アブラナ科野菜の摂取と大腸がん罹患は関連しない 約8万人の日本人男女を解析、JPHC研究

中年期以降の日本人の男女は、キャベツやブロッコリー、白菜などのアブラナ科の野菜を多く摂取しても大腸がんの罹患リスクは低減しない可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの検討で分かった。一方、がんによる食事の変化の影響を考慮して解析すると、女性ではアブラナ科野菜の摂取量が多いほど結腸がんリスクが低い傾向がみられたという。研究の詳細は「European Journal of Cancer Prevention」11月5日オンライン版に掲載された。
大腸がん予防には食生活の重要性が指摘されている。しかし、2005年に発表したJPHC研究では、野菜や果物の摂取量と大腸がん罹患との間に関連は認められなかった(Br J Cancer 2005; 92(9): 1782-1784)。一方、アブラナ科の野菜には、抗炎症作用や発がん抑制作用のある「イソチオシアネート」や抗酸化ビタミンが豊富に含まれており、がん予防に働くことが期待されている。研究グループは今回、JPHC研究に参加した45~74歳の男女約8万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、アブラナ科野菜の摂取量と大腸がん罹患との関連について調べた。
今回の研究では、ベースライン時(1990年および1993年)に全国10地域に在住し、がんや心筋梗塞、脳卒中の既往がなく、研究開始から5年後の食物摂取頻度質問票に回答した45~74歳の8万8,172人(うち男性4万1,164人)を対象に2013年まで追跡した。質問票では漬け物を含む11項目のアブラナ科の野菜(キャベツ、大根、小松菜、ブロッコリー、白菜、たくあん漬けや野沢菜漬けなど)からアブラナ科野菜の総摂取量を推定した。

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追跡期間中に2,612人が大腸がんに罹患していた。解析の結果、男女ともにアブラナ科野菜の摂取量と大腸がん罹患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。追跡開始から3年以内の大腸がん罹患者と上皮内がん患者を解析から除外して、大腸がんがあることでアブラナ科野菜の摂取量が変化している影響を除いても同様の結果が得られた。
また、アブラナ科野菜の摂取量と大腸がんリスクを部位別に検討した結果、男女ともにその摂取量と直腸がん、結腸がんリスクとの間に有意な関連は認められなかった。一方、追跡開始から3年以内の大腸がん罹患者などを除外すると、女性ではアブラナ科野菜の摂取量が多いほど結腸がんリスクは低い傾向がみられた。
以上の結果を踏まえ、研究グループは「今回の研究では、アブラナ科野菜の大腸がん予防効果は認められなかった。しかし、海外の研究では野菜や果物の摂取は口腔がんや食道がんに予防的に働くことが報告されており、われわれの研究でもアブラナ科野菜の摂取量と肺がん罹患や全死亡リスクの低下との関連が示されていることから、これらを不足なく摂取することは健康に大切だと考えられる」と述べている。
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