アーミッシュに「不老」の遺伝子変異、糖尿病の少なさにも関係

米インディアナ州で移民当時の生活スタイルを守りながら暮らすアーミッシュ(キリスト教の一派)の住民を対象とした調査から、一部の住民に共通した遺伝子変異があり、変異がある人ではない人と比べて平均寿命が10年長いことが分かった。

この遺伝子変異がある人では細胞の老化に関係するテロメア(染色体の末端を保護している部位)が長く、糖尿病の有病率や空腹時インスリン値が低いことも明らかになったという。
詳細は「Science Advances」11月15日号に掲載された。

この調査は米ノースウェスタン大学や東北大学などのグループが実施したもの。インディアナ州バーンのアーミッシュのコミュニティーで暮らす18~85歳の住民177人を対象に遺伝子検査を実施したところ、43人にプラスミノーゲンアクチベータ・インヒビター(PAI)-1をエンコードするSERPINE1遺伝子の変異があった。

また、この遺伝子変異がある住民では平均寿命が85歳(範囲73~88歳)だったのに対し、変異がない住民では75歳(同70~83歳)で、10年の差が認められた。
さらに、遺伝子変異がある住民では、変異がない住民と比べてテロメアが10%長かったほか、糖尿病の有病率が低く、空腹時インスリン値が低いことも明らかになった。
このほか、血管のスティフネス(硬さ)にも違いが認められたという。

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PAI-1は血液凝固を促進するタンパク質として知られる。
これまでにPAI-1が老化に関係することはマウスの研究で示されていたが、ヒトへの影響については分かっていなかった。

論文の筆頭著者である米ノースウェスタン大学のDouglas Vaughan氏は、同大学のプレスリリースで「テロメアという分子レベルの老化マーカーだけでなく、代謝(空腹時インスリン値)や心血管(血圧および血管の硬さ)の老化マーカーの全てにおいて、加齢による変化から守られている人たちが存在することが分かった」と説明。
「彼らは長寿であるだけでなく、健康に長生きしている。これは望ましい長寿の在り方だ」と話している。

現在、こうしたベネフィットが期待できるのは特定の遺伝子変異があるアーミッシュの一部の住民に限定されているが、将来、遺伝子変異がなくても同じようなベネフィットが得られる可能性はある。
東北大学の宮田敏男氏らがPAI-1の産生を阻害する薬剤を開発し、既にヒトを対象とした臨床試験でその安全性が確認されている。これを受け、Vaughan氏らも米国の2型糖尿病および肥満の患者を対象とした同薬の臨床試験を計画中で、半年以内の開始を目指し米食品医薬品局(FDA)への申請を予定しているという。

また、同氏はPAI-1阻害薬の臨床試験を実施するだけでなく、今後も定期的にアーミッシュのコミュニティーを訪問し、遺伝子変異による影響についてさらに詳しく調べたいとの意向を示している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年11月15日
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