AIで糖尿病性腎臓病の進行が予測可能――藤田医大グループ

人工知能(AI)を用いて構築した疾患予測モデルにより、糖尿病患者がDKD(糖尿病性腎臓病)の臨床所見を認める前段階において、その発症・進行が予測可能であり、その結果が将来の心血管イベントの発生と関連することがわかった。藤田医科大学内分泌・代謝内科学の鈴木敦詞氏らの研究グループが報告した。研究の詳細は「Scientific Reports」に8月14日掲載された。
DKDは、高血糖により生じる糖尿病に典型的な「糖尿病性腎症」に加え、加齢や高血圧など高血糖以外の要因も関係して発症・進行する腎障害を含めた比較的新しい疾患名。DKDが進行すると透析治療が必要になったり、心血管イベントが好発したりして生命予後やQOLが低下する。DKDの進行抑止には早期介入が重要であり、現在用いられている微量アルブミン尿検査よりも早期からの介入を可能にする診断ツールが求められている。

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研究グループでは、糖尿病患者6万4,059人の電子カルテ情報を利用し、AIによるビックデータの深層学習を行いDKDの予測モデルを作成した。まず、各種臨床検査値や診断名、処方内容、および自然言語処理によってテキストから変換した既往歴、現病歴などのデータを蓄積。その中から正常アルブミン尿期(DKDステージ1)の患者を抽出して180日後にDKDのステージが悪化するか、正常のままステージ1にとどまるかについて検討した。
DKDの進行に関連する項目として、HbA1c、eGFR、ヘモグロビン、ヘマトクリット、尿酸など24の検査項目の変動値を含む3,073項目の「特徴量」と呼ばれる要因を数式に代入することで、DKD悪化の予測モデルを構築。このモデルを実際の症例に用いて予測能を検討したところ、ROC曲線下面積(AUC)は平均0.742、予測精度の平均71%だった。
より長期的な予後との関連を検討すると、AIが「悪化」と予測した群は「安定」と予測した群に比べて10年間にわたり血液透析導入率が有意に高かった(P=0.00024)。また心血管イベントの発生率にも有意差が見られた(P=0.01434)。
DKDステージ1の糖尿病患者は年率2.8%の割合で微量アルブミン尿期(ステージ2)へ進行することが報告されている。血圧や血糖、脂質などの集学的治療によってその進行を抑制できるが、ステージ1の患者全員への予防的治療は過剰介入の懸念から現実的でなく、よりハイリスクの患者のみを抽出する手法として、疾患予測モデルの応用が考慮される。
従来提案されてきた予測モデルは既知のリスク因子のみを用いており、かつモデルに基づく介入の有効性を確認する際にも時間やコストがかかるが、AIを活用することで未知のリスク因子を含めることができ、低労力で最適なモデルを構築できるというメリットがある。研究グループは本研究の結論として、「AIを使用した新しい予測モデルはDKDの進行を検出でき、血液透析と心血管イベントを減らすためのより効果的で正確な介入に貢献する可能性がある」と述べている。

糖尿病の3大合併症として知られる、『糖尿病性腎症』。この病気は現在、透析治療を受けている患者さんの原因疾患・第一位でもあり、治療せずに悪化すると腎不全などのリスクも。この記事では糖尿病性腎病を早期発見・早期治療するための手段として、簡易的なセルフチェックや体の症状について紹介していきます。