米国では農村部でがん死亡率が高い

米国では全体的ながんによる死亡率は減少傾向にあるが、農村地域ではわずかな減少にとどまっており、都市部との差が拡大していることを示した研究結果が米疾病対策センター(CDC)発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWP)Surveillance Summaries」7月7日号に掲載された。
研究を実施したCDC国立慢性疾患予防・健康促進センター(NCCDPHP)のグループは、「地理的条件が単独でがんリスクの予測因子となるわけではないが、予防や診断、治療の機会には影響する可能性がある。このことは、米国における重大な公衆衛生上の問題だといえる」と述べている。
今回、同グループがCDCのがん登録データなどを分析した結果、得られた主な知見は以下の通り。
・がんによる死亡率は都市部に比べて農村地域で高かった。人口10万人当たりのがんによる死亡数は都市部の158例に対して農村地域では180例に上った。
・がんによる死亡率は都市部では年間1.6%の低下が認められたが、農村地域では同1.0%の低下にとどまった。
・全体的ながん罹患率は都市部に比べて農村地域ではやや低く、都市部の10万人当たり457人に対して農村地域では同442人だった。しかし、肺がんなどの喫煙に関連するがんや、スクリーニングによる予防効果が期待できる大腸がんや子宮頸がんなどの罹患率は、都市部に比べて農村地域で高かった。
米オハイオ州立大学総合がんセンターのElectra Paskett氏は「この結果は意外ではない」とコメント。「われわれは長年にわたって農村地域で調査などを実施してきたが、農村地域が広がるアパラチア地方ではかなりの期間、がんが死亡原因の首位を占めていた。農村地域にはがん死亡率を高めるさまざまな要因がある」と説明している。
一方、今回の研究を実施したグループの一員でCDCがん予防・対策部門のLisa Richardson氏は「私ががん患者を治療するときは、私1人で治療しているわけではない。治療中も、治療が終了した後も、他の医療従事者や患者の家族が患者を支援している。これは、地域レベルでの予防を目的とした介入にも必要なことだ。関係者の連携が、がんの罹患率を低減し、それに関連する不均衡を解消するための鍵となる」と指摘している。
なお、CDCはがん死亡率の地域間における格差の縮小を目指す上で、農村地域の医療従事者も一定の役割を果たしうると強調。「がんリスクを低減させる習慣、例えば喫煙や副流煙に曝露する機会を減らすこと、日光や日焼けマシンから紫外線を浴びる量を制限すること、運動や健康的な食事を心がけることなどを推進することで地域差を解消できる可能性がある」としている。また、大腸がんや子宮頸がんの検診、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンやB型肝炎ワクチンなどのがんを予防するワクチンの接種率を向上させることも課題として挙げている。

お近くの治験情報を全国から検索できます。