「身体に悪いのは脂肪ではなく炭水化物」、最新研究で示唆

世界18カ国の13万人超を対象に実施された研究で、現在の栄養に関する考え方を覆す可能性がある結果が示された。

この研究では、炭水化物の摂取量が多いと死亡リスクが高まる一方で、脂肪については摂取量が多いと同リスクは低くなることが分かったという。詳細は「The Lancet」8月29日オンライン版に掲載されたほか、欧州心臓病学会(ESC 2017、8月26~30日、スペイン・バルセロナ)でも報告された。

 研究の対象は、カナダやスウェーデン、中国、ブラジル、インドなどさまざまな人種や経済水準の国の男女計13万5,335人。年齢は35~70歳だった。対象者には社会経済的地位や生活習慣、病歴、現在の健康状態に関する情報を提供してもらい、食事に関する質問票にも回答してもらった。

 その結果、全ての対象者における1日当たりの摂取エネルギーに占める三大栄養素の比率は、炭水化物が61.2%、脂質が23.5%(うち8%が飽和脂肪酸、8.1%が一価不飽和脂肪酸、5.3%が多価不飽和脂肪酸)、たんぱく質が15.2%だった。1日当たりの摂取エネルギーの60%以上を炭水化物から摂取している「高炭水化物食」の人は半数を超え、70%以上を炭水化物から摂取している人も約25%を占めていた。

 1日当たりの摂取エネルギーに占める炭水化物と脂肪の割合を最も少ない群から最も多い群まで5群に分類したところ、炭水化物の摂取量が最も多い群(1日当たりの摂取エネルギーに占める割合が平均77%)では、最も少ない群(同46%)と比べて全死亡リスクが28%高かった。これに対し、脂肪の摂取量が最も多い群(同35.5%)では最も少ない群(同11.0%)と比べて全死亡リスクが23%低かった。

 さらに、脂肪の種類別に解析した結果では、一価および多価不飽和脂肪酸の摂取量が少ないと全死亡リスクが高まるだけでなく、健康への悪影響が指摘されている飽和脂肪酸でも摂取量が極めて少ないと(同3%未満)、摂取量が多い場合(同13%)と比べて全死亡リスクが上昇した。

 この研究論文の筆頭著者であるマックマスター大学(カナダ)のMahshid Dehghan氏は「一般的な考えに反し、われわれの研究では脂質の摂取量が増えると死亡リスクが低下することが示された」と結論。「1日当たりのエネルギー量に占める飽和脂肪酸の割合を10%未満に抑えることが有益であるとのエビデンスはなく、7%未満に抑えると逆に有害である可能性がある」としている。

 また、現在、各国の食事ガイドラインでは1日当たりのエネルギー量の50~65%を炭水化物から摂取し、飽和脂肪酸は10%未満とすることを推奨しているが、同氏は「炭水化物は約50~55%、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸を合わせた脂質を約35%とするのが最善のバランスではないか」との考えを示している。

 今回の研究報告を受け、米国立老化研究所(NIA)のChristopher Ramsden氏は「優れた研究だが、現時点で結論を出すのは難しい」とコメント。また、米レノックス・ヒル病院のBethany O’Dea氏は、この研究では栄養素の摂取源となる具体的な食品が検討されていないこと、有害なトランス脂肪酸についても考慮されていないことなどを指摘。「例えば、同じ炭水化物でもポテトチップスよりリンゴの方が栄養価に優れる」として、健康的な炭水化物、脂肪の少ないたんぱく質、果物と野菜を摂取し、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸が含まれるスナック菓子などを避けることを勧めている。

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HealthDay News 2017年8月29日
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