6割以上の人が目薬の点眼に失敗している――国内の緑内障患者で調査

 目薬(点眼薬)をしっかりさせていない人が6割以上に及ぶ可能性を示すデータが報告された。山梨大学医学部眼科の柏木賢治氏らが、緑内障患者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に5月24日掲載された。

 緑内障は国内の視覚障害の原因の第1位であり、高齢者の増加とともにその患者数が増えている。緑内障による視覚障害を防ぐ最大のポイントは、眼圧降下薬をきちんと点眼し続けることで、誤った方法での点眼では眼圧コントロールが不十分になったり、副作用が現れやすくなる。しかし、緑内障患者がきちんと点眼できているか否かを検討した報告は少ない。

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 柏木氏らは、2017年3月~2018年10月に同大学附属病院眼科を受診した成人緑内障患者を対象として、点眼薬を正しく使用できているか否かを検討した。研究登録基準は、過去6カ月以上にわたり眼圧降下薬を自分自身で点眼していることと、視力の悪い方の目の矯正視力が20/200(0.1)以上あって、点眼薬ボトルの先端の確認に支障がないこと。除外基準は、重度の眼瞼下垂や上腕・手指の障害など点眼の妨げとなる疾患や身体障害があること。

 前記の条件を満たす患者は103人(男性55人)で、平均年齢は69.2±8.7歳であり、大半(96人)は点眼操作を右手で行っていた。患者来院時に、ヒアルロン酸点眼薬をふだんどおりの方法で点眼してもらい、その状況を2人の理学療法士が確認。また、横からの写真を撮影して頸椎伸展角度を測定し、点眼時に頭をどのくらい上に向けているかを評価した。そのほかに、点眼動作の正確さに関連する可能性のある、指で物をつまむ力の強さ、上肢の運動機能(DASHスコア)、全身の運動機能(SARAスコア)なども評価した。

 103人中63人(61.2%)が点眼を失敗したと判定された。失敗の中で最も多かったのは眼球結膜以外への点眼で、失敗原因の76.2%を占めていた。失敗原因の2位は、眼表面や皮膚などに点眼ボトルの先端が接触すること(22.2%)、3位は2滴以上の点眼(11.1%)だった。なお、右眼/左眼、右利き/左利きで比較した場合、有意差はなかった。

 点眼に成功した群と失敗した群を比較すると、失敗群は成功群より高齢で(70.9±8.3対66.4±8.9歳、P=0.014)、指でつまむ力が弱く(2.86±1.53対3.73±2.11kg、P=0.023)、頸椎伸展角度が浅くて頭をあまり上にあげていなかった(50.1±11.9対55.2±8.1度、P=0.024)。また、DASHスコア(16.6±15.2対10.5±10.5、P=0.040)やSARAスコア(3.12±3.00対1.85±2.25、P=0.018)が高いという有意差が存在した(DASHとSARAは点数が高いことが機能低下を表す)。また、失敗群は矯正視力が悪く、視野が狭い傾向にあったが、群間差は有意でなかった。

 このほか、クオリティー・オブ・ビジョン(視機能に関連する生活の質。QOV)をNEI VFQ-25という指標(眼の痛み、手元の見やすさ、遠方の見やすさ、運転に関する機能、色覚、視野、メンタルヘルスなどの評価)で検討した結果、すべての項目について、失敗群は成功群よりも有意に低下していることが明らかになった。

 多変量ロジスティック回帰分析の結果、点眼の失敗に有意に関連する因子として、視力、視野、DASHスコア、SARAスコアが抽出された。このほかに、DASHスコアが高い(上肢の運動機能が低い)ほど、QOVが低いという有意な相関も示された。

 著者らは、「点眼の失敗には、本研究で検討した項目以外にもさまざまなリスク因子がある。例えば認知機能の低下もそれに該当する。点眼が正しく行われていない場合、薬効が低下するだけでなく、副作用のリスクが上昇し、医療コストは増大する」とまとめている。その上で、「患者が正しく点眼できているかを評価し、正しくできていない場合はその患者の視機能と全身状態を勘案して、改善方法を探る必要がある」と付け加えている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年6月28日
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