化学療法受けない早期乳がん患者が増加

近年、早期乳がん患者に対する化学療法の実施件数が減少傾向にあることが、米スタンフォード大学内科・健康研究准教授Allison Kurian氏らによる研究で明らかになった。

同氏らは「一部の早期乳がん患者では化学療法の(副作用による)有害性が有益性を上回る場合があることが、医師や患者に認識されるようになったことが一因ではないか」としている。
詳細は「Journal of the National Cancer Institute」12月11日オンライン版に掲載された。

Kurian氏らは今回、米国のがん登録(SEER)のデータベースを用い、ジョージア州およびロサンゼルス市内で2013~2015年に早期乳がんの治療を受けた女性2,926人を対象に化学療法の実施状況を調査した。
対象者はステージ1~2で、エストロゲン受容体陽性かつ上皮成長因子受容体(EGFR)2陰性の乳がんだった。

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その結果、対象者における化学療法の実施率は、2013年の34.5%から2015年には21.3%へと低下していた(P<0.001)。
また、リンパ節への転移がある患者に対する化学療法の実施率は、同期間に81.1%から64.2%に低下。
リンパ節転移がない患者でも、実施率は26.6%から14.1%に低下していた。
さらに、主治医から化学療法を勧められたと回答した早期乳がん患者の割合も、2013年の44.9%から2015年には31.6%に低下していた。

このほか、臨床腫瘍医504人にも化学療法やがんの治療薬の効きやすさを調べるための遺伝子検査の実施状況について尋ねたところ、医師の勧める治療と患者が望む治療が一致しない場合には、医師はがんの遺伝子検査を実施する確率が高いことも分かった。

ただ、Kurian氏らによると同期間に国や学会などが策定した乳がん診療ガイドラインにおける化学療法の推奨内容に大幅な変更はないという。
同氏は「多くの医師が治療の個別化を目指し、化学療法の副作用をできるだけ軽減しようとしていることが、この結果に反映されたのではないか」との見方を示す。
その上で、「こうした近年の化学療法の実施状況の変化が長期的にはどのような結果を招くかについては不明だ」と話している。

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HealthDay News 2017年12月13日
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