「腎細動脈硝子化」所見は糖尿病性腎症早期のアルブミン尿増加およびGFR低下を予測する -北里大の研究グループ-

腎病理所見の1つである腎細動脈硝子化(arteriolar hyalinosis)の重症度は、正常~微量アルブミン尿期の日本人2型糖尿病患者において、尿中アルブミン排泄量(UAE)の増加と糸球体濾過量(GFR)低下の予測因子となり得ることが、北里大学健康管理センターの守屋達美氏らの研究グループによる検討で分かった。詳細は「Diabetes Care」8月3日オンライン版に掲載された。

 これまでの研究では、糖尿病性腎症(腎症)の典型的な組織所見である糸球体基底膜(GBM)の肥厚やメサンギウム領域の拡大などは、正常アルブミン尿期の段階で既に認められることが報告されている。守屋氏らは今回、腎組織変化の中でも腎細動脈硝子化に着目し、日本人2型糖尿病患者を対象に、この所見が腎症の進展予測に有用な因子であるかどうかを検証する研究を行った。

 対象は、顕性アルブミン尿を有さない正常血圧の2型糖尿病患者29人(男性が22人、平均年齢49±10歳、平均GFR値119±27mL/分/1.73m3)で、15人は正常アルブミン尿(UAEが20μg/分未満)、14人は微量アルブミン尿(UAEが20~200μg/分)を呈していた。

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 対象患者には経皮的腎生検を行い、電子顕微鏡検査や光学顕微鏡検査によりメサンギウム拡大率〔mesangial volume fraction;Vv(Mes/glom)〕や糸球体輸出入細動脈の硝子化インデックス(index of arteriolar hyalinosis;IAH)スコア、平均糸球体体積などの組織学的な因子を算出した。8.0±3.5年間追跡し、観察開始時と終了時のUAEおよびGFRの値と関連する組織学的因子を調べた。

 解析の結果、組織学的因子はいずれも観察開始時のUAEとは関連を示さなかったが、Vv(Mes/glom)は観察開始時および終了時のGFRと負の関連を示した。一方、IAHスコアは終了時のUAEと有意な正の相関を示し、GFRとは有意な負の相関を示した。なお、IAHスコアは観察開始時のUAEとGFR双方との関連は示さなかった。

 また、GFRの推移をみると、IAHスコアが観察開始時に2.0未満だった患者では、観察開始時と終了時のGFRに有意差はみられなかったが、IAHスコアが2.0以上を示した患者では、観察開始時に比べて終了時のGFRは有意に低下したほか、2.0未満であった患者と比べて終了時のGFRは有意に低かった。

 以上の結果から、守屋氏らは「腎細動脈硝子化は腎症に特有な所見ではないが、光学顕微鏡検査のみで重症度を判定できる。この所見は正常~微量アルブミン尿期の2型糖尿病患者における腎機能低下の有用な予測因子となる可能性がある」と結論づけるとともに、腎症の進展における腎機能の変化とIAHスコア上昇との関連を、そのメカニズムも含めてさらに詳細に検討する必要があるとしている。

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HealthDay News 2017年8月21日
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