自閉症の人が他人と目を合わせない理由

自閉症の人が他人の目をほとんど見ようとしない理由を追究した研究の結果が、「Scientific Reports」6月9日オンライン版に掲載された。

 研究を実施した米マサチューセッツ総合病院のNouchine Hadjikhani氏は、「自閉症の人は一見、他人との対話に興味がないように見えるが、そうではないことが分かった。目を合わせないのは、脳の特定部位が過剰反応することに由来する過剰な覚醒状態(excessive arousal)の不快感を低減させるための手段であることが明らかにされた」と述べている。

 アイコンタクトを避けることは、社会や個人に対する無関心を示すサインだとみなされることが多い。しかし、自閉症の人は「他人と目を合わせると不快感やストレスを覚える」と話すことが多いと、同氏らは指摘する。

 今回の研究ではこの問題を検討し、皮質下系(subcortical system)と呼ばれる脳の経路が関与していることを突き止めた。この経路は、乳児期には人間の顔に関心を示すように促し、後には他人の感情を理解することを助ける働きがあり、アイコンタクトをしたときに活性化される。

 同氏らは自閉症の人(23人)と定型発達の対照群(20人)に人間の顔の映像を見せ、自由に見てもらった場合と、目の領域だけを見てもらった場合の脳の活動を観察した。その結果、自由に見てもらった場合は両群で同様の脳の活動がみられたのに対し、目の領域だけを見た場合、自閉症の人では脳の皮質下系が過剰に活性化することが分かった。この傾向は特に怖がっている表情の顔を見たときに強くみられたが、楽しそうな顔や怒った顔、普通の顔でも同じ結果が得られた。

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 Hadjikhani氏は、この知見が自閉症の人の関心を引くための有効な方法につながる可能性があると述べている。「自閉症児に対する行動療法では、他人の目を見ることを強制すると大きな不安を与える可能性がある。アイコンタクトを少しずつ習慣化する方法を取ることで、自閉症児はこの過剰反応を克服し、長期的にみればアイコンタクトをできるようになるかもしれない。それにより、人と目を合わせないことが社会脳の発達に及ぼす連鎖的な影響も回避できる」との見方を同氏は示している。

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HealthDay News 2017年6月30日
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