輸血用の血液は「新鮮」でなくてもOK


この研究を実施したモナシュ大学(オーストラリア)公衆衛生・予防医学部のJamie Cooper氏らは「これまで輸血には新鮮な赤血球製剤が最適だと考えられていたが、新鮮でなくても良いことが分かった」としている。
この研究は、2012年11月~2016年12月にオーストラリアのほかフィンランド、アイルランド、ニュージーランド、サウジアラビアの5カ国にある59カ所のICUで実施された。
これらのICUで赤血球製剤の輸血が必要となった18歳以上の重症患者4,994人を、その時に使用できる赤血球製剤の中でも最も新しい製剤を使用する群(新鮮血群)と、最も古い製剤を使用する群(非新鮮血群)にランダムに割り付けた。
実際に使用された製剤の平均保存期間は新鮮血群で11.8日、非新鮮血群で22.4日だった。
このうち4,919人を対象に解析した結果、90日後の死亡率は新鮮血群で24.8%、非新鮮血群で24.1%と同程度であることが示された。また、6カ月後の死亡率についても両群間の差は1%未満であった。

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Cooper氏は「今回の研究では2つの予想に反した知見が得られた。1つ目は、輸血の副作用(発熱性非溶血性輸血副作用)の頻度は、新鮮な血液製剤を輸血した方が高かったという点だ。
そして2つ目は、新鮮ではない血液製剤を輸血した重症患者でも、その多くで優れた生存率が認められたという点だ」と説明。
その上で「赤血球は赤ワインのように少し時間がたっている方が良いのかもしれない」と話している。
なお、輸血用の血液製剤の保存期間は現在、保存方法や規制の違いなどから国や地域によって異なるが、最長で42日間とされている。
しかし、古い血液製剤を使用することに対する懸念から使用期限を短縮している国や施設もあるという。
ただ、使用期限を短縮すると廃棄される血液製剤が増え、輸血用の血液製剤が不足する可能性がある。

今回の研究には関与していない米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のEdward Murphy氏によると、血液は長く保存すると赤血球が硬くなり、ヘモグロビンが流れ出してしまうこともあるという。
また、保存に使用する溶液やプラスチック製の保存バッグによる影響も懸念されていた。
しかし近年、複数の研究で新鮮な血液製剤を使用しなくても生存率に影響はないことが示されていたため、Murphy氏は「この問題は既に決着がついている」と指摘。
「今回の研究結果もこれまでの報告と一致したものだ」と話している。
この研究結果は「New England Journal of Medicine」9月27日オンライン版にも掲載された。

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