレスを与えていることを表しているのではないか」との考察を加えている。

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