カドミウムと鉛曝露は妊娠糖尿病の発症と関連しない エコチル調査で分析

妊娠中のカドミウムと鉛の血中濃度は妊娠糖尿病の発症と関連しない可能性があると、国立環境研究所(茨城県)エコチル調査コアセンター室長の中山祥嗣氏らの研究グループが「International Archives of Occupational and Environmental Health」10月30日オンライン版に発表した。研究は子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の一環で、妊婦の年齢と肥満、妊娠糖尿病の既往歴は妊娠糖尿病の予測因子であることも確認された。
エコチル調査とは、環境が子どもの健康に及ぼす影響を検討するため、2010年度に開始された大規模な出生コホート研究を指す。これまで海外の疫学研究や動物実験で、カドミウムと鉛曝露が糖尿病や糖代謝異常を引き起こすことが報告されているが、妊娠糖尿病との関連はほとんど検討されていなかった。

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中山氏らは今回、エコチル調査に参加し、妊娠22週~28週に採取した血液サンプルからカドミウムと鉛の血中濃度を測定し得た妊婦1万6,955人を対象に、カドミウムと鉛曝露と妊娠糖尿病との関連を調べる横断研究を実施した。
解析の結果、母親の出産経験(初産または経産)にかかわらず、カドミウムと鉛の血中濃度と妊娠糖尿病発症との間に有意な関連は認められないことが明らかになった。一方、従来から妊娠糖尿病のリスク因子と考えられてきた妊婦が高齢であることと妊娠前の肥満、妊娠糖尿病の既往歴はその発症に有意に関連することが認められた。
これらの結果を踏まえ、中山氏らは「カドミウムと鉛の血中濃度と妊娠糖尿病の発症との関連を検討した研究は今回が初めて。この結果から、これらの化学物質への曝露は妊娠糖尿病の発症と関連しなかったが、妊婦の年齢や肥満、妊娠糖尿病の既往がリスク要因となり得ることが示された」と述べている。
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