3年の禁煙で認知症リスクが非喫煙者と同レベルになる――大崎コホート研究

喫煙者は認知症のリスクが高いものの、禁煙して3年たつと非喫煙者と変わらない程度にリスクが低下する可能性が報告された。東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学の陸兪凱氏、辻一郎氏らが、宮城県大崎市で行われている「大崎コホート2006研究」のデータを解析し明らかになった。詳細は「European Journal of Epidemiology」2月15日オンライン版に掲載された。

大崎コホート2006研究は、大崎市の地域住民を対象に2006年に開始された前向きコホート研究。ベースライン時に65歳以上だった地域在住高齢者3万1,694人にアンケート調査を実施し、有効回答の得られた2万3,091人について追跡調査が続けられている。今回の検討では、喫煙状況の情報が記録されていた人から、ベースライン時点で要介護認定を受けていた人などを除く1万2,489人のデータを解析した。

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対象者の喫煙状況は、喫煙歴のない人(非喫煙者)が59.6%、現在も喫煙している人(現喫煙者)が13.8%、禁煙した人(過去喫煙者)が26.6%だった。現喫煙者や過去喫煙者は非喫煙者に比べ男性が多く、教育歴が短く、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、および飲酒習慣のある人の割合が高かった。また過去喫煙者は現喫煙者に比較して、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の割合がさらに高かった。一方、非喫煙者は肥満者が多かった。歩行習慣や心理的ストレスは群間差がなかった。

5.7年の追跡期間中に転居などにより追跡不能となったのは155人で、追跡率は98.8%だった。対象者の8.9%に当たる1,110人が追跡期間中に認知症を発症した。認知症発症リスクを年齢と性別で調整の上、非喫煙者を基準に検討すると、現喫煙者のハザード比(HR)は1.53で有意に高リスクだった。調整因子に、学歴、肥満、歩行時間、飲酒習慣、既往歴、心理的ストレスを追加しても、現喫煙者はHR1.46で有意にリスクが高かった。

過去喫煙者の認知症発症リスクについては、禁煙を始めてからの経過期間別に検討した。その結果、年齢と性別で調整した場合、非喫煙者と比較して、禁煙期間が2年以下ではHR1.50で有意なリスク上昇が見られたが、禁煙期間が3~5年ではHR1.14で有意差がなかった。

なお、調整因子に学歴などの前記と同様の因子を追加した解析においては、禁煙期間2年以下ではHR1.39でリスクは上昇したものの、有意差はなかった。禁煙期間3年目以降のハザード比は以下のとおりで、すべて非有意だった。3~5年1.03、6~10年1.04、11~15年1.19、16年以上0.92。

これまでの研究から、喫煙者が禁煙すると認知症発症リスクが低下することは知られていたが、その効果が禁煙開始から何年後に現れるのかは分かっていなかった。今回の結果をもとに研究グループでは、「禁煙開始後3年という比較的短い期間で、認知症のリスクが非喫煙者と同レベルに低下する可能性が示された。これは、認知症のリスクを抑制するために、禁煙のスタートが遅過ぎることはないことを意味する。喫煙者の禁煙の動機付けに、前向きなメッセージとなるだろう」と述べている。

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HealthDay News 2020年3月16日
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