ふくらはぎ周囲長のサルコペニア判定カットオフ値――早大

ふくらはぎ周囲長は年齢や肥満の有無にかかわりなく、サルコペニアのスクリーニングに有用との研究結果が「Geriatrics & Gerontology International」9月4日オンライン版に掲載された。早稲田大学スポーツ科学学術院の川上諒子氏らが、同大学の同窓生を対象とする「WASEDA’S Health Study」のデータを解析し、明らかにした。
サルコペニアは、筋肉量や筋力が低下して、転倒、骨折、死亡のリスクが高くなった状態。加齢に伴いその頻度が増えるが、筋力トレーニングなどによって予防・改善が可能。そのため、早期に発見することが重要とされる。サルコペニアの診断には、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)などによる筋肉量測定が行われるが、多くの一般住民に施行するには、コストや時間、放射線被曝などのハードルが高い。

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サルコペニアの簡便なスクリーニング法として2019年にアジアサルコペニアワーキンググループ(AWGS)から、ふくらはぎ周囲長が「男性34cm未満、女性33cm未満」という基準が提案された。ただしこの値を日本人に適用可能かどうかは十分に検証されておらず、また肥満や年齢の影響もよく分かっていなかった。川上氏らは、これらの点を明らかにするために以下の検討を行った。
検討の対象は、2015年3月~2020年1月に早稲田大学同窓生対象の健康調査を受けた人のうち、ふくらはぎ周囲長、およびDXA法とBIA法(生体インピーダンス法)による筋肉量が測定された40歳以上の1,239人。
対象者のうち男性(827人)は、平均年齢が57±10歳、BMI23.8±3.0kg/m2、体脂肪率20.4±4.7%で、ふくらはぎ周囲長37.6±2.6cm、骨格筋量指数(SMI:四肢筋肉量を身長の二乗で除した値)はDXA法では7.9±0.8kg/m2、BIA法では8.3±0.9kg/m2、握力は37.9±5.8kgだった。一方、女性(412人)は平均年齢52±9歳、BMI21.4±2.9kg/m2、体脂肪率27.2±5.1%で、ふくらはぎ周囲長34.4±2.2cm、SMIはDXA法で6.1±0.7kg/m2、BIA法で6.4±0.6kg/m2、握力24.5±3.7kgだった。
サルコペニアをAWGSのDXA法によるSMI判定基準(男性7.0g/m2未満、女性5.4kg/m2未満)で定義すると、男性の8.6%、女性の12.9%が該当した。サルコペニア群と非サルコペニア群の比較で、男性・女性ともに年齢や身長、体脂肪率に有意差は認められなかった。
ふくらはぎ周囲長とSMIには、有意な正の相関が認められた(DXA法で男性r=0.78、女性r=0.76。BIA法で男性r=0.81、女性r=0.73)。サルコペニアの診断に用いられる握力とは、弱い正の相関であった(男性r=0.33、女性r=0.31)。
ROC解析の結果、ふくらはぎ周囲長によるサルコペニアの判定は、男性のDXA法による診断に対してAUC0.88、BIA法による診断に対して同0.93、女性では同順に0.84、0.89となった。スクリーニングに最適なふくらはぎ周囲長のカットオフ値は、男性のDXA法による診断に対しては35.8cm(感度81.7%、特異度80.4%)、BIA法による診断に対しては35.4cm(感度91.2%、特異度83.5%)、女性では同順に33.5cm(感度84.9%、特異度72.4%)、32.7cm(感度81.5%、特異度83.6%)という値が算出された。
次に、肥満の有無(DXA法での体脂肪率が男性25%以上、女性30%以上を肥満と定義)、および年齢(60歳未満/以上)で層別化しサブクループ解析を行った。その結果、全てのグループで、ふくらはぎ周囲長とSMIの有意な相関が引き続き認められ、スクリーニングのカットオフ値もほぼ同等だった。
これらより著者らは、「ふくらはぎ周囲長は肥満や年齢に関係なく骨格筋量と正相関し、サルコペニア診断の簡便な代理マーカーとなり得る」と結論づけている。

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