げっぷに関する初の疫学調査――うつや睡眠障害などとの関連が明らかに

 成人の曖気(げっぷ)に関する初の疫学調査の結果が報告された。大阪市立大学大学院医学系研究科消化器内科の藤原靖弘氏らの研究によるもので、げっぷの頻度が不安・うつや睡眠障害のレベルと有意に関連することなどが明らかになった。詳細は「Journal of Neurogastroenterology and Motility」に10月30日掲載された。

 げっぷは胃や食道のガスが排出される生理的な現象で、それ自体は何かの疾患に特異的な症状ではないが、逆流性食道炎や機能性ディスペプシア(FD)などでは、げっぷの回数が増加することが報告されている。ただし、げっぷそのものの疫学調査はこれまで行われていない。そこで藤原氏らは、市立柏原病院での健診受診者を対象に本調査を行った。

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 胃食道逆流症の症状評価のための質問票にある「げっぷの頻度は?」との質問に対して、「全くない」と回答した場合は0点、「まれに」は1点、「時々」は2点、「しばしば」は3点、「いつも」は4点とし、3点以上を臨床的に無視できないげっぷ(clinically significant belching;CSB)と定義。すると、調査対象者1,998人のうち121人(6.1%)がこれに該当した。

 CSBの該当者と非該当者で比較すると、年齢、性別、BMI、ウエスト周囲長、喫煙・飲酒習慣に有意差はなかった。その一方、逆流性食道炎の有病率はCSB群8.3%、非CSB群13.6%、FDの有病率は同順に27.3%、10.4%であり、CSB群ではFDが多く、有意差が認められた(P<0.001)。胸やけの症状を訴える患者の割合は、CSB群10.7%、非CSB群3.1%で、CSB群に多かった(P<0.001)。

 また、CSB群は不安やうつ、睡眠障害のレベルが高いことが分かった。具体的には、HADSという21点満点の指標で評価した不安・うつレベルは、非CSB群が6.8±5.5点に対してCSB群は10.1±6.2点と有意に高かった。同様に、アテネ不眠尺度(AIS)という24点満点の指標で評価した睡眠障害のレベルは、非CSB群が3.5±3.1点に対してCSB群は5.2±3.3点と有意に高かった(いずれもP<0.001)。

 ロジスティック回帰分析の結果、CSBと有意に関連する因子として、胸やけ〔オッズ比(OR)2.07(95%信頼区間1.05~4.09)〕、FD〔OR2.12(同1.33~3.36)〕とともに、HADSスコア8点以上〔OR2.29(同1.51~3.45)〕とAISスコア6点以上〔OR1.73(同1.14~2.61)〕が抽出された。

 げっぷの頻度別に解析すると、「まれに」および「時々」の場合は、性別が男性であることも有意な関連因子として抽出された〔時々ではOR1.41(同1.10~1.80)〕。この点について著者らは、男性には摂食速度が速い人が多く食事中に空気を飲み込みやすい可能性があることや、アルコールや炭酸飲料の摂取量が多いこと、および、げっぷをすることの抵抗感が少ないことなどの影響ではないかと考察している。

 なお、げっぷの頻度が「しばしば」の場合は性別の有意性が消失し、さらに頻度が「いつも」の場合、有意な関連はFDのみで認められた〔OR4.44(2.02~9.75)〕。

 このほかにも、げっぷの頻度が高いほどFDの有病率が高いが逆流性食道炎の有病率とは相関がないこと、ただし、胸やけとげっぷの頻度は正相関することなどが明らかになった。

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HealthDay News 2021年11月29日
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