遺伝性乳がん、最も発症リスクが高まる年齢は?

BRCA1遺伝子やBRCA2遺伝子に変異がある女性は、乳がんや卵巣がんを発症するリスクが高いことが知られているが、そのリスクが最も高くなる年齢を明らかにした前向きコホート研究の結果が「Journal of the American Medical Association(JAMA)」6月20日号に掲載された。研究を実施した英ケンブリッジ大学公衆衛生・プライマリケア学のAntonis Antoniou氏らは「乳房や卵巣の予防的切除などの対策を取るべき時期を決める際に一助となる知見」としている。

 この研究では、BRCA1遺伝子の変異がある女性が乳がんを発症するリスクが高まる年齢について検討。その結果、発症リスクは成人後、年齢が上がるにつれて急激に上昇し、31~40歳に最大となり、その後は生涯にわたって横ばいとなることが示された。また、BRCA2遺伝子の変異がある女性でも成人後にリスクの上昇が始まり、51~60歳に最大となり、その後横ばいとなることが分かった。

 これまでのBRCA1/2遺伝子変異と乳がんや卵巣がんの発症リスクに関する報告によると、70歳までの乳がん発症の累積リスクはBRCA1遺伝子変異がある女性で40~87%、BRCA2遺伝子変異がある女性では27~84%と幅があった。これらの報告は、後ろ向き研究に基づいたものだったため、Antoniou氏らは今回、より精度の高いリスク推定を行うため、より大規模な前向き研究を実施した。

 対象は、1997~2011年に英国やオランダなどで登録されたBRCA1遺伝子変異陽性の6,036人とBRCA2遺伝子変異陽性の3,820人の計9,856人。このうち4,810人はベースライン時に乳がんまたは卵巣がんの既往があった。中央値で5年の追跡期間中に426人が乳がん、109人が卵巣がん、245人が対側乳がんの診断を受けた。

 解析の結果、BRCA1遺伝子変異がある女性が80歳までに乳がんを発症する確率(累積発症率)は72%、卵巣がんを発症する確率は44%だった。一方、BRCA2遺伝子変異がある女性が80歳までに乳がんを発症する確率は69%、卵巣がんを発症する確率は17%だった。また、乳がんの診断後、20年間に対側乳がんを発症するリスクは、BRCA1遺伝子変異がある女性では41%、BRCA2遺伝子変異がある女性では21%だった。

乳がんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。

 このほか、BRCA1/2遺伝子変異がある女性における乳がん発症リスクは、女性の親族に乳がん既往者がいる場合にさらに上昇すること、変異の位置もリスクの増減に関与することなどが分かった。

 これらのリスク推定値について、米国がん協会(ACS)のLen Lichtenfeld氏は「これまでの推定値と比べて少しばかり正確で、現実が反映された値かもしれない」とコメント。「『卵巣は摘出したくない』と願う女性もいるが、『もっと早く摘出しておけば良かった』と後悔する女性もいる。この研究データは、どのような選択肢があり、どのような結果がもたらされるかについて、冷静に議論する際に役立つだろう」としている。

 なお、乳がんの家族歴のない女性が遺伝子検査を受けるべきか否かについては、議論が続いている。家族歴も既往歴もない場合はBRCA1/2遺伝子変異陽性の確率は極めて低いとされる一方、例外もあるため検査対象を広げるべきとの意見もあり、専門家の見解は一致していない。

Abstract:リンク先
HealthDay News 2017年6月20日
Copyright © 2017 HealthDay. All rights reserved.
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。