黄砂が飛ぶ日は血圧が上がる――京都での検討

 黄砂が飛来する日は血圧が高くなりやすいことが分かった。京都大学大学院医学研究科社会健康医学系の石井正将氏(現在の所属は宮崎県立延岡病院循環器内科)、川上浩司氏らが、10年間にわたる黄砂の飛来状況と健診での血圧測定値との関連を、後方視的に解析して明らかにした。結果の詳細は、「Scientific Reports」に10月19日掲載された。

 大気汚染が高血圧や心血管疾患のリスクを高めることや、黄砂飛来と喘息発作や急性心筋梗塞の発症との間に相関が見られることは知られている。ただし黄砂飛来の血圧への影響はこれまで不明だった。石井氏らは、2005年4月~2015年3月に京都市内の武田病院関連施設で行われた健診データを用いて、黄砂への短期曝露と血圧との関係を検討した。

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 検討対象は、同期間の健診受診者32万5,017人から、降圧薬服用者および未成年者を除外した30万952人分のデータ。気象庁が公開している黄砂情報によると、この期間中の黄砂飛来日は61日であり、その飛来日に受診した人が3,897人、非飛来日に受診した人が29万7,055人だった。

 血圧に影響を与える既知の因子(年齢、性別、平均気温、湿度など)を傾向スコアマッチングで調整し、黄砂非飛来日に受診した群から飛来日受診群と同数の3,897人を抽出、両群の血圧や脈拍を比較した。なお、傾向スコアマッチング後も、受診日の湿度(飛来日54.8±10.3%、非飛来日56.1±11.2%)と、浮遊粒子状物質濃度(49.1±30.4µg/cm3、20.1±10.4µg/cm3)には差があった。

 黄砂飛来日には、血圧と脈拍が上昇するという有意な関連が認められた。具体的には、収縮期血圧はβ=1.85(95%信頼区間1.35~2.35)、拡張期血圧はβ=2.24(同1.88~2.61)、脈拍はβ=0.52(同0.14~0.91)だった。また、収縮期血圧120mmHg以上〔調整相対リスク(RR)1.13(同1.06~1.20)〕や、ステージ1高血圧〔RR1.22(同1.14~1.30)〕、ステージ2高血圧〔RR1.31(同1.15~1.49)〕のリスク上昇と関連していた。なお、ステージ1は130/80mmHg以上、ステージ2は140/90mmHg以上の高血圧。

 黄砂飛来による高血圧患者数への影響(人口寄与割合。PAF)は、収縮期血圧120mmHg以上に関しては11.5%(95%信頼区間5.7~16.7)、ステージ1高血圧に関しては18.0%(同12.3~23.1)、ステージ2高血圧に関しては23.7%(同13.0~32.9)と計算された。この結果は、黄砂飛来日に健診を受けて高血圧と判定された人の約4人に1人は、仮に黄砂が飛来していない日に健診を受けていれば、高血圧と判定されなかった可能性があることを意味する。

 サブグループ解析からは、BMIと年齢により黄砂による血圧への影響が異なることが分かった。BMIに関しては、25以上の肥満群では黄砂飛来日でも血圧が上昇せず、BMI25未満の群との有意な交互作用が認められた。年齢に関しては、41~50歳を底値として、それより若くても高齢でも、黄砂飛来による血圧上昇の影響が大きくなる傾向が見られた。また、非喫煙者は喫煙者よりも黄砂飛来による血圧上昇幅が大きかったが、群間の交互作用は非有意だった。性別や糖尿病の有無では、黄砂飛来による血圧の影響に有意な交互作用はなかった。

 著者らは、「黄砂飛来に起因する高血圧のPAFは比較的高い。よって、黄砂への曝露を避けることは、健康な成人の高血圧発症の予防に有用な可能性がある」と述べている。

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HealthDay News 2020年11月16日
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