ペットや家畜から感染? 知っておきたい人畜共通感染症の脅威

人畜共通感染症について

イヌ、ネコ、トリなど身近な動物から感染するかもしれない怖い感染症です。
それらの感染症の症状、予防、治療法など知っておきたい情報が満載です。
- 1.はじめに
- 2.インフルエンザウイルスとは
- 3.鳥インフルエンザウイルス感染症の感染経路
- 4.鳥インフルエンザウイルス感染症の症状と予防
- 5.狂犬病の感染経路
- 6.狂犬病の症状
- 7.狂犬病の予防と治療
- 8.おわりに
はじめに
人畜共通感染症(ズーノーシス)とは、ヒトと動物の両方に感染する病原体(ウイルスなどの微生物)によって引き起こされる感染症のことです。中でもインフルエンザや狂犬病は、ヒトと動物の双方に感染するダイレクトズーノーシスと呼ばれています。
鳥インフルエンザウイルスH7N9型は、中国で最初に発見されて132人が感染し、36人が死亡した致死性の高いウイルスです。
現在はヒトからヒトへの感染性はありませんが、今後ウイルスが変異して感染が広がることが心配されています。

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インフルエンザウイルスとは
インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科のウイルスで、A、B、C型の3種類があります。
ウイルスの表層には赤血球を集めて塊を作る赤血球凝集素(HA)と、細胞同士の感染を助けるノイラミニダーゼ(NA)という酵素があり、これらの分子がさまざまに組み合わさることで、ウイルスの型を形成しています。
ヒトに感染し、流行するインフルエンザウイルスはA型とB型です。A型は10~40年のサイクルで流行し、それにはウイルスの変異が大きく影響しています。
感染者から取り出されて増やしたウイルスをもとに、スペインかぜはH1N1型、アジアかぜはH2N2型、香港かぜはH3N2型、ソ連かぜはH1N2型、新型インフルエンザである豚インフルエンザはH1N1型であることがわかっています。
変異には突然変異とウイルス間の遺伝子組み換えの2パターンがあります。遺伝子組み換えはヒトの体内で起こることはなく、動物の体の内でヒトへ感染するウイルスへと変化します。
2003~2006年にかけて日本、インドネシア、韓国、中国に生息する鳥から見つかった高い確率で感染症を引き起こす鳥インフルエンザウイルスをH5N1型といい、新型インフルエンザウイルスに分類されています。
厚生労働省は鳥インフルエンザが国内感染者3,200万人のパンデミック(感染症の大流行)を引き起こすと推測し、さらに国内にワクチンがないとも述べています。
鳥インフルエンザウイルス感染症の感染経路
鳥インフルエンザウイルスは鳥の気道や大腸、小腸の中で増え、糞便(ふんべん)中に外に出ます。
また、汚染水を通してカモの間で感染し、湖や沼の氷の中で凍結保存されます。
鳥の糞(ふん)や汚染された水以外に、感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスから感染することもあります。
鳥インフルエンザウイルス感染症の症状と予防
ウイルスの潜伏期間は1~3日間です。
症状は38℃以上の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、全身のだるさ、咽頭痛、咳です。
高齢者では肺炎、乳幼児では脳炎を合併して死亡するケースもあります。
予防するには養鶏場など鳥の糞(ふん)が舞い上がるところに近づかないことが大切です。

狂犬病の感染経路
狂犬病ウイルスはラブドウイルス科リッサウイルス属のウイルスです。ヒトに対する主な感染源は野生のイヌですが、ネコやコウモリが菌をもっていることもあります。
それらの感染動物の唾液に含まれる狂犬病ウイルスが、噛まれた傷、目や唇などの粘膜から侵入します。
感染後、ウイルスは神経系を通って脳神経で活動し始めます。感染部位が脳に近いほどウイルスの潜伏期間は短く、2週間~2年間と幅広いことが特徴です。
狂犬病ウイルスは全ての哺乳類に感染します。通常、ヒトからヒトへの感染はなく、移植時の感染例があるのみです。
※神経系とは
音を聞く、痛みを感じるなどの刺激を細胞が受けたときに、それを脳に伝える組織のこと。
狂犬病の症状
狂犬病ウイルスに感染しているイヌは、感覚器に対する刺激に敏感になり、風や音によるわずかな刺激で痙攣(けいれん)を起こします。また、極端に水を避ける恐水症も特徴です。
ヒトに現れる症状としては、皮膚(ひふ)の違和感と感冒様症状(発熱、鼻づまり、咳など、いわゆるかぜのような症状)があげられます。
症状の激しい時期には不安感、恐水症状、恐風症、興奮、麻痺(まひ)、精神錯乱、腱反射と瞳孔反射のたかぶりが見られます。
致命的な症状は麻痺(まひ)で、全身にわたると呼吸障害に至って死亡します。
※恐風症とは
風の動きに敏感になり、過剰に恐れる症状のこと。
※腱反射とは
筋肉と骨をつないでいる腱が、外からの刺激に反応して突然筋肉を収縮すること。有名なものは、膝の皿の下をたたくと足が跳ね上がる反射。
※瞳孔反射とは
強い光を浴びたり、近くをずっと見たりすることによって瞳の大きさが変化すること。

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狂犬病の予防と治療
狂犬病の疑いのある動物に咬まれたらまず、傷口をよく洗うことが大切です。狂犬病ウイルスはエタノールで死滅するウイルスなので、洗浄後に消毒しましょう。
消毒後はすぐに暴露後(感染後)ワクチンを接種します。
接種のスケジュールは日本製のワクチンの場合、当日、3、7、14、30、90日後の6回です。
欧米製のワクチンの場合は、当日、3、7、14、28日後の5回接種します。
暴露前(感染前)ワクチンを接種せずに発症すると、ほとんどの場合で死亡することがわかっています。
日本での暴露前ワクチンの接種は180日間に3回で、完了後は2年間有効です。
接種の義務はなく、費用は自己負担です。欧米のワクチン接種は28日間に3回で、完了後は同じく2年間有効です。
おわりに
鳥インフルエンザと狂犬病という2つの人畜共通感染症についてご説明しました。
それぞれの症状や予防法についてご理解いただけたでしょうか?
ウイルスの変異と医療の進歩の関係はいたちごっこです。変異を繰り返すウイルスに対処するために、今後も情報をアップデートしていきましょう。

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