飲酒量が多いほどインスリン分泌不全や抵抗性になりやすい 日本人男女2,100人の解析、帝京大


30歳以上の男女2,100人の検査データを解析したもので、これらの関連には性差はみられないことも分かった。
詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」10月27日オンライン版に掲載された。
日本人を対象に、飲酒によるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性への影響を検討した研究はほとんど行われていない。
国外では飲酒量が多いほどインスリン抵抗性のリスクは低いという研究結果が報告されているが、これは過剰な飲酒が2型糖尿病の発症リスクを上昇させるという国内外の多数の報告と合致しない。
そこで、辰巳氏らは人間ドックを受けた成人男女を対象に前向きに追跡し、これらの関連を調べる観察研究を行った。
対象は、2008年4月~2009年3月に75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)を含む検査を受け、2型糖尿病とインスリン分泌不全、インスリン抵抗性が認められなかった30~74歳の男女2,100人。

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対象者を純アルコール摂取量で(1)非飲酒群、(2)軽度の飲酒群(週に男性では1~139g、女性では1~69g)、(3)中等度の飲酒群(それぞれ週に140~274g、70~139g)、(4)過度な飲酒群(それぞれ週に275g以上、140g以上)の4群に分けてアルコール摂取量と追跡時に毎年行った75gOGTTで評価したインスリン分泌不全(インスリン分泌指数が51.7以下)またはインスリン抵抗性(HOMA-IRが2.5以上)の発症との関連を調べた。
4.3年(中央値)の追跡期間中に708人がインスリン分泌不全を発症し、5.0年(中央値)の追跡期間中に191人がインスリン抵抗性を発症した。
解析の結果、インスリン分泌不全になるリスクは、全く飲酒をしない群と比べて軽度の飲酒群では1.16倍、中等度の飲酒群では1.35倍、過度な飲酒群では1.64倍であり(傾向P<0.001)、インスリン抵抗性のリスクについても同様にそれぞれ1.22倍、1.42倍、1.59倍(傾向P=0.044)であったことから、飲酒量の増加に伴ってこれらのリスクは有意に上昇することが分かった。
また、追跡期間中に89人が2型糖尿病を発症しており、そのリスクは飲酒量の増加に伴い上昇していたが(非飲酒群と比べて軽度群で1.05倍、中等度群で1.46倍、過度な飲酒群で1.83倍、P=0.014)、糖尿病リスクと飲酒量の量反応関係は多変量調整後の解析では消失していた。
以上の結果から、辰巳氏らは「全く飲酒をしない人と比べて、飲酒量が多い人ほどインスリン分泌不全やインスリン抵抗性になるリスクは上昇することが分かった。
過度な飲酒は、インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両方を介して糖尿病の発症に影響を及ぼしている可能性がある」と述べている。

糖尿病とは?血糖値や症状に関する基本情報。体内のインスリン作用が不十分であり、それが起因となり血糖値が高い状態が続いていきます。症状など分類別に解説しています。